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第45話:旅立ちのときです
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夕食後、部屋に戻り、荷造りの準備をする。この10日間、本当に素敵な時間を過ごさせてもらった。アンネ様はもちろん、ダスディー侯爵や夫人、アンネ様の弟のアテネ様、本当に皆私に親切にしてくれた。
心のどこかで、この人たちとずっと一緒にいたい、そう思っているのも事実だ。でも、いつまでもここでお世話になる事は出来ない。10日だったけれど、家族の温もりを知れてよかったわ。
そんな事を考えながら、荷物をカバンにつめていく。と言っても、大した荷物はない。旅をするときは、必要最低限のもの以外は、持って行かないようにしている。あまりにも荷物が多いと、運ぶのに大変だからね。
有難い事に、私が持っていたドレスは、ダスディー侯爵がお金に換えてくれた。そして夫人が動きやすい格好をと、ワンピースをいくつか作ってくれた。さらに旅の資金にと、たくさんのお金も追加で準備してくれた。
陛下から貰った慰謝料を合わせると、かなりの額になる。ちなみに私が持っていた宝石だが、万が一お金が無くなった時に使えるから、かさばらないしそのまま持っておいた方がいいという事で、換金はしなかった。
本当に何から何までお世話になった。感謝してもしきれないくらいだ。
全ての準備を終え、ベッドに入る。明日はいよいよ旅立ちね。どんな国が私を待っているのかしら?なんだかドキドキしてきたわ。でも、今日はしっかり寝ないと。
ゆっくり瞼を閉じたのであった。
翌日、朝食を頂いた後、夫人が準備してくれたワンピースに着替えた。そしていつもの様に、お母様の形見のネックレスと、ヴァンの形見のイヤリングを付ける。
準備が出来たら、そのまま馬車に乗り込んだ。ダスディー侯爵家の皆が、私を港まで送ってくれるらしい。そう、私は陸路ではなく、海路を選んだのだ。
港に着くと、ネリソン王太子殿下、ギュリネイ男爵やカミラ様、さらにたくさんの貴族が見送りに来てくれていた。どうやらダスディー侯爵が皆に声を掛けてくれた様だ。
私の姿をみると、真っ先にとんできてくれたのはカミラ様だ。
「ジェシカ様、とうとう行ってしまわれるのですね。寂しいです」
涙を流しながら私を抱きしめるカミラ様。そんなカミラ様を、私も抱きしめ返した。
「ジェシカ様、今回の件、本当にありがとうございました。それから、あなた様に酷い事をしてしまった事、今でも後悔しております。本当にごめんなさい」
「もう気にしないでください。私はあなたと友達になれた事、すごく嬉しいのです。でも、もっと早く友達になれたらよかったですわね。それから、もう変な男には捕まらないで下さいね」
変な男とは、もちろん元王太子のネイサン様の事だ。正式に公爵家の養子に入ったとの事で、もう殿下ではない。
「もう、ジェシカ様ったら!ジェシカ様も、旅の途中で変な男に捕まらないで下さいよ」
「あら、私は大丈夫よ」
そう言って2人で笑った。そんな私たちの元にやって来たのは、ネリソン殿下だ。
「ジェシカ嬢、今回の件、本当に感謝している。実は異母兄上の即位が早まったと聞いた時、僕が国王になりこの国を豊かにするという夢が消えたと絶望した。僕だけじゃない、ここにいる皆が、異母兄上を廃嫡させるのは無理かもしれないと諦めかけていた。そんな時、君が僕たちに手を差し伸べてくれた。君は僕たちにとって、女神の様な存在だ。本当にありがとう」
「お礼を言うのは私の方ですわ。私の復讐にお付き合いいただき、ありがとうございます。ネリソン王太子殿下、どうかこの国を今以上に素敵で魅力的な国にして下さい。それから、私の大切な友人、アンネ様を必ず幸せにしてあげて下さいね。幸せにしなかったら、どこにいても飛んできて、文句を言いに来ますからね」
「もちろんだ!必ず幸せにする」
アンネ様の手を握りながら、幸せそうに微笑んだネリソン王太子殿下。きっと彼なら大丈夫だろう。
「ジェシカ嬢、君はもう私たちの家族だ、いつでも帰って来てくれ。皆で待っているから」
「ありがとうございます、ダスディー侯爵」
ダスディー侯爵の隣で、夫人もにこやかにほほ笑んでくれている。
「ジェシカ様、これ。お守りです。私はこんな事しかできないけれど、この国であなた様の無事を祈っておりますわ。ジェシカ様、本当にありがとうございました。ジェシカ様がこの国に戻ってきた時、がっかりされないように、ネリソン様と素敵な国を作っていきます。ですから…必ずまた、帰って来てくださいね…」
泣きながら私を抱きしめ、そう伝えてくれたのはアンネ様だ。
「ええ、もちろんですわ。ネリソン王太子殿下とアンネ様が治める国を、必ず見に来ますわ」
私もアンネ様を抱きしめ、泣いた。
私の為に涙を流して別れを惜しんでくれる友人たちがいる。それが嬉しいのと同時に、やっぱり寂しくもある。
「アンネ様、カミラ様、そして皆様、今日は私の為に、ありがとうございました。また必ずこの国にも遊びに来ますわ。どうかお元気で」
涙をぬぐい皆に別れを告げ、船に乗り込もうとした時だった。
「お嬢様、あれほど私も連れて行ってくださると約束したのに、1人で旅に出るつもりですか?」
え?この声は…
心のどこかで、この人たちとずっと一緒にいたい、そう思っているのも事実だ。でも、いつまでもここでお世話になる事は出来ない。10日だったけれど、家族の温もりを知れてよかったわ。
そんな事を考えながら、荷物をカバンにつめていく。と言っても、大した荷物はない。旅をするときは、必要最低限のもの以外は、持って行かないようにしている。あまりにも荷物が多いと、運ぶのに大変だからね。
有難い事に、私が持っていたドレスは、ダスディー侯爵がお金に換えてくれた。そして夫人が動きやすい格好をと、ワンピースをいくつか作ってくれた。さらに旅の資金にと、たくさんのお金も追加で準備してくれた。
陛下から貰った慰謝料を合わせると、かなりの額になる。ちなみに私が持っていた宝石だが、万が一お金が無くなった時に使えるから、かさばらないしそのまま持っておいた方がいいという事で、換金はしなかった。
本当に何から何までお世話になった。感謝してもしきれないくらいだ。
全ての準備を終え、ベッドに入る。明日はいよいよ旅立ちね。どんな国が私を待っているのかしら?なんだかドキドキしてきたわ。でも、今日はしっかり寝ないと。
ゆっくり瞼を閉じたのであった。
翌日、朝食を頂いた後、夫人が準備してくれたワンピースに着替えた。そしていつもの様に、お母様の形見のネックレスと、ヴァンの形見のイヤリングを付ける。
準備が出来たら、そのまま馬車に乗り込んだ。ダスディー侯爵家の皆が、私を港まで送ってくれるらしい。そう、私は陸路ではなく、海路を選んだのだ。
港に着くと、ネリソン王太子殿下、ギュリネイ男爵やカミラ様、さらにたくさんの貴族が見送りに来てくれていた。どうやらダスディー侯爵が皆に声を掛けてくれた様だ。
私の姿をみると、真っ先にとんできてくれたのはカミラ様だ。
「ジェシカ様、とうとう行ってしまわれるのですね。寂しいです」
涙を流しながら私を抱きしめるカミラ様。そんなカミラ様を、私も抱きしめ返した。
「ジェシカ様、今回の件、本当にありがとうございました。それから、あなた様に酷い事をしてしまった事、今でも後悔しております。本当にごめんなさい」
「もう気にしないでください。私はあなたと友達になれた事、すごく嬉しいのです。でも、もっと早く友達になれたらよかったですわね。それから、もう変な男には捕まらないで下さいね」
変な男とは、もちろん元王太子のネイサン様の事だ。正式に公爵家の養子に入ったとの事で、もう殿下ではない。
「もう、ジェシカ様ったら!ジェシカ様も、旅の途中で変な男に捕まらないで下さいよ」
「あら、私は大丈夫よ」
そう言って2人で笑った。そんな私たちの元にやって来たのは、ネリソン殿下だ。
「ジェシカ嬢、今回の件、本当に感謝している。実は異母兄上の即位が早まったと聞いた時、僕が国王になりこの国を豊かにするという夢が消えたと絶望した。僕だけじゃない、ここにいる皆が、異母兄上を廃嫡させるのは無理かもしれないと諦めかけていた。そんな時、君が僕たちに手を差し伸べてくれた。君は僕たちにとって、女神の様な存在だ。本当にありがとう」
「お礼を言うのは私の方ですわ。私の復讐にお付き合いいただき、ありがとうございます。ネリソン王太子殿下、どうかこの国を今以上に素敵で魅力的な国にして下さい。それから、私の大切な友人、アンネ様を必ず幸せにしてあげて下さいね。幸せにしなかったら、どこにいても飛んできて、文句を言いに来ますからね」
「もちろんだ!必ず幸せにする」
アンネ様の手を握りながら、幸せそうに微笑んだネリソン王太子殿下。きっと彼なら大丈夫だろう。
「ジェシカ嬢、君はもう私たちの家族だ、いつでも帰って来てくれ。皆で待っているから」
「ありがとうございます、ダスディー侯爵」
ダスディー侯爵の隣で、夫人もにこやかにほほ笑んでくれている。
「ジェシカ様、これ。お守りです。私はこんな事しかできないけれど、この国であなた様の無事を祈っておりますわ。ジェシカ様、本当にありがとうございました。ジェシカ様がこの国に戻ってきた時、がっかりされないように、ネリソン様と素敵な国を作っていきます。ですから…必ずまた、帰って来てくださいね…」
泣きながら私を抱きしめ、そう伝えてくれたのはアンネ様だ。
「ええ、もちろんですわ。ネリソン王太子殿下とアンネ様が治める国を、必ず見に来ますわ」
私もアンネ様を抱きしめ、泣いた。
私の為に涙を流して別れを惜しんでくれる友人たちがいる。それが嬉しいのと同時に、やっぱり寂しくもある。
「アンネ様、カミラ様、そして皆様、今日は私の為に、ありがとうございました。また必ずこの国にも遊びに来ますわ。どうかお元気で」
涙をぬぐい皆に別れを告げ、船に乗り込もうとした時だった。
「お嬢様、あれほど私も連れて行ってくださると約束したのに、1人で旅に出るつもりですか?」
え?この声は…
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