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第21話:ブラック様に何か贈りたいです
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学院を辞めさせられた翌日、ショックで1人泣いていると
「おい、何をビービー泣いているんだ。とにかく、その腫れあがった顔を今すぐ治療してくれ。明日までに何とかしないと」
なんだかよく分からないが、叔父様とお医者様が急に私の部屋にやって来たのだ。
「かしこまりました。それにしても、随分と腫れておりますね。明日までに腫れが引く保証はありません」
「それは困る!早く治療を!」
よくわからないが、私が昨日カルディアから受けた怪我の手当てをしてくれる様だ。一体どういう事かしら?よくわからないうちに、医者が手際よく手当てを行ってくれた。
「ユリア、いいか?お前は明日から毎日学院に行くんだ。絶対に休むことは許さない!いいな、わかったな」
叔父様が凄い形相でそう叫んでいる。急にどうして学院に行けだなんて言うのかしら?
「あの、叔父様。何かありましたか?」
「何かありましたか?ではない。先ほどブラック殿が訪ねて来たのだ。まさかお前の様な人間が、この国一番の大貴族、ブラック殿に見初められるだなんて…とにかく、学院には行くんだ。それから、ブラック殿に変な事を絶対に言うなよ。顔の傷は、転んだ事にしておけ!いいな!」
まさかブラック様がわざわざ様子を見に来てくださるだなんて…嬉しくてつい頬が緩む。
「分かりましたわ。叔父様、私を学院に行かせてくださり、ありがとうございます」
「本来ならブラック殿に近づけと言いたいところだが、お前の寿命は後わずか。どう転んでも、もう長くはない。クソ、こんな事なら、お前をそれなりに育てておけばよかった。そうすれば、我が家はもっともっと権力を持てたのに!それにしてもこの部屋は、陰気くさいな。こんなところに居たら、私まで病気になってしまう。いいな、ブラック殿に変な事を絶対言うなよ」
そう言って外に出て行った叔父様。
明日からまた、学院に行けるのね。それもこれも、ブラック様のお陰だわ。いつも私の為に動いて下さるブラック様。
彼は公爵令息だ、欲しいものは何でも手に入るだろう。それでも私は、彼の為に何かしたい。さて、私に何が出来るかしら?
ふと周りを見渡す。う~ん、めぼしいものは何もないな。どうしよう…
顎に手を当てて考える。そう言えば友人の1人が、婚約者の為に刺繍を入れたと言っていたわね。刺繍なら、私も子供の頃何度も練習をしていたから、入れられるわ。
とはいえ、私は裁縫セットも肝心の刺繍を入れるものも持っていない…そうだわ!
引き出しから1枚のハンカチを取り出した。亡くなったお母様が私にくれた、大切なハンカチ。このハンカチに刺繍を入れよう。
両親の形見は、ほとんど叔父様たちに奪われてしまったが、それでも唯一残っているのが、このハンカチとブラック様が見つけてくれたブローチのみ。このハンカチは、私の宝もの。だからこそ、この思い出のハンカチに、刺繍を入れてブラック様にプレゼントしたいと思ったのだ。
でも、そんな経緯を聞いたらさすがに引かれるだろうから、内緒にしておかないと!
早速近くにいた使用人に、裁縫セットを貸してもらえないかお願いした。無視されるかしら?そう心配したが
「かしこまりました。すぐに準備いたします」
そう言うと、立派な裁縫セットを貸してくれたのだ。どうやら新人のメイドさんの様だ。きっとまだ、この家の状況を分からず、私に親切にして下さったのね。この家の使用人たちは、叔父様や叔母様たちから、私に必要なとき以外接する事を禁止しているのだ。
あの新人メイドさんが、後で叔父様たちにバレて怒られない様に、この裁縫セットは早く帰さないと。さて、デザインは何がいいかしら?
う~ん…
そうだわ!この国で守り神として崇められている、狼をモチーフにしよう。失敗しない様に、まずはデザインを書いていく。
色々と悩んでいたせいで、この日はデザインを考えるだけで終わってしまった。
翌日、学院に向かうと、ブラック様が待っていてくれた。
「おはようございます、ブラック様。昨日はお見舞いに来てくださったそうで、ありがとうございました」
「おはよう、ユリア。この顔の傷、酷いね。赤くなっているではないか」
「はい、ちょっと転んでしまいまして…」
「そうか…ユリアは足腰が弱っているから、あまり歩かない方がいいだろう。学院で転んだら大変だ。俺が教室まで運ぼう」
相変わらずお優しいブラック様。彼のお陰で私はまた、学院に通う事が出来る様になった。きっと叔父様の状況から見て、私の命が尽きるその日まで通えそうな感じだ。もし叶うなら、大切な人に囲まれてあの世にいけたら、なんてまた図々しい事を考えてしまった。
「ユリア、急に大人しくなって、どうしたんだい?また体調が悪いのかい?そう言えば昨日はジュースを飲ませられなかったね。早速飲んでくれ」
「ありがとうございます。早速頂きますわ」
1日ぶりに飲むジュース。本当に美味しいわ。
この日もブラック様や友人たちに囲まれて、楽しい時間を過ごしたのだった。
「おい、何をビービー泣いているんだ。とにかく、その腫れあがった顔を今すぐ治療してくれ。明日までに何とかしないと」
なんだかよく分からないが、叔父様とお医者様が急に私の部屋にやって来たのだ。
「かしこまりました。それにしても、随分と腫れておりますね。明日までに腫れが引く保証はありません」
「それは困る!早く治療を!」
よくわからないが、私が昨日カルディアから受けた怪我の手当てをしてくれる様だ。一体どういう事かしら?よくわからないうちに、医者が手際よく手当てを行ってくれた。
「ユリア、いいか?お前は明日から毎日学院に行くんだ。絶対に休むことは許さない!いいな、わかったな」
叔父様が凄い形相でそう叫んでいる。急にどうして学院に行けだなんて言うのかしら?
「あの、叔父様。何かありましたか?」
「何かありましたか?ではない。先ほどブラック殿が訪ねて来たのだ。まさかお前の様な人間が、この国一番の大貴族、ブラック殿に見初められるだなんて…とにかく、学院には行くんだ。それから、ブラック殿に変な事を絶対に言うなよ。顔の傷は、転んだ事にしておけ!いいな!」
まさかブラック様がわざわざ様子を見に来てくださるだなんて…嬉しくてつい頬が緩む。
「分かりましたわ。叔父様、私を学院に行かせてくださり、ありがとうございます」
「本来ならブラック殿に近づけと言いたいところだが、お前の寿命は後わずか。どう転んでも、もう長くはない。クソ、こんな事なら、お前をそれなりに育てておけばよかった。そうすれば、我が家はもっともっと権力を持てたのに!それにしてもこの部屋は、陰気くさいな。こんなところに居たら、私まで病気になってしまう。いいな、ブラック殿に変な事を絶対言うなよ」
そう言って外に出て行った叔父様。
明日からまた、学院に行けるのね。それもこれも、ブラック様のお陰だわ。いつも私の為に動いて下さるブラック様。
彼は公爵令息だ、欲しいものは何でも手に入るだろう。それでも私は、彼の為に何かしたい。さて、私に何が出来るかしら?
ふと周りを見渡す。う~ん、めぼしいものは何もないな。どうしよう…
顎に手を当てて考える。そう言えば友人の1人が、婚約者の為に刺繍を入れたと言っていたわね。刺繍なら、私も子供の頃何度も練習をしていたから、入れられるわ。
とはいえ、私は裁縫セットも肝心の刺繍を入れるものも持っていない…そうだわ!
引き出しから1枚のハンカチを取り出した。亡くなったお母様が私にくれた、大切なハンカチ。このハンカチに刺繍を入れよう。
両親の形見は、ほとんど叔父様たちに奪われてしまったが、それでも唯一残っているのが、このハンカチとブラック様が見つけてくれたブローチのみ。このハンカチは、私の宝もの。だからこそ、この思い出のハンカチに、刺繍を入れてブラック様にプレゼントしたいと思ったのだ。
でも、そんな経緯を聞いたらさすがに引かれるだろうから、内緒にしておかないと!
早速近くにいた使用人に、裁縫セットを貸してもらえないかお願いした。無視されるかしら?そう心配したが
「かしこまりました。すぐに準備いたします」
そう言うと、立派な裁縫セットを貸してくれたのだ。どうやら新人のメイドさんの様だ。きっとまだ、この家の状況を分からず、私に親切にして下さったのね。この家の使用人たちは、叔父様や叔母様たちから、私に必要なとき以外接する事を禁止しているのだ。
あの新人メイドさんが、後で叔父様たちにバレて怒られない様に、この裁縫セットは早く帰さないと。さて、デザインは何がいいかしら?
う~ん…
そうだわ!この国で守り神として崇められている、狼をモチーフにしよう。失敗しない様に、まずはデザインを書いていく。
色々と悩んでいたせいで、この日はデザインを考えるだけで終わってしまった。
翌日、学院に向かうと、ブラック様が待っていてくれた。
「おはようございます、ブラック様。昨日はお見舞いに来てくださったそうで、ありがとうございました」
「おはよう、ユリア。この顔の傷、酷いね。赤くなっているではないか」
「はい、ちょっと転んでしまいまして…」
「そうか…ユリアは足腰が弱っているから、あまり歩かない方がいいだろう。学院で転んだら大変だ。俺が教室まで運ぼう」
相変わらずお優しいブラック様。彼のお陰で私はまた、学院に通う事が出来る様になった。きっと叔父様の状況から見て、私の命が尽きるその日まで通えそうな感じだ。もし叶うなら、大切な人に囲まれてあの世にいけたら、なんてまた図々しい事を考えてしまった。
「ユリア、急に大人しくなって、どうしたんだい?また体調が悪いのかい?そう言えば昨日はジュースを飲ませられなかったね。早速飲んでくれ」
「ありがとうございます。早速頂きますわ」
1日ぶりに飲むジュース。本当に美味しいわ。
この日もブラック様や友人たちに囲まれて、楽しい時間を過ごしたのだった。
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