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第33話:不安で押しつぶされそうです~アデル視点~
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翌日も兄上に頼んで、花束を持って行ってもらう事にした。せっかくなら、色とりどりの花をと思い、花屋で考え込んでしまった。
「アデル、いい加減決めてくれ。あまり遅い時間にローズ嬢のお見舞いに行くのも、相手に悪いだろう」
業を煮やした兄上に怒られてしまった。
「わかりました。それじゃあ、今日はこれとこれにします。リボンは赤で」
急いで花を選び、花束にしてもらうと、すぐに兄上に渡した。
「兄上、ティーナ、ローズの事頼みましたよ」
ついそんな事を口走ってしまう。
「アデルったら…ローズ様はあなたがお見舞いに来てもいいとおっしゃってくれているのだから、そんなに心配なら一緒にこればいいじゃない。本当に頑固なんだから…」
そう言ってティーナがため息を付いている。昔の僕なら、ティーナを呆れさせるようなことは絶対しなかった。ティーナには、いつも笑顔でいて欲しいからだ。でも今は、全くそんな事を考えられない。
「ローズは優しいから、僕の顔なんて見たくなくても、きっと“来てもいい”と言うでしょう。とにかく、僕はいかないよ。ほら、早くローズの元に行かないと日が暮れてしまう」
「本当にアデルは…」
再びため息を付きながら、馬車へと乗り込んでいくティーナ。兄上も後に続いた。そして今日も、馬車が見えなくなるまで見送った。
僕も馬車に乗り込もうと思ったのだが、今日みたいに花束を選ぶのが遅くなって、2人が遅い時間にお見舞いに行ったらローズに迷惑がかかるかもしれない。でも、どうしてもローズへのお見舞いの品は僕が選びたい。
そんな思いから、もう一度花屋に行き、明日ローズに持って行ってもらう花束を事前に予約しておくことにした。悩みに悩んだ末、可愛らしい花束を予約する事が出来た。と言っても、1時間以上かかってしまったが、まあいいだろう。
さあ、そろそろ帰るか。兄上はきっとまだ帰って来ていないだろう。昨日は2時間くらいローズの家に滞在していた様だし。今日も元気だといいな…ローズ、僕があげた花を喜んでくれているだろうか…
この日もローズの事を考えながら家路に着く。玄関を開けると
「アデル、君は一体どこに行っていたんだ!」
ものすごく機嫌の悪い兄上が、僕を怒鳴りつけた。一体何が起こったのか分からず、固まる。
「グラス、アデルに八つ当たりしても仕方がないでしょう?とにかく落ち着きましょう。アデル、少し話がしたいの。ちょっといいかしら?」
明らかに機嫌の悪い兄上を宥めるティーナに促され、客間へと向かった。兄上はどうしてあんなに機嫌が悪いんだ?もしかして、ローズと喧嘩でもしたのか?兄上の事だ、ローズに酷い事を言っていないといいけれど…
そんな不安が僕を襲う。動揺を隠せない僕を他所に、兄上とティーナが席に付いた。僕も急いで2人の向かいに座る。
「それで一体何があったのですか?まさかローズに、酷い暴言を吐いていないでしょうね?」
何が起こったのか気になる僕は、すぐに兄上に問いかけた。
「暴言など吐いていない!それよりもアデル、ローズ嬢の家にあいつがいたんだよ!マイケルが!」
「えっ?マイケル?」
そういえば、打ち合いをしていた相手の1人がマイケルだったな。マイケルが相手の剣を振り払った為、勢い余って飛んできた剣でローズは怪我をしたのだった。あまりにもローズの事が心配すぎて、マイケルの存在をすっかり忘れていた。
マイケルと言えば、成績優秀、武術に優れ、正義感に溢れた男だ。きっとローズに謝罪にでも行ったのだろう。
ただ…兄上とマイケルはなぜか昔から仲がものすごく悪い…兄上曰く、あの男は、どうしても気に入らないらしい…
おっと話がそれてしまった。
「兄上、マイケルはローズに謝罪しに来たのではないのですか?あの人は律儀ですから」
「アデル、ローズ嬢とマイケルは2人きりで過ごしていたんだぞ。男女が密室で2人きりになるなんて、ふしだらだ。それにローズ嬢、マイケルを庇っていたし。アデル、万が一ローズ嬢にマイケルをとられてもいいのか?あいつ、昨日も見舞いに来ていたそうだし」
ローズをマイケルに取られる?そんな事…
「とにかく、明日からマイケルが勝手にローズ嬢の家に行かない様、僕が見張る。だから、花束なんかに時間をかけている暇はない!いいな、事前に準備しておけよ!」
そう叫ぶと、部屋から出て行った兄上。
「アデル、そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫よ。きっとマイケル様もローズ様に怪我をさせてしまった事を気にして、お見舞いに来ているだけだろうし。とにかく、なるべく2人きりにしない様に気を付けるから」
そう言うと、ティーナも部屋から出て行った。
マイケルか…
彼は学問や武術に優れているだけでなく、誠実で誰にでも優しい。それに顔だって悪くない。あんな男が傍にいたら、ローズも…
考えただけで、胸が苦しくなる。
もしローズが彼の事を好きなら、僕はマイケルとの恋を応援してあげないと!僕はローズが笑顔でいてくれたらそれでいいんだ。
ティーナの時だってそうだったじゃないか。たとえ僕の気持ちが一生ティーナに伝わらなくても、ティーナが笑っていてくれたら、僕も幸せだった。
だから、ローズにだって同じ気持ちのはずだ。
それなのに…
なぜだろう。胸が張り裂けそうに辛い。
落ち着け、僕。まだローズがマイケルを好きだという確証はない。それにローズはとても優しい、マイケルのお見舞いを無下に出来ないだけかもしれない。マイケルだって、ティーナの言う通り、ただローズに気を使って見舞いに来ているだけかもしれないし…
それでも僕は、どうしても不安でその日もほとんど眠る事が出来なかった。
「アデル、いい加減決めてくれ。あまり遅い時間にローズ嬢のお見舞いに行くのも、相手に悪いだろう」
業を煮やした兄上に怒られてしまった。
「わかりました。それじゃあ、今日はこれとこれにします。リボンは赤で」
急いで花を選び、花束にしてもらうと、すぐに兄上に渡した。
「兄上、ティーナ、ローズの事頼みましたよ」
ついそんな事を口走ってしまう。
「アデルったら…ローズ様はあなたがお見舞いに来てもいいとおっしゃってくれているのだから、そんなに心配なら一緒にこればいいじゃない。本当に頑固なんだから…」
そう言ってティーナがため息を付いている。昔の僕なら、ティーナを呆れさせるようなことは絶対しなかった。ティーナには、いつも笑顔でいて欲しいからだ。でも今は、全くそんな事を考えられない。
「ローズは優しいから、僕の顔なんて見たくなくても、きっと“来てもいい”と言うでしょう。とにかく、僕はいかないよ。ほら、早くローズの元に行かないと日が暮れてしまう」
「本当にアデルは…」
再びため息を付きながら、馬車へと乗り込んでいくティーナ。兄上も後に続いた。そして今日も、馬車が見えなくなるまで見送った。
僕も馬車に乗り込もうと思ったのだが、今日みたいに花束を選ぶのが遅くなって、2人が遅い時間にお見舞いに行ったらローズに迷惑がかかるかもしれない。でも、どうしてもローズへのお見舞いの品は僕が選びたい。
そんな思いから、もう一度花屋に行き、明日ローズに持って行ってもらう花束を事前に予約しておくことにした。悩みに悩んだ末、可愛らしい花束を予約する事が出来た。と言っても、1時間以上かかってしまったが、まあいいだろう。
さあ、そろそろ帰るか。兄上はきっとまだ帰って来ていないだろう。昨日は2時間くらいローズの家に滞在していた様だし。今日も元気だといいな…ローズ、僕があげた花を喜んでくれているだろうか…
この日もローズの事を考えながら家路に着く。玄関を開けると
「アデル、君は一体どこに行っていたんだ!」
ものすごく機嫌の悪い兄上が、僕を怒鳴りつけた。一体何が起こったのか分からず、固まる。
「グラス、アデルに八つ当たりしても仕方がないでしょう?とにかく落ち着きましょう。アデル、少し話がしたいの。ちょっといいかしら?」
明らかに機嫌の悪い兄上を宥めるティーナに促され、客間へと向かった。兄上はどうしてあんなに機嫌が悪いんだ?もしかして、ローズと喧嘩でもしたのか?兄上の事だ、ローズに酷い事を言っていないといいけれど…
そんな不安が僕を襲う。動揺を隠せない僕を他所に、兄上とティーナが席に付いた。僕も急いで2人の向かいに座る。
「それで一体何があったのですか?まさかローズに、酷い暴言を吐いていないでしょうね?」
何が起こったのか気になる僕は、すぐに兄上に問いかけた。
「暴言など吐いていない!それよりもアデル、ローズ嬢の家にあいつがいたんだよ!マイケルが!」
「えっ?マイケル?」
そういえば、打ち合いをしていた相手の1人がマイケルだったな。マイケルが相手の剣を振り払った為、勢い余って飛んできた剣でローズは怪我をしたのだった。あまりにもローズの事が心配すぎて、マイケルの存在をすっかり忘れていた。
マイケルと言えば、成績優秀、武術に優れ、正義感に溢れた男だ。きっとローズに謝罪にでも行ったのだろう。
ただ…兄上とマイケルはなぜか昔から仲がものすごく悪い…兄上曰く、あの男は、どうしても気に入らないらしい…
おっと話がそれてしまった。
「兄上、マイケルはローズに謝罪しに来たのではないのですか?あの人は律儀ですから」
「アデル、ローズ嬢とマイケルは2人きりで過ごしていたんだぞ。男女が密室で2人きりになるなんて、ふしだらだ。それにローズ嬢、マイケルを庇っていたし。アデル、万が一ローズ嬢にマイケルをとられてもいいのか?あいつ、昨日も見舞いに来ていたそうだし」
ローズをマイケルに取られる?そんな事…
「とにかく、明日からマイケルが勝手にローズ嬢の家に行かない様、僕が見張る。だから、花束なんかに時間をかけている暇はない!いいな、事前に準備しておけよ!」
そう叫ぶと、部屋から出て行った兄上。
「アデル、そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫よ。きっとマイケル様もローズ様に怪我をさせてしまった事を気にして、お見舞いに来ているだけだろうし。とにかく、なるべく2人きりにしない様に気を付けるから」
そう言うと、ティーナも部屋から出て行った。
マイケルか…
彼は学問や武術に優れているだけでなく、誠実で誰にでも優しい。それに顔だって悪くない。あんな男が傍にいたら、ローズも…
考えただけで、胸が苦しくなる。
もしローズが彼の事を好きなら、僕はマイケルとの恋を応援してあげないと!僕はローズが笑顔でいてくれたらそれでいいんだ。
ティーナの時だってそうだったじゃないか。たとえ僕の気持ちが一生ティーナに伝わらなくても、ティーナが笑っていてくれたら、僕も幸せだった。
だから、ローズにだって同じ気持ちのはずだ。
それなのに…
なぜだろう。胸が張り裂けそうに辛い。
落ち着け、僕。まだローズがマイケルを好きだという確証はない。それにローズはとても優しい、マイケルのお見舞いを無下に出来ないだけかもしれない。マイケルだって、ティーナの言う通り、ただローズに気を使って見舞いに来ているだけかもしれないし…
それでも僕は、どうしても不安でその日もほとんど眠る事が出来なかった。
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