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第17話:あの頃と変わらないユーリ~ディアン視点~
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翌日
「ディアン、久しぶりね。会いたかったわ」
母上が嬉しそうに馬車から降りて来た。
「母上、ようこそいらっしゃいました。それよりもあの手紙は、いったいどういう事ですか?どうしてユーリが我が領地に1拍する事になっているのですか?あなたは何を考えているのですか?僕に分かるように説明してください」
母上に一気に詰め寄った。
「落ち着いて、ディアン。とにかく、ゆっくり話をしましょう」
僕の焦りとは裏腹に、笑顔で居間に向かった母上。
「そうそう、お父様は来週には領地に来る予定よ。3人でユーリちゃんとリリーを迎えましょうね。ユーリちゃん、とても綺麗になったわよ。きっとディアン、びっくりするわね」
「母上、そんな事よりも、どうして急にユーリが我が家に泊る事になっているのですか?僕にもわかるように説明してください」
「その件なのだけれど、実はね。アレックス様とユーリちゃん、上手く行っていない様で…今ユーリちゃん、貴族学院をお休みしているのですって。どうやらアレックス様は、ユーリちゃんに興味がない様で。リリーの話では、何度かユーリちゃんがアレックス様に気持ちを伝えては、断られていたそうよ。さすがにユーリちゃんも心が折れてしまった様で。アレックス様の事を、必死に諦めようとしている様なの」
「アレックスがユーリを受け入れていないとは、どういうことですか?だってアレックスは、ユーリを幸せにすると僕に…いいえ、何でもありません。それでユーリは今、どのような状況なのですか?」
「そこまでは分からないわ。ただ、彼女の友人たちがわざわざ家まで訪ねて来て“学期休みが始まるまでの間、どうかユーリを休ませてあげてください”と頭を下げて来たそうよ。ユーリちゃんはお友達に恵まれているみたいね。ただ、学院に行きたくないくらいユーリちゃんは傷ついている様よ。半期休み中は、ずっと領地で過ごすことも決まっているらしいわ」
「そうなのですね…」
アレックスの奴、絶対にユーリを幸せにすると約束したのに!あろう事か、ユーリを悲しませていただなんて!体中から怒りが沸き上がって来るのを、必死に抑えた。
「それでね、ユーリちゃんが少しでも元気が出る様に、我が家に寄ってから領地に行きたいとリリーが言い出して。懐かしい幼馴染のディアンの顔を見たらきっと、ユーリちゃんも元気を取り戻してくれると、私もリリーも考えているの。ディアンだって、未だにユーリちゃんの事を思っているのでしょう?」
「確かに僕は、まだユーリの事が好きですが…」
傷ついたユーリを、僕が元気付ける事なんて出来るのだろうか…それに7年もの間、ユーリには1度も会っていないのだ。もしかしたら、ユーリは僕の事を忘れているかもしれないし…
「何を弱気な顔をしているのよ。とにかく来週、ユーリちゃんとリリーが来るから、そのつもりでね」
そう言うと母上は、部屋から出て行ってしまった。本当に勝手な人なのだから。
でも…
7年ぶりにユーリに会えるのか。正直不安も大きいが、それ以上にユーリに会えることが嬉しくてたまらない。
ただ、7年ぶりに会うのだ。上手く話しが出来るだろうか?この7年、僕は貴族という貴族とあまり関わってこなかった。ましてや令嬢となんて、ほとんど話した事がないのだ。やっぱり不安だな。
でも、もうユーリが来ることは決まっている様だし…
それからというもの、僕は不安な日々を過ごした。そしてとうとう、ユーリが来る日を迎えてしまったのだ。
「ディアン、そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
「そうだぞ、いつも通りのお前で行けばいいんだ」
父上も母上も、そんな呑気な事を言っている。でも僕は、7年ぶりに会うユーリと上手く話せるのか、不安でたまらないのだ。
その時だった。ユーリを乗せた馬車が、伯爵家に入って来たのだ。そしてゆっくりとユーリたちが馬車から降りて来た。
美しいエメラルドグリーンの髪を腰まで伸ばしたユーリ、あの頃とは違い、体つきも女性らしくなっていた。あまりにも綺麗になっていたユーリに、つい見とれてしまう。
それでも夫人とユーリに挨拶をした。すると、美しい青い瞳と目が合ったかと思うと、ぱぁっと笑顔になったユーリが、嬉しそうに話しかけてきたのだ。その顔を見た瞬間、涙が出るほど嬉しかった。
ユーリはあの頃と、ちっとも変っていない。僕は一体何を心配していたのだろう。僕の不安は一気に消え、ユーリに会えた嬉しさで心が満たされていく。
ただ、7年会わない間に、令嬢としてのマナーを叩き込んだのか、随分と言葉遣いが令嬢らしくなっていた。それでも、昔の感じが出てしまうユーリ。そんな姿もまた可愛い。
そんなユーリにあの場所を見せたくて、ユーリを連れて屋敷の裏にある丘へと向かった。7年ぶりにつなぐユーリの手は、あの頃よりもずいぶん大きくなっていたが、柔らかくて温かいのは昔と変っていない。
やっぱり僕は、ユーリが大好きだ。一気にあふれ出しそうな気持を必死に堪え、丘に向かって歩き出したのだった。
「ディアン、久しぶりね。会いたかったわ」
母上が嬉しそうに馬車から降りて来た。
「母上、ようこそいらっしゃいました。それよりもあの手紙は、いったいどういう事ですか?どうしてユーリが我が領地に1拍する事になっているのですか?あなたは何を考えているのですか?僕に分かるように説明してください」
母上に一気に詰め寄った。
「落ち着いて、ディアン。とにかく、ゆっくり話をしましょう」
僕の焦りとは裏腹に、笑顔で居間に向かった母上。
「そうそう、お父様は来週には領地に来る予定よ。3人でユーリちゃんとリリーを迎えましょうね。ユーリちゃん、とても綺麗になったわよ。きっとディアン、びっくりするわね」
「母上、そんな事よりも、どうして急にユーリが我が家に泊る事になっているのですか?僕にもわかるように説明してください」
「その件なのだけれど、実はね。アレックス様とユーリちゃん、上手く行っていない様で…今ユーリちゃん、貴族学院をお休みしているのですって。どうやらアレックス様は、ユーリちゃんに興味がない様で。リリーの話では、何度かユーリちゃんがアレックス様に気持ちを伝えては、断られていたそうよ。さすがにユーリちゃんも心が折れてしまった様で。アレックス様の事を、必死に諦めようとしている様なの」
「アレックスがユーリを受け入れていないとは、どういうことですか?だってアレックスは、ユーリを幸せにすると僕に…いいえ、何でもありません。それでユーリは今、どのような状況なのですか?」
「そこまでは分からないわ。ただ、彼女の友人たちがわざわざ家まで訪ねて来て“学期休みが始まるまでの間、どうかユーリを休ませてあげてください”と頭を下げて来たそうよ。ユーリちゃんはお友達に恵まれているみたいね。ただ、学院に行きたくないくらいユーリちゃんは傷ついている様よ。半期休み中は、ずっと領地で過ごすことも決まっているらしいわ」
「そうなのですね…」
アレックスの奴、絶対にユーリを幸せにすると約束したのに!あろう事か、ユーリを悲しませていただなんて!体中から怒りが沸き上がって来るのを、必死に抑えた。
「それでね、ユーリちゃんが少しでも元気が出る様に、我が家に寄ってから領地に行きたいとリリーが言い出して。懐かしい幼馴染のディアンの顔を見たらきっと、ユーリちゃんも元気を取り戻してくれると、私もリリーも考えているの。ディアンだって、未だにユーリちゃんの事を思っているのでしょう?」
「確かに僕は、まだユーリの事が好きですが…」
傷ついたユーリを、僕が元気付ける事なんて出来るのだろうか…それに7年もの間、ユーリには1度も会っていないのだ。もしかしたら、ユーリは僕の事を忘れているかもしれないし…
「何を弱気な顔をしているのよ。とにかく来週、ユーリちゃんとリリーが来るから、そのつもりでね」
そう言うと母上は、部屋から出て行ってしまった。本当に勝手な人なのだから。
でも…
7年ぶりにユーリに会えるのか。正直不安も大きいが、それ以上にユーリに会えることが嬉しくてたまらない。
ただ、7年ぶりに会うのだ。上手く話しが出来るだろうか?この7年、僕は貴族という貴族とあまり関わってこなかった。ましてや令嬢となんて、ほとんど話した事がないのだ。やっぱり不安だな。
でも、もうユーリが来ることは決まっている様だし…
それからというもの、僕は不安な日々を過ごした。そしてとうとう、ユーリが来る日を迎えてしまったのだ。
「ディアン、そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
「そうだぞ、いつも通りのお前で行けばいいんだ」
父上も母上も、そんな呑気な事を言っている。でも僕は、7年ぶりに会うユーリと上手く話せるのか、不安でたまらないのだ。
その時だった。ユーリを乗せた馬車が、伯爵家に入って来たのだ。そしてゆっくりとユーリたちが馬車から降りて来た。
美しいエメラルドグリーンの髪を腰まで伸ばしたユーリ、あの頃とは違い、体つきも女性らしくなっていた。あまりにも綺麗になっていたユーリに、つい見とれてしまう。
それでも夫人とユーリに挨拶をした。すると、美しい青い瞳と目が合ったかと思うと、ぱぁっと笑顔になったユーリが、嬉しそうに話しかけてきたのだ。その顔を見た瞬間、涙が出るほど嬉しかった。
ユーリはあの頃と、ちっとも変っていない。僕は一体何を心配していたのだろう。僕の不安は一気に消え、ユーリに会えた嬉しさで心が満たされていく。
ただ、7年会わない間に、令嬢としてのマナーを叩き込んだのか、随分と言葉遣いが令嬢らしくなっていた。それでも、昔の感じが出てしまうユーリ。そんな姿もまた可愛い。
そんなユーリにあの場所を見せたくて、ユーリを連れて屋敷の裏にある丘へと向かった。7年ぶりにつなぐユーリの手は、あの頃よりもずいぶん大きくなっていたが、柔らかくて温かいのは昔と変っていない。
やっぱり僕は、ユーリが大好きだ。一気にあふれ出しそうな気持を必死に堪え、丘に向かって歩き出したのだった。
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