24 / 43
第24話:公爵に交渉しました~クラウディオ視点~
しおりを挟む
デイジーの誕生日パーティーから1週間が過ぎた。デイジーが僕の婚約者候補を辞退できるようになるまで、後1週間。僕はある材料をそろえて、公爵を呼び出した。
もちろん、デイジーが婚約者候補を辞退しない様にお願いするためだ。
「クラウディオ殿下、急に私を呼びだして、何の用ですか?」
「わざわざ来ていただき、ありがとうございます。実はデイジーの事で折り入ってお願いがありまして」
「デイジーの事ですか?もし婚約者候補を辞退しないようにして欲しいという件でしたら、お断りさせていただきます。デイジーは既に、貴族から婿を取り、クレスティン公爵家を継ぐ意思でおりますので」
やっぱり、思った通りデイジーは婚約者候補を辞退するつもりで話を進めていたか。分かってはいたが、やっぱりショックが大きい。
「それでデイジーは、誰と結婚させるつもりでいるのですか?」
「そうですね、まだ相手方には話はしておりませんが、レクシティーオ公爵家の三男、ジャック殿がよろしいかと考えております。彼は非常に優秀ですし、何よりデイジーがジャック殿をと指名しておりますので」
だからどうか殿下は諦めて下さい!と言わんばかりに、満面の笑みで僕の方を見つめる公爵。やはり、デイジーはジャックと結婚するつもりなんだな。
真実を突き付けられた僕は、言いようのない怒りを覚える。ジャックにだけは、絶対に渡さない!
「公爵、どうか考え直しては頂けないでしょうか?確かクレスティン公爵家は、弟君の家から養子を取る事を考えていたのではありませんか?」
「確かに最初はそう言う話になっておりましたが、娘がこの家を継いでくれるなら話は別です。それに私も、デイジーが傍にいてくれたら嬉しいので。とにかく、殿下の婚約者候補は辞退させていただく予定になっております。申し訳ございませんが、辞退はこちらの権利でございますので」
権利か…
確かに婚約者候補の権利ではある。でも僕は…
「そうですか、どうしても考え直してもらえませんか。それは残念ですね…そうそう、クレスティン公爵、あなたは昔、この国で許可されていない薬を、勝手に他国から取り寄せましたね」
僕は何か公爵が何か後ろめたい事がないか、必死に探したのだ。そして、ついに見つけた。それは、この国で許可されていない薬を、勝手に密輸していたという事実を。許可されていない薬物を勝手に自国に持ち込むという事は、この国では重罪に値する。
最悪、極刑もありうる重大な罪なのだ。
「それは…妻が病気で、どうしてもその薬が必要だったのです」
「たとえそうだったとしても、王家に届け出る事で、特例で認められることもあるのですよ。それを怠った。この事が公になれば、あなたは…」
「確かに殿下の言う通り、私はあの当時罪を犯しました。でも、私はただ、妻を助けたい一心で…」
「そんな事は分かっていますよ。ですから交渉しているのです。この事実を内緒にしておく替りに、デイジーを僕の婚約者に戻してください」
「殿下、あなたって人は…」
「公爵、僕はね、出来れば公爵には存命でいて欲しいし、公爵家も今まで通り権力を握っていて欲しいのです。あなたが失脚すれば、デイジーは後ろ盾を失います。王太子でもある僕の婚約者でいるためには、ある程度の後ろ盾は必要ですからね」
公爵に向かってほほ笑んだ。自分でも最低な交渉をしている事は分かっている。相手の弱みに付け込んで、デイジーをよこせと言っているのだから。でも、僕はもうどんな手を使ってでも、デイジーが欲しいのだ。
「…分かりました。ただ、デイジーを正式に婚約者にするのは、もう少し待っていただけないでしょうか?その…せめて貴族学院を卒業するまで…」
貴族学院を卒業するまでは、1年半後だ。そんなにもデイジーを野放しにしておくなんて、耐えられない。
「悪いがそんなにも待てません。貴族学院は、最低1年で卒業も可能です。デイジーには1年で卒業してもらい、その後1年は王妃教育に専念してもらうというのはどうでしょうか?彼女は僕の婚約者の間、全く王妃教育を受けていませんでしたので」
この国では最低1年は貴族学院に在籍する必要があるが、2年目からは退学する事も可能なのだ。それに卒業認定試験を受ければ、2年在籍した場合と同じ資格を受ける事が出来る。
「…わかりました。あなたって人は、いつからそんな…いいえ、何でもありません。あの、殿下。どうしてそこまで、デイジーとの婚約にこだわるのですか?」
「どうしてこだわるかですって?そんなの、決まっているではありませんか。デイジーを愛しているからです。僕は誰よりもデイジーを愛しているのです。だから、必ず彼女を幸せにしますから、安心してください」
「分かりました。殿下がそこまでおっしゃるのなら、どうかデイジーをよろしくお願いいたします」
「ええ、もちろんですよ。任せて下さい」
少し悲しそうに微笑む公爵に笑顔でそう伝えた。よし、これでデイジーの方は問題ない。後半年したら、またデイジーと婚約を結び直すことが出来る。
デイジーには王宮で住む様に準備を進めよう。そうだな、デイジーが逃げ出さない様に、厳重に管理した部屋にしないと。窓は鉄格子で囲って、部屋には何頑丈な鍵を付けよう。
それから…
あぁ、考えただけで頬が緩む。デイジー、僕から逃げようと思っても、無駄だよ。絶対に逃がさないからね。
※次回からデイジー視点に戻ります。
よろしくお願いしますm(__)m
もちろん、デイジーが婚約者候補を辞退しない様にお願いするためだ。
「クラウディオ殿下、急に私を呼びだして、何の用ですか?」
「わざわざ来ていただき、ありがとうございます。実はデイジーの事で折り入ってお願いがありまして」
「デイジーの事ですか?もし婚約者候補を辞退しないようにして欲しいという件でしたら、お断りさせていただきます。デイジーは既に、貴族から婿を取り、クレスティン公爵家を継ぐ意思でおりますので」
やっぱり、思った通りデイジーは婚約者候補を辞退するつもりで話を進めていたか。分かってはいたが、やっぱりショックが大きい。
「それでデイジーは、誰と結婚させるつもりでいるのですか?」
「そうですね、まだ相手方には話はしておりませんが、レクシティーオ公爵家の三男、ジャック殿がよろしいかと考えております。彼は非常に優秀ですし、何よりデイジーがジャック殿をと指名しておりますので」
だからどうか殿下は諦めて下さい!と言わんばかりに、満面の笑みで僕の方を見つめる公爵。やはり、デイジーはジャックと結婚するつもりなんだな。
真実を突き付けられた僕は、言いようのない怒りを覚える。ジャックにだけは、絶対に渡さない!
「公爵、どうか考え直しては頂けないでしょうか?確かクレスティン公爵家は、弟君の家から養子を取る事を考えていたのではありませんか?」
「確かに最初はそう言う話になっておりましたが、娘がこの家を継いでくれるなら話は別です。それに私も、デイジーが傍にいてくれたら嬉しいので。とにかく、殿下の婚約者候補は辞退させていただく予定になっております。申し訳ございませんが、辞退はこちらの権利でございますので」
権利か…
確かに婚約者候補の権利ではある。でも僕は…
「そうですか、どうしても考え直してもらえませんか。それは残念ですね…そうそう、クレスティン公爵、あなたは昔、この国で許可されていない薬を、勝手に他国から取り寄せましたね」
僕は何か公爵が何か後ろめたい事がないか、必死に探したのだ。そして、ついに見つけた。それは、この国で許可されていない薬を、勝手に密輸していたという事実を。許可されていない薬物を勝手に自国に持ち込むという事は、この国では重罪に値する。
最悪、極刑もありうる重大な罪なのだ。
「それは…妻が病気で、どうしてもその薬が必要だったのです」
「たとえそうだったとしても、王家に届け出る事で、特例で認められることもあるのですよ。それを怠った。この事が公になれば、あなたは…」
「確かに殿下の言う通り、私はあの当時罪を犯しました。でも、私はただ、妻を助けたい一心で…」
「そんな事は分かっていますよ。ですから交渉しているのです。この事実を内緒にしておく替りに、デイジーを僕の婚約者に戻してください」
「殿下、あなたって人は…」
「公爵、僕はね、出来れば公爵には存命でいて欲しいし、公爵家も今まで通り権力を握っていて欲しいのです。あなたが失脚すれば、デイジーは後ろ盾を失います。王太子でもある僕の婚約者でいるためには、ある程度の後ろ盾は必要ですからね」
公爵に向かってほほ笑んだ。自分でも最低な交渉をしている事は分かっている。相手の弱みに付け込んで、デイジーをよこせと言っているのだから。でも、僕はもうどんな手を使ってでも、デイジーが欲しいのだ。
「…分かりました。ただ、デイジーを正式に婚約者にするのは、もう少し待っていただけないでしょうか?その…せめて貴族学院を卒業するまで…」
貴族学院を卒業するまでは、1年半後だ。そんなにもデイジーを野放しにしておくなんて、耐えられない。
「悪いがそんなにも待てません。貴族学院は、最低1年で卒業も可能です。デイジーには1年で卒業してもらい、その後1年は王妃教育に専念してもらうというのはどうでしょうか?彼女は僕の婚約者の間、全く王妃教育を受けていませんでしたので」
この国では最低1年は貴族学院に在籍する必要があるが、2年目からは退学する事も可能なのだ。それに卒業認定試験を受ければ、2年在籍した場合と同じ資格を受ける事が出来る。
「…わかりました。あなたって人は、いつからそんな…いいえ、何でもありません。あの、殿下。どうしてそこまで、デイジーとの婚約にこだわるのですか?」
「どうしてこだわるかですって?そんなの、決まっているではありませんか。デイジーを愛しているからです。僕は誰よりもデイジーを愛しているのです。だから、必ず彼女を幸せにしますから、安心してください」
「分かりました。殿下がそこまでおっしゃるのなら、どうかデイジーをよろしくお願いいたします」
「ええ、もちろんですよ。任せて下さい」
少し悲しそうに微笑む公爵に笑顔でそう伝えた。よし、これでデイジーの方は問題ない。後半年したら、またデイジーと婚約を結び直すことが出来る。
デイジーには王宮で住む様に準備を進めよう。そうだな、デイジーが逃げ出さない様に、厳重に管理した部屋にしないと。窓は鉄格子で囲って、部屋には何頑丈な鍵を付けよう。
それから…
あぁ、考えただけで頬が緩む。デイジー、僕から逃げようと思っても、無駄だよ。絶対に逃がさないからね。
※次回からデイジー視点に戻ります。
よろしくお願いしますm(__)m
34
お気に入りに追加
2,715
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は、あの日にかえりたい
桃千あかり
恋愛
婚約破棄され、冤罪により断頭台へ乗せられた侯爵令嬢シルヴィアーナ。死を目前に、彼女は願う。「あの日にかえりたい」と。
■別名で小説家になろうへ投稿しています。
■恋愛色は薄め。失恋+家族愛。胸糞やメリバが平気な読者様向け。
■逆行転生の悪役令嬢もの。ざまぁ亜種。厳密にはざまぁじゃないです。王国全体に地獄を見せたりする系統の話ではありません。
■覚悟完了済みシルヴィアーナ様のハイスピード解決法は、ひとによっては本当に胸糞なので、苦手な方は読まないでください。苛烈なざまぁが平気な読者様だと、わりとスッとするらしいです。メリバ好きだと、モヤり具合がナイスっぽいです。
■悪役令嬢の逆行転生テンプレを使用した、オチがすべてのイロモノ短編につき、設定はゆるゆるですし続きません。文章外の出来事については、各自のご想像にお任せします。
※表紙イラストはフリーアイコンをお借りしました。
■あままつ様(https://ama-mt.tumblr.com/about)
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
転生して悪役令嬢になったので王太子殿下を守るために婚約破棄を告げたら、逆に溺愛されてしまいました
奏音 美都
恋愛
な、なんてことなの……私がプレイしてた乙ゲーの世界に入って、今、推しの王太子殿下の目の前にいる、だと……!?
けれど、私が転生したのは王太子殿下と結ばれる美貌の侯爵令嬢、アンソワーヌではなく、王太子殿下の婚約者でありとあらゆる虐めと陰謀を仕掛け、アンソワーヌと結ばれようとした王太子殿下を殺してしまうという悪役令嬢、オリビアだった。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。
藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」
婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで←
うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。
笑顔の花は孤高の断崖にこそ咲き誇る
はんぺん千代丸
恋愛
私は侯爵家の令嬢リリエッタ。
皆様からは笑顔が素敵な『花の令嬢』リリエッタと呼ばれています。
私の笑顔は、婚約者である王太子サミュエル様に捧げるためのものです。
『貴族の娘はすべからく笑って男に付き従う『花』であるべし』
お父様のその教えのもと、私は『花の令嬢』として笑顔を磨き続けてきました。
でも、殿下が選んだ婚約者は、私ではなく妹のシルティアでした。
しかも、私を厳しく躾けてきたお父様も手のひらを返して、私を見捨てたのです。
全てを失った私は、第二王子のもとに嫁ぐよう命じられました。
第二王子ラングリフ様は、生来一度も笑ったことがないといわれる孤高の御方。
決して人を寄せ付けない雰囲気から、彼は『断崖の君』と呼ばれていました。
実は、彼には笑うことができない、とある理由があったのです。
作られた『笑顔』しか知らない令嬢が、笑顔なき王子と出会い、本当の愛を知る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる