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第29話:精霊に会いました

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しばらく走ると、以前森に来たところと同じ場所で停まった。早速馬車から降りると

“レアンヌ、こっちだよ。早速滝に行こう。ちょっと歩くけれど、大丈夫だよね”

嬉しそうに動物たちが話しかけていた。どうやら早く行きたくて、うずうずしている様だ。

「わかったわ、早速行きましょう」

動物たちと一緒に、森の奥に入ろうとしたのだが、すぐに旦那様に腕を掴まれた。

「レアンヌ、馬車の中で話した事を忘れたのかい?私の傍を離れて勝手に行ってはいけないと言ったばかりだろう!本当に君は!」

怖い顔の旦那様に怒られてしまった。

「ごめんなさい。つい嬉しくて…」

というより、旦那様の顔が慣れなくて全く話を聞いていませんでした。という都合の悪い事は、心の中で呟く。

「君たちも、レアンヌを勝手に連れて行くのは止めてくれ!いいね」

動物たちにも旦那様は注意するが、皆聞いていませんと言わんばかりに、あちらの方を向いている。この子達はまったく…

“だから言っただろう。この仮面男を連れてくると、口うるさくて嫌なんだ。とにかく早く滝に行こう。こっちだよ”

動物たちが歩き始めたので、私も旦那様と一緒に付いて行く。なぜか旦那様に手を強く握られている。そんなに強く握らなくても大丈夫なのだが…私、あまり信用されていないのね…

そして、どんどん奥へと進んでいく。

「これ以上進むと危険だ。クマがいるかもしれない」

“もうすぐだから大丈夫よだ。それに怒りん坊のクマは、あっちの方にいるから”

動物たちがそう教えてくれた。

「旦那様、もうすぐ着くそうです。それからクマは、あっちの方にいるから大丈夫と言っておりますわ」

「…わかった。本当にすぐ着くんだよね?」

“だからそう言っているだろう!本当に面倒な男だ。ほら、あれが滝だよ。凄いだろう?”

動物たちが一気に走り出した。目の前には崖から水が沢山流れ落ちている。どうやらこれが滝と呼ばれるものらしい。小さな虹も出来ていて、とても綺麗だ。

「これが滝なのね。とても綺麗だわ。水も透き通っているし、虹まで出来ているわ」

そっと滝に近づく。水が透き通っていて本当に綺麗だ。

「レアンヌ、あまり滝に近づくと危ないよ。それにしても、こんな滝が森にあったなんて、知らなかったな。この森は、ある程度把握しているはずだが…」

どうやら旦那様も知らなかった様だ。

“そりゃそうだよ。通常人間はこの場所にたどり着けないのだから。僕たち動物だけが知っている滝なんだ。レアンヌ、こっちに来て”

動物たちに誘われ、ゆっくりと滝に近づく。

「レアンヌ、滝に近づいてはダメだ!」

その時だった。誰かに腕を引っ張られ、そのまま滝の中に吸い込まれた。

「レアンヌ!!」

旦那様の叫び声が聞こえ、私はそのまま意識を飛ばしたのだった。



*****
「う…ん、ここは?」

ゆっくり目を覚ます。どうやらお花畑の様だ。でも、こんなにも美しい花は見た事がないわ。ここは一体どこなのかしら?

ゆっくり辺りを見渡す。すると…

“そなたがレアンヌだな。よく来たな”

声の方を振り向くと、そこには緑色の髪を腰まで伸ばした、とても美しい男性が立っていた。

「あなた様はもしかして、精霊?」

“そうだ、私はこの森の精霊。ミハイルだ。レアンヌ、そなたは動物たちの言葉が分かると聞いたが、本当か?私の言葉もわかるのか?”

「はい、本当でございます。ミハイル様、ここはどこですか?旦那様が心配しているので、帰りたいのですが…」

きっと急に消えたから、私を心配しているだろう。それに旦那様から離れてはいけないという約束も破ってしまったし、きっと怒られるわ。

“そんなに焦るな。それにしても、とても美しい魂をしているな…レアンヌか、気に入った。しばらくここで暮らすといい。一緒に来ていた男なら大丈夫だから、安心しろ”

「本当に大丈夫なのですか?」

“ああ、問題ない。ここは私が作り出した世界だ。だから、ここにどれだけいても大丈夫だ”

そう言ってほほ笑むミハイル様。そう言えば、絵本で見た事があるわ。異世界でどれだけ過ごしても、現実世界では全く時間が進んでいないというお話を。という事は、きっとこの地に長時間いても、現実世界に戻った時、それほど時間が経っていないという事なのだろう。

「分かりましたわ。それでは、しばらくの間、お世話になります」

せっかくこんなにも素敵な場所に来られたのだ。ゆっくりこの世界を見せてもらおう。そう思い、ミハイル様に頭を下げた。

“レアンヌ、あっちに色々な色の滝があるよ。行ってみよう”

この場所に連れてきてくれた動物たちが、早速この世界を案内してくれた。動物たちが言う通り、本当に色とりどりの滝が流れている。それに近くには、沢山の虹がかかっていた。まさに夢の世界の様だ。

こんな素敵な世界、初めて見たわ。

その後私は、子供の様にはしゃぎ、異世界を存分に楽しんだのだった。
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