上 下
19 / 35

第19話:お昼休みまで奪われました

しおりを挟む
夜会翌日、いつもの様にテオと一緒に馬車に乗り込み、学院を目指す。

「ティアラ、昨日の夜会、随分殿下と仲睦まじかったね。昨日の様子を見て、周りは皆ティアラと殿下が近々婚約する事は確定だろうと言っているよ。それで、いつ婚約するの?」

物凄い笑顔でそう言ったテオ。ちょっと、どうして私があの鬼畜と婚約しないといけないのよ!そう言いたいが、ここは冷静に対応しないとね。

「そうね、色々と事情があってね。まだしばらく婚約はしないわ」

「そうなのかい?まさか僕が病気をして伯爵家が一時借金で首が回らなくなったからかい?そのお金も殿下に立て替えてもらっているし…それで陛下や王妃様が怒っているのかい?」

物凄く心配そうな顔で聞いてくるテオ。

「それだけは絶対ないわ!そもそも陛下も王妃様も王太子夫妻も、私の事を物凄く可愛がってくれているのよ。もし嫌われていたら、あんな風に王族と一緒に入場なんてする訳ないでしょう」

「確かにティアラの言う通りだね。まあ、王族の婚約となると、色々と面倒なのかもしれないね」

何とか納得してくれたテオ。そもそも私たちは、元々契約で結ばれた恋人同士なのだ。さっさと隣国の王女に諦めてもらって、お役目御免したいものだわ。

そんな話をしているうちに、学院に着いた。いつもの様に私を待っているジャクソン様。でも…

「僕の可愛いティアラ。会いたかったよ」

そう言うと、急に抱き着いてきたのだ。何なの、こいつは!あっ、そうだった。今日から王女様対策でラブラブを演じるのだったわね。ここは私も抱き着かないといけないのか…

「おはようございます。ジャクソン様。私も…会いたかったですわ」

途中詰まってしまったが、必死に演技をした。

「さあ、教室に行こう。そうだ、今日はお昼も一緒に生徒会長室で食べようね。これからは極力ずっと一緒に居よう」

えっ…お昼も…それは嫌だ。放課後だけでも辛いのに、私のお昼休みまでこの鬼畜の相手をしないといけないなんて…

「どうしたんだい?ティアラ。何か問題でもあったかい?」

にっこり笑っているが、目が明らかに笑っていない。“お前、何不満そうな顔をしているんだ。俺に逆らうつもりか?”と、きっとそう言っているのだろう。これはまずい…

「いいえ、とんでもありませんわ。お昼休みまでジャクソン様と過ごせるなんて、幸せ以外何物でもありません」

心にもない事を口走る。

「それはよかった。それじゃあ、お昼休みになったら教室に迎えに行くから、待っていてくれ」

私を教室まで送り届け、そう言って去っていったジャクソン様。あぁ…私のお昼休みが…

「ティアラ、さっきの話、聞いたよ。よかったね。お昼休みまで殿下と一緒に居られるなんて。それだけ殿下がティアラを大切に思ってくれているという事だよ。リリアナの事は心配しないで。こっちも婚約者同士で仲良く食べるから」

「そうよ、ティアラ。私たちの事は気にしないでね」

満面の笑みでそう言ったテオとリリアナ。悪かったわね、いつも邪魔者がいて。あぁ、それにしても、お昼休みまであの鬼畜の相手をさせられるなんて…苦痛でしかない。でも後4ヶ月の我慢だ。頑張れ、私!

そして迎えた昼休み。

「ティアラ、迎えに来たよ。さあ、行こうか」

王子スマイルで私に手を差し出すジャクソン様。あぁ、悪魔が地獄へと私を連れて行こうとしているわ…物凄く嫌だが、仕方なく手を取る。教室内から温かな視線を送られながら、廊下へと出た。私もあの教室に居たかったわ…

ニコニコしている王子に連れられ、生徒会長室に入る。入った途端

「なんだ、お前のあの態度は!名残惜しそうに教室を見つめやがって。まるで俺と一緒にいるのが嫌みたいだろうが」

嫌みたいではなくて、嫌なのだから仕方がない。どうやら私は、気持ちが顔に出てしまうタイプの様だ。

「とにかくお前は俺の恋人だ!もっと嬉しそうな顔をしろ。いいな、分かったな」

「はい、分かりました」

出来るかどうかわからないが、一応理解したと言う意味で返事をする。

「わかればいい。それじゃあ、まずは食事だ。お茶を入れろ」

ソファーにドカリと座るジャクソン様。急いで給湯室に向かい、お茶を入れ机の上に置く。

「よし、それじゃあ、食べさせろ」

やっぱりね…

王宮の料理人が作ったお弁当を広げた。さすが王族が食べるお弁当、かなり豪華だ。とにかく早くジャクソン様に食べさせて、教室に戻ろう。早速料理を口に入れていく。もちろん、間にお茶を挟むことも忘れない。

半分くらい食べ終わったところで
「次は俺がお前に食べさせてやる。早く弁当を広げろ」
そう言ったジャクソン様。

「私は自分で食べるので、大丈夫ですわ」

そう答えたのだが
「俺に口答えする気か?とにかく、すぐに弁当を出せ」

そう言って怒りだしたので、仕方なくお弁当を広げた。早速私の口に食事を放り込むジャクソン様。その後は、お互い食べさせあいながら、全てを食べ終わった。よし、お弁当も食べたし、もう私の任務は完了だろう。

「それでは私はこれで」

そう言って立ちあがった瞬間

バチィーン

「痛い」

今日は珍しく、素手でお尻を叩かれた。

「おい、誰が勝手に戻っていいと言った!今からスキンシップの練習をするぞ」

そう言うと、ニヤリと笑ったジャクソン様。なんだか嫌な予感しかしないのだが…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

【R18】出来損ないの魔女なので殿下の溺愛はお断りしたいのですが!? 気づいたら女子力高めな俺様王子の寵姫の座に収まっていました

深石千尋
恋愛
 バーベナはエアネルス王国の三大公爵グロー家の娘にもかかわらず、生まれながらに魔女としての資質が低く、家族や使用人たちから『出来損ない』と呼ばれ虐げられる毎日を送っていた。  そんな中成人を迎えたある日、王族に匹敵するほどの魔力が覚醒してしまう。  今さらみんなから認められたいと思わないバーベナは、自由な外国暮らしを夢見て能力を隠すことを決意する。  ところが、ひょんなことから立太子を間近に控えたディアルムド王子にその力がバレて―― 「手短に言いましょう。俺の妃になってください」  なんと求婚される事態に発展!! 断っても断ってもディアルムドのアタックは止まらない。  おまけに偉そうな王子様の、なぜか女子力高めなアプローチにバーベナのドキドキも止まらない!?  やむにやまれぬ事情から条件つきで求婚を受け入れるバーベナだが、結婚は形だけにとどまらず――!?  ただの契約妃のつもりでいた、自分に自信のないチートな女の子 × ハナから別れるつもりなんてない、女子力高めな俺様王子 ──────────────────── ○Rシーンには※マークあり ○他サイトでも公開中 ────────────────────

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福

ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡 〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。 完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗 ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️ ※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち

ぺきぺき
恋愛
Side A:エリーは、代々海馬を使役しブルテン国が誇る海軍を率いるアーチボルト侯爵家の末娘だった。兄たちが続々と海馬を使役する中、エリーが相棒にしたのは白い毛のジャーマン・スピッツ…つまりは犬だった。 Side B:エリーは貧乏なロンズデール伯爵家の長女として、弟妹達のために学園には通わずに働いて家を守っていた。17歳になったある日、ブルテン国で最も権力を持つオルグレン公爵家の令息が「妻になってほしい」とエリーを訪ねてきた。 ーーーー 章ごとにエリーAとエリーBの話が進みます。 ヒーローとの恋愛展開は最後の最後まで見当たらないですが、ヒーロー候補たちは途中でじゃんじゃん出すので誰になるのか楽しみにしてください。 スピンオフ作品として『理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました』があります。 全6章+エピローグ 完結まで執筆済み。 一日二話更新。第三章から一日四話更新。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...