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第15話:幼馴染がやって来ました

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ノア様溺れかかった事件以降、今まで以上にべったりなノア様。私の姿が少しでも見えないと、屋敷中を探しまくるのだ。まるで親鳥を探すひな鳥の様に…

そのせいか、眠る時以外四六時中一緒にいる。もちろん私が部屋で本を読んでいたり、アクセサリーを作っている時も、隣に座りニコニコしながらジーっと私を観察している。

今日も私の隣で嬉しそうに読書の邪魔をするノア様。ちなみにノア様、とても整った顔をしている。そして私はと言うと、ほとんどを領地で過ごしている為、あまり男性に対して免疫がない。

特にノア様を意識し始めてからは、しょっちゅう心臓がドキドキするのだ。それなのに、こんな超至近距離で見つめられたら、心臓が口から飛び出るのではないか、そう思うくらい緊張するのだ。

そんな私の気持ちを知ってかしらずか
「ステファニー、顔が真っ赤だよ。どうしたんだい?熱でもあるのかな?」

そう言って自分のおでこを私のおでこに当てて来るのだ。ちょっと!近いわ。さらに顔が赤くなる私。

「ね…熱などありませんから、大丈夫ですわ」

そう言ってノア様から急いで離れる。
本当にこのままだと、いくつ心臓があっても足りない…
こんな時は、少し海で泳ぎたいのだが…

チラリとノア様の方を見る。

「どうしたんだい?」
嬉しそうにそう訊ねたノア様。きっと私が海に行くと言えば、付いて来るだろう。でも、まあいいか。

「ちょっと海に行って来ますわ」

「それなら僕も行くよ」

そう言うと、私の腕を掴んでそのまま唇を塞ぐノア様。ちょっと、何で今このタイミングなのよ!お願い、ふいうちは止めて~

そんな私とは裏腹に

「すぐに着替えて来るから待っていてね」

嬉しそうに部屋から出て行くノア様。ノア様にとって私との口付けなんて、きっと海に入る為の準備運動みたいなものなのだろう…そもそも、どうして私だけ緊張しているのかしら。

そう思ったらなんだか腹が立ってきた。そうよ、私だけドキドキしてバカみたい!こうなったら今日は思う存分泳いでやるわ。早速ワンピースに着替え、部屋から出る。するとちょうどノア様がこちらに嬉しそうにやって来るところだった。

「ステファニー、早速行こう」

私の手を握り、スタスタと歩くノア様。この涼しげな顔もなんだか癪に障る。手を振りほどいてやろうかとも思ったが、嬉しそうに歩くノア様の姿を見たらそんな事は出来ない。悶々とした気持ちのまま、屋敷の玄関までやって来た時だった。

物凄い勢いで玄関が開いたと思ったら

「あぁ、俺の可愛いステファニー。会いたかったよ!」

ギューッと私を抱きしめる男性。この男は…

「ダン、勝手に抱き着かないで!今すぐ離れて」

彼は私の幼馴染で伯爵令息のダンだ。正直私は、このダンが昔から苦手なのだ。必死に彼を引き離そうとするが、全く動かない。その時だった。

べりっとダンから引き離されたかと思ったら、そのままノア様の腕の中に閉じ込められた。鍛え抜かれた胸板が目の前に!一気に心臓の音がうるさくなる。

「君は確か、レースィン伯爵家の次男、ダンだね。急にやって来て令嬢に抱き着くなんて、マナーがなっていないね」

最近ずっとご機嫌だったノア様が、明らかに苛立っているのが分かる。

「あなた様は第一王子のノア殿下ではありませんか?そう言えば、王都から逃げ出したとお伺いしましたが、まさかエディソン伯爵家に匿われていたなんて。それより、俺の可愛いステファニーを返してもらえますか?俺たちは愛し合っておりますので」

「ちょっと、どうして私とあなたが愛し合わなきゃいけないのよ!何度も言っているわよね、私はあなたとは結婚しないと!そもそも、急に人の領地に来るなんてどういうつもり?この事はお父様は知っているの?」

「知る訳ないだろう。言ったら反対されるし、すぐに連れ戻されるよ。それよりもステファニー、どうして俺と言う男がいるのに、他の男に抱かれているんだ。それもよりによって第一王子なんかに。この男、王宮でなんて呼ばれているか知っているかい?“疫病神”だぜ」

そう言って笑い始めたバカダン。

「誰が疫病神よ!勝手な事を言わないで。そもそも、たかが伯爵令息の分際で、よくもノア様の事を悪く言ってくれたわね。ノア様はとても素敵な人よ。確かに少し失礼な言動はあるけれど、それでもすぐに海の皆とも仲良くなったし、こう見えてとても優しいのよ。この前なんて、私の為に貝殻を拾ってきてくれたのだから。それにキキが怪我をした時も、手当てをしてくれたし、それから…」

「ありがとう、ステファニー。僕の事をそんな風に思っていてくれていたんだね。嬉しいよ!」

ノア様に後ろから再びギューッと抱きしめられた。そして、頬に口付けをされた。ちょっと、どうしてダンが見ている前でそんな事をするのよ。恥ずかしいじゃない!いつもの様に、顔が真っ赤になる。

「ふ~ん、俺がいない間に、悪い虫がついた様だね。まあいいよ。正式に婚約を結んでいる訳ではないのだろう?それなら立場は一緒だ。いいでしょう、ノア殿下、俺とステファニーがどれほど愛し合っているか、たっぷり見せてあげますから、覚悟して下さい!」

そう高々と宣言したダン。相変わらず自分勝手な奴ね。
なんだか物凄く面倒な事になって来たわね…

睨み合う男性2人を見つめ、頭を悩ませるステファニーであった。
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