上 下
110 / 124

第110話:友人たちに嫉妬しています?

しおりを挟む
楽しいお昼休みを過ごした後、午後の授業を受けた。そして放課後

「ルージュ、僕も今日は一緒に帰るよ。さあ、帰ろう」

私の元にやって来ると、すっと手を握って来たグレイソン様。

「でも、騎士団の稽古はよろしいのですか?グレイソン様、騎士団の稽古に力を入れていらっしゃるのでしょう?私は大丈夫ですので、どうか稽古に行ってください」

グレイソン様は、騎士団が大好きなのだ。私の事は気にしないで、目いっぱい稽古に励んでも欲しい。

「僕は別に、騎士団の稽古が大好きという訳ではないよ。今日はずっとルージュと一緒にいたんだ。それに義両親に、僕たちの気持ちも伝えたいしね。さあ、帰ろう」

「分かりましたわ。それじゃあ皆、また明日ね」

「ええ、また明日」

友人たちに挨拶をして、グレイソン様と一緒に教室を出た。

馬車に乗り込むと、なぜかグレイソン様の膝に座らされ、そのまま後ろから抱きしめられた。

「ルージュ、本当にごめん。今日セレーナ嬢たちの話を聞いて、僕がどれほど愚かな事をしたのか思い知ったよ。ルージュが僕を許し、受け入れてくれた事は、本当に奇跡なんだよね」

「友人たちがごめんなさい。でも、皆私の事を本当に大切に思ってくれていて。それであの様な行動をとったのだと思います。ですから…」

「分かっているよ。彼女たちはどんな時でも、ルージュの気持ちに寄り添い、ルージュを傷つける者は誰であろうと許さない!と言ったスタンスを取っているのだね。それだけルージュは、大切にされているのだ。ねえ、ルージュ。教えて欲しい事があるんだ。彼女たちは1度目の生の時、君が命を落としたと知って、どんな行動をしたのだい?」

グレイソン様が私を抱きしめる力が強くなるのを感じた。どうしてそんな事を聞くのだろう。

「ルージュ、頼む。殿下に聞いて知っているのだろう?彼女たちはどんな行動をとったのだい?」

「私が国外追放にされたときは、ちょうど貴族学院が長期休みに入っていた時でした。その為、皆王都にいなかったのです。ただ、私が国外追放の知らせを聞きつけ、4人は急いで王都に戻ってきたそうです。そして…」

私は4人がそれぞれ私の為に、必死に動いてくれた事、彼女たちの働きで、殿下は廃嫡され、幽閉。ヴァイオレットは公開処刑された事を話した。

「そうか…彼女たちの手で、ルージュの無念が晴らされたわけだな。やはり彼女たちは、1度目の生の時からずっと、ルージュに寄り添って生きて来たのか」

「皆がどんな気持ちで私の無念を晴らしてくれたか、考えただけで胸が張り裂けそうになりますわ。本当に私は、彼女たちには返しきれない程の恩があるのです」

だからこそ、今度の生では彼女たちに迷惑を掛けないように、生きようと思っていたのに。早速迷惑をかけ、多大な心配をさせてしまったのだ。

なんだか申し訳ない。

「あの4人は、どんな時でもルージュの味方なのだね。1度目の生でルージュと義両親を死に追いやり、2度目の生ではルージュと義両親を傷つけ、ルージュを国から追い出した僕とは大違いだ」

ん?一体何を言っているの?

「グレイソン様、その話はもう済んだはずですわ。これから挽回すればいいという話で、まとまったのではなかったですか?」

「そうだね、そういう話でまとまったね。でも僕は彼女たちを見ていると、無性に悔しくなるんだ。本来僕が、ルージュの一番の理解者でいたいはずなのに…僕なんかよりも、ずっとルージュを大切にしている4人には敵わないと思うと、悔しくてたまらない。ルージュ、既に僕はマイナスからのスタートだけれど、いつか必ず、あの4人を超えて見せる。だからどうか、僕を見捨てないで欲しい。クソ、どうすれば4人に勝てるんだ?いいや、弱気になってはダメだ。これからはあの4人よりも、もっともっとルージュと一緒にいよう。そうだ、あの4人なんかに、ルージュを渡してたまるか」

ちょっと待って、グレイソン様。一体何を言っているの?

「彼女たちは、あくまでも私の友人です。グレイソン様とは立場が違うと思いますわ。それにやはり、令嬢には令嬢にしかわからない気持ちというものがあるのです」

「それじゃあ僕には、ルージュの気持ちが一生分からないというのかい?僕はこんなにも、ルージュを愛しているのに」

なぜそうなるの?なんだか今日のグレイソン様、様子が変だわ。まるで4人に嫉妬している様ね。

「グレイソン様、とにかく落ち着いて下さい。そうですわね、グレイソン様にとってのアルフレッド様が、私にとっての4人なのです。そう考えると、あまり4人の事が気にならなくなりますよね」

そう、あくまでも4人は友人なのだ。どうか分かって欲しい。

「僕にとってのアルフレッドか…いいや、ルージュたちの絆は、もっと深い気がする…」

まだ不満そうなグレイソン様。なんだかめんどくさい事になっているわ。

ちょうどその時、馬車が停まったのだ。

「グレイソン様、馬車が停まりましたわ。訳の分からない嫉妬をしていないで、両親に私たちの事を話しましょう。ほら、行きますよ」


まだ不服そうなグレイソン様を連れ、急いで馬車から降りたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても

千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。

母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語 母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・? ※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

さこの
恋愛
恋がしたい。 ウィルフレッド殿下が言った… それではどうぞ、美しい恋をしてください。 婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました! 話の視点が回毎に変わることがあります。 緩い設定です。二十話程です。 本編+番外編の別視点

処理中です...