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第28話:さすが姉上だ~ブラック視点~
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ユリアの名前を呼んだ途端、一気に涙が溢れ出す。
「ブラック、一体何があったの?あなたが泣くだなんて!ユリア嬢とは?お母様、一体何があったのですか?詳しく話を聞かせて下さい」
俺が涙を流したためか、姉上が完全に動揺している。俺は今まで、人前で涙なんて流した事がないのだ。それくらい感情を表に出さない、というより、ユリアに会うまではほとんど感情を露わにしなかった。
その為、王太子殿下まで目を丸くして固まっている。
「実はブラックは、パラスティ伯爵家のユリア嬢を愛しているの。でも…ユリア嬢は長年伯爵によって、無理やり治癒魔法を使わされていて。今まさに、命を落とそうとしているの。私達も伯爵を断罪し、ユリア嬢を助け出すために最善を尽くしたのだけれど、どうしても決定的な証拠が見つからなくて。それで、伯爵家の家宅捜索の許可を頂きたくて。これが資料よ」
母上が姉上に資料を手渡した。食い入るように見つめる姉上。
「なんて酷い事なの…確かバラスティ伯爵家は、7年ほど前元伯爵夫妻が事故で亡くなったのよね。まさか彼らの娘でもあるユリア嬢に、こんな非道な事をしていただなんて…どうしてもっと早く王族に相談してくださらなかったのですか?このような非人道的な事を野放しにしているだなんて!それもブラックの思い人なのでしょう?」
「何度も王太子殿下には相談したわ。でも…」
チラリと王太子殿下を見つめる。
「この程度の証拠では、さすがに家宅捜索は厳しいです。その事くらい、あなた達も分かっているでしょう」
王太子殿下が必死に訴えている。
「確かにこの程度の証拠では家宅捜索は厳しいです。ですが、1人の令嬢の命がかかっているとなれば話は別ですわ。分かりました、家宅捜索を許可しましょう。私が全責任を負います!」
「クリーン!君は何を言っているのだい?」
「殿下、私たち王族は、貴族や平民を守る事が一番の責務です。今まさに令嬢が命を落とそうとしているのに、黙って見ているだなんて出来ません。そもそもあの家は、伯爵が変わってから評判も良くありません。私が全責任を取ると言っているのですから、殿下は黙っていてください!早速明日の朝一で、家宅捜索が出来る様に書類を整えます。すぐに陛下にも話をしないと。殿下と違い、陛下は話が分かる人ですから!ブラック、必ず私があなたの大切な人を助け出すわ。だから、安心して頂戴」
「姉上…ありがとうございます」
「さすがクリーンだわ。最初からクリーンに相談すればよかったのよ」
王太子殿下をジト目で睨みつけながら、母上が呟く。
「…分かりました!クリーン、僕が家宅捜索の手配は行うよ。君は子供たちの元に…」
「いいえ、この件は私が引き受けた案件です。明日の家宅捜索は私も参加しますわ」
「何を言っているのだい?君は王太子妃なのだよ。犯罪の現場に向かうだなんて!そんな事は絶対にさせないから」
必死に姉上に訴える殿下。ただ…
「いいえ、参加します。そもそも、お父様から再三話があったにも関わらず、私に教えてもくれず、放置していたあなた様には任せておけませんわ。あなた様、私に言いましたよね。“僕は君に隠し事なんてしないし、生涯君だけを愛する。君の為なら何でもする”と。それならどうか、今回は私の思う様にさせて下さい!」
姉上が殿下に強く訴えている。相変わらず気の強いところは健在のようだ。
「わかったよ。それでは明日朝一で、家宅捜索を行おう。ブラック殿、家宅捜索は入念な打ち合わせが必要だ。今日は王宮に泊り込んでもらう事になるかもしれないが、いいかい?それからすぐに公爵も王宮に呼んでくれ」
「もちろんです。姉上、義兄上、ありがとうございます」
「私もここに残るわ。クリーンが家宅捜索に参加するなら、もちろん私も参加するつもりよ」
どうやら母上も参加する様だ。うちの女どもは、相変わらず強い。ユリア、どうか明日まで持ちこたえてくれ。そうだ!
公爵家に使いとして向かう使用人を呼び止める。
「公爵家に戻るのなら、伝言をお願いしたい。伯爵家に潜入しているメイドに伝えてくれ。“ユリアを誠心誠意看護して欲しい。たとえ伯爵が文句を言って来ても、無視していい”と」
「かしこまりました。それでは私は、公爵家に向かいますので」
そう伝え、急ぎ足で公爵家に戻っていく使用人。
その後父上、さらに陛下や王妃殿下、騎士団長と副騎士団長も加わり夜遅くまで話し合いが行われた。
陛下も王妃殿下も知らなかった様で、王太子殿下に苦言を呈していた。どうやら王太子殿下で話が止まっていた様だ。やはり皆、令嬢の命がかかっているとあって、多少無理をしてでも家宅捜索をして、ユリアを助け出そうという事で話は纏まった。
さらにユリアの両親についても、再度調査を行う事になった。これでユリアを救い出せる。ユリア、頼む、どうか命をつなぎとめてくれ!
「ブラック、一体何があったの?あなたが泣くだなんて!ユリア嬢とは?お母様、一体何があったのですか?詳しく話を聞かせて下さい」
俺が涙を流したためか、姉上が完全に動揺している。俺は今まで、人前で涙なんて流した事がないのだ。それくらい感情を表に出さない、というより、ユリアに会うまではほとんど感情を露わにしなかった。
その為、王太子殿下まで目を丸くして固まっている。
「実はブラックは、パラスティ伯爵家のユリア嬢を愛しているの。でも…ユリア嬢は長年伯爵によって、無理やり治癒魔法を使わされていて。今まさに、命を落とそうとしているの。私達も伯爵を断罪し、ユリア嬢を助け出すために最善を尽くしたのだけれど、どうしても決定的な証拠が見つからなくて。それで、伯爵家の家宅捜索の許可を頂きたくて。これが資料よ」
母上が姉上に資料を手渡した。食い入るように見つめる姉上。
「なんて酷い事なの…確かバラスティ伯爵家は、7年ほど前元伯爵夫妻が事故で亡くなったのよね。まさか彼らの娘でもあるユリア嬢に、こんな非道な事をしていただなんて…どうしてもっと早く王族に相談してくださらなかったのですか?このような非人道的な事を野放しにしているだなんて!それもブラックの思い人なのでしょう?」
「何度も王太子殿下には相談したわ。でも…」
チラリと王太子殿下を見つめる。
「この程度の証拠では、さすがに家宅捜索は厳しいです。その事くらい、あなた達も分かっているでしょう」
王太子殿下が必死に訴えている。
「確かにこの程度の証拠では家宅捜索は厳しいです。ですが、1人の令嬢の命がかかっているとなれば話は別ですわ。分かりました、家宅捜索を許可しましょう。私が全責任を負います!」
「クリーン!君は何を言っているのだい?」
「殿下、私たち王族は、貴族や平民を守る事が一番の責務です。今まさに令嬢が命を落とそうとしているのに、黙って見ているだなんて出来ません。そもそもあの家は、伯爵が変わってから評判も良くありません。私が全責任を取ると言っているのですから、殿下は黙っていてください!早速明日の朝一で、家宅捜索が出来る様に書類を整えます。すぐに陛下にも話をしないと。殿下と違い、陛下は話が分かる人ですから!ブラック、必ず私があなたの大切な人を助け出すわ。だから、安心して頂戴」
「姉上…ありがとうございます」
「さすがクリーンだわ。最初からクリーンに相談すればよかったのよ」
王太子殿下をジト目で睨みつけながら、母上が呟く。
「…分かりました!クリーン、僕が家宅捜索の手配は行うよ。君は子供たちの元に…」
「いいえ、この件は私が引き受けた案件です。明日の家宅捜索は私も参加しますわ」
「何を言っているのだい?君は王太子妃なのだよ。犯罪の現場に向かうだなんて!そんな事は絶対にさせないから」
必死に姉上に訴える殿下。ただ…
「いいえ、参加します。そもそも、お父様から再三話があったにも関わらず、私に教えてもくれず、放置していたあなた様には任せておけませんわ。あなた様、私に言いましたよね。“僕は君に隠し事なんてしないし、生涯君だけを愛する。君の為なら何でもする”と。それならどうか、今回は私の思う様にさせて下さい!」
姉上が殿下に強く訴えている。相変わらず気の強いところは健在のようだ。
「わかったよ。それでは明日朝一で、家宅捜索を行おう。ブラック殿、家宅捜索は入念な打ち合わせが必要だ。今日は王宮に泊り込んでもらう事になるかもしれないが、いいかい?それからすぐに公爵も王宮に呼んでくれ」
「もちろんです。姉上、義兄上、ありがとうございます」
「私もここに残るわ。クリーンが家宅捜索に参加するなら、もちろん私も参加するつもりよ」
どうやら母上も参加する様だ。うちの女どもは、相変わらず強い。ユリア、どうか明日まで持ちこたえてくれ。そうだ!
公爵家に使いとして向かう使用人を呼び止める。
「公爵家に戻るのなら、伝言をお願いしたい。伯爵家に潜入しているメイドに伝えてくれ。“ユリアを誠心誠意看護して欲しい。たとえ伯爵が文句を言って来ても、無視していい”と」
「かしこまりました。それでは私は、公爵家に向かいますので」
そう伝え、急ぎ足で公爵家に戻っていく使用人。
その後父上、さらに陛下や王妃殿下、騎士団長と副騎士団長も加わり夜遅くまで話し合いが行われた。
陛下も王妃殿下も知らなかった様で、王太子殿下に苦言を呈していた。どうやら王太子殿下で話が止まっていた様だ。やはり皆、令嬢の命がかかっているとあって、多少無理をしてでも家宅捜索をして、ユリアを助け出そうという事で話は纏まった。
さらにユリアの両親についても、再度調査を行う事になった。これでユリアを救い出せる。ユリア、頼む、どうか命をつなぎとめてくれ!
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