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第27話:心がぐちゃぐちゃです
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「それでは私はこれで失礼いたしますわ。今日はご馳走様でした」
「あら、せっかくだから食後のお茶でも飲みましょう。リリアーナちゃんとまだお話がしたいわ」
「とても光栄な事なのですが、また今度にいたしますわ」
「そう…残念ね。またぜひ遊びに来て頂戴ね。近々王宮で夜会も開くから、その時もぜひ」
「はい、夜会の時はぜひ参加させていただきますわ。それでは失礼いたします」
そう伝えると1人で門まで向かおうとしたのだが。わざわざ私の為に、陛下と王妃様、殿下がお見送りに来てくれたのだ。
「リリアーナ、今日は本当にありがとう。もう辺りは真っ暗だし、心配だから送っていくよ」
「いえ、大丈夫ですわ。それよりも殿下、どうか今日からゆっくり休んでください。それでは失礼いたします」
殿下や陛下、王妃様に頭を下げてそのまま馬車に乗り込もうとしたのだが。
「いいや、送らせてもらおうよ。僕は少しでもリリアーナと一緒にいたいからね。それに僕の知らない間に、令息たちに言い寄られているだなんて…何とか挽回しないと!」
何やら訳の分からない事を言いながら、殿下が馬車に乗り込んできたのだ。この人は何を言っているのかしら?相変わらず強引な人ね…
そうだわ、殿下に聞きたい事があったのだった。
「殿下、半年以上もの間、毎日私の好きな物をプレゼントしてくださいましたよね。あの、どうして私の好きなものご存じなのですか?誰に聞いたのですか?まさかお父様…」
「ああ、あれね…公爵はリリアーナの好きな物なんて教えてくれないよ。引かれてしまうかもしれないが、僕は子供の頃から君が大好きだったんだ。だからリリアーナの事は何でも知りたくて、些細な事でも全てメモをして取っておいたんだよ」
何と!その様な事をしていらしただなんて…それならどうして、もっと私の事を大切にしてくれなかったのだろう。大切にしてくれていたら、たとえ魅了魔法に掛かり酷い扱いを受けていたとしても、もしかしたら許せたかもしれないのに…
「殿下は本当に私の事が好きだったのですか?はっきり申し上げまして、そのようには全く見えませんでしたが」
「好きすぎて、君の前ではどうしてもうまく話せなくてね。きっとあの時は、自分の立場に胡坐をかいていたのだろう。今君を本気で失って、初めてこんなにもたくさん話が出来るようになるだなんて。本当に僕は、どうしようもない人間なんだよ」
そう言うよ、悲しそうに笑った殿下。
「皆は僕の事を、真面目で優秀だと褒めてくれるが、僕はそんな立派な人間ではない。不器用で好きな女性すら傷つけてしまう様な奴さ。それでも僕は、リリアーナの事を諦めたくはない。というより、諦められないんだ。それほどまでに僕にとって、リリアーナは大切だから」
「殿下、申し訳ございません。あなた様のお気持ちは理解できました。ただ…そこまで大切に思って下さっていたなら、どうして今まで私に冷たかったのですか?今更優しくされても、困惑するだけですわ…正直私はもう、あなた様と歩む未来は考えたくはないのです。酷い事を申しあげてごめんなさい。でも、私は…」
気が付くと涙が溢れていた。もう私はこれ以上、殿下に振り回されたくはないし傷つきたくはないのだ。それなのにどうして、この人は分かってくれないのだろう。
「ごめん、リリアーナ。僕はどれだけリリアーナを泣かせれば気が済むのだろう。本当にごめんね。僕の存在が君を傷つけている事は理解している。本当は僕は、もう二度と君の前に現れるべきではないのだろう。それでも僕は…」
「あら?このハンカチ…」
私の涙を必死に拭いてくれる殿下が持っているハンカチは、私が殿下と婚約して、初めで殿下にプレゼントした刺繍入りのハンカチだ。私は不器用で、あまり刺繍が上手くないが、それでも一生懸命入れたのだ。
ただ、“もう刺繍を入れるのは控えてくれ”と、言われてしまって、ショックを受けたのだが…
「このハンカチは僕の宝物なんだ。覚えているかい?婚約を結んで初めて君がプレゼントしてくれた刺繍入りのハンカチだよ。あの時は嬉しくて嬉しくて。ただ、リリアーナの指が傷だらけだったのがすごく気になってね。もう可愛い手を僕の為に傷つけて欲しくなくて、そっけない態度を取ってしまって、本当にすまなかった」
私の指の怪我、気が付いていらしたのね…それにずっとあのハンカチを持っていて下さっていただなんて…
「この刺繍、下手ですよね…よくこんな出来栄えの物を、渡したものですわ」
改めて見たが、酷い出来栄えだ。確か獅子をイメージして作ったのだが、得体のしれない仮想動物にしか見えない。
「僕にとっては、立派な獅子だよ。それに何より、リリアーナが一生懸命刺繍を入れてくれたのだろう?これは僕の宝物だ」
そう言って殿下が微笑んでいる。こんな出来損ないの刺繍が入ったハンカチが、宝物だなんて…て、私は騙されないのだから!プイっと反対側を向いた。
「公爵家に着いたね。それじゃあ、近々王宮から夜会の招待状を送るから、ぜひ参加して欲しい。今日は本当にありがとう」
「こちらこそ、ごちそうさまでした。殿下、どうかこれからは、しっかり食べてゆっくり休んでください。それでは失礼します」
ペコリと殿下に頭を下げて、馬車から降りた。すると殿下も馬車から降り、私に向かって手を振っている。そうか、公爵家の馬車で帰って来たから、馬車を乗り換えるのね。
再び会釈をして、屋敷に戻ったのだった。
「あら、せっかくだから食後のお茶でも飲みましょう。リリアーナちゃんとまだお話がしたいわ」
「とても光栄な事なのですが、また今度にいたしますわ」
「そう…残念ね。またぜひ遊びに来て頂戴ね。近々王宮で夜会も開くから、その時もぜひ」
「はい、夜会の時はぜひ参加させていただきますわ。それでは失礼いたします」
そう伝えると1人で門まで向かおうとしたのだが。わざわざ私の為に、陛下と王妃様、殿下がお見送りに来てくれたのだ。
「リリアーナ、今日は本当にありがとう。もう辺りは真っ暗だし、心配だから送っていくよ」
「いえ、大丈夫ですわ。それよりも殿下、どうか今日からゆっくり休んでください。それでは失礼いたします」
殿下や陛下、王妃様に頭を下げてそのまま馬車に乗り込もうとしたのだが。
「いいや、送らせてもらおうよ。僕は少しでもリリアーナと一緒にいたいからね。それに僕の知らない間に、令息たちに言い寄られているだなんて…何とか挽回しないと!」
何やら訳の分からない事を言いながら、殿下が馬車に乗り込んできたのだ。この人は何を言っているのかしら?相変わらず強引な人ね…
そうだわ、殿下に聞きたい事があったのだった。
「殿下、半年以上もの間、毎日私の好きな物をプレゼントしてくださいましたよね。あの、どうして私の好きなものご存じなのですか?誰に聞いたのですか?まさかお父様…」
「ああ、あれね…公爵はリリアーナの好きな物なんて教えてくれないよ。引かれてしまうかもしれないが、僕は子供の頃から君が大好きだったんだ。だからリリアーナの事は何でも知りたくて、些細な事でも全てメモをして取っておいたんだよ」
何と!その様な事をしていらしただなんて…それならどうして、もっと私の事を大切にしてくれなかったのだろう。大切にしてくれていたら、たとえ魅了魔法に掛かり酷い扱いを受けていたとしても、もしかしたら許せたかもしれないのに…
「殿下は本当に私の事が好きだったのですか?はっきり申し上げまして、そのようには全く見えませんでしたが」
「好きすぎて、君の前ではどうしてもうまく話せなくてね。きっとあの時は、自分の立場に胡坐をかいていたのだろう。今君を本気で失って、初めてこんなにもたくさん話が出来るようになるだなんて。本当に僕は、どうしようもない人間なんだよ」
そう言うよ、悲しそうに笑った殿下。
「皆は僕の事を、真面目で優秀だと褒めてくれるが、僕はそんな立派な人間ではない。不器用で好きな女性すら傷つけてしまう様な奴さ。それでも僕は、リリアーナの事を諦めたくはない。というより、諦められないんだ。それほどまでに僕にとって、リリアーナは大切だから」
「殿下、申し訳ございません。あなた様のお気持ちは理解できました。ただ…そこまで大切に思って下さっていたなら、どうして今まで私に冷たかったのですか?今更優しくされても、困惑するだけですわ…正直私はもう、あなた様と歩む未来は考えたくはないのです。酷い事を申しあげてごめんなさい。でも、私は…」
気が付くと涙が溢れていた。もう私はこれ以上、殿下に振り回されたくはないし傷つきたくはないのだ。それなのにどうして、この人は分かってくれないのだろう。
「ごめん、リリアーナ。僕はどれだけリリアーナを泣かせれば気が済むのだろう。本当にごめんね。僕の存在が君を傷つけている事は理解している。本当は僕は、もう二度と君の前に現れるべきではないのだろう。それでも僕は…」
「あら?このハンカチ…」
私の涙を必死に拭いてくれる殿下が持っているハンカチは、私が殿下と婚約して、初めで殿下にプレゼントした刺繍入りのハンカチだ。私は不器用で、あまり刺繍が上手くないが、それでも一生懸命入れたのだ。
ただ、“もう刺繍を入れるのは控えてくれ”と、言われてしまって、ショックを受けたのだが…
「このハンカチは僕の宝物なんだ。覚えているかい?婚約を結んで初めて君がプレゼントしてくれた刺繍入りのハンカチだよ。あの時は嬉しくて嬉しくて。ただ、リリアーナの指が傷だらけだったのがすごく気になってね。もう可愛い手を僕の為に傷つけて欲しくなくて、そっけない態度を取ってしまって、本当にすまなかった」
私の指の怪我、気が付いていらしたのね…それにずっとあのハンカチを持っていて下さっていただなんて…
「この刺繍、下手ですよね…よくこんな出来栄えの物を、渡したものですわ」
改めて見たが、酷い出来栄えだ。確か獅子をイメージして作ったのだが、得体のしれない仮想動物にしか見えない。
「僕にとっては、立派な獅子だよ。それに何より、リリアーナが一生懸命刺繍を入れてくれたのだろう?これは僕の宝物だ」
そう言って殿下が微笑んでいる。こんな出来損ないの刺繍が入ったハンカチが、宝物だなんて…て、私は騙されないのだから!プイっと反対側を向いた。
「公爵家に着いたね。それじゃあ、近々王宮から夜会の招待状を送るから、ぜひ参加して欲しい。今日は本当にありがとう」
「こちらこそ、ごちそうさまでした。殿下、どうかこれからは、しっかり食べてゆっくり休んでください。それでは失礼します」
ペコリと殿下に頭を下げて、馬車から降りた。すると殿下も馬車から降り、私に向かって手を振っている。そうか、公爵家の馬車で帰って来たから、馬車を乗り換えるのね。
再び会釈をして、屋敷に戻ったのだった。
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