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第47話:私の大切な家族

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運命の断罪から1ヶ月が過ぎた。あの日からエドワード様達は王宮で生活を始めているが、私は養女として迎えられたグラッセル侯爵家でお世話になっている。

あの後陛下とグラッセル侯爵との話し合いで、正式に輿入れするまでは、やはり侯爵家でお世話になった方がいいだろうという事になった。


幸い伯父様も義伯母様もとてもいい人たちで、毎日快適に過ごしている。断罪が行われた翌日には、皆でお母様とお母様の友人が眠るお墓、さらに新しい王妃様のご家族が眠るお墓に今回の事を報告に行った。

“お母様、全てが終わりましたわ。随分と時間が掛かってしまいましたが、やっとお母様の無念を晴らすことが出来ました。どうか安らかにお眠りください“

そうお母様に伝えた。お母様が亡くなってから、ほとんどお墓参りに来ることもなかった。でも、これからは定期的にこよう。そう思っている。

ちなみに、断罪から一週間後、王妃様とシャラティア公爵、さらにクディスル公爵の裁判が行われた。そして予想通り、3人は極刑に処せられることになったのだ。

裁判の翌日、刑が執行されたらしい。男性2人は既に覚悟していた様で、大人しくしていたらしいが、王妃様だけは“死にたくない、私は悪くない”と、泣きながら命乞いをしていたらしい。

最後まで見苦しい姿を晒していたと、エドワード様が教えてくれた。そしてルイード様は、やはり陛下との血縁関係が認められない事が証明された。ただ、今まで王族として生きて来た事もあり、ルイード様には一代だけの爵位と、小さめの屋敷、さらに一生生活に困らないだけの財産が与えられたらしい。

ただ、王都に置いておく訳にはいかなとの事で、この国の一番北にある街で、ひっそりと暮らすことが決まった。さすがのルイード様もショックを受けていた様で、せめて私を連れて行きたいと陛下に懇願していたらしい。

もちろん、そんな事は受け入れられることはなく、1人寂しく旅立って行ったらしい。

全てが片付いた時点で、奥様が正式に王妃殿下に就任した。さらに無実の罪で潰されたカリフィース元侯爵家も復活する事になった。新しいカリフォース侯爵には、唯一侯爵家の血を受け継いでいる、王妃様の年の離れた弟君が就任されることになった。彼は母方の実家に預けられていたらしい。両親や兄の無念を晴らすため、密かに伯父様たちと一緒に動いていた人物との事。

少しずつだが、新しい勢力も動き出している。

そして1週間前、エドワード様が正式に王太子殿下に就任した。それと同時に、私もエドワード様の婚約者として、正式に発表されたのだ。

そう、私は再び、王太子殿下の婚約者になったのだ。でも、あの時の私とは比べ物にならない程、今は幸せだ。優しくていつも私の事を考えてくれる婚約者、穏やかで笑顔が素敵な王妃様、そして今まであまり存在感がなかったが、実は家族思いの陛下。

私に癒しをくれる可愛いジャミン様、良き相談相手のメイド長改め、リース。たくさんの大切な人に囲まれながら、日々楽しく過ごしている。

そして私は、無駄な公務の削減にも努めている。はっきり言って、全く無意味な公務も、沢山あるのだ。無駄を省き、作業のスリム化を図る事も、私の大事な仕事だと思っている。

実際貴族たちからも、好評だ。実は貴族たちも、無駄な仕事が多いと感じていた様で、今は貴族たちと相談しながら、少しずつ仕訳を行っているのだ。

そして今は、ジャミン様と一緒に、中庭で束の間のティータイムだ。

昔はこんな風に、王宮の中庭でお茶を飲む事なんてなかったのに。

そう、かつて私にとって地獄だったこの場所は、今は安らぎの場所へと変わったのだ。膝の上で眠るジャミン様を撫でながら、そんな事を考えていると。

「マリー、探したんだよ。ここでお茶をしていたのだね」

私の元にやって来たのは、エドワード様だ。

「エドワード様、今日の会議は終わったのですか?」

「ああ、皆色々と案を出してくれるから助かっているよ。随分と無駄な公務が減った分、王都や地方の視察も積極的に行けそうだ。それに他国との貿易も、今後は力を入れて行こうという話で纏まったよ。元王妃やクディスル公爵たちがいなくなったおかげで、皆生き生きとしているよ」

「それは良かったですわ。地方の視察ですか。ぜひ実現するといいですわね…」

「そうだね、いつか必ず、レックスィンの街に行こう」

「ええ、もちろんですわ」


~10年後~
「父上、母上、見て下さい、海が奇麗ですよ」

「本当だわ、真っ青ね」

「あそこにふねがみえるよ。すごいね」

馬車の中ではしゃぐのは、私とエドワード様の子供たちだ。私達はあの後結婚し、2男1女に恵まれた。そして数年前、正式にエドワード様が王となったのだ。

参道には、私たちの為に沢山の民たちが集まってくれている。実は5年前から、毎年この地に遊びに来ているのだ。公務のスリム化を図ったおかげで、王族でもある私たちもこうやって休暇を頂ける環境を作る事が出来る様になった。

もちろん、私たちの宿泊先は、エドワード様達が住んでいた屋敷だ。屋敷に着くと

「エドワード陛下、マリー王妃殿下、クラウディオ殿下、アリーナ殿下、マドリード殿下、ようこそいらっしゃいました。今年もお待ちしておりましたよ」

笑顔で迎えてくれるのは、かつての仕事仲間たちだ。

「皆、元気そうで何よりだわ。今年もお世話になるわね」

「ええ、もちろんですわ」

その時だった。

「マリアナちゃん、おかえりなさい」

「ルーマさん、それにルリアさんやルルミさんたちも。皆、来てくれたのですね」

「もちろんだよ。私は毎年、マリアナちゃんに会えるのを楽しみにしているんだよ。子供たちも、随分と大きくなったね。さあ、今年は何をして遊ぼうか?」

「あっ、ルーマおば様だわ。今年は海で貝拾いがしたいわ」

「僕は漁に出たいです」

「ぼくは…だっこ」

「そうかいそうかい、それじゃあ、早速目いっぱい遊ぼうね」

嬉しそうに笑うルーマさん。

「マリー、ルーマさんは相変わらずだね」

そう言ってエドワード様が笑っている。あの時と変わらないルーマさんを見ていると、なんだか心がほっこりする。

ふと1人必死にこの地に逃げて来た日の事を思い出す。あの時確かに私は独りぼっちだった。でも…今私にはたくさんの家族がいる。エドワード様や子供たちはもちろん、ルーマさん家族、伯父様やお義伯母様、元陛下や王妃様、ずっと家族に恵まれずに泣いていたあの頃の私はもういない。

いつの間にか、こんなにも沢山の素敵な家族が出来たのだから。

私はこれからも、この沢山の家族を大切にして生きていきたい。それが私の願いだから。

おしまい


~あとがき~
これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
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