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第36話:クラウド様が王妃様達と食事をするそうです

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ソフィー様が我が家にやって来てから、毎日充実した生活を送っている。元々庇護欲をそそるソフィー様。可愛くて仕方がない。今日もソフィー様とお揃いの髪飾りを付けて、2人で学院へと向かう。

「ミレニア様、この髪飾りとっても可愛いです。ありがとうございます。でもこの髪飾り、クラウド殿下とデートに行った時に買ってきてくれたものですよね。今度は私とも街に一緒に出掛けてくれますか?」

「ええ、もちろんよ。今度一緒に買い物に行きましょう」

こうやって可愛い顔でお願いされると、つい言う事を聞いてしまうのだ。さすがヒロイン、可愛さが半端ない。2人で話をしているうちに、学院に着いた。

「ミレニア、おはよう」

馬車から降りると、クラウド様が待っていた。ソフィー様が家で生活する様になってから、なぜかいつも校門の前で待っているクラウド様。ちなみに王太子も一緒だ。

「おはよう、クラウド様、王太子殿下」

私の側に駆け寄ると、すぐに腰を抱くクラウド様。最近クラウド様から積極的に私に触れてきてくれる様になった。これは嬉しい変化ね。

ふとソフィー様と王太子の方を見ると、こちらも楽しそうに話をしている。学院でも護衛騎士は付けているし、何より王太子がソフィー様を番犬の様にしっかり守っているから襲われる心配も少なそうだ。

「ミレニア、今日は放課後グラディス先生の研究室に行く事は覚えているよね」

「ええ、もちろんですわ」

実はお父様に内緒で、ポレスティレイ王国について、色々と調べているのだ。お父様たちの捜査が難航している今、こっちでも勝手に調べさせてもらっている。ただグラディス先生は、どちらかというと毒に興味がある様で、そっちの分析に力を入れているみたいだが…

「ミレニア、その髪飾り、この前一緒に街に行った時に買ったものだよね。どうしてソフィー嬢も同じものを付けているのかな?」

一瞬にして不機嫌そうな顔になったクラウド様。

「ソフィー様が我が家で一緒に暮らし始めたし、どうせならソフィー様の分も買った方がいいかなって思いましたの。私、兄しかいないでしょう。だから妹が出来たみたいで嬉しくて」

「妹ねぇ。まあいいよ。それよりも、ソフィー嬢と過度な触れ合いはしていないよね」

物凄い勢いで詰め寄って来たクライド様。

「クラウド様、過度な触れ合いとはどの様なものなのか、今一よく分からないのですが…」

毎回毎回過度な触れ合いと言われても、正直よく分からないのだ。

「だから…その…僕とミレニアが行っている様な事だよ…」

恥ずかしそうにそう言ったクラウド様。クラウド様と行っている事と言えば、口付けとか…

「いくら何でも、そんな恋人同士が行うような事はしておりませんわ。せいぜい夜一緒に寝るくらいです!」

ソフィー様は同性だ!いくら何でも、そんな事はしない。でも、なぜか怖い顔になるクラウド様。

「ミレニア、ソフィー嬢と一緒に寝ているのかい?」

「ええ…ダメですか?」

「ダメに決まっているだろう!とにかく、今日から一緒に寝る事は禁止だ!いいね、わかったかい?」

物凄い怖い顔でそう言われてしまい、咄嗟に
「わかりましたわ」
と言ってしまった。あぁ、今日から可愛いソフィー様を抱きしめて眠れないのね…残念だわ!でも、黙って一緒に寝てクラウド様にバレた時が大変だもの。仕方ないわ。


そして放課後
ソフィー様を王太子にお願いして、私とクラウド様はグラディス先生の研究所に向かった。相変わらず研究室は物凄く散らかっている。いつもの様に、掃除からスタートね。

「ミレニア嬢、クラウド殿下、よく来てくれたね」

「グラディス先生、それでポレスティレイ王国の事、何かわかったのですか?」

「その事はまず置いておいて、これを見てくれ。ついに完成したんだ!椅子型マッサージ機が」

嬉しそうにマッサージ機を持ってくるグラディス先生。どうやらポレスティレイ王国の件は後回しになっている様だ。

「へ~、凄いですね。早速使ってみてもいいですか?」

「もちろんだ、クラウド殿下。早速使ってみてくれ」

興味津々のクラウド様が、早速椅子型マッサージ機に座り、使い始めた。

「おぉ、ミレニアのマッサージには負けるけれど、これはこれで気持ちが良いですよ。それにこれ、背中の下の方まで動いてマッサージしてくれるんですね」

「そうなんだよ!ちなみにこれで高さ調節が出来るんだ」

得意げに話すグラディス先生。私も試させてもらったが、確かにそれなりに気持ちよかった。でも、強さ調節が出来るともっといいわね。そう思ったが、ポレスティレイ王国の方に力を注いでほしいので、あえて言わなかった。

その後、やっと研究にとりかかった先生。私とクラウド様は、部屋の片づけをする。全く、どうしてこんな短期間でここまで散らかせるのかしら?本当にグラディス先生は、散らかしの天才ね!

2人でせっせと掃除をしたため、ある程度片付いて来た。後少しね、そう思った時、クラウド様が話しかけて来た。

「ミレニア、グラディス先生、悪いが今日はもう帰らないといけないんだ」

「何かあるのですか?」

まさか、反王政派の女が接近して来ていて、この後会うとか?そう言えば、ソフィー様の事件とかいろいろあって、結局1度離宮に行ったっきりだったわ。一気に緊張が走る。

「大した事は無いのだが、なぜか陛下と王妃から、たまには一緒に食事をしようと誘われてね。さすがに断れなくて…」

「王妃様ですって!クラウド様、大丈夫なのですか?」

王妃様と食事なんてしたら、毒殺されるかもしれない!そんな不安が頭を支配する。

「ミレニア、大丈夫だよ。毒を感知するスプーンも持って行くし、さすがに陛下の前でそんな大それたことはしないだろう。一応第一王子もいるしね」

多分王太子がいたところで、安心できる要素はない。

「クラウド様、くれぐれも気を付けて下さいね。いいですか?食事が終わったら、必ず通信を入れてくださいよ!」

「ああ、分かっているよ。ただ一緒に食事をするだけだ。そんなに心配しなくても、大丈夫だよ」

そう言って私の頭を撫でてくれたクラウド様。正直心配でたまらない!

「掃除もある程度終わりましたので、私もクラウド様と一緒に帰りますわ。それではグラディス先生、さようなら」

とにかく今は、少しでもクラウド様の側にいたい。そんな思いから、ギューッとクラウド様にくっ付く。そんな私の様子を見て、クスクス笑っているクラウド様。

「それじゃあミレニア、後で通信を入れるからね」

「ええ、必ず通信を入れてくださいね」

別れ際、クラウド様の唇に自分の唇を重ねた。そして、クラウド様を乗せた馬車が走り出すのを見送った後は、私も家路についた。

家に着いてからも心配で仕方がない。万が一クラウド様の身に何かあったら!でも、クラウド様が毒殺されるなんて話は物語の中にはなかったはず。

でもこの前起こったソフィー様暗殺未遂事件も、物語にはなかった。あ~、不安で仕方がない。

あまりにも心配過ぎて、夕食もほとんど喉を通らず、部屋に戻った。心配したソフィー様が様子を見に来てくれたが、とりあえず1人にしてもらう事にした。

そろそろ王宮でも食事が終わった頃よね。通信機とにらめっこをしながら、クラウド様からの連絡を待つ。でも、待てど暮らせど、クラウド様からの通信は無い。こっちから何度連絡を入れても、全然出てくれないし!いつもの約束でもある、夜9時をとっくに過ぎている。

絶対クラウド様の身に何かあったのだわ。こうしてはいられない!急いで部屋から出て、王宮へと向かう為玄関へと向かう。

その時、お父様に話しかけられた。

「ミレニア、こんな夜遅くにどこに行くつもりだい?」

「クラウド様のところよ。今日王妃様達と食事をすると言っていたの!食事が終わったら連絡をくれる事になっていたのに、未だに連絡が無いし。私から連絡しても、全然つながらなくて!きっと何かあったのよ」

「落ち着きなさい、ミレニア。今から行っても王宮には入れないよ。とにかく、明日の朝まで待ちなさい」

明日の朝までなんて待っていられないわ!その時だった。物凄い勢いで、離宮の使用人が飛び込んで来たのだ。

「旦那様!大変です、クラウド殿下が、王太子暗殺未遂罪で投獄されました!」

何ですって!王太子暗殺未遂罪ですって!
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