33 / 35
第33話:アレックが迎えに来たけれど
しおりを挟む
「ミレイちゃん、このお料理、2番テーブルに運んで」
「は~い」
村に帰って来て早半月。以前お世話になっていた食堂で再び働きだした私は、毎日充実した生活を送っている。こうやって村で生活をしていると、王都で過ごした時間は、まるで夢だった様な気がする。
やっぱり私は、この村で暮らしている方が幸せなのだろう。
「ミレイちゃんは、本当に働き者だね。ねえ、ミレイちゃん、今夜一緒に食事に行かないかい?」
「ちょっと、またミレイを口説いて!ミレイがフリーになった瞬間、すぐに群がるんだから!」
「でもよ、リマちゃん。ミレイちゃんはもう18歳だし、そろそろ結婚相手を探した方がいいだろう?ミレイちゃん、俺なんてどうだい?」
「おい、抜け駆けするなよ。俺も候補に入れて欲しいな」
なぜか村に戻って来てから、沢山の男性たちにアプローチされるのだ。有難いのだが、今はまだ、1人でいたい。
「またミレイちゃんを口説いて!さあ、さっさと仕事に戻りな。本当にもう」
女将さんが男性たちを追い払っている。
「ミレイちゃんは可愛くて気が利くから、この村の男たちも放っておかないのだよ。ミレイちゃん、アレックの事もあるだろうから、すぐにとは言わないが、そろそろこの村の男たちと歩む未来も考えた方がいいんじゃないかな?」
「そうよね。ミレイ、あなたは18歳なのよ。そろそろ、村の男性たちの中から、よさそうな人を探してみたら?せっかくだから、食事くらい行ってみたらどう?」
確かに2人の言う通り、この村でずっと暮らすのなら、そろそろ結婚相手についても考えないといけないだろう。分かってはいるが、気持ちがまだ付いて行かない。多分まだ私は、アレックの事が好きなのだろう。
「ごねんよ、ミレイちゃん。そんな悲しそうな顔をしないでおくれ。王都で散々傷つけられて帰って来たのだから、今はまだゆっくりしたいよね。結婚相手はおいおい決めればいいさ。さあ、仕事に戻ろう」
気を取り直して、仕事を続ける。
その時だった。
「いらっしゃいませ…えっ?」
「ミレイ!!」
お店に入って来たのは、何とアレックだ。どうしてアレックがここにいるの?訳が分からず固まる私を抱きしめるアレック。
「アレック、どうしてここにいるの?まさか私を迎えに来たの?悪いけれど、私はもう、王都に戻るつもりはないわ。ごめんなさい。どうかあなたは、王都に帰って」
いくらアレックが迎えに来てくれても、私はもう王都に戻るつもりはないし、アレックと共に、あの豪華な屋敷で過ごすつもりもない。そんな思いから、抱き着くアレックを突き放した。
「ミレイ、その件なのだが…」
「ごめんなさい、今仕事中なの。悪いけれど、帰ってくれる?」
「ミレイ…俺は…」
「いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ」
アレックを無視して、他のお客さんの相手をする。とにかくアレックとは終わったのだ。今更迎えに来られても、はっきり言って迷惑でしかない。
「ミレイ、大事な話があるんだ。俺はミレイと話がしたい。家で待っているから」
そう言って外に出て行ったアレック。待たれたところで、私は王都に戻るつもり何て微塵もない。
「ミレイちゃん、アレックがわざわざ訪ねて来たんだよ。もう今日はいいから、帰っておやり」
女将さんが声を掛けてくれた。でも…
「私とアレックは、もう終わったのです。ですから、どうか気にしないで下さい。さあ、仕事に戻りましょう」
その後もいつも通り仕事をこなした。
「それじゃあ、また明日。リマ、今日はあまり帰りたくないの。よかった食事でもしていかない?」
近くにいたリマに、話し掛ける。
「もう、ミレイったら。家でアレックが待っているのでしょう?わざわざ村まで来るだなんて。きちんと話をした方がいいわよ。さあ、家に帰りましょう」
確かにリマの言う通りだ。ここで逃げたら、アレックに失礼だわ。分かってはいるが、どうしても話す気になれないのだ。そんな私の手を掴み、リマがお店の外に出る。すると…
「ミレイ」
「アレック、どうして?家出待っていたのではないの?」
「そのつもりだったんだけれど、ミレイが他の男たちに絡まれないか心配で…さあ、家に戻ろう。リマ、いつもミレイの事を気にかけてくれてありがとう」
「どういたしまして。それじゃあ、私は先に帰るわね」
「えっ、待って、リマ…」
隣同士なのだから、一緒に帰ろうと声を掛けようとしたのだが、さっさと帰ってしまった。もう、リマったら。
「ミレイ、帰ろう。俺たちの家に」
そう言うと私の手を握ったアレック。
「アレックの家は、王都のお屋敷でしょう?」
「あの家はもう売ったよ…ミレイ、今まで本当にすまなかった」
真っすぐ私を見つめるアレック。
「あのお屋敷を売ったとは、どういう事?だってあの家はアレックの…」
「話は家に帰ってからゆっくりしよう。とにかく帰ろう」
アレックに手を引かれ、家に向かって歩き出したのだった。
「は~い」
村に帰って来て早半月。以前お世話になっていた食堂で再び働きだした私は、毎日充実した生活を送っている。こうやって村で生活をしていると、王都で過ごした時間は、まるで夢だった様な気がする。
やっぱり私は、この村で暮らしている方が幸せなのだろう。
「ミレイちゃんは、本当に働き者だね。ねえ、ミレイちゃん、今夜一緒に食事に行かないかい?」
「ちょっと、またミレイを口説いて!ミレイがフリーになった瞬間、すぐに群がるんだから!」
「でもよ、リマちゃん。ミレイちゃんはもう18歳だし、そろそろ結婚相手を探した方がいいだろう?ミレイちゃん、俺なんてどうだい?」
「おい、抜け駆けするなよ。俺も候補に入れて欲しいな」
なぜか村に戻って来てから、沢山の男性たちにアプローチされるのだ。有難いのだが、今はまだ、1人でいたい。
「またミレイちゃんを口説いて!さあ、さっさと仕事に戻りな。本当にもう」
女将さんが男性たちを追い払っている。
「ミレイちゃんは可愛くて気が利くから、この村の男たちも放っておかないのだよ。ミレイちゃん、アレックの事もあるだろうから、すぐにとは言わないが、そろそろこの村の男たちと歩む未来も考えた方がいいんじゃないかな?」
「そうよね。ミレイ、あなたは18歳なのよ。そろそろ、村の男性たちの中から、よさそうな人を探してみたら?せっかくだから、食事くらい行ってみたらどう?」
確かに2人の言う通り、この村でずっと暮らすのなら、そろそろ結婚相手についても考えないといけないだろう。分かってはいるが、気持ちがまだ付いて行かない。多分まだ私は、アレックの事が好きなのだろう。
「ごねんよ、ミレイちゃん。そんな悲しそうな顔をしないでおくれ。王都で散々傷つけられて帰って来たのだから、今はまだゆっくりしたいよね。結婚相手はおいおい決めればいいさ。さあ、仕事に戻ろう」
気を取り直して、仕事を続ける。
その時だった。
「いらっしゃいませ…えっ?」
「ミレイ!!」
お店に入って来たのは、何とアレックだ。どうしてアレックがここにいるの?訳が分からず固まる私を抱きしめるアレック。
「アレック、どうしてここにいるの?まさか私を迎えに来たの?悪いけれど、私はもう、王都に戻るつもりはないわ。ごめんなさい。どうかあなたは、王都に帰って」
いくらアレックが迎えに来てくれても、私はもう王都に戻るつもりはないし、アレックと共に、あの豪華な屋敷で過ごすつもりもない。そんな思いから、抱き着くアレックを突き放した。
「ミレイ、その件なのだが…」
「ごめんなさい、今仕事中なの。悪いけれど、帰ってくれる?」
「ミレイ…俺は…」
「いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ」
アレックを無視して、他のお客さんの相手をする。とにかくアレックとは終わったのだ。今更迎えに来られても、はっきり言って迷惑でしかない。
「ミレイ、大事な話があるんだ。俺はミレイと話がしたい。家で待っているから」
そう言って外に出て行ったアレック。待たれたところで、私は王都に戻るつもり何て微塵もない。
「ミレイちゃん、アレックがわざわざ訪ねて来たんだよ。もう今日はいいから、帰っておやり」
女将さんが声を掛けてくれた。でも…
「私とアレックは、もう終わったのです。ですから、どうか気にしないで下さい。さあ、仕事に戻りましょう」
その後もいつも通り仕事をこなした。
「それじゃあ、また明日。リマ、今日はあまり帰りたくないの。よかった食事でもしていかない?」
近くにいたリマに、話し掛ける。
「もう、ミレイったら。家でアレックが待っているのでしょう?わざわざ村まで来るだなんて。きちんと話をした方がいいわよ。さあ、家に帰りましょう」
確かにリマの言う通りだ。ここで逃げたら、アレックに失礼だわ。分かってはいるが、どうしても話す気になれないのだ。そんな私の手を掴み、リマがお店の外に出る。すると…
「ミレイ」
「アレック、どうして?家出待っていたのではないの?」
「そのつもりだったんだけれど、ミレイが他の男たちに絡まれないか心配で…さあ、家に戻ろう。リマ、いつもミレイの事を気にかけてくれてありがとう」
「どういたしまして。それじゃあ、私は先に帰るわね」
「えっ、待って、リマ…」
隣同士なのだから、一緒に帰ろうと声を掛けようとしたのだが、さっさと帰ってしまった。もう、リマったら。
「ミレイ、帰ろう。俺たちの家に」
そう言うと私の手を握ったアレック。
「アレックの家は、王都のお屋敷でしょう?」
「あの家はもう売ったよ…ミレイ、今まで本当にすまなかった」
真っすぐ私を見つめるアレック。
「あのお屋敷を売ったとは、どういう事?だってあの家はアレックの…」
「話は家に帰ってからゆっくりしよう。とにかく帰ろう」
アレックに手を引かれ、家に向かって歩き出したのだった。
17
お気に入りに追加
1,732
あなたにおすすめの小説
大好きな騎士団長様が見ているのは、婚約者の私ではなく姉のようです。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
18歳の誕生日を迎える数日前に、嫁いでいた異母姉妹の姉クラリッサが自国に出戻った。それを出迎えるのは、オレーリアの婚約者である騎士団長のアシュトンだった。その姿を目撃してしまい、王城に自分の居場所がないと再確認する。
魔法塔に認められた魔法使いのオレーリアは末姫として常に悪役のレッテルを貼られてした。魔法術式による功績を重ねても、全ては自分の手柄にしたと言われ誰も守ってくれなかった。
つねに姉クラリッサに意地悪をするように王妃と宰相に仕組まれ、婚約者の心離れを再確認して国を出る覚悟を決めて、婚約者のアシュトンに別れを告げようとするが──?
※R15は保険です。
※騎士団長ヒーロー企画に参加しています。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる