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第10話:旦那様と森に向かいます

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一旦自室に戻り、昼食を頂く事にした。

「レアンヌ様は本当に動物の心が分かるのですね。昨日話を聞いた時は半信半疑でしたが、あなた様が今日マック様や鳥たちとのやり取りを見て、そう感じました。昨日は疑ったりして、申し訳ございませんでした」

リサが頭を下げた。

「信じてくれてありがとう。でも、動物とお話が出来るというのは、あまり話してはいけない様ね。昨日マックにも言われたわ」

「そうですわね、色々な人間がおりますから。あまり公言しない方がよいかと」

「わかったわ、それじゃあ、これからは内緒にしておくわね。と言っても、昨日公言しちゃったけれど」

「大丈夫ですわ。ほとんどの使用人が、あまり信じていないので」

リサの言う通り、確かにあまり信じていない様だった。それでも旦那様とリサに信じてもらえた事が、やっぱり嬉しい。

昼食後、動きやすい様にとリサが髪を束ねてくれた。

「レアンヌ様のエメラルドグリーンの髪、とても美しいですわね。せっかくなので、髪留めを付けておきましょう」

そう言って髪留めも付けてくれた。リサは私を自分の娘の様に可愛がってくれるのだ。私にとって、第二のお母様だ。

「ありがとう、リサ。それじゃあ、行ってくるわ」

屋敷の外に出ると、マックと旦那様、さらに馬車も待っていた。

「旦那様、お待たせして申し訳ございません。あの、この馬車は…」

「レアンヌ殿用の馬車だ。リサがうるさくてな。どうか馬車に乗ってくれ」

リサが?

「レアンヌ様、昨日の様にワンピースで馬にまたがる様な、はしたない真似はお止めください。足が出ておりましたわ!女性がむやみやたらに、足を出すものではありません。さあ、馬車に乗ってください」

女性は足をあまり出してはいけないのか…

「わかったわ。それでは旦那様、また後程」

リサと一緒に馬車に乗り込んだ。どうやらリサも一緒に行く様だ。でも、森に行くくらいなら歩いて行くのだが…あっ、でももしかしたら、馬車で移動するのがマナーなのかもしれない。私、本当にマナー知らずなのよね。

「リサ、私、本当にマナーを知らないのよね。女性が足を出してはいけないというのも、初めて知ったわ。これからここで生きていくなら、やっぱりマナーは身に付けた方がいいかしら?」

「そうですわね。それでしたら、家庭教師を雇って、マナーのレッスンを行いましょう。旦那様は一応公爵位を承っておりますし、いずれ貴族界に顔を出すこともあるかもしれませんから」

貴族界か…
私はほとんど公の場に出たことがないので知らないが、きっと華やかな場所なのだろう。

「私、マナーの勉強を本格的にするわ。でも、家庭教師を雇ってもらうのは…」

「いいえ、やはり家庭教師は必要でしょう。すぐに手配いたしましょう」

本格的にマナーの勉強が出来る様だ。お母様から少しは教えてもらったけれど、それももう9年以上も前の話。なんだか楽しみになって来た。

「さあ、レアンヌ様、森に着きましたよ。参りましょう」

リサと一緒に馬車から降りる。そして

「今日は送ってくれてありがとう。疲れたでしょう。ゆっくり休んでね」

馬車を引いてくれた馬にお礼を伝えた。

“これくらいどうって事はないよ。ただ、今日の晩御飯は、新鮮な草とリンゴ、人参が良いと伝えてくれると嬉しいな”

「わかったわ、伝えておくわね」

“おいレアンヌ、来るのが遅いぞ、待ちくたびれたじゃないか!馬車なんかで来るから遅いんだ。帰りは俺の背中に乗って帰れ!”

近くにいたマックが文句を言っている。

「ごめんね、マック。随分待たせてしまったのね。旦那様、私はここでのんびりしておりますので、マックを走らせてあげて下さい。ご機嫌が悪いようなので」

“誰がご機嫌が悪いだ。俺も今日はここで草を食べるから、走らなくても問題ない”

フンとあっちを向くと、そのまま草を食べだした。

「どうやら今日は草を食べたい気分だそうです…マックは自由な子ね」

マックの様子を見て、つい笑みがこぼれる。

「マックは我が儘なところがあるからな。私も手を焼く事もあるんだ。ただ、マックは君の事が大好きな様だぞ。ここに来るまでの間、何度も馬車がちゃんと付いて来ているか確認していたからな」

「まあ、そうだったのですね。マック、ありがとう」

草を食べているマックの背中を撫でる。

“別にお前を待っていた訳じゃない。遅いからちょっと様子を見ただけだ。やっぱり気が変わった、走りに行くとアントニオに伝えろ”

「素直じゃないわね。わかったわ…旦那様、マックがやっぱり走りに行きたいそうです」

「わかった。レアンヌ殿はここでゆっくりしていてくれ。ここなら多分クマも来ないだろうから。それじゃあマック、行こうか」

旦那様がマックにまたがると、爽快に走り去っていった。やっぱりマックは走る事が好きなのだろう。
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