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第5話:4人で食事に行きます
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「ティーナ」
校舎裏を出たところで、後ろから男性の声が聞こえた。ゆっくり振り返るとそこにいたのは…
「グラス、それにアデルも。迎えに来てくれたの?」
嬉しそうにそう叫んだティーナ様。でも、なぜか私の手はしっかり握ったままだ。
そんなティーナ様を見たグラス様が、苦笑いをしている。隣には、アデル様の姿も。アデル様は銀色の髪に青い瞳をしているのに対し、グラス様は金色の髪に青色の瞳だ。
顔の作りはよく似ているが、髪の色が違うせいか、雰囲気はあまり似ていない。
「ティーナ、どうやらお友達が出来た様だね。よかったね。君は、スターレス家のローズ嬢だね。ティーナを助けてくれただけでなく、友達になってくれてありがとう。今らか食事に行くと言っていたね。僕たちも一緒に行ってもいいかな?」
にっこりと笑って私に近づいて来たグラス様。その瞳はどこか怒っているようにも感じる。それに、どうして私がティーナ様を助けた事やお友達になった事、これから食事に行く事を知っているのかしら?
「あ…あの…私は…」
「そうか、ありがとう。それじゃあ、早速4人で食事に行こうか?そうだ、ティーナ、1人でどこかに行ってはいけないと、あれほど言っただろう?令嬢どもは何を考えているか分からないからね。今日も令嬢たちに暴言を吐かれていたではないか」
「…ごめんなさい。でも、ローズ様が助けてくれましたし、それになにより、お友達が出来ましたわ」
「お友達ね。そうだね、その点はよかったね。でも、それはたまたま運がよかっただけだろう?とにかく、今後は勝手に僕の傍から離れてはいけないよ。いいね?」
「はい、分かりましたわ…ごめんなさい」
どうやらティーナ様に対して怒っている様だ。それにしても、1人でどこかに行ってはいけないだなんて…そういえばティーナ様とグラス様は幼馴染と言っていたわよね。もしかして、ティーナ様があまり世間を知らないのは、グラス様のせい?
「分かればいいんだよ。さあティーナ、こっちにおいで。それじゃあ、早速食事に行こうか。既にお店は手配してあるよ」
私が色々と考えているうちに、ティーナ様を私から奪い取って歩き出したグラス様。ティーナ様はどうしていいか分からず、オロオロとしている。この男、お店まで手配しているって言っていたわよね。そもそも私は、まだ4人での食事を了承していないのに…
グラス様って意外と強引なのね。私この人、ちょっと苦手かも…
「兄上がごめんね。あの人、ティーナの事になると周りが見えなくなるんだ。ローズ嬢、君さえよければ、一緒に食事をしてやってくれないかい?ティーナも君と食事が出来る事を、楽しみにしていた様だし…」
固まっている私に話しかけてきたのは、アデル様だ。アデル様の頼みとあれば、もちろん断るつもりはない。そもそも、私はティーナ様と食事をするつもりでいたのだし。
「私は大丈夫ですわ。それでは私たちも参りましょうか」
グラス様とティーナ様の後を急いで追った。そしてなぜか、グリースティン家の馬車に乗せられる。
私は自分の馬車で行くと伝えたのだが、ティーナ様に可愛い顔でお願いされ、断り切れずに乗り込んでしまったのだ。やっぱり、可愛いって徳よね。
改めてそう思った。
「ローズ嬢は、今日入学したばかりなんだよね。学院で分からない事があれば、何でも聞いてもらって構わないから」
さっきとは打って変わって、優しい眼差しでそう伝えてくれたグラス様。あら?もしかして、いい人なのかしら?
確か巷でのグラス様の評判は、誰にでも優しくて聡明で頼りがいのある、まさに完璧な男性との事。さっきのグラス様は、私の勘違いだったのかもしれないわね。
「はい、ありがとうございます。とりあえず大丈夫ですわ」
「そうかい?遠慮しなくてもいいんだよ。君は僕の大切な、ティーナのお友達なのだから」
「はい…ありがとうございます」
今“ティーナ”のところ、強調したわよね。どうやらグラス様にとって、ティーナ様は本当に大切な存在な様だ。その証拠に、私がいるにも関わらず、目の前でティーナ様の頬に口づけをしたり、頬ずりをしたりとやりたい放題のグラス様。
人がいる前でイチャイチャするなんて、さすがに少しはしたないのでは…
苦笑いをしつつ、ふとアデル様の方を見ると、なぜかとても悲しそうな顔をしていた。
あら?この顔…
今朝見たアデル様と同じ顔をしている。それに、拳を強く握っているし…
「さあ、着いたよ。このお店だ」
どうやらお店に着いた様だ。馬車から降りると、立派な造りのお店が。このお店、一度お兄様とおばあ様と来たことがあるわ。確かお兄様とおばあ様が隣国に向かう前日に来たのよね…
「ローズ様、顔色があまり宜しくない様ですが、大丈夫ですか?」
心配そうに私に話しかけてきてくれたのは、ティーナ様だ。
「ありがとうございます。ええ、大丈夫ですわ。少し昔の事を思い出しただけです。ここは確か、カニのお料理が食べられるお店なのですよね。楽しみですわ」
あの日も3人でカニ料理を堪能した。この国では珍しいカニ料理、とても美味しくて、つい夢中で食べていた。そんな私を見たお兄様とおばあ様が、自分の分を分けてくれたのよね。
なんだか懐かしい…2人とも元気にしているかしら?
「さあ、こんなところに突っ立っていないで、早く中に入ろう。ローズ嬢も知っているみたいだけれど、ここはカニが食べられるお店なんだよ。個室を準備したから、ゆっくり食べられるよ」
グラス様に促され、4人で中に入って行ったのだった。
校舎裏を出たところで、後ろから男性の声が聞こえた。ゆっくり振り返るとそこにいたのは…
「グラス、それにアデルも。迎えに来てくれたの?」
嬉しそうにそう叫んだティーナ様。でも、なぜか私の手はしっかり握ったままだ。
そんなティーナ様を見たグラス様が、苦笑いをしている。隣には、アデル様の姿も。アデル様は銀色の髪に青い瞳をしているのに対し、グラス様は金色の髪に青色の瞳だ。
顔の作りはよく似ているが、髪の色が違うせいか、雰囲気はあまり似ていない。
「ティーナ、どうやらお友達が出来た様だね。よかったね。君は、スターレス家のローズ嬢だね。ティーナを助けてくれただけでなく、友達になってくれてありがとう。今らか食事に行くと言っていたね。僕たちも一緒に行ってもいいかな?」
にっこりと笑って私に近づいて来たグラス様。その瞳はどこか怒っているようにも感じる。それに、どうして私がティーナ様を助けた事やお友達になった事、これから食事に行く事を知っているのかしら?
「あ…あの…私は…」
「そうか、ありがとう。それじゃあ、早速4人で食事に行こうか?そうだ、ティーナ、1人でどこかに行ってはいけないと、あれほど言っただろう?令嬢どもは何を考えているか分からないからね。今日も令嬢たちに暴言を吐かれていたではないか」
「…ごめんなさい。でも、ローズ様が助けてくれましたし、それになにより、お友達が出来ましたわ」
「お友達ね。そうだね、その点はよかったね。でも、それはたまたま運がよかっただけだろう?とにかく、今後は勝手に僕の傍から離れてはいけないよ。いいね?」
「はい、分かりましたわ…ごめんなさい」
どうやらティーナ様に対して怒っている様だ。それにしても、1人でどこかに行ってはいけないだなんて…そういえばティーナ様とグラス様は幼馴染と言っていたわよね。もしかして、ティーナ様があまり世間を知らないのは、グラス様のせい?
「分かればいいんだよ。さあティーナ、こっちにおいで。それじゃあ、早速食事に行こうか。既にお店は手配してあるよ」
私が色々と考えているうちに、ティーナ様を私から奪い取って歩き出したグラス様。ティーナ様はどうしていいか分からず、オロオロとしている。この男、お店まで手配しているって言っていたわよね。そもそも私は、まだ4人での食事を了承していないのに…
グラス様って意外と強引なのね。私この人、ちょっと苦手かも…
「兄上がごめんね。あの人、ティーナの事になると周りが見えなくなるんだ。ローズ嬢、君さえよければ、一緒に食事をしてやってくれないかい?ティーナも君と食事が出来る事を、楽しみにしていた様だし…」
固まっている私に話しかけてきたのは、アデル様だ。アデル様の頼みとあれば、もちろん断るつもりはない。そもそも、私はティーナ様と食事をするつもりでいたのだし。
「私は大丈夫ですわ。それでは私たちも参りましょうか」
グラス様とティーナ様の後を急いで追った。そしてなぜか、グリースティン家の馬車に乗せられる。
私は自分の馬車で行くと伝えたのだが、ティーナ様に可愛い顔でお願いされ、断り切れずに乗り込んでしまったのだ。やっぱり、可愛いって徳よね。
改めてそう思った。
「ローズ嬢は、今日入学したばかりなんだよね。学院で分からない事があれば、何でも聞いてもらって構わないから」
さっきとは打って変わって、優しい眼差しでそう伝えてくれたグラス様。あら?もしかして、いい人なのかしら?
確か巷でのグラス様の評判は、誰にでも優しくて聡明で頼りがいのある、まさに完璧な男性との事。さっきのグラス様は、私の勘違いだったのかもしれないわね。
「はい、ありがとうございます。とりあえず大丈夫ですわ」
「そうかい?遠慮しなくてもいいんだよ。君は僕の大切な、ティーナのお友達なのだから」
「はい…ありがとうございます」
今“ティーナ”のところ、強調したわよね。どうやらグラス様にとって、ティーナ様は本当に大切な存在な様だ。その証拠に、私がいるにも関わらず、目の前でティーナ様の頬に口づけをしたり、頬ずりをしたりとやりたい放題のグラス様。
人がいる前でイチャイチャするなんて、さすがに少しはしたないのでは…
苦笑いをしつつ、ふとアデル様の方を見ると、なぜかとても悲しそうな顔をしていた。
あら?この顔…
今朝見たアデル様と同じ顔をしている。それに、拳を強く握っているし…
「さあ、着いたよ。このお店だ」
どうやらお店に着いた様だ。馬車から降りると、立派な造りのお店が。このお店、一度お兄様とおばあ様と来たことがあるわ。確かお兄様とおばあ様が隣国に向かう前日に来たのよね…
「ローズ様、顔色があまり宜しくない様ですが、大丈夫ですか?」
心配そうに私に話しかけてきてくれたのは、ティーナ様だ。
「ありがとうございます。ええ、大丈夫ですわ。少し昔の事を思い出しただけです。ここは確か、カニのお料理が食べられるお店なのですよね。楽しみですわ」
あの日も3人でカニ料理を堪能した。この国では珍しいカニ料理、とても美味しくて、つい夢中で食べていた。そんな私を見たお兄様とおばあ様が、自分の分を分けてくれたのよね。
なんだか懐かしい…2人とも元気にしているかしら?
「さあ、こんなところに突っ立っていないで、早く中に入ろう。ローズ嬢も知っているみたいだけれど、ここはカニが食べられるお店なんだよ。個室を準備したから、ゆっくり食べられるよ」
グラス様に促され、4人で中に入って行ったのだった。
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