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第32話:今の僕が出来る精一杯の事【前編】~アレホ視点~
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夜会から帰った後、すぐに湯あみを済ませベッドに入った。
「今日のリリアーナ、本当に美しかったな…」
瞳の色と合わせた青いドレスを身にまとったリリアーナは、まるで女神さまの様だった。ただ、別の令息にエスコートされて入場した姿を思い出すと、胸が締め付けられる。
わかっている、彼女は今フリーだ。誰と一緒に入場しようが、誰と一緒にダンスを踊ろうが、僕がとやかく言える立場ではない事を。それでも僕は、どうしようもない気持ちになる。
それにリリアーナは、他の令息にはあんな顔を見せるのだな。
グラドル殿始め、他の令息たちには可愛らしい笑顔を見せていた。よく考えてみれば、僕にはいつも困惑顔だ。これも分かっている、僕は彼女にとって、もう関わりたくはない人間。一方他の令息たちは、もしかしたらこれからの人生を共に歩んでいくかもしれない相手。
そう考えたら、僕といるよりも令息たちと一緒にいたいだろう。頭では分かっている、僕はもう、リリアーナから身を引くべきだと。実際リリアーナには、
“殿下を見ると何度も殿下から酷い叱責をされた事や、マルティ様にされた嫌がらせや暴力を思い出して辛い。殿下に嫌味を言ってしまう事も嫌だ。どうかもう自分には関わらないで欲しい。 “
と涙を流しながら訴えていた。あんなに優しいリリアーナに、酷い事を言わせているのは、僕自身だ。だからリリアーナから何を言われても、受け止めるつもりでいる。ただ…本人だって言いたくはないだろう。
リリアーナにしてみれば、やっと僕から解放されたのに、過去の呪縛に再び縛られるのは、地獄でしかないに違いない。今もまだ、僕はリリアーナを苦しめている、その事実がどうしようもないほど辛い。
僕の存在自体がリリアーナにとって苦痛なら、いっその事…
そう考えたこともあった。でも、唯一の王族でもある僕にもしものことがあれば、リリアーナが危惧していた争いごとが起きるかもしれない。リリアーナはその事を非常に心配してた。
だからこそ僕は、王位を継ぎこの国をより安定させ、リリアーナが安心して住める世界を作ろうと決意したのだ。
ただ僕は、王族として生きていくのなら、やはりパートナーはリリアーナでないと無理だ。もしリリアーナが別の令息と婚約でもしたら…そう考えるだけで、頭の中が真っ白になり、言いようのない恐怖に陥る。リリアーナを失った僕はきっと…
自分の我が儘の為にリリアーナを苦しめている事は百も承知だ。だからこそ、いつかリリアーナが許してくれる日を夢見て、これからも頑張りたい。その為にはまず…
ふと今日の令嬢4人のリリアーナに対する暴言を思い出す。まさか未だに、リリアーナにあんな酷い事を言う奴がいただなんて!万が一何かトラブルが起こった時の為に、いつでも持ち歩いている録音機を夜会に持って行ってよかった。
あいつらだけは、絶対に許せない!あの様な暴言を吐けばどうなるか、見せしめの意味も込めて、厳罰を希望しよう。まずはこの会話を、リリアーナの父親でもある公爵と国王でもある父上に聞かせないと!
とにかく、明日に備えてもう寝よう。リリアーナからも、しっかり睡眠をとる様にと言われている。僕はそのまま、眠りについたのだった。
翌日、朝早く起きた僕は、剣の稽古に励む。手の怪我も綺麗に治った事もあり、毎日稽古に励んでいるのだ。ただし、無理は禁物。また傷だらけの手を見たら、優しいリリアーナが心を痛めるからだ。とにかく僕は、もうリリアーナが嫌がる事を極力したくない。
2時間程度剣の稽古を終えると、朝食をしっかり食べ、公務を一気にこなす。この公務も、3時間程度で片づけた。
「おはようございます、殿下。もう公務を片付けられたのですか?相変わらず恐ろしい速さですね」
僕の元にやって来たのは、マレステーノ公爵だ。丁度いい。
「マレステーノ公爵、少しお話をしたいのですが、お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「殿下が改まって話がしたいだなんて。リリアーナとの婚約の事ですか?陛下からもその件については泣きつかれてはいるのですが、私は本人の気持ちを大切にしたいと思っておりまして…」
困った顔で呟く公爵。確かに僕はリリアーナと婚約したいが、今はその件ではないのだが…
「リリアーナの件ではあるのですが、婚約の話ではありません。父上も交えて話したいので、場所を移動しましょう」
不思議そうな顔の公爵を連れ、父上の元へと向かう。朝父上には大事な話がある事は伝えておいたから、僕の為に時間を空けておいてくれているはずだ。
「失礼いたします。父上、今宜しいでしょうか?」
「アレホ、それに公爵もよく来てくれた。それでアレホ、話しとはやはりリリアーナ嬢との婚約の件かい?」
父上といい、公爵といい、どうしてこうもせっかちなのだろう。僕はまだ何も話していないのに…
「いいえ…昨日の夜会で、少しトラブルが起こりましたので、その件について話そうと思い、お2人にお時間を頂いた次第です」
「今日のリリアーナ、本当に美しかったな…」
瞳の色と合わせた青いドレスを身にまとったリリアーナは、まるで女神さまの様だった。ただ、別の令息にエスコートされて入場した姿を思い出すと、胸が締め付けられる。
わかっている、彼女は今フリーだ。誰と一緒に入場しようが、誰と一緒にダンスを踊ろうが、僕がとやかく言える立場ではない事を。それでも僕は、どうしようもない気持ちになる。
それにリリアーナは、他の令息にはあんな顔を見せるのだな。
グラドル殿始め、他の令息たちには可愛らしい笑顔を見せていた。よく考えてみれば、僕にはいつも困惑顔だ。これも分かっている、僕は彼女にとって、もう関わりたくはない人間。一方他の令息たちは、もしかしたらこれからの人生を共に歩んでいくかもしれない相手。
そう考えたら、僕といるよりも令息たちと一緒にいたいだろう。頭では分かっている、僕はもう、リリアーナから身を引くべきだと。実際リリアーナには、
“殿下を見ると何度も殿下から酷い叱責をされた事や、マルティ様にされた嫌がらせや暴力を思い出して辛い。殿下に嫌味を言ってしまう事も嫌だ。どうかもう自分には関わらないで欲しい。 “
と涙を流しながら訴えていた。あんなに優しいリリアーナに、酷い事を言わせているのは、僕自身だ。だからリリアーナから何を言われても、受け止めるつもりでいる。ただ…本人だって言いたくはないだろう。
リリアーナにしてみれば、やっと僕から解放されたのに、過去の呪縛に再び縛られるのは、地獄でしかないに違いない。今もまだ、僕はリリアーナを苦しめている、その事実がどうしようもないほど辛い。
僕の存在自体がリリアーナにとって苦痛なら、いっその事…
そう考えたこともあった。でも、唯一の王族でもある僕にもしものことがあれば、リリアーナが危惧していた争いごとが起きるかもしれない。リリアーナはその事を非常に心配してた。
だからこそ僕は、王位を継ぎこの国をより安定させ、リリアーナが安心して住める世界を作ろうと決意したのだ。
ただ僕は、王族として生きていくのなら、やはりパートナーはリリアーナでないと無理だ。もしリリアーナが別の令息と婚約でもしたら…そう考えるだけで、頭の中が真っ白になり、言いようのない恐怖に陥る。リリアーナを失った僕はきっと…
自分の我が儘の為にリリアーナを苦しめている事は百も承知だ。だからこそ、いつかリリアーナが許してくれる日を夢見て、これからも頑張りたい。その為にはまず…
ふと今日の令嬢4人のリリアーナに対する暴言を思い出す。まさか未だに、リリアーナにあんな酷い事を言う奴がいただなんて!万が一何かトラブルが起こった時の為に、いつでも持ち歩いている録音機を夜会に持って行ってよかった。
あいつらだけは、絶対に許せない!あの様な暴言を吐けばどうなるか、見せしめの意味も込めて、厳罰を希望しよう。まずはこの会話を、リリアーナの父親でもある公爵と国王でもある父上に聞かせないと!
とにかく、明日に備えてもう寝よう。リリアーナからも、しっかり睡眠をとる様にと言われている。僕はそのまま、眠りについたのだった。
翌日、朝早く起きた僕は、剣の稽古に励む。手の怪我も綺麗に治った事もあり、毎日稽古に励んでいるのだ。ただし、無理は禁物。また傷だらけの手を見たら、優しいリリアーナが心を痛めるからだ。とにかく僕は、もうリリアーナが嫌がる事を極力したくない。
2時間程度剣の稽古を終えると、朝食をしっかり食べ、公務を一気にこなす。この公務も、3時間程度で片づけた。
「おはようございます、殿下。もう公務を片付けられたのですか?相変わらず恐ろしい速さですね」
僕の元にやって来たのは、マレステーノ公爵だ。丁度いい。
「マレステーノ公爵、少しお話をしたいのですが、お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「殿下が改まって話がしたいだなんて。リリアーナとの婚約の事ですか?陛下からもその件については泣きつかれてはいるのですが、私は本人の気持ちを大切にしたいと思っておりまして…」
困った顔で呟く公爵。確かに僕はリリアーナと婚約したいが、今はその件ではないのだが…
「リリアーナの件ではあるのですが、婚約の話ではありません。父上も交えて話したいので、場所を移動しましょう」
不思議そうな顔の公爵を連れ、父上の元へと向かう。朝父上には大事な話がある事は伝えておいたから、僕の為に時間を空けておいてくれているはずだ。
「失礼いたします。父上、今宜しいでしょうか?」
「アレホ、それに公爵もよく来てくれた。それでアレホ、話しとはやはりリリアーナ嬢との婚約の件かい?」
父上といい、公爵といい、どうしてこうもせっかちなのだろう。僕はまだ何も話していないのに…
「いいえ…昨日の夜会で、少しトラブルが起こりましたので、その件について話そうと思い、お2人にお時間を頂いた次第です」
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