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第48話:どうしてお父様とお兄様が…
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泣き叫ぶお母様の元に急いで駆け寄り、お母様を抱きしめた。
「お母様、しっかりしてください。お父様がそんな事をするはずがないですわ。きっと何かの間違いです。とにかくお兄様の元に…」
「お義母様、ルーナちゃん、大変なの。ロイドが…ロイドが毒物栽培及び販売の容疑で連れていかれてしまったの…」
泣きながらやって来たのは、お義姉様だ。どうやらお兄様も連れていかれたらしい。
「お義姉様、大丈夫ですわ。きっと何かの間違いです。とにかく、私たちはお父様とお兄様を信じましょう」
その時だった。
「毒物栽培に関する資料を押収した。さらに売買の資料も発見したぞ」
そう言って次々と書類を運び出していく騎士たち。
「そんな…」
「お母様、しっかりしてください」
その場で意識を飛ばしてしまったお母様を、使用人たちが部屋へと運んでくれた。お義姉様も声をあげて泣いている。
「ルーナちゃん、私達、これからどうなるのかしら?毒物の栽培は重罪よ。きっとこのままいけば、お義父様もロイドも極刑は免れないわ。侯爵家も取り潰される。私達もきっと、ただでは済まされないわ。国外追放か、もしかしたら極刑なんて事も有りうる。せめてロードだけは…」
「お義姉様、気を確かに持って下さい。まだお父様とお兄様が有罪になった訳ではないのです」
「これだけ証拠が押収されていくのよ!いくら何でも、もう有罪は確定よ!」
珍しく取り乱すお義姉様。そんなお義姉様を見たロードも、泣き出してしまった。
「ロード、大丈夫よ。大丈夫だから泣かないで!」
泣きじゃくるロードを必死に宥め、お義姉様の背中を優しくさする。お姉様の言った通り、お父様もお兄様も、極刑は免れないだろう。でも、お父様とお兄様がこんな事をするなんて思えない。もしかして…
ついそんな事を考えてしまう。
その時だった。
「ルーナ!大丈夫かい?」
血相を変えてやって来たのはエヴァン様だ。
「エヴァン様、父と兄が…」
「ああ、聞いたよ。ごめんね、もう君を悲しませないと誓ったのに、また悲しませてしまったね」
そう言って抱きしめてくれるエヴァン様。今まで張りつめていた糸がプツンと切れ、エヴァン様の腕の中で声をあげて泣いた。私の鳴き声を聞いたロードが、さらに大きな声で泣き始めた。すぐになだめないといけないのに、エヴァン様の腕の中が落ち着きすぎて、ロードをなだめる事が出来ない。
そんな私を優しく抱きしめつつも、ロードをなだめるエヴァン様。その時だった。エヴァン様の執事が部屋に入って来たのだ。
「お坊ちゃま、やはりここに来ていたのですね。ルーナ様が心配なのは分かりますが、今は一刻も早く…」
「分かっている!ルーナ、君の父親と兄は必ず助け出すから、とにかくゆっくり休んでくれ。大丈夫だ、これ以上君を悲しませるようなことは絶対にさせない。おい、ルーナ達残された家族が酷い目に合わない様に、お前たちで守ってくれ。それじゃあ、僕はもう行かないと」
どこからともなく現れた騎士たちに声を掛けると、私を強く抱きしめ、執事と一緒にどこかに走って行ってしまった。
エヴァン様の姿が見えなくなった途端、何とも言えない不安に襲われた。エヴァン様は私たちの為に、動こうとしてくれている。でも、なんとかなるものかしら?
その後私たちは、1か所の部屋に集められ、厳重な警戒の中過ごすことになった。お義姉様とロードは泣き叫び、お母様は意識が戻らない。
ただエヴァン様が残してくれた騎士たちが、私たちを気に掛けてくれている。我が家はもう没落寸前だ。そんな我が家の為に、きっと今頃必死にエヴァン様は動いてくれているのだろう。
犯罪者を庇えば、エヴァン様の立場も危うくなるかもしれないのに…
このままお父様とお兄様が有罪になれば、きっともうエヴァン様と過ごすことはもうないだろう。
一度すれ違ってしまった事はあったけれど、でもあれ以来ずっと私の傍に寄り添ってくれていたエヴァン様と、もう二度と会えないかもしれない…
そう思ったら、胸が押しつぶされそうになった。思い返してみれば、子供の頃からずっとエヴァン様は私を守ってくれていた。彼が守ってくれるのが、当たり前すぎて気が付かなかった。
入学早々、ナタリー様に殴られそうになった時庇ってくれたのもエヴァン様だ、それ以降、ナタリー様が私に手を出さない様に、ずっと監視してくれていた。ナタリー様も私がエヴァン様の婚約者だったから、手を出しずらかったのだろう。
それに、無視されていた期間だって、もっと私が踏み込んで話をしていれば、違う結果になったかもしれない。私は心のどこかで、エヴァン様がいつか歩み寄ってくれるのではないかと待っていた。そう、私はいつも受け身だったのだ。自分で行動を起こそうともしなかったのに、一方的にエヴァン様を責め立てて…
婚約破棄した後も、エヴァン様はずっと寄り添ってくれた。今だって…
“時に過ちを許し、自分の気持ちに正直になる事も大切よ”
ミレー殿下に言われた言葉、今ならわかるわ。私、エヴァン様に裏切られた事が許せないと言う思いが強すぎて、きっと自分の気持ちに蓋をしていたのだ。
きっともう、エヴァン様が私を裏切る事はないとわかっていたのに、変に意地になって…
でも、今更こんな事に気が付いてももう遅い。
もし最後にエヴァン様に会えたら、きちんと謝ろう。そして、彼の幸せを願い、身を引こう。エヴァン様なら私だけでも匿おうとするだろう。でもそんな事をしたら、公爵家の存続も危ぶまれる。
これ以上エヴァン様に迷惑を掛けないために…
※次回、エヴァン視点です。
「お母様、しっかりしてください。お父様がそんな事をするはずがないですわ。きっと何かの間違いです。とにかくお兄様の元に…」
「お義母様、ルーナちゃん、大変なの。ロイドが…ロイドが毒物栽培及び販売の容疑で連れていかれてしまったの…」
泣きながらやって来たのは、お義姉様だ。どうやらお兄様も連れていかれたらしい。
「お義姉様、大丈夫ですわ。きっと何かの間違いです。とにかく、私たちはお父様とお兄様を信じましょう」
その時だった。
「毒物栽培に関する資料を押収した。さらに売買の資料も発見したぞ」
そう言って次々と書類を運び出していく騎士たち。
「そんな…」
「お母様、しっかりしてください」
その場で意識を飛ばしてしまったお母様を、使用人たちが部屋へと運んでくれた。お義姉様も声をあげて泣いている。
「ルーナちゃん、私達、これからどうなるのかしら?毒物の栽培は重罪よ。きっとこのままいけば、お義父様もロイドも極刑は免れないわ。侯爵家も取り潰される。私達もきっと、ただでは済まされないわ。国外追放か、もしかしたら極刑なんて事も有りうる。せめてロードだけは…」
「お義姉様、気を確かに持って下さい。まだお父様とお兄様が有罪になった訳ではないのです」
「これだけ証拠が押収されていくのよ!いくら何でも、もう有罪は確定よ!」
珍しく取り乱すお義姉様。そんなお義姉様を見たロードも、泣き出してしまった。
「ロード、大丈夫よ。大丈夫だから泣かないで!」
泣きじゃくるロードを必死に宥め、お義姉様の背中を優しくさする。お姉様の言った通り、お父様もお兄様も、極刑は免れないだろう。でも、お父様とお兄様がこんな事をするなんて思えない。もしかして…
ついそんな事を考えてしまう。
その時だった。
「ルーナ!大丈夫かい?」
血相を変えてやって来たのはエヴァン様だ。
「エヴァン様、父と兄が…」
「ああ、聞いたよ。ごめんね、もう君を悲しませないと誓ったのに、また悲しませてしまったね」
そう言って抱きしめてくれるエヴァン様。今まで張りつめていた糸がプツンと切れ、エヴァン様の腕の中で声をあげて泣いた。私の鳴き声を聞いたロードが、さらに大きな声で泣き始めた。すぐになだめないといけないのに、エヴァン様の腕の中が落ち着きすぎて、ロードをなだめる事が出来ない。
そんな私を優しく抱きしめつつも、ロードをなだめるエヴァン様。その時だった。エヴァン様の執事が部屋に入って来たのだ。
「お坊ちゃま、やはりここに来ていたのですね。ルーナ様が心配なのは分かりますが、今は一刻も早く…」
「分かっている!ルーナ、君の父親と兄は必ず助け出すから、とにかくゆっくり休んでくれ。大丈夫だ、これ以上君を悲しませるようなことは絶対にさせない。おい、ルーナ達残された家族が酷い目に合わない様に、お前たちで守ってくれ。それじゃあ、僕はもう行かないと」
どこからともなく現れた騎士たちに声を掛けると、私を強く抱きしめ、執事と一緒にどこかに走って行ってしまった。
エヴァン様の姿が見えなくなった途端、何とも言えない不安に襲われた。エヴァン様は私たちの為に、動こうとしてくれている。でも、なんとかなるものかしら?
その後私たちは、1か所の部屋に集められ、厳重な警戒の中過ごすことになった。お義姉様とロードは泣き叫び、お母様は意識が戻らない。
ただエヴァン様が残してくれた騎士たちが、私たちを気に掛けてくれている。我が家はもう没落寸前だ。そんな我が家の為に、きっと今頃必死にエヴァン様は動いてくれているのだろう。
犯罪者を庇えば、エヴァン様の立場も危うくなるかもしれないのに…
このままお父様とお兄様が有罪になれば、きっともうエヴァン様と過ごすことはもうないだろう。
一度すれ違ってしまった事はあったけれど、でもあれ以来ずっと私の傍に寄り添ってくれていたエヴァン様と、もう二度と会えないかもしれない…
そう思ったら、胸が押しつぶされそうになった。思い返してみれば、子供の頃からずっとエヴァン様は私を守ってくれていた。彼が守ってくれるのが、当たり前すぎて気が付かなかった。
入学早々、ナタリー様に殴られそうになった時庇ってくれたのもエヴァン様だ、それ以降、ナタリー様が私に手を出さない様に、ずっと監視してくれていた。ナタリー様も私がエヴァン様の婚約者だったから、手を出しずらかったのだろう。
それに、無視されていた期間だって、もっと私が踏み込んで話をしていれば、違う結果になったかもしれない。私は心のどこかで、エヴァン様がいつか歩み寄ってくれるのではないかと待っていた。そう、私はいつも受け身だったのだ。自分で行動を起こそうともしなかったのに、一方的にエヴァン様を責め立てて…
婚約破棄した後も、エヴァン様はずっと寄り添ってくれた。今だって…
“時に過ちを許し、自分の気持ちに正直になる事も大切よ”
ミレー殿下に言われた言葉、今ならわかるわ。私、エヴァン様に裏切られた事が許せないと言う思いが強すぎて、きっと自分の気持ちに蓋をしていたのだ。
きっともう、エヴァン様が私を裏切る事はないとわかっていたのに、変に意地になって…
でも、今更こんな事に気が付いてももう遅い。
もし最後にエヴァン様に会えたら、きちんと謝ろう。そして、彼の幸せを願い、身を引こう。エヴァン様なら私だけでも匿おうとするだろう。でもそんな事をしたら、公爵家の存続も危ぶまれる。
これ以上エヴァン様に迷惑を掛けないために…
※次回、エヴァン視点です。
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