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第14話:マリアは俺が守る~ライアン視点~

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俺の名前はライアン・ディファースティン。ディファースティン侯爵家の嫡男で、下に2人弟がいる。そんな俺には、物心ついた時からずっと一緒にいる幼馴染がいる。名前はマリア。

親同士がものすごく仲が良かったため、兄妹の様に育った。俺は、ずっとマリアが大好きだった。親同士も、子供が生まれたらお互いの子供を結婚させようと話していたらしい。

その為、俺とマリアは普通に行けば結婚する予定だ。もちろん、親たちは強要するつもりはないとの事なので、どちらかに好きな人が出来たら、その話は無しとなっているらしい。

でも俺は、マリアが大好きだ。だから、マリア以外の女性と結婚するつもりはない。もしマリアと結婚できなければ、一生独身でいるつもりだ。

俺は子供の頃、マリアに

「大きくなったら俺たちは結婚するんだぞ。わかったか?」

と、言い続けてきた。ただマリアは

「結婚?そんなの、大きくならないと分からないわ」

といつも言っていた。本当にこいつは、俺のいう事を聞かないのだから!それでも俺の両親もマリアの両親も、俺とマリアの結婚は大賛成との事。

「マリアが特に結婚したい人がいなければ、15歳になったタイミングで2人を婚約させよう」

そう言ってくれていた。そんな幸せな日々を送っていた時、事件が起こったのだ。それは俺たちが5歳の時だった。

この日はマリアと一緒に街に出掛けていた時だった。なんと、マリアが男たちに連れ去られたのだ。

泣き叫ぶマリアを取り返そうと、必死に男たちの足に捕まったが、すぐに蹴り落されてしまった。幸いマリアの家の護衛騎士が後をつけ、犯人のアジトを見つけた事で、その日の夜までには騎士団によって解放され、犯人も捕まった。

何と犯人は、16歳の伯爵令息だったのだ。お茶会で見たマリアがあまりにも美しかったので、自分のものにしたいと思い、誘拐を企てたらしい。

もちろんその令息は伯爵家から勘当され、さらに犯罪者として収容施設に収監された。

マリアはすぐに助け出された事から、令息に何かをされることはなかったらしい。それでも誘拐された恐怖からか、マリアはその時の記憶がすっぽり抜けてしまった様だ。

ただ誘拐された恐怖心は覚えている様で、誘拐された翌日、熱を出してしまったマリア。さらに夜1人で寝られなくなったり、急に泣き出したりする。

俺はマリアが心配で、毎日マリアの家に通い、側にいた。俺が行くと、嬉しそうに駆け寄って来る。それでも時折怯え、震えだした時は、ギュッと抱きしめると少し落ち着く様だ。

恐怖に怯え、時には涙を流すマリアを見ていると、やり場のない怒りや自分の不甲斐なさを痛感する。あの時俺がもっとしっかりしていれば、俺にマリアを守れる強さがあれば…

そう事を考える様になった。

そんな日々を送っていた時だった。

「ねえ、ライアン、私ね、誘拐されていた時の事はあまり覚えていないの。でも、私を助けてくれた騎士様の事は覚えているわ。次々と男たちを縛り上げていったのよ。それでね、泣きじゃくる私を抱きかかえて“もう大丈夫だよ、よく頑張ったね”って、頭を撫でてくれたの。私、将来は強くて優しい騎士様と結婚するわ」

そう言って嬉しそうに笑ったのだ。強くて優しい騎士か…

マリアを助けたのは、俺ではなく騎士団員だった。その事実は知っていたが、改めてマリアの口からきくと、言いようのない嫉妬心と、これからは俺がマリアを守りたいという強い思いで支配された。

マリアを守るためには、まずは強くならないといけない。騎士団員の様に…

早速父上に騎士団に入りたい旨を伝えた。当時俺はまだ5歳、通常7歳から騎士団に入団するのが一般的だ。その為両親からは反対されたが“マリアを守れる強い男になりたいんだ”と言う俺の強い要望に折れた父上が、騎士団に話しを付けてくれたのだ。

そして念願かない、5歳で騎士団に入団した。ただ俺はまだ5歳、他の騎士たちよりかなり小さかった。その為、年上の団員から酷い扱いを受ける事もあった。

理不尽な暴力を受ける事もあったが、それでもマリアを守れる強い男になりたくて、必死に訓練を積んだ。そのお陰か、俺はぐんぐん頭角を現し、13歳の時点で、騎士団期待の星と言われるようになった。

まだ年齢的に副騎士団長などにはなれないが、16歳になったら、試験を受けてみないかと既に声を掛けてもらっている。


そして俺も14歳になり、ついに夜会デビューの日を迎えた。なぜか令嬢たちに人気がある俺は、一気に囲まれた。

ただ俺は、ファーストダンスはマリアと踊ると心に決めている。その為、令嬢たちに

「俺は誰とも踊るつもりはない!」

と、はっきりと告げた。令嬢たちになんと思われようと知ったこっちゃない。俺はマリアさえいればいいのだから…
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