上 下
9 / 75

第9話:待ちに待った半期休みに入りました

しおりを挟む
「ユーリ、明日から半期休みに入るわね。と言っても、あなたは数日前から貴族学院をお休みしているから、既に半期休みに入っている様なもだけれどね」

「もう、お母様ったら。私はきちんとお勉強もしていましたよ。それよりも、明日早速領地に向かいたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ええ、もちろんよ。明日、出発しましょう」

 やっと領地に行けるのね。アレックス様が訪ねていらしてから、心穏やかではなかったのだ。あろう事か、あの後またアレックス様が訪ねて来たらしい。本当にあの人は、何を考えているのかしら?

 私の気持ちを知ってもらう為に、昨日アレックス様宛に、手紙を書いた。手紙には、アレックス様を忘れるために、今必死に頑張っている事。私はどうしてもアレックス様を異性として見てしまう事。だからどうか、しばらく距離を置きたい事を記載しておいた。

 自分本位な手紙という事は分かっているが、これだけは譲れないのだ。アレックス様だって、いつまでも私に好かれているのも嫌だろうし、きっともう、しばらくは私に関わってくることもないだろう。

 と言っても、私は明日から領地に向かうから、どちらにしろ1ヶ月は会う事はないのだけれどね。

 早速領地に向かう準備をしないと。

 鼻歌を歌いながら自室に戻ると、既にメイドたちが明日の準備をしてくれていた。

「お嬢様、お洋服や下着など、必要な物は詰めさせていただきました。他に何か持って行きたいものがございますか?」

 どうやら必需品は全て詰めてもらっている様だ。後持って行くものは…

 特にないわね。

「既に必要な物は、全て詰めてくれたのね。ありがとう。他に持って行きたいものはないから、とりあえずこれだけで十分よ」

 既に荷造りもすんでいるし、後は明日を待つだけだ。なんだか楽しみになって来たわ。

 翌日
「ユーリ、気を付けて行ってくるのだぞ。オルガノやカトリナの言う事をしっかり聞き、いい子にしているのだぞ。分かったな」

「お父様、そんなに心配しなくても大丈夫ですわ」

「そうよ、あなた。私も1週間程度一緒に過ごすのですもの。問題ないわよ」

「そうだな、母さんも一緒だし、大丈夫だよな。でも…しばらくこの広い屋敷に1人で過ごすだなんて、寂しいな。やはり私も一緒に行こうかな?」

「あなたは伯爵の仕事があるでしょう?1週間で帰ってきますから、どうか大人しく待っていてください!」

 お母様に強く言われ、シュンとするお父様。きっと寂しくてたまらないのだろう。お父様は非常に寂しがり屋なのだ。きっとお母様に早く帰って来いと、毎日手紙をよこして来るだろう。

 これ以上お父様と一緒にいたら、もしかしたらいかないで欲しいと泣きついてくるかもしれない。早く出発しないと!

「それでは行ってきます」

 お母様と一緒に、馬車に乗り込んだ。

「気を付けて行って来いよ…やっぱり寂しい、私も…」

 お父様が何か言いかけたタイミングで、馬車が走り出した。

「おい、私の話はまだ終わっていないぞ!」

 そう叫んでいるお父様に、笑顔で手を振った。

「あの人、本当に寂しがり屋なのよね…ユーリ、申し訳ないのだけれど、多分3日くらいで私は王都に戻る事になると思うわ…」

 お母様が遠い目をしながら、そう呟いた。お母様も色々と大変ね。

 気を取り直して、お母様と一緒に領地へと向かう。領地までは馬車で約2日かかる。

「こうやってお母様と一緒に外出するの、子供の頃以来ですね」

「そう言えばそうね。ユーリはいつも、アレックス様に夢中で、領地にも付いてきたがらなかったものね。ユーリ、アレックス様のこと…いいえ、何でもないわ」

 お母様もある程度、分かっているのだろう。

「私、アレックス様に6回気持ちを伝えて、6回ともフラれているのです。つい最近も気持ちを伝えたのですが、私の事はどうしても女性として見る事が出来ないそうです。だから私、もうアレックス様の事を諦める事にしましたの」

「そう…アレックス様は、見る目がないのね。ユーリはとても可愛くて、魅力的な令嬢なのに。きっとユーリにも、素敵な殿方が現れるわよ」

 お母様ったら…親バカね。

「そうだといいのですが…」

 そっと窓の外を見る。気が付くともう、王都を出ていた様で、田園風景が広がっていた。王都ではなかなか見る事が出来ない景色ね。これも領地に行くまでの、楽しみの一つだ。

 お昼は野菜を中心としたお料理を頂き、夜にはホテルに泊まった。翌日も同じ様に馬車をすすめる。

「ユーリ、今日はね、ある人のお宅に泊めてもらおうと思っているのよ」

「ある人のお宅?」

 お母様ったら、一体誰の家に泊ろうとしているのかしら?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~

小倉みち
恋愛
 元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。  激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。  貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。  しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。  ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。  ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。  ――そこで見たものは。  ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。 「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」 「ティアナに悪いから」 「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」  そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。  ショックだった。  ずっと信じてきた夫と親友の不貞。  しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。  私さえいなければ。  私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。  ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。  だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。

振られたあとに優しくされても困ります

菜花
恋愛
男爵令嬢ミリーは親の縁で公爵家のアルフォンスと婚約を結ぶ。一目惚れしたミリーは好かれようと猛アタックしたものの、彼の氷のような心は解けず半年で婚約解消となった。それから半年後、貴族の通う学園に入学したミリーを待っていたのはアルフォンスからの溺愛だった。ええとごめんなさい。普通に迷惑なんですけど……。カクヨムにも投稿しています。

たとえこの想いが届かなくても

白雲八鈴
恋愛
 恋に落ちるというのはこういう事なのでしょうか。ああ、でもそれは駄目なこと、目の前の人物は隣国の王で、私はこの国の王太子妃。報われぬ恋。たとえこの想いが届かなくても・・・。  王太子は愛妾を愛し、自分はお飾りの王太子妃。しかし、自分の立場ではこの思いを言葉にすることはできないと恋心を己の中に押し込めていく。そんな彼女の生き様とは。 *いつもどおり誤字脱字はほどほどにあります。 *主人公に少々問題があるかもしれません。(これもいつもどおり?)

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。 私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

処理中です...