転生魔王

18.再び

「ハハッ、他愛ない。紙を裂いたようなものだな」
(コーイル様！)

血にまみれゆく魔族を尻目に部下達がコーイルの元へと駆け寄っていく。

(早くお姿を隠してください！)
「誰かいるのか？」
(索敵には引っ掛かりはありませんが念のために、です)

コーイルはやれやれと肩を竦すくめると自身のスキルで姿を消す。

(この槍の性能を試そうと思っていたんだが、心臓を一突きにしてしまっては意味が無かったな。ウォーミングアップとでも思えば気が晴れるか？)
(もしやまたお試しになるつもりで？)
(いや、もういい。時間の無駄だ)

コーイルの言葉にほっと胸を撫で下ろす部下達。
ただでさえ敵の領域が近いにもかかわらず、再度危険を冒おかしてまで「試し切りをする」と言われてしまった時には同行者としては堪ったものではない。

(しかしどうして姿を見せたんですかい？隠れたままでも攻撃できたかと思われますが)

戦士の男が怪訝そうな声音で尋ねる。

(なぜ俺が雑魚相手に隠れないとならないんだ？スキルを使う相手くらいは選ぶさ)

その回答に対して戦士は姿が見えないのをいいことに肩をおとしてどっと脱力する姿勢をとる。「コーイルはこういう性格なのだ。仕方がない」と自分を納得させるような仕草でもあった。

(フッ、無駄話はこれくらいにしてさっさと魔王の息の根を止めにいくとするか)

部下達は「誰の所為だ」と思うが本人コーイルに伝える者は誰もいない。
そんなことは知る由もないマイペースなコーイルは歩を進めるべく動き出す。

「痛いっった！」

「「「！！！」」」

突如として聞こえた声に一行はその場で固まる。何事かと全員が視線を聞こえてきた方向へと向けていく。

そして発生源へと定まった彼らの目には驚愕という言葉ではとても足りない光景が待ち構えていた。

「ん？………かった、か？今は別に何ともない？うん、『痛かった』。過去形の方が正しいな。いや～焦った～マジで」

なんと先程コーイルが一突きで絶命させたはずの魔族が、まるで何も無かったかのようにムクリと起き上がっていたのだ。

(………………………何が………起きているんだ………………？)