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第6話:半期休みは領地に行く事にします
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その日の放課後。
1人家に帰るため、門を目指す。いつもならアレックス様に付きまとっているところだが、もちろんそんな事はしない。授業が終わると、友人たちに挨拶をして急いで教室を出てきたのだ。
一刻も早く、アレックス様の元から離れたい、そんな思いで門を目指し、そのまま馬車に乗り込んだ。
「なんだか今日は、疲れたわ…」
馬車に乗り込んだ瞬間、どっと疲れが出た。カリンたちのお陰で、何とか今日は学院生活を過ごすことが出来たが、やはりアレックス様と同じクラスというのは辛すぎる。何よりも、まだ私がアレックス様の事を、諦められていないのだ。
彼の顔を見ると、どうしても気持ちが高ぶってしまう。一度アレックス様から離れた方がいいだろう。
やはり来週からの半期休みは、領地に行こうかしら?一度お父様たちに相談してみよう。
そんな思いで、家路に着いた。
そしてその日の夜。
「お父様、お母様、来週からの半期休みなのですが、その…もしお兄様たちさえよろしければ、領地でゆっくりと過ごしたいのですが…」
一緒に食事をしていた両親に、半期休みの件を相談した。
「ユーリが領地で過ごしたいだなんて、珍しいね。去年は“アレックス殿と離れたくはないから、王都から出たくない“と言っていたくらいなのに」
「そうよね。一体どうしたの?」
「…もう私、アレックス様の事は諦めたのです。彼は私の事を、令嬢として見られない様で…それで今年は、領地でゆっくりしたいなと思って。ただ、領地にはお兄様たちもいらっしゃるでしょう?私が領地に1ヶ月もいたら、お義姉様が嫌な思いをしないかと思って…」
領地には兄夫婦が生活している。兄のお嫁さん、お義姉様はとても優しくていい人だ。私の事も可愛がってくれている。でも、1ヶ月も私が押しかけたら、きっと迷惑だろう。お義姉様に迷惑を掛けたくはない。
「あら、そんな事を気にしていたの?それなら大丈夫よ。オルガノ達はファルスィン伯爵家の屋敷の隣に、大きな屋敷を建てて生活しているのよ。それにオルガノたちから“半期休みはぜひユーリに領地に遊びに来るように伝えて欲しい”と言われているし。だからあなたが気にする事はないのよ」
「まあ、そうだったのですね。それでは私が領地でお世話になっても、お兄様たちに迷惑をかける事はないと言う事でよろしいのでしょうか?」
「ええ、気にしなくても大丈夫よ。そう言えばユーリは、オルガノ達が領地で生活し始めてから、一度も領地に行ったことがなかったものね。一度行ってみるといいわ。とても素敵な街になっているから。ユーリが行くなら、私も1週間くらい滞在しようかしら?」
お母様がそう言ってほほ笑んでいる。
「そうなのですね。それでしたら私、半期休みに入ったらすぐに領地に行きたいです。よろしいかしら?」
「ああ、もちろんだよ。母さんも一緒に行くと言っているし。ユーリがゆっくり領地に行けるのも、後何回あるか分からないからな。目いっぱい楽しんでおいで。私からオルガノ達や領地の使用人には話をしておくから」
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて1ヶ月間、領地を楽しんできますわ」
よかったわ、領地で1ヶ月生活すれば、私の気持ちも少しは落ち着くかもしれない。それに、お兄様たちが手掛けた領地の街が、どんな風になっているのかも楽しみだ。
そうと決まれば、早速準備をしないと。と言っても、まだ少し先だものね。なんだか楽しみになって来たわ。
翌日
「私も来週から始まる半期休み、領地に行く事になったの。お土産を沢山買ってくるわね」
「それは良かったわ。領地でゆっくり過ごせば、気持ちも落ち着くでしょうし。それから…」
何やら友人たちが、お互い顔を見合わせている。一体どうしたのかしら?
「あのね、ユーリ。その…どうやらアレックス様とセレナ様、近々婚約するそうよ。さっき令嬢たちが話しているのを聞いちゃって…その…」
「そう…あの2人、仲が良かったものね。ごめんなさい、私…」
分かっていた、いつかアレックス様も、誰かと婚約する事くらい。でも…まだ心の整理が付いていないのだ。
本来なら“おめでとう”と、笑顔で伝えるべきなのだろう。でも、今の私にはとても無理だ。
辛くて苦しくて、涙が溢れ出てしまう。
「ユーリ、ごめんなさい。今のあなたには話すべきではなかったわ。とにかく、教室を出ましょう」
涙を堪えきれない私を連れて、友人たちが教室の外に連れ出してくれたのだった。
1人家に帰るため、門を目指す。いつもならアレックス様に付きまとっているところだが、もちろんそんな事はしない。授業が終わると、友人たちに挨拶をして急いで教室を出てきたのだ。
一刻も早く、アレックス様の元から離れたい、そんな思いで門を目指し、そのまま馬車に乗り込んだ。
「なんだか今日は、疲れたわ…」
馬車に乗り込んだ瞬間、どっと疲れが出た。カリンたちのお陰で、何とか今日は学院生活を過ごすことが出来たが、やはりアレックス様と同じクラスというのは辛すぎる。何よりも、まだ私がアレックス様の事を、諦められていないのだ。
彼の顔を見ると、どうしても気持ちが高ぶってしまう。一度アレックス様から離れた方がいいだろう。
やはり来週からの半期休みは、領地に行こうかしら?一度お父様たちに相談してみよう。
そんな思いで、家路に着いた。
そしてその日の夜。
「お父様、お母様、来週からの半期休みなのですが、その…もしお兄様たちさえよろしければ、領地でゆっくりと過ごしたいのですが…」
一緒に食事をしていた両親に、半期休みの件を相談した。
「ユーリが領地で過ごしたいだなんて、珍しいね。去年は“アレックス殿と離れたくはないから、王都から出たくない“と言っていたくらいなのに」
「そうよね。一体どうしたの?」
「…もう私、アレックス様の事は諦めたのです。彼は私の事を、令嬢として見られない様で…それで今年は、領地でゆっくりしたいなと思って。ただ、領地にはお兄様たちもいらっしゃるでしょう?私が領地に1ヶ月もいたら、お義姉様が嫌な思いをしないかと思って…」
領地には兄夫婦が生活している。兄のお嫁さん、お義姉様はとても優しくていい人だ。私の事も可愛がってくれている。でも、1ヶ月も私が押しかけたら、きっと迷惑だろう。お義姉様に迷惑を掛けたくはない。
「あら、そんな事を気にしていたの?それなら大丈夫よ。オルガノ達はファルスィン伯爵家の屋敷の隣に、大きな屋敷を建てて生活しているのよ。それにオルガノたちから“半期休みはぜひユーリに領地に遊びに来るように伝えて欲しい”と言われているし。だからあなたが気にする事はないのよ」
「まあ、そうだったのですね。それでは私が領地でお世話になっても、お兄様たちに迷惑をかける事はないと言う事でよろしいのでしょうか?」
「ええ、気にしなくても大丈夫よ。そう言えばユーリは、オルガノ達が領地で生活し始めてから、一度も領地に行ったことがなかったものね。一度行ってみるといいわ。とても素敵な街になっているから。ユーリが行くなら、私も1週間くらい滞在しようかしら?」
お母様がそう言ってほほ笑んでいる。
「そうなのですね。それでしたら私、半期休みに入ったらすぐに領地に行きたいです。よろしいかしら?」
「ああ、もちろんだよ。母さんも一緒に行くと言っているし。ユーリがゆっくり領地に行けるのも、後何回あるか分からないからな。目いっぱい楽しんでおいで。私からオルガノ達や領地の使用人には話をしておくから」
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて1ヶ月間、領地を楽しんできますわ」
よかったわ、領地で1ヶ月生活すれば、私の気持ちも少しは落ち着くかもしれない。それに、お兄様たちが手掛けた領地の街が、どんな風になっているのかも楽しみだ。
そうと決まれば、早速準備をしないと。と言っても、まだ少し先だものね。なんだか楽しみになって来たわ。
翌日
「私も来週から始まる半期休み、領地に行く事になったの。お土産を沢山買ってくるわね」
「それは良かったわ。領地でゆっくり過ごせば、気持ちも落ち着くでしょうし。それから…」
何やら友人たちが、お互い顔を見合わせている。一体どうしたのかしら?
「あのね、ユーリ。その…どうやらアレックス様とセレナ様、近々婚約するそうよ。さっき令嬢たちが話しているのを聞いちゃって…その…」
「そう…あの2人、仲が良かったものね。ごめんなさい、私…」
分かっていた、いつかアレックス様も、誰かと婚約する事くらい。でも…まだ心の整理が付いていないのだ。
本来なら“おめでとう”と、笑顔で伝えるべきなのだろう。でも、今の私にはとても無理だ。
辛くて苦しくて、涙が溢れ出てしまう。
「ユーリ、ごめんなさい。今のあなたには話すべきではなかったわ。とにかく、教室を出ましょう」
涙を堪えきれない私を連れて、友人たちが教室の外に連れ出してくれたのだった。
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