助けた青年は私から全てを奪った隣国の王族でした

Karamimi

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第10話:この幸せがずっと続けばいいのに~アダム視点~

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家に戻って来た後は、手際よく食事の準備をするフローラ。俺のリクエスト通り、チキンの丸焼きもしっかり準備してくれている。

相変わらずフローラの料理は美味しいな!わざわざ俺の為にこうやって快気祝いをやってくれるフローラを、これからはしっかりと守っていきたい。正直今の俺には、国に戻ると言う気持ちは微塵もない。

ハリソンが国王になるならなればいい。その方が母上もダリアも喜ぶだろう。今はもう、あの2人にどう思われようと関係ない。俺はこの国で、ただのアダムとして生きていきたい。そう強く思った。

翌日
朝早く起きて薪割りを行う。今までは怪我で木を切る事が出来なかった為、枝を薪代わりに集めていたが、今はもう完全復活した。斧を使って木を切り倒し、薪にしていく。有難い事に、昔の教育係が木の切り方も教えてくれたのだ。

あの時は木彫りや木の切り方など覚えても、何の役にも立たないのに!そう思っていたが、まさかこんなところで役に立つなんてな。

「王太子殿下、上に立つ者は下の者の気持ちを理解する必要があるのです。平民はこうやって木を切って薪を作り、暖を取るのですよ」

そう言って俺に平民の生活を学ばせたのだ。他にも狩りや動物のさばき方、魚釣りや家の修繕方法まで教えてくれた。でもそんな教育係を疎ましく思った母上が、教育係を首にしたんだよな…

そんな過去を思い出しながら、薪割りを行っていく。太い木を薪にしたから、かなりの量が出来た。これだけあればしばらくは持つだろう。

ひと仕事を終え家の中に入ると、フローラが朝食を作って待っていてくれた。温かいスープを準備してくれたフローラ。正直薪割をしていたから体はポカポカなのだが、それでも美味しくスープを頂いた。

食事の途中、急に真剣な顔をして話しかけて来たフローラに、今後どうするか尋ねられた。もちろん、俺はこの家から出て行くつもりなんて微塵もない。その事を伝えると、それはそれは嬉しそうな顔で笑ったフローラ。どうやらフローラも、俺がここに居ると嬉しい様だ!調子に乗った俺は、来週誕生日であることを告げた。

すると、俺の誕生日を盛大に祝おうと言ってくれたのだ。それなら俺もフローラの誕生にを祝おう!そう思ったのだが…

誕生日はいい思い出が無いからと断られてしまった。その瞳には、明らかに悲しみがにじみ出ていた。時折見せる、フローラの悲しい瞳。彼女は過去に一体どんな酷い目に合ったのだろう…

今の俺には知る由もない。でもいつか、その悲しみを癒してあげられたら…彼女が俺の傷を癒してくれたように…


食後は木彫りに精を出す。とにかく沢山作って、少しでもフローラに楽をさせてあげたい。そんな思いから、集中して作る。木彫りがひと段落したところで、フローラの気配がない事に気が付いた。

「フローラ。どこにいるんだい?」

家中を探したが、姿が見えない!一体どこに行ったんだ!急いで外に出る。その時だった。フローラが沢山の荷物を持って帰って来た。

急いで彼女に駆け寄り心配していた事を伝えると、キョトンとした顔をして、街に行っていたと言ったのだ!クソ!もう二度と1人で街には行かせないつもりだったのに!

感情が抑えられなくなり、ついフローラに文句を言ってしまった。正直大人げないと思ったが、どうしても我慢できなかったのだ。とにかく二度と1人で街に行かない事を約束させた。

また勝手にフローラがどこかに行ってしまうのではないかと心配な俺は、その後フローラの後を付いて歩く。どうやら毛糸を買って来たようで、器用に編み始めた。

また新しい仕事でも引き受けて来たのかな?正直これ以上仕事を頑張ってもらわなくても、俺が稼ぐからいいのに…そう思ったが、本人が楽しそうに編んでいるので、それ以上は言えなかった。


でもその日から、夜遅くまで編み物をしているフローラ。見かねて

「俺の木彫りの収入で生活できるはずだ。だからあまり無理をしないで欲しい!」

そう伝えたのだが、好きでやっているから!と言って、編み続けている。好きでも限度がある!こんなに連日夜遅くまで編んでいるなんて、体調を崩してしまわないか心配でたまらなかった。

そんな中迎えた俺の誕生日。
朝から嬉しそうに準備をしているフローラ。手作りの飾りつけも嬉しそうに飾って行く。そしていよいよパーティースタートだ。王宮のパーティーに比べれば、質素かもしれない。でも、何よりフローラが一生懸命俺の為に準備してくれた事が、嬉しくてたまらない。

今まで生きてきた中で、どの誕生日パーティーよりも素晴らしくて、最高のパーティーだ!さらに俺の為にプレゼントまで準備してくれたらしい。早速包み紙を開けると、そこに入っていたのは…

毎晩フローラが遅くまで編んでいたマフラーと手袋、そして帽子だ!そうか、フローラは俺の為に夜遅くまで頑張っていたのか…今まで抑えていた感情がついに爆発してしまい、フローラを抱きしめた。温かくて柔らかい、そして腕の中にすっぽりと収まるほど小さな体。

こんな小さな体で、俺の手当てを一生懸命していてくれたんだな。そう思ったら、再び胸の奥が温かいもので包まれた。とにかくこの子だけは何が何でも幸せにしたい!そう強く思った。


翌日から、出来る限りフローラの側で過ごす様にした。1秒だって離れたくないのだ。フローラに付き歩く俺に

「どうしたのですか?アダム様。まるで親鳥に付いて来るひな鳥の様ですね」

そう言ってクスクス笑っていた。それでも嫌がる素振りを見せないフローラに

「フローラは俺が側にいる事をどう思う?」

そんな質問をした。

「そうですね。カミラさんが亡くなってからずっと1人で寂しい思いをしていましたが、アダム様がいらしてから、寂しくなくなりました。こんな事を言うと失礼かとは思いますが、アダム様はもう私にとって家族の様な存在になっておりますので…」

少し恥ずかしそうにそう言ったフローラ。家族か…それは喜んでいいのか?でもフローラにとって俺は、大切な存在なのは間違いない様だ!よし、もっとフローラに俺の事を異性として認識してもらえる様に、頑張ろう!

この先も、ずっとずっとフローラと一緒にいられるように…
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