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第34話:怒り狂うジャクソン様

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男たちが私の服を無理やり脱がせようとした時だった。

ドン!ドン!ドン!
誰かがドアを体当たりしている音が聞こえる。まさか…

そして次の瞬間

バァァァン
ドアがけ破られ、中に入って来たのはジャクソン様だ。

「ティアラ!大丈夫か?」

近くにいた男たちを蹴倒し、私の口に付けられていた布をほどいてくれた。ジャクソン様の顔を見た瞬間、安ど感からか

「ジャクソン様!」

必死にジャクソン様にすり寄った。そして、瞳から次から次へと涙が溢れ出す。本当は抱き着きたいが、拘束されている為、抱き着けない。

「ティアラ、服がはだけている…まさか貴様ら…俺の可愛いティアラに触れたのか?」

一瞬にして表情が変わったジャクソン様。えっ?待って、今明らかに裏の顔よね。でも、ここには私以外にも人がいる。現にこの部屋の入り口には、護衛騎士やメイドたちも集まってきている。そんな事はお構いなしのジャクソン様。

「貴様ら!許さん!」

物凄い勢いで男たちに殴りかかっていく。さすがにあんなにもガタイのいい男4人には勝てないのでは、そう思ったのだが…物凄いスピードでなぎ倒していく。さらに怒りが収まらないのか、男たちをボコボコに殴り始めた。さすがにもう許してあげたら…

そう思うほど、ボコボコにされている。男たちも泣きながら必死に

「どうか許してぐだざい…」

そう訴えているが、無情にも殴られ続けている。ついに動かなくなった男たちから離れると、今度はミディアム王女の方にやって来た。

返り血を浴びたのか、顔や髪、服にも血が付いている。さらに目が座っているジャクソン様。はっきり言って、裏の顔を知っている私ですら恐怖でしかない。

もちろん、裏の顔なんて知らないミディアム王女は、
「ひぃぃぃ」
と、悲鳴を上げて震えている。そんなミディアム王女の胸ぐらをつかむと

「貴様、よくも俺の可愛いティアラに手を出したな。ただで済むと思うなよ!」

物凄い勢いで怒鳴りつけるジャクソン様。それが物凄く怖かったのか

「ごめんなさい、許してください!どうか殺さないで!」

泣きながら謝るミディアム王女。よほど怖かったのか、失禁までしている。

その時だった。

「ジャクソン、ティアラちゃんは無事なの?」

「ティアラ嬢、大丈夫か?」

やって来たのは、陛下と王妃様、さらにカラッサ王国の王妃様、その隣には初めて見る男女も立っていた。

「ティアラ嬢、大丈夫?ごめんなさい、あなたから手紙を貰った時、すぐにこの国に駆けつければよかったわね。怖かったでしょう?可哀そうに。こんな拘束器具まで付けて。ミディアム、そんなところに座り込んでいないで、今すぐこの拘束器具を外しなさい!」

放心状態のミディアム王女に向かって怒鳴るカラッサ王国の王妃様。そう、私は彼女に、ミディアム王女の事を手紙で報告し、助けを求めたのだ。実はカラッサ王国にいた頃、王妃様から“もしミディアムに酷い事をされたら、すぐに報告して。助けに行くから”そう言われていたのだ。


「お兄様、見たでしょう?あなたがミディアムを甘やかしたから、他国に多大なる迷惑をかけて。それも他国の令嬢にこんなひどい事をするなんて!本当にお兄様は一体何をしていたの?」

カラッサ王国の王妃様が、近くにいた男性を怒鳴りつけている。ん?待てよ、確か今お兄様と言ったわよね。ミディアム王女が王妃様の姪という事は、この男性は…

「ティアラ嬢と言ったね。娘が本当に申し訳ない事をした。どうやら私は、娘の育て方を間違えた様だ。オーレィア王国の国王陛下、王妃殿下、それからジャクソン殿下、本当に娘が大変失礼した。今後の貿易の件だが、オーレィア王国の希望通りでさせてもらうよ。それからミディアム、お前はなんて事をしてくれたんだ。ほら、とにかく国に帰るぞ。さっさと立て!」

放心状態のミディアム王女を無理やり立たせ、頭を下げて去っていくミューラス王国の国王陛下と王妃様。

「私もミディアムをきちんとしつけ直すか気になるから、このままミューラス王国に付いていくわ。ティアラ嬢、本当に今回の件はごめんなさいね。またカラッサ王国にも、ぜひ遊びに来て」

そう言って慌ただしく帰っていったカラッサ王国の王妃様。なんだか一気に嵐が去ったような、何とも言えない空気が流れる。そんな空気を破ったのはジャクソン様だ。

「ティアラ、大丈夫か?あれだけ部屋に居ろと言ったのに。どうして俺のいう事を聞けないんだ!このバカ!とにかく、部屋に戻るぞ」

そう言うと、私を抱きかかえ歩き始めた。でも、いいのかしら?口調が裏のままになっているけれど。まあ、いいか。それにしてもジャクソン様の腕の中って、こんなにも温かくて落ち着く場所だったかしら?

何度も抱っこされているはずなのに、今日はやけに落ち着く。でも…なぜか手に付けられた拘束器具は取り外してもらえないのね…


※次回最終話です。
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