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第18話:カルロス様はどこにでも現れます
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「皆、なんだかごめんなさい…」
「なんでルミナス様が謝るのですか?私たちこそ、その、婚約者様の姿をお腹を抱えて笑ってしまい、ごめんなさい」
「令嬢として有るまじき姿でしたわ…でも…」
思い出して笑いを必死に堪える令嬢たち。分かるわ、私も最初カルロス様のあの姿を見た時、笑いが止まらなかったもの。本人を目の前にして噴出したくらいだし…
それにしても、クラスメイト全員を笑いの渦に巻き込むだなんて、ある意味カルロス様は、笑いの天才かもしれない。
「あんな姿を見たら、笑うなという方が無理があるよ。それよりも、なんと言うか…ルミナス嬢も大変だな…」
「そうだよな、カルロス殿があんな人だっただなんて…」
なぜか一斉に皆が、私を可哀そうな子を見る様な目で見つめている。
「あの…カルロス様は皆様がご存じの通り、普段はとても真面目で、勉学も武術にも優れているとても素敵な人なのですよ。なぜか私の事になると、ああなってしまうと言うか。そうだわ!きっと私がカルロス様のファンの方に虐められない様に、あえてあのような姿を演じていらっしゃるのです。ですから、本当のカルロス様は…」
「ルミナス様はお優しいのですね。どう見ても演技には見えなかったですわ。演技であの顔が出来るのなら、ある意味凄いですが…」
「止めろ、アハハハハ、思い出してしまっただろう。ハハハハッハ」
再びクラス中が笑いに包まれた。
「よかったわね、ルミナス。クラスの皆も、皆あなた達の事を祝福してくれている様だし。それになんだかんだ言って、ルミナスもカルロス様の事を好きみたいじゃない」
私の元にやって来て、そんなふざけたことを言っているのは、マリーヌだ。私のどこがカルロス様の事を好きなのよ!
「私は別に、カルロス様の事なんて好きじゃないわよ!」
「あら、そうかしら?さっき必死にカルロス様の事を庇っていたじゃない。それってカルロス様の事を、悪く思われるのが嫌だったのでしょう?」
「そんなつもりで言ったのじゃないわよ。ただ、カルロス様の名誉の為に言っただけよ。もう、マリーヌったら。私、ちょっとトイレに行ってくるわ」
「もう、恥ずかしがっちゃって。1人で大丈夫?私も付いていこうか?」
「平気よ。それじゃあ行ってくるわ」
急いでトイレへと向かう。もう、マリーヌが変な事を言うから、なんだか変な気持ちになってしまったわ。私はカルロス様の事なんて、好きじゃないのだから!
その時だった。誰かに足を引っかけられたのだ。まずい、このままでは顔から思いっきり転ぶ!そう思った時だった。
「ルミタン!!!」
ん?この声は?
間一髪のところで、誰かに抱きとめられた。この感じ、それにさっきの声は…
やはり私を抱きとめてくれていたのは、カルロス様だった。
「ルミタン、大丈夫かい?おい、君、さっきわざと足を出したね。俺はしっかりこの目で見ていたぞ!」
「そんな、言いがかりです。たまたま私が足を延ばしたところに、ルミナス様が私の足を蹴飛ばして転びそうになったのですわ。そうです、私はルミナス様に足をけられた被害者ですわ」
「ほぅ、それじゃあもし君がわざと足を延ばしていたなら、それなりの罪を償ってもらうからな。ここにさっきの様子が録画されているんだよ。それじゃあ、確認しようか」
ニヤリと笑ったカルロス様。
「あ…あの…わざと足を延ばしました。ごめんなさい。でも、私はただ、カルロス様がお可哀そうだと思ったのです。ルミナス様と無理やり婚約させられて…」
「要するに、己の醜い嫉妬心から、罪もないルミタンに怪我をさせようとしたのだな。許せん!俺の可愛いルミタンに手を出すだなんて!いいか、もし次ルミタンに手を出したら、ただじゃおかないからな!ルミタン、大丈夫かい?怪我はないかい?」
今にも目で殺せそうなくらい殺気立ったカルロス様に怒られた令嬢は、その場で腰を抜かしてしまった。ただ、その後私の方を向いたカルロス様は、すっかり毒が抜けて、締まりのない顔をしていた。
そのギャップに、つい笑いそうになるのを必死に堪えた。
「カルロス様、助けて頂きありがとうございます。私は大丈夫ですわ。それよりも、よくこの場所が分かりましたね。ここは2年棟ですし…それに録画の件も…」
“録画は嘘だよ。ただの脅しだ。それから、俺はルミタンの危機にはどこにでも現れるよ。だから安心して欲しい。君は誰にも傷つけさせないから”
耳元でカルロス様が呟いた。
その言葉通り、私が令嬢たちに絡まれるたびにどこからともなく現れ、すぐに助けてくれるのだ。そして令嬢たちが腰を抜かすほど、恐ろしい顔で抗議をしてくれる。
そのお陰で私への嫌がらせも、1週間もすればたちまち無くなったのだった。
ちなみに…
あまりにもどこにでもカルロス様が現れるものだから、友人たちの間で、カルロス様は実は分身がいるのではないかと、密かに噂されていたのだった。
「なんでルミナス様が謝るのですか?私たちこそ、その、婚約者様の姿をお腹を抱えて笑ってしまい、ごめんなさい」
「令嬢として有るまじき姿でしたわ…でも…」
思い出して笑いを必死に堪える令嬢たち。分かるわ、私も最初カルロス様のあの姿を見た時、笑いが止まらなかったもの。本人を目の前にして噴出したくらいだし…
それにしても、クラスメイト全員を笑いの渦に巻き込むだなんて、ある意味カルロス様は、笑いの天才かもしれない。
「あんな姿を見たら、笑うなという方が無理があるよ。それよりも、なんと言うか…ルミナス嬢も大変だな…」
「そうだよな、カルロス殿があんな人だっただなんて…」
なぜか一斉に皆が、私を可哀そうな子を見る様な目で見つめている。
「あの…カルロス様は皆様がご存じの通り、普段はとても真面目で、勉学も武術にも優れているとても素敵な人なのですよ。なぜか私の事になると、ああなってしまうと言うか。そうだわ!きっと私がカルロス様のファンの方に虐められない様に、あえてあのような姿を演じていらっしゃるのです。ですから、本当のカルロス様は…」
「ルミナス様はお優しいのですね。どう見ても演技には見えなかったですわ。演技であの顔が出来るのなら、ある意味凄いですが…」
「止めろ、アハハハハ、思い出してしまっただろう。ハハハハッハ」
再びクラス中が笑いに包まれた。
「よかったわね、ルミナス。クラスの皆も、皆あなた達の事を祝福してくれている様だし。それになんだかんだ言って、ルミナスもカルロス様の事を好きみたいじゃない」
私の元にやって来て、そんなふざけたことを言っているのは、マリーヌだ。私のどこがカルロス様の事を好きなのよ!
「私は別に、カルロス様の事なんて好きじゃないわよ!」
「あら、そうかしら?さっき必死にカルロス様の事を庇っていたじゃない。それってカルロス様の事を、悪く思われるのが嫌だったのでしょう?」
「そんなつもりで言ったのじゃないわよ。ただ、カルロス様の名誉の為に言っただけよ。もう、マリーヌったら。私、ちょっとトイレに行ってくるわ」
「もう、恥ずかしがっちゃって。1人で大丈夫?私も付いていこうか?」
「平気よ。それじゃあ行ってくるわ」
急いでトイレへと向かう。もう、マリーヌが変な事を言うから、なんだか変な気持ちになってしまったわ。私はカルロス様の事なんて、好きじゃないのだから!
その時だった。誰かに足を引っかけられたのだ。まずい、このままでは顔から思いっきり転ぶ!そう思った時だった。
「ルミタン!!!」
ん?この声は?
間一髪のところで、誰かに抱きとめられた。この感じ、それにさっきの声は…
やはり私を抱きとめてくれていたのは、カルロス様だった。
「ルミタン、大丈夫かい?おい、君、さっきわざと足を出したね。俺はしっかりこの目で見ていたぞ!」
「そんな、言いがかりです。たまたま私が足を延ばしたところに、ルミナス様が私の足を蹴飛ばして転びそうになったのですわ。そうです、私はルミナス様に足をけられた被害者ですわ」
「ほぅ、それじゃあもし君がわざと足を延ばしていたなら、それなりの罪を償ってもらうからな。ここにさっきの様子が録画されているんだよ。それじゃあ、確認しようか」
ニヤリと笑ったカルロス様。
「あ…あの…わざと足を延ばしました。ごめんなさい。でも、私はただ、カルロス様がお可哀そうだと思ったのです。ルミナス様と無理やり婚約させられて…」
「要するに、己の醜い嫉妬心から、罪もないルミタンに怪我をさせようとしたのだな。許せん!俺の可愛いルミタンに手を出すだなんて!いいか、もし次ルミタンに手を出したら、ただじゃおかないからな!ルミタン、大丈夫かい?怪我はないかい?」
今にも目で殺せそうなくらい殺気立ったカルロス様に怒られた令嬢は、その場で腰を抜かしてしまった。ただ、その後私の方を向いたカルロス様は、すっかり毒が抜けて、締まりのない顔をしていた。
そのギャップに、つい笑いそうになるのを必死に堪えた。
「カルロス様、助けて頂きありがとうございます。私は大丈夫ですわ。それよりも、よくこの場所が分かりましたね。ここは2年棟ですし…それに録画の件も…」
“録画は嘘だよ。ただの脅しだ。それから、俺はルミタンの危機にはどこにでも現れるよ。だから安心して欲しい。君は誰にも傷つけさせないから”
耳元でカルロス様が呟いた。
その言葉通り、私が令嬢たちに絡まれるたびにどこからともなく現れ、すぐに助けてくれるのだ。そして令嬢たちが腰を抜かすほど、恐ろしい顔で抗議をしてくれる。
そのお陰で私への嫌がらせも、1週間もすればたちまち無くなったのだった。
ちなみに…
あまりにもどこにでもカルロス様が現れるものだから、友人たちの間で、カルロス様は実は分身がいるのではないかと、密かに噂されていたのだった。
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