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第2話:まだ現実を受け入れられません
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どれくらい両親の側で泣いただろう。それでもどうしても両親の側を離れる事が出来ない。
メイドから
「お嬢様、病院側が別の部屋を準備してくれております。一旦お休みいたしましょう」
そう提案してくれた。でも…
「ありがとう。でも今は、どうしても2人の側から離れたくはないの。私は大丈夫だから、あなたたちは休んできて」
とにかく今は両親の側にいたいのだ。その時だった。
「レティシア、大丈夫かい?公爵と夫人が亡くなったと聞いたのだが」
やって来たのは、なんとリアム様だ。わざわざ私を心配して来て下さるなんて…
「リアム様、私は…」
リアム様の顔を見たら、再び涙が込み上げて来た。そんな私を、優しく包み込むように抱きしめてくれるリアム様。その温もりを感じた瞬間、子供の様に声を上げて泣いた。いつぶりだろう、こんな風に声を上げて泣いたのは。自分でもびっくりする程、泣いて泣いて泣き続けた。
しばらく泣いて落ち着いた私は、リアム様に連れられ病院側が準備してくれた部屋へと移った。
「レティシア、君は何も心配する必要はないよ。後は全て僕が行うから。さあ、少しお休み」
私をベッドに寝かせると、温かい飲み物を手渡してくれたリアム様。1口飲むと、少し落ち着いたのか急に眠たくなり、そのままベッドで眠ってしまった。
次に目を覚ました時には、既にリアム様によって両親の葬儀の準備などが行われていた。正直まだ両親の死を受け入れられない私は戸惑ったが、それでも公爵家の娘としてしっかり振舞わないと。そんな思いから、極力気丈に振舞った。
私の隣には常にリアム様が寄り添う様に立っていてくれる。それが心強かった。無事葬儀も終え、一旦公爵家に帰ろうとした時だった。
「レティシア、君を1人で公爵家に置いておくのは心配だ。あの家は、ご両親との思い出が多すぎる。王宮においで。王宮なら僕もいるから、きっと寂しくはないよ」
そう提案してくれたリアム様。でも…
「リアム様、いくら婚約者とはいえ、まだ結婚していない状況で王宮に住まわせて頂くのは、さすがに良くないですわ。私は大丈夫ですから」
さすがにこれ以上リアム様に甘える訳にはいかない。それに一旦公爵家にも帰りたいし。
「分かったよ、でももし辛かったらすぐに王宮に来るんだよ。心配だから、公爵家まで送って行くよ」
リアム様に手を引かれ、馬車に乗り込み公爵家を目指す。馬車に乗っている間も、私の手をずっと握っていてくれるリアム様。この温もりが、なんだか物凄く落ち着く。しばらく走ると、公爵家が見えて来た。
「リアム様、今回の件、本当にありがとうございました。それでは私はこれで」
「レティシア、本当に大丈夫なのかい?今からでも王宮に向かおう」
馬車から降りようとする私の手を握り、そう提案してくれた。
「ありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですわ。それでは」
リアム様にお別れの口付けをして馬車を降りる。久しぶりに帰る我が家。つい数日前まで、両親と一緒に過ごしていたのに…今はお父様もお母様もいない…その現実が辛くて、そのまま自室へと急いで向かった。
お父様とお母様がいないせいか、やけに屋敷が静かで寂しい場所に感じる。あんなにも温かくて居心地の良い場所だったのに…
ふと近くにあった大きなクマのぬいぐるみに目が留まる。このクマは私が6歳の時、お父様におねだりして買って貰ったものだ。
私が大喜びする姿を見て、お父様もお母様も嬉しそうな顔をしていた。こっちのネックレスは両親が私とリアム様の婚約を記念して作ってくれたもの。よく考えてみると、私の部屋にあるもののほとんどが、両親から贈られたものだ。
私は今までずっと両親に守られて生きて来たのだ。リアム様と婚約出来たのも、お父様の力があったからこそ…
「お父様、お母様、私はこれからどうすればいいのですか…どうして私を残して2人で旅立ってしまったのですか…」
お父様とお母様がいないと言う現実が痛いほど体を突き刺さる。それが耐えられずに、再び声を上げて泣いた。泣いたところでどうしようもないのに、それでも私には泣く事しか出来ない。
結局その日の夜は泣きながら夜を明かした。
翌日
何もする気がない私の元を訪ねて来たのは、リアム様だ。私の顔を見るなり、心配そうな顔をして飛んできた。
「あぁ、レティシア、なんて顔をしているんだ。可哀そうに。やはり君を1人で公爵家に置いておくのではなかった。とにかく、王宮に向かおう」
そう言うと、私を抱きかかえた。
「私は大丈夫ですわ。それに私がここにいなければ、使用人たちも困るでしょうし…」
公爵家には沢山の使用人を雇っている。私がこの家を出てしまったら、彼らは路頭に迷ってしまう。
「彼らの事は心配する必要はない。既に新たな仕事先を紹介している。何人かは王宮で働けるように手配したし。それから、トンプソン公爵家は後継ぎがいない事から、残念ながら取り潰される事になったんだ。でも大丈夫だよ。レティシアは僕の婚約者として、王宮で暮らせる様手続きをしてあるから。ごめんね、僕の力不足のせいで、君の家を守れなかった」
申し訳なさそうに頭を下げるリアム様。
「いいえ、リアム様のせいではありませんわ。家の主が亡くなり、後を継ぐ者がいなければ、取り潰されるのはこの国の決まりです。それよりも、使用人の為に色々と働き掛けて下さり、ありがとうございます。それから、私の住む場所も」
「そんな事は当たり前だろう。とにかく、今すぐ王宮に向かおう」
「お待ちください、リアム様。王宮で生活するのでしたら、持って行きたいものもあります。荷造りを…」
「その必要はないよ。君の部屋の物は、この後全て王宮に運ぶつもりだから。ほら、行こう」
私を抱きかかえたリアム様によって、馬車に乗せられ王宮へと向かったのであった。
メイドから
「お嬢様、病院側が別の部屋を準備してくれております。一旦お休みいたしましょう」
そう提案してくれた。でも…
「ありがとう。でも今は、どうしても2人の側から離れたくはないの。私は大丈夫だから、あなたたちは休んできて」
とにかく今は両親の側にいたいのだ。その時だった。
「レティシア、大丈夫かい?公爵と夫人が亡くなったと聞いたのだが」
やって来たのは、なんとリアム様だ。わざわざ私を心配して来て下さるなんて…
「リアム様、私は…」
リアム様の顔を見たら、再び涙が込み上げて来た。そんな私を、優しく包み込むように抱きしめてくれるリアム様。その温もりを感じた瞬間、子供の様に声を上げて泣いた。いつぶりだろう、こんな風に声を上げて泣いたのは。自分でもびっくりする程、泣いて泣いて泣き続けた。
しばらく泣いて落ち着いた私は、リアム様に連れられ病院側が準備してくれた部屋へと移った。
「レティシア、君は何も心配する必要はないよ。後は全て僕が行うから。さあ、少しお休み」
私をベッドに寝かせると、温かい飲み物を手渡してくれたリアム様。1口飲むと、少し落ち着いたのか急に眠たくなり、そのままベッドで眠ってしまった。
次に目を覚ました時には、既にリアム様によって両親の葬儀の準備などが行われていた。正直まだ両親の死を受け入れられない私は戸惑ったが、それでも公爵家の娘としてしっかり振舞わないと。そんな思いから、極力気丈に振舞った。
私の隣には常にリアム様が寄り添う様に立っていてくれる。それが心強かった。無事葬儀も終え、一旦公爵家に帰ろうとした時だった。
「レティシア、君を1人で公爵家に置いておくのは心配だ。あの家は、ご両親との思い出が多すぎる。王宮においで。王宮なら僕もいるから、きっと寂しくはないよ」
そう提案してくれたリアム様。でも…
「リアム様、いくら婚約者とはいえ、まだ結婚していない状況で王宮に住まわせて頂くのは、さすがに良くないですわ。私は大丈夫ですから」
さすがにこれ以上リアム様に甘える訳にはいかない。それに一旦公爵家にも帰りたいし。
「分かったよ、でももし辛かったらすぐに王宮に来るんだよ。心配だから、公爵家まで送って行くよ」
リアム様に手を引かれ、馬車に乗り込み公爵家を目指す。馬車に乗っている間も、私の手をずっと握っていてくれるリアム様。この温もりが、なんだか物凄く落ち着く。しばらく走ると、公爵家が見えて来た。
「リアム様、今回の件、本当にありがとうございました。それでは私はこれで」
「レティシア、本当に大丈夫なのかい?今からでも王宮に向かおう」
馬車から降りようとする私の手を握り、そう提案してくれた。
「ありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですわ。それでは」
リアム様にお別れの口付けをして馬車を降りる。久しぶりに帰る我が家。つい数日前まで、両親と一緒に過ごしていたのに…今はお父様もお母様もいない…その現実が辛くて、そのまま自室へと急いで向かった。
お父様とお母様がいないせいか、やけに屋敷が静かで寂しい場所に感じる。あんなにも温かくて居心地の良い場所だったのに…
ふと近くにあった大きなクマのぬいぐるみに目が留まる。このクマは私が6歳の時、お父様におねだりして買って貰ったものだ。
私が大喜びする姿を見て、お父様もお母様も嬉しそうな顔をしていた。こっちのネックレスは両親が私とリアム様の婚約を記念して作ってくれたもの。よく考えてみると、私の部屋にあるもののほとんどが、両親から贈られたものだ。
私は今までずっと両親に守られて生きて来たのだ。リアム様と婚約出来たのも、お父様の力があったからこそ…
「お父様、お母様、私はこれからどうすればいいのですか…どうして私を残して2人で旅立ってしまったのですか…」
お父様とお母様がいないと言う現実が痛いほど体を突き刺さる。それが耐えられずに、再び声を上げて泣いた。泣いたところでどうしようもないのに、それでも私には泣く事しか出来ない。
結局その日の夜は泣きながら夜を明かした。
翌日
何もする気がない私の元を訪ねて来たのは、リアム様だ。私の顔を見るなり、心配そうな顔をして飛んできた。
「あぁ、レティシア、なんて顔をしているんだ。可哀そうに。やはり君を1人で公爵家に置いておくのではなかった。とにかく、王宮に向かおう」
そう言うと、私を抱きかかえた。
「私は大丈夫ですわ。それに私がここにいなければ、使用人たちも困るでしょうし…」
公爵家には沢山の使用人を雇っている。私がこの家を出てしまったら、彼らは路頭に迷ってしまう。
「彼らの事は心配する必要はない。既に新たな仕事先を紹介している。何人かは王宮で働けるように手配したし。それから、トンプソン公爵家は後継ぎがいない事から、残念ながら取り潰される事になったんだ。でも大丈夫だよ。レティシアは僕の婚約者として、王宮で暮らせる様手続きをしてあるから。ごめんね、僕の力不足のせいで、君の家を守れなかった」
申し訳なさそうに頭を下げるリアム様。
「いいえ、リアム様のせいではありませんわ。家の主が亡くなり、後を継ぐ者がいなければ、取り潰されるのはこの国の決まりです。それよりも、使用人の為に色々と働き掛けて下さり、ありがとうございます。それから、私の住む場所も」
「そんな事は当たり前だろう。とにかく、今すぐ王宮に向かおう」
「お待ちください、リアム様。王宮で生活するのでしたら、持って行きたいものもあります。荷造りを…」
「その必要はないよ。君の部屋の物は、この後全て王宮に運ぶつもりだから。ほら、行こう」
私を抱きかかえたリアム様によって、馬車に乗せられ王宮へと向かったのであった。
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