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第21話:殿下が毎日訪ねてきます
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昔から私の事を好きだった?私を見ると恥ずかしくてうまく話せない?今更そんな事を言われても、心に全く響かない。それならどうして、あの時に言ってくれなかったのだろう。
魅了魔法に掛かっていた時は百歩譲って仕方がない部分もあった。それでもあの親の仇を見る様な憎悪に満ちた瞳、私の話を全く聞かず、私を怒鳴りつけたあの声。楽しそうにマルティ様と話していた時の顔。
全てが私にとって、辛い出来事なのだ。魅了魔法が解けたから、もう一度やり直したいだなんて、そんな勝手な言い分はないわ。私が今までどれほど苦しみ、悲しんできたか。公爵令嬢を辞めようとしたくらいなのに!
そもそも私の事を何だと思っているのかしら?私だって、感情を持った人間なのだ。あれほどまでに私をボロボロに傷つけておいて、一体どの口がやり直したいと言えるのだろう。あまりにも自己中心的で、我が儘としか思えない!
次々と溢れる涙を必死に拭う。
「リリアーナ、大丈夫?殿下は先ほど帰られたわ」
「お母様、私」
「何も言わなくても分かっているわ。今更あのような事を言われても困るわよね。殿下も一体何を考えているのかしら?あそこまでリリアーナを傷つけておいて、今更やり直したいだなんて。図々しいにも程があるわ。明日私も王宮に行って、王妃殿下に抗議してくるわ。うちの娘を何だと思っているの?って」
王妃様…
お母様の親友で、私にもとても優しくてくれた人。私の事を本当の娘の様に接してくれた。
「お母様、王妃様には言わないで下さい。ただでさえ今、色々あって心を痛めていらっしゃるところを、親友でもあるお母様から抗議されたら、きっと王妃様は辛いと思うのです」
これ以上、王妃様を悲しませたくない。
「…分かったわ。あなたは本当に優しい子ね。それじゃあ、これからは殿下が来たら、お母様が追い返すわ。任せておきなさい!使用人たちにも、殿下が来ても屋敷に入れない様に伝えておくから」
俄然張り切るお母様。少し心配だが、私の事を必死に守ろうとしてくれているのは分かる。
「ありがとうございます、お母様」
翌日、この日も殿下がやって来たが、お母様が追い返してくれたので、私が会う事はなかった。ただ…
「リリアーナ、これを殿下があなたに渡してくれって」
そう言うと、色とりどりの美しいバラの花束を置いて行ったのだ。私は子供の頃から、バラが大好きなのだ。でも、殿下には話した事がなかったのに。て、きっとたまたまよね。
そしてその翌日も、翌々日も殿下は我が家にやって来ては、お母様に追い返されていた。そのたびに、私の好きなお菓子や香水、可愛いアクセサリーなどを持って来るのだ。
どれもこれも私の好みのものばかり。最初は偶然かと思ったが、そうではない様だ。もしかしてお父様がこっそり殿下に私の好きなものを教えているのかもしれない。お父様は元々、私と殿下を結婚させたいと考えていたのだから!
そう思いお父様に抗議したのだが…
「私は殿下に何も話していないよ。そもそも、殿下は今、物凄く忙しそうに仕事をこなしているのだよ。一体いつ、どのタイミングで我が家に押しかけてきているのか不思議なくらいだ…もしかして殿下は、2人いらっしゃるのか?」
なんて、訳の分からない事を言っていた。もしかしたら、本当に殿下が2人…いる訳がないか。という事は、どうやって私の好きな物の情報を集めているのだろう…
そしてもう1つ気になる点が。そう、たまに窓の外を見ると、門の外で殿下が切なそうに屋敷を見つめている姿を見かけるときがあるのだ。酷いときは雨に打たれている姿を見た事がある。その時はさすがに使用人に伝え、傘を渡すとともに、すぐに帰ってもらう様に伝えたのだが…
なんだか日に日に、行動がエスカレートしている気がする…
そんな日々が、半年ほど続いた頃。
「リリアーナ、今日はあなたの好きな、紅茶を取り寄せて下さったそうよ」
そう言ってお母様が茶葉を持ってやってきた。
「お母様、殿下はどうして私の好きな物をそんなに知っているのかしら?もしかしてお母様が?」
「私は何も言っていないわ!それにしても殿下、毎日毎日我が家に押しかけてきて。日に日にやつれてきているし。ねえ、リリアーナ、こんなにも色々と贈り物をもらっているのだから、一度殿下にお会いしたら?さすがにこうも毎日門前払いじゃあ、申し訳ないわ」
そんな事を言いだしたお母様。確かに毎日毎日我が家に押しかけられたら迷惑だ。第一半年もの間、門前払いされているのだから、いい加減諦めて欲しい。それにお父様の話では、殿下は相当お忙しそうだし。
「分かりましたわ、明日はっきりと、もう来ないで下さい!迷惑です!と、告げますわ」
さすがにこれ以上お母様に対応してもらうのも、申し訳ない。私の口からはっきりと殿下に伝えよう。
そして翌日、いつもの様に殿下が訪ねて来た。早速玄関へと向かう。
「殿下、お久しぶりです」
「リリアーナ、出てきてくれたのだね。嬉しいよ」
私の顔を見るなり、今まで見た事のない様な嬉しそうな顔をした殿下。何なの、この人。今まで私を見ても、無表情か睨みつけるかしかしていなかったのに…今更そんな顔をされても、私は騙されないのだから!
魅了魔法に掛かっていた時は百歩譲って仕方がない部分もあった。それでもあの親の仇を見る様な憎悪に満ちた瞳、私の話を全く聞かず、私を怒鳴りつけたあの声。楽しそうにマルティ様と話していた時の顔。
全てが私にとって、辛い出来事なのだ。魅了魔法が解けたから、もう一度やり直したいだなんて、そんな勝手な言い分はないわ。私が今までどれほど苦しみ、悲しんできたか。公爵令嬢を辞めようとしたくらいなのに!
そもそも私の事を何だと思っているのかしら?私だって、感情を持った人間なのだ。あれほどまでに私をボロボロに傷つけておいて、一体どの口がやり直したいと言えるのだろう。あまりにも自己中心的で、我が儘としか思えない!
次々と溢れる涙を必死に拭う。
「リリアーナ、大丈夫?殿下は先ほど帰られたわ」
「お母様、私」
「何も言わなくても分かっているわ。今更あのような事を言われても困るわよね。殿下も一体何を考えているのかしら?あそこまでリリアーナを傷つけておいて、今更やり直したいだなんて。図々しいにも程があるわ。明日私も王宮に行って、王妃殿下に抗議してくるわ。うちの娘を何だと思っているの?って」
王妃様…
お母様の親友で、私にもとても優しくてくれた人。私の事を本当の娘の様に接してくれた。
「お母様、王妃様には言わないで下さい。ただでさえ今、色々あって心を痛めていらっしゃるところを、親友でもあるお母様から抗議されたら、きっと王妃様は辛いと思うのです」
これ以上、王妃様を悲しませたくない。
「…分かったわ。あなたは本当に優しい子ね。それじゃあ、これからは殿下が来たら、お母様が追い返すわ。任せておきなさい!使用人たちにも、殿下が来ても屋敷に入れない様に伝えておくから」
俄然張り切るお母様。少し心配だが、私の事を必死に守ろうとしてくれているのは分かる。
「ありがとうございます、お母様」
翌日、この日も殿下がやって来たが、お母様が追い返してくれたので、私が会う事はなかった。ただ…
「リリアーナ、これを殿下があなたに渡してくれって」
そう言うと、色とりどりの美しいバラの花束を置いて行ったのだ。私は子供の頃から、バラが大好きなのだ。でも、殿下には話した事がなかったのに。て、きっとたまたまよね。
そしてその翌日も、翌々日も殿下は我が家にやって来ては、お母様に追い返されていた。そのたびに、私の好きなお菓子や香水、可愛いアクセサリーなどを持って来るのだ。
どれもこれも私の好みのものばかり。最初は偶然かと思ったが、そうではない様だ。もしかしてお父様がこっそり殿下に私の好きなものを教えているのかもしれない。お父様は元々、私と殿下を結婚させたいと考えていたのだから!
そう思いお父様に抗議したのだが…
「私は殿下に何も話していないよ。そもそも、殿下は今、物凄く忙しそうに仕事をこなしているのだよ。一体いつ、どのタイミングで我が家に押しかけてきているのか不思議なくらいだ…もしかして殿下は、2人いらっしゃるのか?」
なんて、訳の分からない事を言っていた。もしかしたら、本当に殿下が2人…いる訳がないか。という事は、どうやって私の好きな物の情報を集めているのだろう…
そしてもう1つ気になる点が。そう、たまに窓の外を見ると、門の外で殿下が切なそうに屋敷を見つめている姿を見かけるときがあるのだ。酷いときは雨に打たれている姿を見た事がある。その時はさすがに使用人に伝え、傘を渡すとともに、すぐに帰ってもらう様に伝えたのだが…
なんだか日に日に、行動がエスカレートしている気がする…
そんな日々が、半年ほど続いた頃。
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そう言ってお母様が茶葉を持ってやってきた。
「お母様、殿下はどうして私の好きな物をそんなに知っているのかしら?もしかしてお母様が?」
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私の顔を見るなり、今まで見た事のない様な嬉しそうな顔をした殿下。何なの、この人。今まで私を見ても、無表情か睨みつけるかしかしていなかったのに…今更そんな顔をされても、私は騙されないのだから!
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