34 / 66
第34話:楽しみにしていた野外学習です
しおりを挟む
平和な日々が戻って早1ヶ月、今日は待ちに待った野外学習当日だ。貴族学院では年に1回、王都の外れにある森に全校生徒全員で向かう。
王都の都会で育った私たちが、自然に触れ合える大切な授業なのだ。ただ、自然豊かな森なので、奥の方にはクマもいるとの事。
そうは言っても、私たちが行く場所は安全が確保されている為、毎年楽しみにしているのだ。去年はウサギやリスを見る事が出来た。今年はどんな動物たちに出会えるかな?
「お嬢様、カルロス様がいらっしゃっております」
「分かったわ、すぐに行くわね」
今日もカルロス様が家まで迎えに来てくだっさったので、2人で馬車に乗り込む。
「ルミタン、おはよう。会いたかったよ」
馬車に乗り込んだ途端、私を抱きしめるカルロス様。相変わらずだ。
「今日は野外学習だね。あの森には大きなクマがいるから、十分気を付けるんだよ。万が一ルミタンが襲われたら大変だから、ほら。腰に短刀を準備してきたんだ」
確かにカルロス様の腰には短刀が。
「クマは森の奥にいるのでしょう?そんなに心配しなくても大丈夫ですわ。それにそんな短い短刀でクマが倒せるのですか?」
さすがのカルロス様でも、その短刀では無理だろう。
「真剣はさすがに持ってこられないからね。持っていないよりかはマシだろう。と言いたいところなのだが、実はドリトル殿に持たされたんだよ。“森は部外者も入れる、何があるか分からないから短刀だけでも持って行け”てね…」
「まあ、兄が申し訳ございません」
お兄様ったら、いくら野外と言っても貴族学院が安全な場所という事くらい分かっているだろうに…
「それだけ君の事を心配しているという事なのだろう。それに俺に短刀を託してくれたという事は、俺にルミタンを守れと言ってくれたという事だろう?それがなんだか嬉しいんだよ」
そう言ってほほ笑むカルロス様。もう、カルロス様ったら…
なんだか心が温かい気持ちになった。
「さあ、学院に着いたよ。行こうか?いいかい、森についたらすぐに迎えに行くから、待っていてくれよ。くれぐれも勝手に行動しないでくれ。分かったね。それから、通信機は持っているね?」
「ええ、分かっておりますわ。それに通信機もありますし」
「それならよかった。クソ、どうしてルミタンと同じ車両じゃないんだ!やっぱりルミタンが心配だ…」
何やらブツブツと呟きだしたカルロス様、とにかく早く行った方がよさそうね。
「カルロス様、早く参りましょう」
「待って、ルミタン」
立ち上がり馬車から降りようとすると、カルロス様も私の手を握り急いで降りて来た。生憎今日は曇り空だ。雨が降らないといいのだけれど…
学院に着くとまずはクラスごとに馬車に乗り込み、駅を目指す。そして駅からは汽車に乗って森へと向かうのだ。汽車なんて普段のらないから、これまた大興奮。友人たちと一緒におしゃべりしたりして過ごす。
ちなみにたくさんの貴族が乗った汽車という事で、当日は貸し切り。さらに騎士団が護衛するという徹底ぶりだ。
汽車を降りると、再び馬車に乗り込み森へと向かう。歩いて森を登ってもいいのだが、何分貴族(特に令嬢)はあまり体力がないため、馬車で近くまで行くのだ。
「皆さん、これから自由行動です。いいですか?あの奥に見える岩よりも奥にはいかない様にしてください」
先生から簡単な説明があり、自由行動となった。
「ルミタン、お待たせ。さあ、行こうか」
嬉しそうに私の元へとやって来たカルロス様と一緒に、森の周りを散策する。
「カルロス様、見て下さい。可愛らしい野ウサギがこちらを見ていますわ。あっ、でも逃げて行ってしまいましたね。あら?あっちには綺麗な鳥がいますわ。あら?あの可愛らしい動物は…」
「あれはイタチだね。それからあそこには狸もいるよ。この森は本当にたくさんの動物たちがいるね」
イタチという動物か。それに狸も。なんだか可愛らしい動物ばかりね。
「ルミタン、あっちに珍しい花が咲いているから見に行こう」
カルロス様に連れられ、少し奥の方に行くと、沢山の花々が咲いているお花畑に来た。何人かの生徒たちも来ている。
「こんな綺麗なお花畑があっただなんて、知りませんでしたわ。なんて綺麗なのかしら?それに、いい匂いもするし」
「ここは去年俺たちが見つけた場所だよ。ルミタンに見せたらきっと喜ぶと思ってね。今日君をこの場所に連れてこられて本当によかった」
そう言うと、カルロス様が嬉しそうに笑った。彼はいつも私の事を考えてくれている。そう、本当にいつも…
最初はそれがちょっと嫌だったのだが、今は素直に嬉しい。
「ありがとうございます、カルロス様。せっかくなので花冠を作りましょう」
その場にしゃがみ込み、花冠を作りカルロス様の頭に乗せた。よく似合っている。
「ルミタンが作ってくれた花冠…家の家宝として大切に飾っておくよ」
「また大げさな…すぐに枯れてしまいますわ」
「確かに枯れてしまうな。それなら特殊な液に付けて、枯れないようにしないと」
そう言うと、大切そうに花冠をしまうカルロス様。その姿がなんだか可笑しくて、つい笑みがこぼれる。
今日カルロス様と野外学習に来られて、本当によかったわ。
王都の都会で育った私たちが、自然に触れ合える大切な授業なのだ。ただ、自然豊かな森なので、奥の方にはクマもいるとの事。
そうは言っても、私たちが行く場所は安全が確保されている為、毎年楽しみにしているのだ。去年はウサギやリスを見る事が出来た。今年はどんな動物たちに出会えるかな?
「お嬢様、カルロス様がいらっしゃっております」
「分かったわ、すぐに行くわね」
今日もカルロス様が家まで迎えに来てくだっさったので、2人で馬車に乗り込む。
「ルミタン、おはよう。会いたかったよ」
馬車に乗り込んだ途端、私を抱きしめるカルロス様。相変わらずだ。
「今日は野外学習だね。あの森には大きなクマがいるから、十分気を付けるんだよ。万が一ルミタンが襲われたら大変だから、ほら。腰に短刀を準備してきたんだ」
確かにカルロス様の腰には短刀が。
「クマは森の奥にいるのでしょう?そんなに心配しなくても大丈夫ですわ。それにそんな短い短刀でクマが倒せるのですか?」
さすがのカルロス様でも、その短刀では無理だろう。
「真剣はさすがに持ってこられないからね。持っていないよりかはマシだろう。と言いたいところなのだが、実はドリトル殿に持たされたんだよ。“森は部外者も入れる、何があるか分からないから短刀だけでも持って行け”てね…」
「まあ、兄が申し訳ございません」
お兄様ったら、いくら野外と言っても貴族学院が安全な場所という事くらい分かっているだろうに…
「それだけ君の事を心配しているという事なのだろう。それに俺に短刀を託してくれたという事は、俺にルミタンを守れと言ってくれたという事だろう?それがなんだか嬉しいんだよ」
そう言ってほほ笑むカルロス様。もう、カルロス様ったら…
なんだか心が温かい気持ちになった。
「さあ、学院に着いたよ。行こうか?いいかい、森についたらすぐに迎えに行くから、待っていてくれよ。くれぐれも勝手に行動しないでくれ。分かったね。それから、通信機は持っているね?」
「ええ、分かっておりますわ。それに通信機もありますし」
「それならよかった。クソ、どうしてルミタンと同じ車両じゃないんだ!やっぱりルミタンが心配だ…」
何やらブツブツと呟きだしたカルロス様、とにかく早く行った方がよさそうね。
「カルロス様、早く参りましょう」
「待って、ルミタン」
立ち上がり馬車から降りようとすると、カルロス様も私の手を握り急いで降りて来た。生憎今日は曇り空だ。雨が降らないといいのだけれど…
学院に着くとまずはクラスごとに馬車に乗り込み、駅を目指す。そして駅からは汽車に乗って森へと向かうのだ。汽車なんて普段のらないから、これまた大興奮。友人たちと一緒におしゃべりしたりして過ごす。
ちなみにたくさんの貴族が乗った汽車という事で、当日は貸し切り。さらに騎士団が護衛するという徹底ぶりだ。
汽車を降りると、再び馬車に乗り込み森へと向かう。歩いて森を登ってもいいのだが、何分貴族(特に令嬢)はあまり体力がないため、馬車で近くまで行くのだ。
「皆さん、これから自由行動です。いいですか?あの奥に見える岩よりも奥にはいかない様にしてください」
先生から簡単な説明があり、自由行動となった。
「ルミタン、お待たせ。さあ、行こうか」
嬉しそうに私の元へとやって来たカルロス様と一緒に、森の周りを散策する。
「カルロス様、見て下さい。可愛らしい野ウサギがこちらを見ていますわ。あっ、でも逃げて行ってしまいましたね。あら?あっちには綺麗な鳥がいますわ。あら?あの可愛らしい動物は…」
「あれはイタチだね。それからあそこには狸もいるよ。この森は本当にたくさんの動物たちがいるね」
イタチという動物か。それに狸も。なんだか可愛らしい動物ばかりね。
「ルミタン、あっちに珍しい花が咲いているから見に行こう」
カルロス様に連れられ、少し奥の方に行くと、沢山の花々が咲いているお花畑に来た。何人かの生徒たちも来ている。
「こんな綺麗なお花畑があっただなんて、知りませんでしたわ。なんて綺麗なのかしら?それに、いい匂いもするし」
「ここは去年俺たちが見つけた場所だよ。ルミタンに見せたらきっと喜ぶと思ってね。今日君をこの場所に連れてこられて本当によかった」
そう言うと、カルロス様が嬉しそうに笑った。彼はいつも私の事を考えてくれている。そう、本当にいつも…
最初はそれがちょっと嫌だったのだが、今は素直に嬉しい。
「ありがとうございます、カルロス様。せっかくなので花冠を作りましょう」
その場にしゃがみ込み、花冠を作りカルロス様の頭に乗せた。よく似合っている。
「ルミタンが作ってくれた花冠…家の家宝として大切に飾っておくよ」
「また大げさな…すぐに枯れてしまいますわ」
「確かに枯れてしまうな。それなら特殊な液に付けて、枯れないようにしないと」
そう言うと、大切そうに花冠をしまうカルロス様。その姿がなんだか可笑しくて、つい笑みがこぼれる。
今日カルロス様と野外学習に来られて、本当によかったわ。
45
お気に入りに追加
1,897
あなたにおすすめの小説
男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される
山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」
出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。
冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜
アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。
そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。
とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。
主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────?
「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」
「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」
これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。
暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ
Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます!
ステラの恋と成長の物語です。
*女性蔑視の台詞や場面があります。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる