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第29話:殿下が夜会にも顔を出し始めました
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「お嬢様、準備が整いましたよ」
「ありがとう、それじゃあ、行ってくるわね」
あれから1ヶ月が過ぎたが、相変わらず毎日我が家を訪れている殿下。きちんと睡眠と栄養を取っている様で、まだやつれてはいるが随分と顔色も良くなり、目のクマもなくなってきた。
お父様の話では、最近は無理をしなくなったらしいが、元々恐ろしいほど優秀な人なので、公務をあり得ないスピードでこなしているらしい。
“殿下はリリアーナに早く会いたくて、必死に公務をこなしているよ。私としては、早く仕事を片付けてくれるのは嬉しいがな”
そう言って笑っていた。お父様ったら、つい7ヶ月までは殿下に対してすごく怒っていたのに!お母様もなんだか殿下の味方の様だし…どうやら王妃様に泣きつかれた様で、それとなく私と殿下をくっつけようとしている様だ。
あの人たち、私より殿下の方が可愛いのかしら?と、つい卑屈になってしまう。
ちなみに今日は、侯爵家で行われる夜会に参加するのだ。私は月1回ペースで、夜会に参加する様にしている。我が国では大体2~3ヶ月に1回程度、夜会やお茶会に参加する人が多いため、かなりハイペースで参加しているのだ。
ただ…さすがにこのペースだと疲れるのよね。
とりあえず今日も素敵な殿方に出会えるよう、頑張ろう。そう思い玄関に向かうと。
「リリアーナ嬢、こんばんは。今日君のエスコートが出来る事、とても嬉しくてね。なんて綺麗なんだ…さあ、早速行こうか」
「お迎え頂きありがとうございます、グラドル様。今日はどうかよろしくお願いいたします」
我が国では適齢期の婚約者のいない令嬢は、同じく婚約者のいない令息と共に、入場するのが一般的だ。毎回同じ相手でもいいし、違う相手でもいい。ただ、同じ相手だと、あの2人は近々婚約するという噂が流れるので、私は毎回別の令息にエスコートしてもらっている。もちろんお誘い等がなければ、家族や1人で入場しても問題ない。複数人からお誘いがあれば、爵位が一番高い方にエスコートして頂くというのが、この国のルールだ。
ちなみに今回の私のパートナーは、グラドル・ヴィノデール様だ。公爵家の嫡男で、14歳。私の1つ下の令息だ。
グラドル様と一緒に馬車に乗り込み、今日の会場へと目指す。
「リリアーナ嬢とこうやって馬車に乗れるだなんて、本当に光栄だ。今日のドレスは、瞳の色に合わせているのかい?」
「はい、そうですわ。グラドル様のスーツも素敵ですわね」
「このスーツは、異国の素材を使って作らせたものなのだよ。触り心地もよくて、気やすいんだ」
「まあ、そうだったのですね。珍しい素材だと思ったのです」
こんな感じで当たり障りのない話しをしていると、今日の会場へと付いた。2人で腕を組んで、ゆっくりと入場する。
ご丁寧に
「グラドル・ヴィノデール様、リリアーナ・マレステーノ嬢、ご入場です」
と、アナウンスしてくれるのだ。
「リリアーナ嬢、見て。他の令息たちが一斉にこちらを見ているよ。君は今、この国で一番注目を集めている婚約者のいない令嬢だからね。今日君をエスコート出来て、本当に幸せだよ」
そう言ってグラドル様が微笑んでいる。グラドル様はお世辞がうまい様だ。でも、ある意味注目は集めているかもしれないわね。マルティ様と殿下の件で。
その時だった。
「リリアーナ、どうしてグラドル殿にエスコートされているのだい?まさかグラドル殿と…」
真っ青な顔でこちらにやって来たのは、殿下だ。最近顔色が良かったのに、また青い顔をしていらっしゃるわ。それにしても、今まで夜会には参加していなかったのに…
「ごきげんよう、殿下。殿下が夜会に参加していらっしゃるだなんて、珍しいですわね」
「僕はリリアーナが夜会に参加していると聞いて、片っ端から参加していたのだよ。それよりも、どうしてグラドル殿にエスコートされているのだい?まさか2人は…」
訳の分からない事を殿下が呟いている。
「殿下、お久しぶりです。今日は僕がリリアーナ嬢のエスコート役を、承ったのです。リリアーナ嬢は今一番人気の婚約者がいない令嬢なのです。僕もやっと今日、エスコートできました」
「そう言えばこの国では、婚約者のいない令息が同じく婚約者のいない令嬢をエスコートするのが一般的だったな…それで今日は、グラドル殿がエスコートを。僕がエスコートしたかったな…」
訳の分からない事を、ブツブツと言っている殿下。
「それでは殿下、私共はこれで失礼いたします。リリアーナ嬢、ダンスを一緒に踊って頂けますか?」
「はい、もちろんですわ」
すっとグラドル様の手を取りホールの真ん中に行こうとした時だった。
「ありがとう、それじゃあ、行ってくるわね」
あれから1ヶ月が過ぎたが、相変わらず毎日我が家を訪れている殿下。きちんと睡眠と栄養を取っている様で、まだやつれてはいるが随分と顔色も良くなり、目のクマもなくなってきた。
お父様の話では、最近は無理をしなくなったらしいが、元々恐ろしいほど優秀な人なので、公務をあり得ないスピードでこなしているらしい。
“殿下はリリアーナに早く会いたくて、必死に公務をこなしているよ。私としては、早く仕事を片付けてくれるのは嬉しいがな”
そう言って笑っていた。お父様ったら、つい7ヶ月までは殿下に対してすごく怒っていたのに!お母様もなんだか殿下の味方の様だし…どうやら王妃様に泣きつかれた様で、それとなく私と殿下をくっつけようとしている様だ。
あの人たち、私より殿下の方が可愛いのかしら?と、つい卑屈になってしまう。
ちなみに今日は、侯爵家で行われる夜会に参加するのだ。私は月1回ペースで、夜会に参加する様にしている。我が国では大体2~3ヶ月に1回程度、夜会やお茶会に参加する人が多いため、かなりハイペースで参加しているのだ。
ただ…さすがにこのペースだと疲れるのよね。
とりあえず今日も素敵な殿方に出会えるよう、頑張ろう。そう思い玄関に向かうと。
「リリアーナ嬢、こんばんは。今日君のエスコートが出来る事、とても嬉しくてね。なんて綺麗なんだ…さあ、早速行こうか」
「お迎え頂きありがとうございます、グラドル様。今日はどうかよろしくお願いいたします」
我が国では適齢期の婚約者のいない令嬢は、同じく婚約者のいない令息と共に、入場するのが一般的だ。毎回同じ相手でもいいし、違う相手でもいい。ただ、同じ相手だと、あの2人は近々婚約するという噂が流れるので、私は毎回別の令息にエスコートしてもらっている。もちろんお誘い等がなければ、家族や1人で入場しても問題ない。複数人からお誘いがあれば、爵位が一番高い方にエスコートして頂くというのが、この国のルールだ。
ちなみに今回の私のパートナーは、グラドル・ヴィノデール様だ。公爵家の嫡男で、14歳。私の1つ下の令息だ。
グラドル様と一緒に馬車に乗り込み、今日の会場へと目指す。
「リリアーナ嬢とこうやって馬車に乗れるだなんて、本当に光栄だ。今日のドレスは、瞳の色に合わせているのかい?」
「はい、そうですわ。グラドル様のスーツも素敵ですわね」
「このスーツは、異国の素材を使って作らせたものなのだよ。触り心地もよくて、気やすいんだ」
「まあ、そうだったのですね。珍しい素材だと思ったのです」
こんな感じで当たり障りのない話しをしていると、今日の会場へと付いた。2人で腕を組んで、ゆっくりと入場する。
ご丁寧に
「グラドル・ヴィノデール様、リリアーナ・マレステーノ嬢、ご入場です」
と、アナウンスしてくれるのだ。
「リリアーナ嬢、見て。他の令息たちが一斉にこちらを見ているよ。君は今、この国で一番注目を集めている婚約者のいない令嬢だからね。今日君をエスコート出来て、本当に幸せだよ」
そう言ってグラドル様が微笑んでいる。グラドル様はお世辞がうまい様だ。でも、ある意味注目は集めているかもしれないわね。マルティ様と殿下の件で。
その時だった。
「リリアーナ、どうしてグラドル殿にエスコートされているのだい?まさかグラドル殿と…」
真っ青な顔でこちらにやって来たのは、殿下だ。最近顔色が良かったのに、また青い顔をしていらっしゃるわ。それにしても、今まで夜会には参加していなかったのに…
「ごきげんよう、殿下。殿下が夜会に参加していらっしゃるだなんて、珍しいですわね」
「僕はリリアーナが夜会に参加していると聞いて、片っ端から参加していたのだよ。それよりも、どうしてグラドル殿にエスコートされているのだい?まさか2人は…」
訳の分からない事を殿下が呟いている。
「殿下、お久しぶりです。今日は僕がリリアーナ嬢のエスコート役を、承ったのです。リリアーナ嬢は今一番人気の婚約者がいない令嬢なのです。僕もやっと今日、エスコートできました」
「そう言えばこの国では、婚約者のいない令息が同じく婚約者のいない令嬢をエスコートするのが一般的だったな…それで今日は、グラドル殿がエスコートを。僕がエスコートしたかったな…」
訳の分からない事を、ブツブツと言っている殿下。
「それでは殿下、私共はこれで失礼いたします。リリアーナ嬢、ダンスを一緒に踊って頂けますか?」
「はい、もちろんですわ」
すっとグラドル様の手を取りホールの真ん中に行こうとした時だった。
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