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第28話:レイチェル様が会いに来てくださいました
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「これは確かに美味しいね。苺とこの周りに包んであるものが、とてもよくあっている。クリスティーヌ嬢が泣いて食べるのもうなずけるよ」
「本当に、美味しゅうございますわ」
殿下たちも絶賛している。ただ、どさくさに紛れて私を話題に出すのは止めて欲しいわ。
「ディスティーヌ嬢、このお菓子、世に出さないなんてもったいないよ。ぜひ王都で広めて欲しい。そうだ、もしよければレシピを教えてもらえるかい?王宮料理人にも、作らせたいんだ。たくさん作って、いつでもクリスティーヌ嬢に食べてもらえる様に」
えっ?なぜそこで私が出てい来るのよ!
「殿下、クリスティーヌへの気遣い、ありがとうございます。ですが、王宮で作って頂かなくても大丈夫です。ディスティーヌ嬢、僕にもレシピを教えてもらえるかい?クリスティーヌがいつでも食べられる様にしたいんだ」
アルフレッド様とカロイド殿下が、レイチェル様に頼んでいる。確かに公爵家の料理人が、苺大福を作ってくれたら嬉しい。でも…
ちらりとレイチェル様の方を向く。すると
「申し訳ございません、このレシピは、私が何年もかけ開発した大切なものです。正直申しますと、誰にも公表するつもりはなかったのです。ですが…どうしても食べて欲しい人が出来まして…このレシピをお教えする訳にはいきませんわ。定期的に作って参りますので、どうかご勘弁を」
そう言うと、まっすぐ私の方を見つめ、ほほ笑んだレイチェル様。どうしても食べて欲しい相手って…
「そうか、それは残念だな。それじゃあ、また作って来てくれ」
そう言っていつもの王子スマイルを見せる、カロイド殿下。このスマイル、相変わらず胡散臭い。
その後は何事もなかったかのように昼食を終え、午後の授業も無事終えた。
「クリスティーヌ、帰ろうか」
「はい」
殿下たちに捕まる前に、急いで馬車に乗り込み家路を目指す。
「クリスティーヌ、ディスティーヌ嬢には近づかない方がいい。あの女、ずっとクリスティーヌの事を目の敵にしていたんだよ。それなのに、急に仲良くなりたいだなんて。絶対何か企んでいるに違いない」
ギュッと私を抱きしめ、そう呟くアルフレッド様。
「レイチェル様はそんな悪い人には見えませんでしたわ。皆の前で謝罪も受けましたし。それに私も、レイチェル様と仲良くなりたいと思っておりますの」
レイチェル様はきっと、いっちゃんと何らかの繋がりがある。そう私は踏んでいるのだ。何とかレイチェル様と2人で話をしたい。そう思っている。
「クリスティーヌは人が良すぎるんだよ。君は知らないだろうが、あの女、事あるごとに凄い形相で君を睨んでいた。時には、クリスティーヌの悪い噂を流していたこともあるのだよ。そんな女を、僕は絶対に信用できないと思っている!もしかしたらあのお菓子に毒を仕込んで、クリスティーヌを亡き者にしようと考えるかもしれない」
「さすがにお菓子に毒を入れたりはしないと思いますわ。私はこれでも公爵令嬢です。公爵令嬢を毒殺しようとすれば、極刑は免れませんし」
「確かにそうだが、もしかしたらあの女。カリーナ殿下の手下かもしれないよ。十分注意するんだ。いいね。これからはあの女の持ってきたものを、ホイホイ食べるのは控えて欲しい。君にもしものことがあったら、僕は…」
「分かりましたわ、ですから、そんな悲しそうな顔をしないで下さい」
レイチェル様はそんな人ではない、そう言いたいが、アルフレッド様の辛そうな顔を見たら、これ以上何も言えない。
「さあ、屋敷に着いたよ。僕はこれから、義父上と出掛けてくるけれど、どうかクリスティーヌは屋敷で過ごして欲しい」
「ええ、分かっていますわ。アルフレッド様、どうかお気をつけて」
着替えを済ませ、お父様と一緒に馬車に乗り込むアルフレッド様を見送ると、部屋に戻ってきた。アルフレッド様はああ言っていたけれど、私はどうしてもレイチェル様が気になって仕方がない。何とかレイチェル様と連絡を取りたいのだけど。でも…
アルフレッド様のあの悲しそうな顔を見たら、とてもレイチェル様に会いに行けない。アルフレッド様を悲しませるだなんて、絶対に許される事ではない。それでも、レイチェル様の件も気になるし…
1人悶々としていると
「お嬢様、レイチェル・ディスティーヌ公爵令嬢様がいらっしゃっているのですが…」
「えっ、レイチェル様が?すぐに通して頂戴!」
まさかレイチェル様が会いに来てくださるだなんて。やはり彼女も、前世の記憶が…
スッと胸元についているブローチに目をやる。もしレイチェル様が前世の記憶があるとすれば、さすがにアルフレッド様に、レイチェル様との会話を聞かれる訳にはいかない。でも、アルフレッド様が不安に思うような事はしたくない。
どうしよう…
震える手で、ブローチに触れる。そして、スッとブローチを取り、引き出しにしまう。
アルフレッド様、ごめんなさい。でも、どうしてもレイチェル様とお話しがしたいのです。ブローチを取り、アルフレッド様に隠し事をするという事は、彼を裏切ると言う事。私はアルフレッド様の推し失格ね。
罪悪感が体中を支配する中、レイチェル様がいる部屋へと向かったのだった。
「本当に、美味しゅうございますわ」
殿下たちも絶賛している。ただ、どさくさに紛れて私を話題に出すのは止めて欲しいわ。
「ディスティーヌ嬢、このお菓子、世に出さないなんてもったいないよ。ぜひ王都で広めて欲しい。そうだ、もしよければレシピを教えてもらえるかい?王宮料理人にも、作らせたいんだ。たくさん作って、いつでもクリスティーヌ嬢に食べてもらえる様に」
えっ?なぜそこで私が出てい来るのよ!
「殿下、クリスティーヌへの気遣い、ありがとうございます。ですが、王宮で作って頂かなくても大丈夫です。ディスティーヌ嬢、僕にもレシピを教えてもらえるかい?クリスティーヌがいつでも食べられる様にしたいんだ」
アルフレッド様とカロイド殿下が、レイチェル様に頼んでいる。確かに公爵家の料理人が、苺大福を作ってくれたら嬉しい。でも…
ちらりとレイチェル様の方を向く。すると
「申し訳ございません、このレシピは、私が何年もかけ開発した大切なものです。正直申しますと、誰にも公表するつもりはなかったのです。ですが…どうしても食べて欲しい人が出来まして…このレシピをお教えする訳にはいきませんわ。定期的に作って参りますので、どうかご勘弁を」
そう言うと、まっすぐ私の方を見つめ、ほほ笑んだレイチェル様。どうしても食べて欲しい相手って…
「そうか、それは残念だな。それじゃあ、また作って来てくれ」
そう言っていつもの王子スマイルを見せる、カロイド殿下。このスマイル、相変わらず胡散臭い。
その後は何事もなかったかのように昼食を終え、午後の授業も無事終えた。
「クリスティーヌ、帰ろうか」
「はい」
殿下たちに捕まる前に、急いで馬車に乗り込み家路を目指す。
「クリスティーヌ、ディスティーヌ嬢には近づかない方がいい。あの女、ずっとクリスティーヌの事を目の敵にしていたんだよ。それなのに、急に仲良くなりたいだなんて。絶対何か企んでいるに違いない」
ギュッと私を抱きしめ、そう呟くアルフレッド様。
「レイチェル様はそんな悪い人には見えませんでしたわ。皆の前で謝罪も受けましたし。それに私も、レイチェル様と仲良くなりたいと思っておりますの」
レイチェル様はきっと、いっちゃんと何らかの繋がりがある。そう私は踏んでいるのだ。何とかレイチェル様と2人で話をしたい。そう思っている。
「クリスティーヌは人が良すぎるんだよ。君は知らないだろうが、あの女、事あるごとに凄い形相で君を睨んでいた。時には、クリスティーヌの悪い噂を流していたこともあるのだよ。そんな女を、僕は絶対に信用できないと思っている!もしかしたらあのお菓子に毒を仕込んで、クリスティーヌを亡き者にしようと考えるかもしれない」
「さすがにお菓子に毒を入れたりはしないと思いますわ。私はこれでも公爵令嬢です。公爵令嬢を毒殺しようとすれば、極刑は免れませんし」
「確かにそうだが、もしかしたらあの女。カリーナ殿下の手下かもしれないよ。十分注意するんだ。いいね。これからはあの女の持ってきたものを、ホイホイ食べるのは控えて欲しい。君にもしものことがあったら、僕は…」
「分かりましたわ、ですから、そんな悲しそうな顔をしないで下さい」
レイチェル様はそんな人ではない、そう言いたいが、アルフレッド様の辛そうな顔を見たら、これ以上何も言えない。
「さあ、屋敷に着いたよ。僕はこれから、義父上と出掛けてくるけれど、どうかクリスティーヌは屋敷で過ごして欲しい」
「ええ、分かっていますわ。アルフレッド様、どうかお気をつけて」
着替えを済ませ、お父様と一緒に馬車に乗り込むアルフレッド様を見送ると、部屋に戻ってきた。アルフレッド様はああ言っていたけれど、私はどうしてもレイチェル様が気になって仕方がない。何とかレイチェル様と連絡を取りたいのだけど。でも…
アルフレッド様のあの悲しそうな顔を見たら、とてもレイチェル様に会いに行けない。アルフレッド様を悲しませるだなんて、絶対に許される事ではない。それでも、レイチェル様の件も気になるし…
1人悶々としていると
「お嬢様、レイチェル・ディスティーヌ公爵令嬢様がいらっしゃっているのですが…」
「えっ、レイチェル様が?すぐに通して頂戴!」
まさかレイチェル様が会いに来てくださるだなんて。やはり彼女も、前世の記憶が…
スッと胸元についているブローチに目をやる。もしレイチェル様が前世の記憶があるとすれば、さすがにアルフレッド様に、レイチェル様との会話を聞かれる訳にはいかない。でも、アルフレッド様が不安に思うような事はしたくない。
どうしよう…
震える手で、ブローチに触れる。そして、スッとブローチを取り、引き出しにしまう。
アルフレッド様、ごめんなさい。でも、どうしてもレイチェル様とお話しがしたいのです。ブローチを取り、アルフレッド様に隠し事をするという事は、彼を裏切ると言う事。私はアルフレッド様の推し失格ね。
罪悪感が体中を支配する中、レイチェル様がいる部屋へと向かったのだった。
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