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第42話:決戦の日を迎えました

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翌日、少し早めに目が覚めた私は、朝からジャミン様と一緒に中庭へと向かった。いつもと変わらない穏やかな朝。でも今日は…

「キャンキャン」

「ごめんなさい、ジャミン様。さあ、行きましょう」

私が立ち止まっていたから、ジャミン様に催促をされてしまった。今日は午前中、貴族会議があるらしい。その場で、王妃様やお父様、さらにクディスル公爵を断罪する事になっている。泣いても笑っても、今日の午前中には決着が付くのだ。

そしてついに今日、お母様が何年もかけて集めた証拠たちが、日の目を見る。そう思ったら、なんだか胸がドキドキしてきた。

「マリー、ここにいたのだね。ジャミン、昨日マリーと一緒に寝ただろう!羨ましい奴め!」

ジャミン様を抱きかかえながら、何やら訳の分からない事を言っているエドワード様。ジャミン様はよくわかっていない様で、首をかしげている。

「マリー、そろそろ朝ごはんの時間だ。食後、僕と母上は一足早く王宮へと向かうよ。父上に呼び出されていてね。そこで父上に、今回の事を報告するつもりだ。本当はマリーも連れて行きたいのだが、万が一王妃やルイードに見られると面倒だからね。君には後でこっそり来てもらおうと思っている」

「分かりましたわ。エドワード様、どうかご無事で…」

「大丈夫だよ、そんな短期間でやられることはないから。それよりもマリー、1人で王宮に向かわせることになってしまって、すまない。君にとっては、嫌な思い出しかない場所なのに」

「私の事は気にしないで下さい。それに、昔は嫌な場所だったかもしれませんが、今後は私にとって居心地の良い場所に変わればと、今は考えておりますの。その為に、今日は頑張りましょう」

「そうだね、さあ、しっかり朝食を食べよう。侯爵家での食事は、これで最後だから」

「はい」

2人で手を繋ぎ、食堂へと向かう。食後、一足先に王宮に戻るエドワード様と奥様を見送った。今日の会議までまだ時間があるとの事で、お茶を飲んで過ごす。でも…

エドワード様と奥様、大丈夫かしら?王宮でまた酷い目に合っていないかしら?つい2人の事を考えてしまう。そうしているうちに、私もそろそろ準備を行う時間になった。着替えを済ませ、いつでも出発できる状態になった頃、伯父様が訪ねて来た。

「今日の予定なのだが、君にはしばらく別室で控えてもらおうと思っている。そこにジャミン殿とリース、それから私の妻と一緒に、待機していてくれるかい?会議の様子は、モニターからみられる様にしてあるから。一足先に王宮に出向いているエドワード殿下が、全て陛下に許可を取って、手配してもらった様だ」

「メイド長とジャミン様も一緒なのですね。それは嬉しいですわ。それにしてもよく陛下の許可が下りましたね」

「陛下は元々、アンリ妃に夢中だったからね。今回アンリ妃とエドワード殿下が戻って来て、嬉しいのだろう。それに今回の断罪の件も、かなり驚いていたそうだが、承諾してくれた様だ。陛下も色々と思う事があったのだろう」

伯父様がそう言って笑っていた。そして伯父様を見送った後、私たちも馬車に乗り込む。緊張する私たちに対し、嬉しそうに私の膝の上に座るジャミン様。

「ジャミン様を見ていると、なんだか心が落ち着きますわ」

そう言ってジャミン様を抱きしめる。温かくて柔らかくて、キャスを抱きしめているみたい。

ゆっくり馬車が走り出し、王宮を目指す。しばらく走ると、王宮が見えて来た。王宮を見た瞬間、かつての記憶が蘇り、胸がバクバクし始める。とっさにジャミン様を抱きしめた。

「マリーちゃん、大丈夫?ここはあなたにとって、いい思い出がないものね。でも、大丈夫よ。私達がいるから。さあ、行きましょう」

義伯母様とメイド長に支えられ、ゆっくり馬車を降りる。私の姿を見た使用人たちが一瞬目を大きく見開いたが、別の使用人がやって来て、すぐに控室へと案内してくれた。

伯父様が言った通り、部屋には大きなモニターと持ち運びが出来る携帯タイプのモニターが準備されていていた。モニターには、既にたくさんの貴族が集まっている様子が映っている。ジャミン様をメイド長に預け、私と義伯母様は、会議の様子を見守る。

そこには父やクディスル公爵の姿も…

しばらくすると、王族が入って来た。久しぶりに見る王妃様やルイード殿下の姿。

「マリーちゃん、大丈夫?」

王妃様の姿が映った瞬間、心配そうに私に話し掛けてきてくれた義伯母様。

「ありがとうございます、でも、大丈夫ですわ。私はもう、あんな意地悪な人には負けるつもりはありませんから」

真っすぐ王妃様を見つめる。明らかに不機嫌なのが見て取れる。それもそうだろう、王妃様の大嫌いな奥様とエドワード様が帰って来たのだ。それにしてもあの人王妃なのに、不機嫌を前面に出すだなんて…

まずは陛下の口から、奥様とエドワード様が帰って来た事が告げられた。これからはずっと王宮で暮らすと報告している。

昨日集まってくれていた貴族たちから、一斉に歓喜の声が上がった。ただ、それが気に入らないのが、クディスル公爵と王妃様だ。貴族たちをギロリと睨みつけると

“陛下、そこにいらっしゃるアンリ殿は、謀反を企て処罰されたカリフィース元侯爵家の一族です。いい加減彼女との離縁を検討してください。やはり犯罪者の娘とその子供を王族にしておく訳にはいきません。皆ももちろん、そう思うでしょう?”


圧を掛ける様に貴族たちに問いかける公爵。この男、本当に感じが悪い。

“クディスル公爵の言う通りですわ。犯罪者の娘が王族として私たちと同じ生活圏にいるだなんて、耐えられません。以前の様に、早く王都から追い出してくださいませ!”

口元を扇子で隠し、心底軽蔑するような目で、奥様とエドワード様を見つめている。この女、どこまで腐っているの!怒りがこみ上げてきて、その場を立ちあがった時だった。
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