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お馬鹿な頭は浄化はできませんわ。

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「メマラン聖王国の聖女アイラ。もう貴様のような女にはりだ。二度とそのつらを見せるな」

 神聖なる教会にて私――アイラは、自身の婚約者であるはずのモーンド王子に叱責されていた。

「そのお言葉の意味は……私には分かりかねます」

 突然部下を引き連れて教会にやって来たかと思えば、本当に何を言ってるのかしら。
 自分でつらを見せに来ておいて、『つらを見せるな』とはこれいかに。
 

「貴様との婚約も解消すると言っているのだ! 今すぐ我がズキア王国より立ち去ってもらおう!」
「……その訳を聞きましょうか」

 何となく私にここを出ていけと言いたいのは分かってはいたが、その理由が分からない。
 そもそも聖王国で聖女をしていた私を、ズキア王国へと招いたのは目の前に居るモーンド王子だ。
 あまつさえ嫁にしたいといったのだって、この人である。


「浄化をせよと命令しておるのに、貴様は理屈をね回して拒否し続けるではないか。貴様など、聖女の名をかたる偽物だ!! クソッ。顔だけは良いと思ったら、口は悪いわ性格はひねくれているわ……とんだみにくい女だ!!」

 口から出掛かった「はぁ?」という言葉をどうにか飲み込む。

 自分が可愛くない女なのは、確かに認める。
 王子の言う通り、国土の浄化をやれと言われて拒否をしたのも認めるけど……

「アレは瘴気のけがれではありません。他に原因があると、何度もご説明しましたが」

 私の返答に、王子の背後にいた部下たちがざわつき始めた。
 いや、教会に居る修道女たちまで一緒になってヒソヒソ話をしている。

『あの聖女、遂に殿下にまで歯向かったぞ!?』
『やっぱり聖女なんて迎え入れるのは、失敗だったのよ……』
『本当に浄化の力だって持っているのかしら?』
『ひどい、殿下を騙したのね……!?』

 もう、言いたい放題言ってくれるわね。
 異国の者である私に、味方をしてくれる人はこの国に居ないのかしら?


「ふんっ、優秀だと聞いて入国を許可してみれば。目上に対する口の利き方も習わないのか、かの国では」
「言ったはずです。私は殿下と同格の扱いでならこの国へと派遣されましょう、と。それをお忘れですか?」
「そんな建前を本気にしていたのか!? 俺はこの国の王子だぞ!!」


 こちらこそ貴方に本気か、と尋ねたい。

 瘴気を浄化する力を持った聖女は、神の代行者として扱われている。その信頼を得るために、聖王国と聖女たちがどれほどの苦労と犠牲を払ってきたのか……。

 それはこの大陸にある国だったら、何処どこも共通の認識のはずでしょうに。


 あぁ、そういうこと。
 この小さな国ではここ数十年、瘴気の被害が無かったからそんなことも忘れてしまったのね。

『あれはもう、不敬罪じゃないか……?」
『この国から出ていきなさいよ!!』
『いや、見せしめに処刑だ!!』


「クククッ。見ろ、貴様を擁護ようごする者は居ない。さぁ、さっさと荷物をまとめるが良い」

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