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第80話:グレイソン様の様子がおかしいです

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殿下から衝撃的な話を聞いた翌朝、グレイソン様が部屋の前で待っていてくれた。寝不足の様で、青白い顔をして、目の下にはうっすらクマが出来ている。

きっと私の事が心配で、眠れなかったのだろう。グレイソン様には悪い事をしてしまった。申し訳ない気持ちの一方、そこまで私の事を心配してくれる事に対して、嬉しいという何とも複雑な気持ちだ。

彼といると、穏やかな気持ちになれる。私が求めていたのは、グレイソン様だったのかもしれない。彼と共に、ずっと公爵家で暮したい。

私の心はもう固まったのだ。グレイソン様と共に、未来を歩んでいくと。ただ、どのタイミングで話そうかしら?

グレイソン様、喜んでくれるかしら?グレイソン様の喜んでくれる顔を想像したら、胸が熱くなる。

学院に着いてからも、グレイソン様はずっと私を気にかけてくれていた。殿下が私に近づこうとすると、それとなく遠ざけてくれている様だ。きっと私の為に、必死に動いてくれているのだろう。

私も早く殿下やヴァイオレット様の件に、ケリをつけないと。

「ルージュ、今日は随分と機嫌がいいわね。何かいい事があった?」

話しかけてきたのは、メアリーだ。隣には他の3人の姿も。

「皆!いつもありがとう」

4人にギュッと抱き着いた。あなた達が1度目の生の時、私の為に必死に動いてくれたのよね。あなた達はいつでもどんな時でも、私の味方でいてくれた。それが嬉しくてたまらないのだ。

「ルージュ、一体どうしたの?」

「そうよ、変なルージュね」

そう言って4人は笑っていた。こうやって皆で笑い合える日々が、ずっと続いて欲しい。彼女たちだって1度目の生の時、苦しみ悲しんだはずだ。

どんな事があっても泣かないセレーナが、泣きながら殿下に抗議をした事。人見知りのメアリーが自ら貴族の家を回り、署名を集めた事。男性が苦手なマリーヌが、自ら騎士団員に事情聴取した事。

情報収集に長けているとはいえ、私の無罪を証明し、さらにグレイソン様がヴァイオレットに陥れられていた証拠まで集めてきてくれたミシェル。きっと寝る間も惜しんで、必死に集めて来たのだろう。

彼女たちがどんな思いで、動いてくれたか…

考えただけで、胸が熱くなるのだ。もしも彼女たちの身に何かあったら、その時は私もこの身を挺して彼女たちを守りたい。

改めてそう思った。

もう二度と皆に苦労を掛けさせないためにも、何が何でも幸せにならないと!もちろん、グレイソン様と一緒に。

その日の放課後

昨日帰りが遅くてグレイソン様には心配をかけてしまった。その為、今日は早めに家へと帰って来たのだ。

そうだわ、今日早速グレイソン様に、私の気持ちを伝えよう。そう思い、グレイソン様の帰りを待つ。

「ルージュ、玄関の前をウロウロとして、どうしたの?」

お母様が不思議そうに問いかけて来た。

「昨日グレイソン様に、心配をかけたでしょう。だから今日は、私がグレイソン様をお出迎えしようと思って待っているの」

「グレイソンは騎士団の稽古に行っているだろうし、まだ当分帰ってこないわよ」

あきれ顔のお母様は無視して、玄関で待つ。すると、

「あの馬車、グレイソン様よ。今日は随分と帰りが早いのね」

急いで外に出て、馬車が停まるのを待つ。そして

「グレイソン様、お帰りなさい。今日は随分と早いのですね」

降りて来たグレイソン様に声をかける。でも…

「ルージュ、すまない。少し体調がよくないんだ。休ませてくれるかい?」

真っ青な顔のグレイソン様が、そう呟いたのだ。

「それは大変ですわ。やはり昨日の夜、あまり眠れなかったからですね。すぐに医者を呼びますわ。その前に、グレイソン様をお部屋まで連れて行って差し上げないと。お母様、すぐに医者を」

「グレイソン、大丈夫なの?すぐに医者を手配するわね」

「ルージュ、義母上も僕にはどうか構わないで下さい。お願いします」

そう言うと、物凄い速さでグレイソン様が屋敷に入って行ったのだ。一体どうしたのかしら?

「グレイソン様、一体どうしたのかしら?お母様、私、グレイソン様が心配ですので、様子を見てきますわ」

私も急いでグレイソン様の部屋へと向かった。部屋をノックするが、返答がない。

「グレイソン様、どうされたのですか?お部屋に入らせていただきますね」

そう伝え、部屋に入ろうとしたのだが。

「悪いが部屋には入らないでくれ。頼む、今は1人にしてくれ」

そう言われてしまったのだ。

「どうしたのですか?一体何があったのですか?まさかヴァイオレット様に何か酷い事を!」

あの女は、グレイソン様を狙っていた。もしかしたら嘘を吹き込まれて、落ち込んでいるのかもしれない。そう思ったのだが…

「僕は彼女には、一切かかわっていないよ。とにかく、1人になりたいんだ。どうか僕の事は放っておいて欲しい」

そう言われてしまったのだ。一体どうしてしまったのだろう。
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