16 / 124
第16話:やっぱり絡んで来ましたか
しおりを挟む
「マリーヌ嬢、ここにいたのだね。随分と楽しそうに話しをしていたけれど…て、あなたは確か、元ラスティーヌ侯爵家のグレイソン殿では?そういえばヴァレスティナ公爵家の養子になったそうだね」
私達に話しかけてきたのは、未来のマリーヌの婚約者、アルフレッド様だ。後ろには何人かの令息もいる。ちょうどいいわ。
「アルフレッド様、お久しぶりですわ。あなたの言う通り、彼は私の義理兄ですの。よかったら仲良くしてくださいね」
やはり殿方は殿方同士仲良くした方がいいだろう。そう思い、アルフレッド様にグレイソン様を紹介した。
「あの…グレイソン・ヴァレスティナです。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。グレイソン殿は、ヴァレスティナ公爵家をいずれ継ぐのだろう?もしかして、ルージュ嬢と結婚する予定なのかい?」
「ちょっと、アルフレッド様、何をおっしゃっているのですか?グレイソン様は確かに公爵家を継ぎますが、私と結婚なんてしませんわ。グレイソン様も私も、それぞれパートナーを見つけてその方と結婚するのです!」
本当にアルフレッド様ったら!
「そんなに顔を真っ赤にして怒らなくてもいいだろう?それよりもグレイソン殿、ルージュ嬢は本当にお節介だろう?でも、このお節介に俺も助けられたんだよ」
「ぼ…僕もルージュには本当に色々と助けられていて。僕が今、ここにいられるのも、ルージュのお陰なのです!」
なぜかグレイソン様が、急にそう叫んだのだ。
「そうなんだね。そうだ、あっちで令息同士、話をしないかい?よかったら僕たちと友達になってくれると嬉しいな」
アルフレッド様の有難い申し出、もちろん断らないわよね。そんな思いでグレイソン様を見つめた。ただ、困惑しているグレイソン様。
「アルフレッド様、グレイソン様は今日久しぶりに社交の場に出てきて、緊張しているのです。ですから…」
「あれ?グレイソンじゃないか?どうしてお前がここにいるのだよ!」
ん?この声は…
ゆっくり声の方を向くと、そこにはグレイソン様の従兄弟、クザイ様がいた。その瞬間、真っ青な顔をして小刻みに震えるグレイソン様。
きっと辛かった時の記憶が蘇ったのだろう。彼の手をギュッと握った。
「アルフレッド様、こいつとは仲良くしない方がいいですよ。こいつは疫病神で根暗で、本当にムカつく奴なのです。ルージュ嬢も気の毒に。急にこんな奴と兄妹にさせられて」
こいつ、一体何を言っているの?一言文句を言ってやらないと!でも、私は公爵令嬢、ここは冷静に。
「まあ、何というお言葉使いでしょう。品がない事この上ないですわ。それにグレイソン様は今、私の兄でヴァレスティナ公爵家の次期当主。それを分かっていてこの様な品の無い事をおっしゃられるのでしたら、我が家への侮辱と捕らえ、正式に侯爵家に抗議をさせていただきますわよ」
にっこり笑ってそう伝えてやった。
さらに
「ルージュの言う通りですわ。よくもまあ、ルージュのお義兄様でもあるグレイソン様を侮辱する様な発言が出来ますわね」
「ガブディオン侯爵は、クザイ様にどのような教育をされてきたのでしょう。本当に侯爵令息とは思えない発言ですわ」
「それもご自分の従兄弟に、この様な暴言を吐くだなんて。もしかしてガブディオン侯爵様がグレイソン様に酷い扱いをしていたという噂は、本当なのかしら?」
「それ、私も聞いたことがありますわ。もし本当なら、ろくでなしもいいとこですわね」
次々と友人たちがクザイ様を攻撃している。
さらに
「クザイ殿、彼女たちの言う通りだ。悪いが俺も聞いていて気分が悪い!今すぐ俺たちの元から立ち去ってくれるかい?」
アルフレッド様まで怖い顔をしてそう言い放ったのだ。彼は10歳にして、騎士団期待の星と言われている。そんな彼からの言葉は、実に迫力があるものだった。
「も…申し訳ございませんでした」
一目散に逃げていくクザイ様。見苦しいことこの上ない。
「何なの、あれは?グレイソン様、どうかお気になさらずに。一定数ゴミの様な人間は存在いたしますわ…申し訳ございません。いくらなんても、ゴミは失礼でしたわね」
「もう、ミシェルったら。でも、ゴミみたいなものだから、問題ありませんわ」
確かにクザイ様は、ゴミみたいな人間だが、高貴な身分の令嬢たちが“ゴミ”というのはどうかと思うが、まあいいか。彼女たちはグレイソン様を思って言ってくれているのだし。
「グレイソン殿、その…なんて言ったらいいか分からないけれど、ここにいる俺たちは皆、君の味方だよ。だから俺たちとも仲良くしてくれるかい?もしまたクザイ殿が何かしてきら、俺が懲らしめてやるから」
「アルフレッド様は本当にお強いのよ。クザイ様なんて秒殺でやっつけてしまうのだから。グレイソン様、その…ずっとお辛い思いをして来たのですね。どうかこれからは、私たちと楽しい時間を過ごしましょう」
「そうしましょう。今日から皆、グレイソン様のお友達です」
皆がグレイソン様に笑顔を向けている。
「皆…ありがとう。本当にありがとう…こんな僕だけれど、どうかよろしくお願いします」
ポロポロと涙を流しながら、頭を下げるグレイソン様。そんな彼の背中を、優しく撫でたのだった。
私達に話しかけてきたのは、未来のマリーヌの婚約者、アルフレッド様だ。後ろには何人かの令息もいる。ちょうどいいわ。
「アルフレッド様、お久しぶりですわ。あなたの言う通り、彼は私の義理兄ですの。よかったら仲良くしてくださいね」
やはり殿方は殿方同士仲良くした方がいいだろう。そう思い、アルフレッド様にグレイソン様を紹介した。
「あの…グレイソン・ヴァレスティナです。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。グレイソン殿は、ヴァレスティナ公爵家をいずれ継ぐのだろう?もしかして、ルージュ嬢と結婚する予定なのかい?」
「ちょっと、アルフレッド様、何をおっしゃっているのですか?グレイソン様は確かに公爵家を継ぎますが、私と結婚なんてしませんわ。グレイソン様も私も、それぞれパートナーを見つけてその方と結婚するのです!」
本当にアルフレッド様ったら!
「そんなに顔を真っ赤にして怒らなくてもいいだろう?それよりもグレイソン殿、ルージュ嬢は本当にお節介だろう?でも、このお節介に俺も助けられたんだよ」
「ぼ…僕もルージュには本当に色々と助けられていて。僕が今、ここにいられるのも、ルージュのお陰なのです!」
なぜかグレイソン様が、急にそう叫んだのだ。
「そうなんだね。そうだ、あっちで令息同士、話をしないかい?よかったら僕たちと友達になってくれると嬉しいな」
アルフレッド様の有難い申し出、もちろん断らないわよね。そんな思いでグレイソン様を見つめた。ただ、困惑しているグレイソン様。
「アルフレッド様、グレイソン様は今日久しぶりに社交の場に出てきて、緊張しているのです。ですから…」
「あれ?グレイソンじゃないか?どうしてお前がここにいるのだよ!」
ん?この声は…
ゆっくり声の方を向くと、そこにはグレイソン様の従兄弟、クザイ様がいた。その瞬間、真っ青な顔をして小刻みに震えるグレイソン様。
きっと辛かった時の記憶が蘇ったのだろう。彼の手をギュッと握った。
「アルフレッド様、こいつとは仲良くしない方がいいですよ。こいつは疫病神で根暗で、本当にムカつく奴なのです。ルージュ嬢も気の毒に。急にこんな奴と兄妹にさせられて」
こいつ、一体何を言っているの?一言文句を言ってやらないと!でも、私は公爵令嬢、ここは冷静に。
「まあ、何というお言葉使いでしょう。品がない事この上ないですわ。それにグレイソン様は今、私の兄でヴァレスティナ公爵家の次期当主。それを分かっていてこの様な品の無い事をおっしゃられるのでしたら、我が家への侮辱と捕らえ、正式に侯爵家に抗議をさせていただきますわよ」
にっこり笑ってそう伝えてやった。
さらに
「ルージュの言う通りですわ。よくもまあ、ルージュのお義兄様でもあるグレイソン様を侮辱する様な発言が出来ますわね」
「ガブディオン侯爵は、クザイ様にどのような教育をされてきたのでしょう。本当に侯爵令息とは思えない発言ですわ」
「それもご自分の従兄弟に、この様な暴言を吐くだなんて。もしかしてガブディオン侯爵様がグレイソン様に酷い扱いをしていたという噂は、本当なのかしら?」
「それ、私も聞いたことがありますわ。もし本当なら、ろくでなしもいいとこですわね」
次々と友人たちがクザイ様を攻撃している。
さらに
「クザイ殿、彼女たちの言う通りだ。悪いが俺も聞いていて気分が悪い!今すぐ俺たちの元から立ち去ってくれるかい?」
アルフレッド様まで怖い顔をしてそう言い放ったのだ。彼は10歳にして、騎士団期待の星と言われている。そんな彼からの言葉は、実に迫力があるものだった。
「も…申し訳ございませんでした」
一目散に逃げていくクザイ様。見苦しいことこの上ない。
「何なの、あれは?グレイソン様、どうかお気になさらずに。一定数ゴミの様な人間は存在いたしますわ…申し訳ございません。いくらなんても、ゴミは失礼でしたわね」
「もう、ミシェルったら。でも、ゴミみたいなものだから、問題ありませんわ」
確かにクザイ様は、ゴミみたいな人間だが、高貴な身分の令嬢たちが“ゴミ”というのはどうかと思うが、まあいいか。彼女たちはグレイソン様を思って言ってくれているのだし。
「グレイソン殿、その…なんて言ったらいいか分からないけれど、ここにいる俺たちは皆、君の味方だよ。だから俺たちとも仲良くしてくれるかい?もしまたクザイ殿が何かしてきら、俺が懲らしめてやるから」
「アルフレッド様は本当にお強いのよ。クザイ様なんて秒殺でやっつけてしまうのだから。グレイソン様、その…ずっとお辛い思いをして来たのですね。どうかこれからは、私たちと楽しい時間を過ごしましょう」
「そうしましょう。今日から皆、グレイソン様のお友達です」
皆がグレイソン様に笑顔を向けている。
「皆…ありがとう。本当にありがとう…こんな僕だけれど、どうかよろしくお願いします」
ポロポロと涙を流しながら、頭を下げるグレイソン様。そんな彼の背中を、優しく撫でたのだった。
1,336
お気に入りに追加
3,017
あなたにおすすめの小説
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる