36 / 49
第36話:殿下に対する気持ちの変化
しおりを挟む
殿下にエスコートされ、王宮の大ホールの控室へと向かった。すると陛下と王妃様が。そう、王宮主催のパーティでは、王族は最後に入場する事になっているのだ。その為、殿下のパートナーでもある私も、王族と入場する。
「リリアーナちゃん、よく来てくれたわね。嬉しいわ」
「リリアーナ嬢、今日は目いっぱい楽しんでいってくれ。夜会の料理は、リリアーナ嬢の好きなメニューを中心に作らせたら、楽しみにしていてくれよ」
「ありがとうございます。はい、今日は目いっぱい楽しませていただきますわ」
相変わらず優しい陛下や王妃様。私の為に夜会のメニューまで考えて下さっただなんて、なんだか申し訳ない。
「さあ、そろそろ入場の時間だ。行こうか」
陛下と王妃様、殿下と一緒に、入場していく。そういえばこうやって王族の皆さんと入場するのって、1年以上ぶりくらいね。なんだか緊張するわ。
“リリアーナ、緊張しているのかい?僕もいるし、大丈夫だよ”
そう耳元で呟くのは、殿下だ。私は別に、緊張なんてしていないのに!そう言いたいが、久しぶりでやはり緊張する。そんな私をしっかり支える様に歩いてくれる殿下。彼なりに気を使ってくれているのだろう。
そして夜会スタートだ。
「リリアーナ、今日のファーストダンスを一緒に踊ってくれますか?」
「はい、もちろんです」
殿下と一緒にホールの真ん中まで来ると、ゆっくり踊り出す。なんだかんだ言って、殿下が一番踊りやすいのだ。殿下は昔からダンスの苦手な私の為に、踊りやすい様にエスコートしてくれていた。
それが昔は当たり前だと思っていたけれど、殿下と婚約破棄をして他の令息と踊る様になってから、その事を知った。
そう、彼は私の気が付かないところで、それとなくサポートしてくれていたのだ。私はずっと、殿下に冷遇されていると思っていた。でも…私自身も殿下の事をよく見ていなかったのかもしれない。最近はそんな事を考える様になったのだ。
「リリアーナ、また浮かない顔をしているね。やっぱり僕と一緒にいると、辛いのかい?」
「いえ、違うのです。ちょっと別の事を考えておりまして。ごめんなさい。それよりも殿下は、ダンスがお上手ですね。ダンスが苦手な私も、殿下と踊るとそれなりに見えますわ」
「僕はダンスがそこまで上手な方ではないよ。リリアーナが相手だから、上手に踊れているのかもしれない。リリアーナはダンスが苦手と言っているけれど、とても踊りやすいよ。もっと自信を持った方がいい」
そう言ってほほ笑んでくれたのだ。私のダンスが踊りやすいだなんて…きっとお世辞よね。それでもなんだか嬉しい。
ダンスの後は、他の貴族たちが声を掛けてきてくれた。
「殿下、リリアーナ嬢、ごきげんよう。お2人が一緒にいらっしゃる姿、本当に絵になりますわ。一度は魔法の力で引き裂かれてしまいましたが、やはり真実の愛には勝てませんね。それで、いつご婚約発表を?」
嬉しそうに貴族たちが聞いてくる。私はまだ殿下と婚約何て、とてもじゃないけれど考えられないのだが…でも、今日殿下にエスコートされた事で、貴族界ではいずれ私たちが再び婚約を結び直すと考えるのが普通だろう。
どうしよう、どう答えれば…
「僕たちは今現在、婚約を結ぶことはありません。僕はリリアーナを、心無い言葉で傷つけ続けました。いくら魅了魔法に掛かっていたとはいえ、何の罪もないリリアーナの心を、めちゃくちゃにしたのです。あれほどまでに酷い事をしたのに、今日はエスコートを受けてくれた事、とても感謝しております。ですから、どうか僕たちが婚約するという憶測はお持ちにならないでいただきたい。僕たちは、僕の強い意志で婚約破棄をしたのですから」
貴族たちに向かって、大きな声でそう伝えた殿下。
「まあ、そうでしたのね。確かにリリアーナ嬢は、あの事件の一番の被害者ですものね。そう簡単に、婚約を結び直すという話ではありませんもの。私たら、つい先走ってしまいして、申し訳ございません」
「いえ、こちらこそ、誤解を与える様な事をしてしまい、申し訳ありませんでした。今日は僕も、リリアーナと婚約したい男性の1人として、彼女をスコートさせていただいた次第ですので」
そう言って少し悲しそうに笑った殿下。その後も沢山の貴族たちから、私たちの婚約について聞かれたが、そのたびにはっきりと殿下が答えていた。
私が悪者にならない様に、あくまでも自分が悪いと言い続けて…
「リリアーナちゃん、よく来てくれたわね。嬉しいわ」
「リリアーナ嬢、今日は目いっぱい楽しんでいってくれ。夜会の料理は、リリアーナ嬢の好きなメニューを中心に作らせたら、楽しみにしていてくれよ」
「ありがとうございます。はい、今日は目いっぱい楽しませていただきますわ」
相変わらず優しい陛下や王妃様。私の為に夜会のメニューまで考えて下さっただなんて、なんだか申し訳ない。
「さあ、そろそろ入場の時間だ。行こうか」
陛下と王妃様、殿下と一緒に、入場していく。そういえばこうやって王族の皆さんと入場するのって、1年以上ぶりくらいね。なんだか緊張するわ。
“リリアーナ、緊張しているのかい?僕もいるし、大丈夫だよ”
そう耳元で呟くのは、殿下だ。私は別に、緊張なんてしていないのに!そう言いたいが、久しぶりでやはり緊張する。そんな私をしっかり支える様に歩いてくれる殿下。彼なりに気を使ってくれているのだろう。
そして夜会スタートだ。
「リリアーナ、今日のファーストダンスを一緒に踊ってくれますか?」
「はい、もちろんです」
殿下と一緒にホールの真ん中まで来ると、ゆっくり踊り出す。なんだかんだ言って、殿下が一番踊りやすいのだ。殿下は昔からダンスの苦手な私の為に、踊りやすい様にエスコートしてくれていた。
それが昔は当たり前だと思っていたけれど、殿下と婚約破棄をして他の令息と踊る様になってから、その事を知った。
そう、彼は私の気が付かないところで、それとなくサポートしてくれていたのだ。私はずっと、殿下に冷遇されていると思っていた。でも…私自身も殿下の事をよく見ていなかったのかもしれない。最近はそんな事を考える様になったのだ。
「リリアーナ、また浮かない顔をしているね。やっぱり僕と一緒にいると、辛いのかい?」
「いえ、違うのです。ちょっと別の事を考えておりまして。ごめんなさい。それよりも殿下は、ダンスがお上手ですね。ダンスが苦手な私も、殿下と踊るとそれなりに見えますわ」
「僕はダンスがそこまで上手な方ではないよ。リリアーナが相手だから、上手に踊れているのかもしれない。リリアーナはダンスが苦手と言っているけれど、とても踊りやすいよ。もっと自信を持った方がいい」
そう言ってほほ笑んでくれたのだ。私のダンスが踊りやすいだなんて…きっとお世辞よね。それでもなんだか嬉しい。
ダンスの後は、他の貴族たちが声を掛けてきてくれた。
「殿下、リリアーナ嬢、ごきげんよう。お2人が一緒にいらっしゃる姿、本当に絵になりますわ。一度は魔法の力で引き裂かれてしまいましたが、やはり真実の愛には勝てませんね。それで、いつご婚約発表を?」
嬉しそうに貴族たちが聞いてくる。私はまだ殿下と婚約何て、とてもじゃないけれど考えられないのだが…でも、今日殿下にエスコートされた事で、貴族界ではいずれ私たちが再び婚約を結び直すと考えるのが普通だろう。
どうしよう、どう答えれば…
「僕たちは今現在、婚約を結ぶことはありません。僕はリリアーナを、心無い言葉で傷つけ続けました。いくら魅了魔法に掛かっていたとはいえ、何の罪もないリリアーナの心を、めちゃくちゃにしたのです。あれほどまでに酷い事をしたのに、今日はエスコートを受けてくれた事、とても感謝しております。ですから、どうか僕たちが婚約するという憶測はお持ちにならないでいただきたい。僕たちは、僕の強い意志で婚約破棄をしたのですから」
貴族たちに向かって、大きな声でそう伝えた殿下。
「まあ、そうでしたのね。確かにリリアーナ嬢は、あの事件の一番の被害者ですものね。そう簡単に、婚約を結び直すという話ではありませんもの。私たら、つい先走ってしまいして、申し訳ございません」
「いえ、こちらこそ、誤解を与える様な事をしてしまい、申し訳ありませんでした。今日は僕も、リリアーナと婚約したい男性の1人として、彼女をスコートさせていただいた次第ですので」
そう言って少し悲しそうに笑った殿下。その後も沢山の貴族たちから、私たちの婚約について聞かれたが、そのたびにはっきりと殿下が答えていた。
私が悪者にならない様に、あくまでも自分が悪いと言い続けて…
19
お気に入りに追加
2,775
あなたにおすすめの小説
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる