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第50話:やらなければいけない事があります
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「ディアン、ごめんなさい。私はいつも、自分の事ばかりね。あなたが昔、どんな思いで領地に向かったかも知らずに…私ね、ディアンはセレナ様の事が好きだと思っていたの。本来なら身を引かないといけない事は分かっていたのに、どうしてもできなくて…自分が前に進むために、ディアンに気持ちを伝えようと思っていたの。私はいつも自分の事ばかりで、嫌になるわ。本当にこんな私でいいの?私、自分勝手な女よ?」
「ユーリは自分勝手な女なんかじゃないよ。優しくて可愛くて、僕にとって誰よりも魅力的な女性だ。まさかユーリが、僕とカレテイス伯爵令嬢との仲を勘違いしていただなんて。僕こそ、自分の事ばかり考えていたよ。辛い思いをさせて、ごめんね」
ディアンが泣きながら、ギュッと抱きしめてくれた。その温もりを感じた瞬間、なぜか私も涙が溢れだす。
「ディアンは悪くはないわ。私が完全に勘違いしてしまったの。ディアン、今まで辛い思いをさせて、本当にごめんなさい。ディアンがどんな気持ちで領地に向かったのか考えたら、申し訳なくて仕方がないわ。辛い思いをさせてしまった分、今度は私が必ずディアンを幸せにするから」
「ユーリ、あの時の事は気にしないでくれ。僕の方こそ、今度こそ僕の手でユーリを幸せにしたい。その権利をもらえただけで、僕は幸せだよ」
ゆっくりと私から離れたディアンが、先ほど贈ってくれた指輪を手に取った。そして私の指に、指輪をそっと付けてくれた。
「本当に素敵な指輪ね。ディアン、こんな素敵な指輪を準備してくれて、本当にありがとう。セレナ様にもお礼を言わないとね」
指についている指輪を見つめた。この指輪には、私の瞳の色でもあるサファイアと、ディアンの瞳の色でもあるルビーが付いている。それがなんだか嬉しい。
「ユーリ、改めて僕の気持ちを受け入れてくれて、ありがとう。さすがに今日は断られると思っていたから、両親には何も言っていないけれど、近々うちの両親とユーリの両親に、僕たちの気持ちを伝えよう。いいよね?」
「ええ、もちろんよ。まさかディアンと婚約できるだなんて、思わなかったわ。ただ…」
私の脳裏に浮かんだのは、アレックス様だ。彼には散々酷い事をされてきたが、最近は随分気遣ってもらった。今回だって、アレックス様のお陰で、ディアンへの気持ちに気づく事が出来た。
それにアレックス様は、私とディアンにとって、大切な幼馴染だ。やはり自分の口から、アレックス様には伝えたい。
「ユーリ、アレックスの事を気にしているのだね。アレックスは僕たちにとって、大切な幼馴染だ。だからこそ、僕たちの口からその事を伝えないといけないね。今からアレックスに会いに行こう」
「えっ?今から会いに行くのですか?」
「ああ、早く伝えた方がいいからね。明日きっと、カレテイス伯爵令嬢からどうだったか聞かれるだろうし、その指輪を見たら、ユーリが誰かと婚約する事が決まった事が分かるだろう?その前に、僕たちの口からしっかり伝えるべきだと思うんだ」
確かに指輪を見たら、きっとアレックス様も気が付くだろう。ディアンの言う通り、アレックス様には事前に知らせておいた方がいい。
「分かったわ、それじゃあ、早速使いを送りましょう。それから、友人達にも早く知らせたいから、手紙を書いてもいいかしら?」
レーナ、カリン、マリアンには今まで散々心配をかけた。さすがに3人の家を今から回る訳にはいかないので、せめて手紙で知らせたいと思ったのだ。彼女たちならきっと、喜んでくれるだろう。
急いで手紙を書き、彼女たちの家に送るよう手配を整えた。
「ユーリ、そろそろ行こうか」
「ええ、そうね」
すっと差し出してくれたディアンの手を握った。温かくて大きな手、もう握る事もないと思っていたが、まさかまたこんな風に手を握る事が出来るだなんて。
そんな思いを抱きながら、2人で馬車に乗り込んだ。
「ユーリ、本当に僕でいいのかい?君はずっとアレックスの事が好きだっただろう?」
急に不安そうな顔で、ディアンが問いかけて来たのだ。
「確かに昔は、アレックス様の事が好きだったわ。でも…あれほどまでに拒否され、利用され続けてきたのよ。さすがにもう、アレックス様との未来は考えられないわ。それに、私がアレックス様への気持ちを断ち切る事が出来たのは、ディアン、あなたのお陰なの。あなたと過ごすうちに、いつの間にかアレックス様の事を忘れる事が出来たのよ」
そう、ディアンがいてくれたから、私は前に進むことが出来たのだ。
「ディアン、私はあなたの事が大好きよ。だから、これからもずっと傍にいて下さい」
真っすぐディアンを見つめ、改めてそう伝えた。
「ユーリ、ありがとう」
今にも泣きそうな顔のディアンが、ギュッと私を抱きしめた。その温もりが心地いい。このままずっとこうしていたい、そんな事を考えているうちに、馬車が停まったのだ。
窓の外を見ると、何度もお邪魔したことがある、見慣れがアレックス様のお屋敷が目に飛び込んできた。きっとここに来るのも、今日が最後だろう。
そう思うと、なんだか寂しい気持ちになった。
「ユーリ、大丈夫かい?もし君がアレックスに会いたくないというのなら、僕が1人でアレックスに会いに行くよ」
心配そうにディアンが話しかけてきてくれた。確かにアレックス様に会うのは勇気がいる。
でも、私の口からしっかりアレックス様に気持ちを伝えたい。
「大丈夫よ、行きましょう、ディアン」
ディアンの手をしっかり握り、馬車を降りたのだった。
「ユーリは自分勝手な女なんかじゃないよ。優しくて可愛くて、僕にとって誰よりも魅力的な女性だ。まさかユーリが、僕とカレテイス伯爵令嬢との仲を勘違いしていただなんて。僕こそ、自分の事ばかり考えていたよ。辛い思いをさせて、ごめんね」
ディアンが泣きながら、ギュッと抱きしめてくれた。その温もりを感じた瞬間、なぜか私も涙が溢れだす。
「ディアンは悪くはないわ。私が完全に勘違いしてしまったの。ディアン、今まで辛い思いをさせて、本当にごめんなさい。ディアンがどんな気持ちで領地に向かったのか考えたら、申し訳なくて仕方がないわ。辛い思いをさせてしまった分、今度は私が必ずディアンを幸せにするから」
「ユーリ、あの時の事は気にしないでくれ。僕の方こそ、今度こそ僕の手でユーリを幸せにしたい。その権利をもらえただけで、僕は幸せだよ」
ゆっくりと私から離れたディアンが、先ほど贈ってくれた指輪を手に取った。そして私の指に、指輪をそっと付けてくれた。
「本当に素敵な指輪ね。ディアン、こんな素敵な指輪を準備してくれて、本当にありがとう。セレナ様にもお礼を言わないとね」
指についている指輪を見つめた。この指輪には、私の瞳の色でもあるサファイアと、ディアンの瞳の色でもあるルビーが付いている。それがなんだか嬉しい。
「ユーリ、改めて僕の気持ちを受け入れてくれて、ありがとう。さすがに今日は断られると思っていたから、両親には何も言っていないけれど、近々うちの両親とユーリの両親に、僕たちの気持ちを伝えよう。いいよね?」
「ええ、もちろんよ。まさかディアンと婚約できるだなんて、思わなかったわ。ただ…」
私の脳裏に浮かんだのは、アレックス様だ。彼には散々酷い事をされてきたが、最近は随分気遣ってもらった。今回だって、アレックス様のお陰で、ディアンへの気持ちに気づく事が出来た。
それにアレックス様は、私とディアンにとって、大切な幼馴染だ。やはり自分の口から、アレックス様には伝えたい。
「ユーリ、アレックスの事を気にしているのだね。アレックスは僕たちにとって、大切な幼馴染だ。だからこそ、僕たちの口からその事を伝えないといけないね。今からアレックスに会いに行こう」
「えっ?今から会いに行くのですか?」
「ああ、早く伝えた方がいいからね。明日きっと、カレテイス伯爵令嬢からどうだったか聞かれるだろうし、その指輪を見たら、ユーリが誰かと婚約する事が決まった事が分かるだろう?その前に、僕たちの口からしっかり伝えるべきだと思うんだ」
確かに指輪を見たら、きっとアレックス様も気が付くだろう。ディアンの言う通り、アレックス様には事前に知らせておいた方がいい。
「分かったわ、それじゃあ、早速使いを送りましょう。それから、友人達にも早く知らせたいから、手紙を書いてもいいかしら?」
レーナ、カリン、マリアンには今まで散々心配をかけた。さすがに3人の家を今から回る訳にはいかないので、せめて手紙で知らせたいと思ったのだ。彼女たちならきっと、喜んでくれるだろう。
急いで手紙を書き、彼女たちの家に送るよう手配を整えた。
「ユーリ、そろそろ行こうか」
「ええ、そうね」
すっと差し出してくれたディアンの手を握った。温かくて大きな手、もう握る事もないと思っていたが、まさかまたこんな風に手を握る事が出来るだなんて。
そんな思いを抱きながら、2人で馬車に乗り込んだ。
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急に不安そうな顔で、ディアンが問いかけて来たのだ。
「確かに昔は、アレックス様の事が好きだったわ。でも…あれほどまでに拒否され、利用され続けてきたのよ。さすがにもう、アレックス様との未来は考えられないわ。それに、私がアレックス様への気持ちを断ち切る事が出来たのは、ディアン、あなたのお陰なの。あなたと過ごすうちに、いつの間にかアレックス様の事を忘れる事が出来たのよ」
そう、ディアンがいてくれたから、私は前に進むことが出来たのだ。
「ディアン、私はあなたの事が大好きよ。だから、これからもずっと傍にいて下さい」
真っすぐディアンを見つめ、改めてそう伝えた。
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心配そうにディアンが話しかけてきてくれた。確かにアレックス様に会うのは勇気がいる。
でも、私の口からしっかりアレックス様に気持ちを伝えたい。
「大丈夫よ、行きましょう、ディアン」
ディアンの手をしっかり握り、馬車を降りたのだった。
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