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第2話:英雄様の元に向かいます
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離宮に戻ると、すぐに動物たちがやって来た。
“レアンヌ、大丈夫だったかい?急に本宮に連れて行かれたから、心配していたんだ”
「皆、心配かけてごめんね。私、どうやら今回戦争を終わらせた英雄様の元に嫁ぐことになったみたいなの。だから、皆ともお別れなの」
“どうしてレアンヌが、英雄と結婚なんかするの?あの意地悪王妃の娘が結婚するのじゃないの?”
「それが、どうやら英雄様は平民上がりの様で…その上、少し変わった方みたいなの。カトレナ王女は絶対に嫁ぎたくないと言って…それで私が嫁ぐことになったの。まあ、今まで散々この地で酷い目にあって来たのだもの。今更どんな人に嫁ごうと、どうって事はないわ」
お母様を殺され、酷い暴言を吐かれ、命を何度も狙われてきたのだ。たとえどんな殿方であろうと、あの人たちよりかはきっとマシだろう。そう思っている。
“そうだね、本当に君は今まで頑張って来たよ。相手の男性、いい人だといいね”
そう言って動物たちが微笑んでくれる。7歳でお母様を亡くしてからは、ずっと動物たちに支えられて生きて来た。この離宮に未練はないが、彼らとの別れだけが辛い。
「皆、今までありが…」
「レアンヌ殿下、今から湯あみを行いますので、隣の離宮に行ってください。あなた様は明日、嫁がれるのです。あまり見すぼらしい格好では困ると、王妃様がおっしゃっておられましたので」
私達の元にやって来たのは、メイド長だ。後ろには何人ものメイドが控えている。どうやら王妃様に命令されてきたらしい。せっかく今、動物たちと最後のお話しをしていたのに…
そんな私の気持ちなど気付く訳がないメイドたちが、私を別の離宮に押し込めると、湯あみを行い始めた。私の住んでいる離宮では狭いから、きっとこっちの離宮に連れてこられたのだろう。物心ついた時から、私達にはメイドは付いていなかった為、こんな風に体を洗われるのは不思議な感じがする。
体中を磨かれ、髪や体にはいい匂いがする液体を付けられた。これは一体何かしら?
そして夜は、豪華な食事が準備された。このお料理、毒が入っていないかしら?う~ん、でも、今私が命を落としたら、さすがに王妃様もカトレナ王女も困るわよね。多分大丈夫だろう。
そう思い、美味しいお料理を頂いた。やはり毒は入っていない様だ。その後もメイドたちが甲斐甲斐しく世話をしてくれる。なぜか外には、護衛騎士が沢山待機しているし…
もしかして、私が逃げ出さないか見張っているのかしら?そう思うほどの、騎士の数だ。現に私が部屋の外に出ようとすると、すぐに騎士たちが飛んできて部屋に押し込められるのだ。
さらにメイドたちも、私の部屋にいるし…
仕方がない、とにかく寝よう。そう思い、眠りについた。
翌日、朝から再び体を磨き上げられ、美しいドレスに身を包む。ドレスなんて初めて着たわ。ドレスってこんなに苦しいのね。
着替えが終わると、そのまま王宮の立派な馬車に乗せられた。これが馬車なのね、初めて乗ったわ。ただ、どうやら裏口から出ていくようだ。王宮を出ると、そのまま王都の街を走っていく。私は今まで一度も王宮から出た事はなかった。初めて見る街に、興奮しかない。
メイド長の話では、英雄と呼ばれるアントニオ様は、この国の一番端にある街で暮らし始めたとの事。もっと大きくて立派な領地を与えると陛下に言われたらしいのだが、“ここがいい”と言って、譲らなかったらしい。
その為、今日から3日間かけて、アントニオ様のいる街へと向かうのだ。アントニオ様はどんな方なのかしら?
7歳でお母様を亡くした私は、ずっと王家のお荷物、邪魔者として生きて来た。動物たちは傍にいてくれたけれど、ずっと孤独の中で生きて来たのだ。この結婚を機に…なんて、ちょっとだけ期待している。
でも、英雄と呼ばれている人が、私を受け入れてくれるかしら?そんな事を考えながら、進んでいく。
休憩の度に立派な食事が与えられ、立派なホテルに泊まる。みる街みる街新鮮で、つい目を輝かせてしまう。外の世界はこんなに素晴らしいのね。
そんな日々を過ごしているうちに、あっという間にアントニオ様がいらっしゃる領地についた。自然豊かな美しい街だ。これからこの街に住むのね。動物のお友達もたくさんできそうだわ。
しばらく進むと、立派なお屋敷が見えて来た。そして立派なお屋敷に入って行く。
「着きましたよ。降りて下さい」
御者に促され、ゆっくりと馬車を降りた。そして、屋敷の中に入ろうとしたのだが…
「どうして王女が私の屋敷にやって来たのだ!私は国王に言ったはずだぞ。王女はいらない。この地でひっそりと暮らしたいと!とにかく、今すぐ連れて帰ってくれ!」
男性の声が聞こえてくる。声のする方に向かうと、そこには鉄の仮面を被った男性が、私を連れて来た執事に文句を言っている。
「それは出来ません!既に王女殿下もいらしておられますので。それでは私たちはこれで失礼いたします」
そう言うと、急ぎ足で屋敷から出ていく執事と護衛たち。
「おい、待て!話は終わっていないぞ!おい!」
男性が叫んでいるが、あっという間に馬車に乗り込み、去って行った。なんて逃げ足の速い人たちなのだろう。
“レアンヌ、大丈夫だったかい?急に本宮に連れて行かれたから、心配していたんだ”
「皆、心配かけてごめんね。私、どうやら今回戦争を終わらせた英雄様の元に嫁ぐことになったみたいなの。だから、皆ともお別れなの」
“どうしてレアンヌが、英雄と結婚なんかするの?あの意地悪王妃の娘が結婚するのじゃないの?”
「それが、どうやら英雄様は平民上がりの様で…その上、少し変わった方みたいなの。カトレナ王女は絶対に嫁ぎたくないと言って…それで私が嫁ぐことになったの。まあ、今まで散々この地で酷い目にあって来たのだもの。今更どんな人に嫁ごうと、どうって事はないわ」
お母様を殺され、酷い暴言を吐かれ、命を何度も狙われてきたのだ。たとえどんな殿方であろうと、あの人たちよりかはきっとマシだろう。そう思っている。
“そうだね、本当に君は今まで頑張って来たよ。相手の男性、いい人だといいね”
そう言って動物たちが微笑んでくれる。7歳でお母様を亡くしてからは、ずっと動物たちに支えられて生きて来た。この離宮に未練はないが、彼らとの別れだけが辛い。
「皆、今までありが…」
「レアンヌ殿下、今から湯あみを行いますので、隣の離宮に行ってください。あなた様は明日、嫁がれるのです。あまり見すぼらしい格好では困ると、王妃様がおっしゃっておられましたので」
私達の元にやって来たのは、メイド長だ。後ろには何人ものメイドが控えている。どうやら王妃様に命令されてきたらしい。せっかく今、動物たちと最後のお話しをしていたのに…
そんな私の気持ちなど気付く訳がないメイドたちが、私を別の離宮に押し込めると、湯あみを行い始めた。私の住んでいる離宮では狭いから、きっとこっちの離宮に連れてこられたのだろう。物心ついた時から、私達にはメイドは付いていなかった為、こんな風に体を洗われるのは不思議な感じがする。
体中を磨かれ、髪や体にはいい匂いがする液体を付けられた。これは一体何かしら?
そして夜は、豪華な食事が準備された。このお料理、毒が入っていないかしら?う~ん、でも、今私が命を落としたら、さすがに王妃様もカトレナ王女も困るわよね。多分大丈夫だろう。
そう思い、美味しいお料理を頂いた。やはり毒は入っていない様だ。その後もメイドたちが甲斐甲斐しく世話をしてくれる。なぜか外には、護衛騎士が沢山待機しているし…
もしかして、私が逃げ出さないか見張っているのかしら?そう思うほどの、騎士の数だ。現に私が部屋の外に出ようとすると、すぐに騎士たちが飛んできて部屋に押し込められるのだ。
さらにメイドたちも、私の部屋にいるし…
仕方がない、とにかく寝よう。そう思い、眠りについた。
翌日、朝から再び体を磨き上げられ、美しいドレスに身を包む。ドレスなんて初めて着たわ。ドレスってこんなに苦しいのね。
着替えが終わると、そのまま王宮の立派な馬車に乗せられた。これが馬車なのね、初めて乗ったわ。ただ、どうやら裏口から出ていくようだ。王宮を出ると、そのまま王都の街を走っていく。私は今まで一度も王宮から出た事はなかった。初めて見る街に、興奮しかない。
メイド長の話では、英雄と呼ばれるアントニオ様は、この国の一番端にある街で暮らし始めたとの事。もっと大きくて立派な領地を与えると陛下に言われたらしいのだが、“ここがいい”と言って、譲らなかったらしい。
その為、今日から3日間かけて、アントニオ様のいる街へと向かうのだ。アントニオ様はどんな方なのかしら?
7歳でお母様を亡くした私は、ずっと王家のお荷物、邪魔者として生きて来た。動物たちは傍にいてくれたけれど、ずっと孤独の中で生きて来たのだ。この結婚を機に…なんて、ちょっとだけ期待している。
でも、英雄と呼ばれている人が、私を受け入れてくれるかしら?そんな事を考えながら、進んでいく。
休憩の度に立派な食事が与えられ、立派なホテルに泊まる。みる街みる街新鮮で、つい目を輝かせてしまう。外の世界はこんなに素晴らしいのね。
そんな日々を過ごしているうちに、あっという間にアントニオ様がいらっしゃる領地についた。自然豊かな美しい街だ。これからこの街に住むのね。動物のお友達もたくさんできそうだわ。
しばらく進むと、立派なお屋敷が見えて来た。そして立派なお屋敷に入って行く。
「着きましたよ。降りて下さい」
御者に促され、ゆっくりと馬車を降りた。そして、屋敷の中に入ろうとしたのだが…
「どうして王女が私の屋敷にやって来たのだ!私は国王に言ったはずだぞ。王女はいらない。この地でひっそりと暮らしたいと!とにかく、今すぐ連れて帰ってくれ!」
男性の声が聞こえてくる。声のする方に向かうと、そこには鉄の仮面を被った男性が、私を連れて来た執事に文句を言っている。
「それは出来ません!既に王女殿下もいらしておられますので。それでは私たちはこれで失礼いたします」
そう言うと、急ぎ足で屋敷から出ていく執事と護衛たち。
「おい、待て!話は終わっていないぞ!おい!」
男性が叫んでいるが、あっという間に馬車に乗り込み、去って行った。なんて逃げ足の速い人たちなのだろう。
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