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第32話:ユーリが傍にいないと虚しくてたまらない~アレックス視点~

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 セレナ嬢とのお茶が終わり、彼女を見送った時だった。

「アレックス様」

 ユーリに声を掛けられたのだ。まさかまだユーリが学院に残っているだなんて、思わなかった。大事な話があるというユーリ、もしかしてお菓子を横流ししていたことが、バレたのかな?なんだか面倒だ。そんな思いで、彼女の申し出を断り、馬車に乗り込み家に帰って来た。

 さっきのユーリ、心なしか悲しそうな顔をしていたな。さすがに最近ちょっと、冷たくしすぎたかな…

 まあ、ユーリの事だから明日にはまた元気になっているだろう。だってユーリは、僕の事が大好きなのだから。

 翌日、真剣な表情で話しかけて来たユーリ。昨日邪険に扱ってしまった事もあり、今日は笑顔で対応した。

 僕が笑顔で対応すると、嬉しそうな顔をするユーリだが、なぜか真剣な表情をしている。一体どうしたのだろう。そう思っていると、いつも通り、ユーリに告白されたのだ。

 これで6回目か…相変わらず懲りない子だな。

 僕はいつも通り、ユーリの事は令嬢として見られないが、大切に思っているという旨を伝えた。こういえばユーリは、たいてい引き下がるのだ。でも今回は、なぜか引き下がらなかったのだ。

 あまりにも真剣に訴えてくるので、つい

 「僕がユーリを令嬢として受け入れられない以上、どう転んでも君と結婚する事は出来ない。この気持ちは、一生変わらない。どうか素敵な令息を見つけて、幸せになってくれ」

 そう伝えた。すると

「分かりましたわ。はっきりと気持ちを伝えて下さり、ありがとうございます。これで私も、前に進めそうです。どうかアレックス様も、お幸せに」

 悲しそうに微笑み、去っていくユーリ。その顔を見た瞬間、胸が押しつぶされる様な感覚に襲われた。待ってくれ、僕はユーリにそんな顔をして欲しい訳ではない。そう伝えようと思ったのだが、ユーリは去って行ってしまった。

 まあいいか、明日になればきっと、またいつもの様に僕にすり寄って来るだろう。ユーリはそう言う子だ。

 そう思っていた。

 翌日、ユーリが心配で彼女に話しかけた。いつもなら嬉しそうに微笑むのに、僕の顔を一切見ずに、気にしないで下さいと言い、その場を去ってしまったユーリ。もしかしたらまだ、昨日の事を引きずっているのかもしれない。

 でも、きっとすぐに元気になるだろう。

 でも…

 翌日、ユーリは学院を早退し、その翌日は貴族学院を休んだのだ。もしかして僕が、ユーリを拒絶したから、ショックで来られないのかな?でも、今までもユーリの気持ちに答えられないと伝えても、すぐに僕の傍に来てくれたのに…

 ユーリが心配でたまらない。このままユーリが、僕の傍を離れて行ったら…

「アレックス様、顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?もしかして、ユーリ様の件で何かあったのですか?」」

 僕の傍にやって来たのは、セレナ嬢だ。正直今は、セレナ嬢に構っている余裕はない。

「いいや、何でもないよ。今日は急いでいてね、それではこれで」

 そう伝え、急ぎ足でその場を去った。いつもならセレナ嬢に話し掛けられたら嬉しくてたまらないはずなのに…今はセレナ嬢の事なんで、どうでもいい。

 学院が終わると、急いで花屋に向かい、ユーリが好きな花をありったけ詰めた花束を作ってもらった。ユーリはもしかして、体調が悪いだけかもしれない。それに僕が花束を持ってお見舞いに行けば、きっと喜んでくれるはず。そう思っていたのだが

 ユーリは今、僕の事を必死に忘れようとしているとの事で、僕の顔を見るのも辛い。もう自分には関わらないで欲しいと言われたのだ。

 ほとんど僕の顔も見ず、うつむいたまま淡々と話すユーリ。

 どうしてそんな悲しい事を言うのだい?どうかいつもみたいに笑って欲しい。そんな思いから、また昨年の様に僕の家の領地に行こう、今までみたいに仲良くしていきたい旨を必死に伝えた。

 でも、僕の気持ちは受け入れられないまま、ユーリは屋敷へと戻って行ってしまったのだ。僕が一生懸命選んだ花束も、受け取ってはもらえなかった。

 あまりのショックに、どうやって屋敷に戻ったのか覚えていない。ずっと僕の傍にいたユーリが、僕を拒絶するだなんて…何があってもユーリは、僕から離れる事はないと思っていたのに。

 とにかく僕は、また昔の様にユーリと仲良くしたい。ユーリも話せばわかってくれるはずだ。今日会った時、元気そうだったからきっと、ユーリは明日には学院に来るだろう。明日もう一度、しっかりユーリと話し合おう。

 そう思っていたのだが、結局ユーリは、翌日もその翌日も学院には来なかった。心配で伯爵家に出向いても、“お嬢様は体調がすぐれませんので”そう言われ、メイドたちに追い返されてしまうのだ。

 こんなに長い期間、ユーリと会っていないだなんて。ユーリに会いたい。またいつもの様に“アレックス様”と、笑顔で呼んで欲しい。

 ユーリの事を考えれば考えるほど、胸が張り裂けそうになる。僕は一体何をしていたのだろう…
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