上 下
14 / 26

第14話:幸せすぎて怖いです

しおりを挟む
沢山の人に祝福され、2人で頬を赤くする。

「そろそろホテルに戻ろうか」

「そうですわね」

まだ温かな拍手が送られる中、周りの人に挨拶をして2人で手を繋いで丘を下りる。行きも手を繋いできたのに、気持ちが通じ合ったと思うとなんだか恥ずかしいわね。アダム様も同じ事を思ったのか、無言で歩いている。丘を下り馬車に乗ってホテル近くまで向かう。

「フローラ、少し冷えて来たね。風邪を引くと大変だ、こっちにおいで」

アダム様に引き寄せられ、ギューッと抱きしめられた。アダム様の温もりが、ダイレクトに感じられる。とても幸せなはずなのに…

今回の馬車は相乗り。丘で私たちの様子を見ていた人たちもたくさん乗っており、周りから生暖かい視線が送られる。さすがに恥ずかしいわ…真っ赤な顔のまま馬車に揺られ、目的地へと到着した。

「2人共幸せにな!」

「おめでとう!」

改めて皆から祝福の言葉を頂いた。なんだか恥ずかしいわ。その後近くのお店で食事を済ませ、ホテルに戻って来た。部屋に入った瞬間、後ろからアダム様に抱きしめられる。

「フローラ、俺の気持ちに答えてくれてありがとう。まさかフローラが、俺の気持ちに答えてくれるなんて思わなかったよ。これからは、ずっと一緒にいられるね」

「はい、ずっと一緒です!」

アダム様の方を見て笑顔で答えた。これからはずっとアダム様と一緒にいられる。そう思ったら嬉しくてたまらない。私はこれからこの人と、新しい家庭を築いて行く。お兄様やお姉様が出来なかった事を!2人の分まで必ず幸せになって見せる!

そう心に誓った。その時だった。アダム様の顔がゆっくり近づいてきて、唇に柔らかくて温かいものが…

「フローラ、ごめん。気持ちが抑えられなくてつい…」

「大丈夫ですわ。私もアダム様に触れられるのは、嬉しいので…」

って、私は何を言っているのかしら!これじゃあまるで私から求めているみたいじゃない!恥ずかしくて、つい俯いてしまった。

「フローラ!ありがとう。春になったら、ささやかながら2人の結婚式を挙げよう。もちろん、街の人も呼んで!」

「まあ、結婚式ですか!素敵ですね。それなら早速ドレスを縫わないと!それからブーケも作らないといけませんわ!それから他には…」

「フローラは気が早いね。でもよく考えると、あまり時間がないな!急いで準備しないとね」

そう言って嬉しそうに笑ったアダム様。早速帰ったら、ドレスの生地を買いに行かないと!そうだわ、明日王都で生地を買って帰ろう。王都の方が種類もたくさんあるものね!

「アダム様、明日帰る前に少し王都で買い物をしてもよろしいですか?せっかくなら、ウエディングドレスの生地を買いたいので」

「ああ、構わないよ!必要なものを色々と買って行くといい!そう簡単に来られる場所ではないからね」

確かにそう簡単に来られないものね!よし、明日は色々と見て回ろう!その為には、今日は早く寝ないとね。

眠る支度をして、ベッドに入った。すると、なぜか私のベッドに入りこんで来るアダム様。

「フローラ、一緒に寝よう。結婚式を挙げるまでは手を出さないから、安心して!こうやってフローラを抱きしめて眠るのが夢だったんだ」

そう言って私をギューッと抱きしめてくれた。誰かに抱きしめられて眠るのは、いつぶりだろう。その温もりが気持ちよくて、あっという間に眠ってしまったのであった。


翌日
早速お店を回り、ドレスの生地やブーケに使うレースなどを購入した。さすが王都、私たちが住んでいる街とは比べ物にならない程、種類が豊富だ。他にも、街の人へのお土産も買った。

そして、沢山の荷物を持って馬車に乗り込んだ。もう王都ともさよならなのね。なんだか寂しいわ…

そんな私に気が付いたのか

「片道1日あれば来られるから、また来よう!」

そう言ってくれたアダム様。

「はい、また必ず来ましょうね!それから私を王都に連れて来て下さり、ありがとうございました。アダム様が連れて来てくれなければ、王都やこの国の素晴らしさを知る事は一生なかったと思います」

アダム様に出会わなければ、きっと一生来る事の無かった王都。今回来られて本当に良かった。

「フローラは大げさだね。でも、喜んでもらえて良かったよ」

嬉しそうに笑ったアダム様を見たら、私もなんだか嬉しくなった。ああ、なんて幸せなのかしら…

6歳で全てを奪われ、今まで必死に生きて来た。もちろんカミラさんが側にいてくれたので、そこまで寂しくはなかった。だけど心のどこかで、ずっと孤独を抱えて生きて来た。でも今は、大好きなアダム様と一緒だ。

正直幸せすぎて怖い…
6歳の誕生日の時の様に、急に誰かに幸せを奪われたりはしないかしら…
ついそんな事を考えてしまう。

「そんなに不安そうな顔をして、どうしたんだい?」

心配そうに顔を覗き込むアダム様。私ったら、ついネガティブな事を考えてしまったわ。大丈夫よ、散々辛い思いをして来たのですもの!きっとこれからは、幸せになれるはず!

「何でもありませんわ!それよりも、今日はどの街に泊まるのですか?」

「そうだね、行きとは別の街に泊まろうと思っているよ。その方が楽しいだろう?」

「まあ、別の街ですか!それは楽しみです!」

馬車に揺られながら、2人仲良く肩を寄せ合い、今日泊まる予定の街を相談するのであった。


~あとがき~
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
第1話を除いて、ほのぼのした話が続いて参りましたが、次話からシリアスな内容になって行く予定です。
引き続き、よろしくお願いいたしますm(__)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

愛なんてどこにもないと知っている

紫楼
恋愛
 私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。  相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。  白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。  結局は追い出されて、家に帰された。  両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。  一年もしないうちに再婚を命じられた。  彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。  私は何も期待できないことを知っている。  彼は私を愛さない。 主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。  作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。  誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。 他サイトにも載せています。

虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても

千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。

【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。

海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】 クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。 しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。 失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが―― これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。 ※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました! ※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

【完結】伯爵令嬢の格差婚約のお相手は、王太子殿下でした ~王太子と伯爵令嬢の、とある格差婚約の裏事情~

瀬里
恋愛
【HOTランキング7位ありがとうございます!】  ここ最近、ティント王国では「婚約破棄」前提の「格差婚約」が流行っている。  爵位に差がある家同士で結ばれ、正式な婚約者が決まるまでの期間、仮の婚約者を立てるという格差婚約は、破棄された令嬢には明るくない未来をもたらしていた。  伯爵令嬢であるサリアは、高すぎず低すぎない爵位と、背後で睨みをきかせる公爵家の伯父や優しい父に守られそんな風潮と自分とは縁がないものだと思っていた。  まさか、我が家に格差婚約を申し渡せるたった一つの家門――「王家」が婚約を申し込んでくるなど、思いもしなかったのだ。  婚約破棄された令嬢の未来は明るくはないが、この格差婚約で、サリアは、絶望よりもむしろ期待に胸を膨らませることとなる。なぜなら婚約破棄後であれば、許されるかもしれないのだ。  ――「結婚をしない」という選択肢が。  格差婚約において一番大切なことは、周りには格差婚約だと悟らせない事。  努力家で優しい王太子殿下のために、二年後の婚約破棄を見据えて「お互いを想い合う婚約者」のお役目をはたすべく努力をするサリアだが、現実はそう甘くなくて――。  他のサイトでも公開してます。全12話です。

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~

瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)  ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。  3歳年下のティーノ様だ。  本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。  行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。  なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。  もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。  そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。  全7話の短編です 完結確約です。

処理中です...