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番外編
仕方ないので許してあげます
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食べられる!
そう思った時だった。ふわりと体が浮いたと思ったら、そのままギュッと抱きしめられた。この匂いやこの感覚は…
「ヴィクトリア、大丈夫かい?僕に黙って勝手に実家に帰るから、こういう目に合うのだよ。本当に君は!」
「ディーノ様!恐ろしかったですわ!」
ディーノ様の首にしがみつき、ボロボロと涙を流して泣いた。1度ならず2度までも、あんな恐ろしい大蛇に襲われそうになるだなんて。
「よしよし、怖かったね」
子供をなだめるように、私の頭を撫でるディーノ様。
「ヴィクトリアちゃん、本当にごめんなさいね。すぐにマロンちゃんを連れて行って。さあ、ゆっくり屋敷で休んで。殿下も、どうぞこちらへ」
「義姉上、今日はもう帰ります。急にヴィクトリアが押しかけてきて、申し訳ございませんでした。さあヴィクトリア、一緒に帰ろう」
ディーノ様に連れられ、そのまま馬車に乗せられた。それにしてもあの大蛇、まさか我が家にいただなんて。もう二度と、実家になんて帰らないのだから!
「ヴィクトリア、怖い思いをさせてごめんね。でも、これで分かっただろう?黙って実家に帰ると、どんな目に合うか。でも…僕も少し大人げなかったよ。ヴィクトリアには反省して欲しくて、わざと実家に帰るのを止めなかったのだから。本当にごめんね」
だから王宮を出た時、誰も止めに来なかったのか!悔しいわ!!その上、不覚にもディーノ様に抱き着いて泣いてしまった。
私は一体、何をしているのかしら?
「ヴィクトリア、そんな顔をしないでくれ。さあ、王宮に着いたよ。僕が部屋まで連れて行ってあげよう」
私を抱きかかえ、そのまま部屋まで向かうディーノ様。部屋に入ると…
「あら?これは」
机の上には、沢山のスイートポテトが。
「ディーノ様、このスイートポテトは…」
「さすがにちょっと、僕も大人げなかったから…その…これで許してくれるかい?」
少し恥ずかしそうに、ディーノ様が呟く。
「仕方ありませんね、このスイートポテトに免じて、許して差し上げますわ。それからその…私も入学式をサボったり、ディーノ様を陥れたり…その…ディカルド殿下と仲良くしたり…さすがに公爵令嬢としては、よくなかったですわ…申し訳ございません…でした…」
そもそも私は、謝罪するという行為が大嫌いなのだ。それなのに私ったら、一体何を言っているのかしら?
「今のはその…」
「ヴィクトリア、僕の方こそ本当にごめんね。さあ、仲直りのしるしに、一緒にスイートポテトを食べよう。そうだ、食べた後は、一緒にクリーに乗ろうね」
すっかり機嫌がなおったディーノ様。
正直まだ不満はあるが、なんだかんだ言って、私はディーノ様の笑顔、嫌いじゃないのよね。
ふと後ろに控えているクロハを見る。きっと
“また殿下がお嬢様を甘やかして。だからお嬢様が、つけあがるのですわ!”
そんな声が聞こえてくる。でも、それが私たちなのだ。
「ディーノ様、早くスイートポテトを食べてしまいましょう。きっとクリーも待っておりますわ」
「そうだね、でも、急いで食べると喉につかえてしまうよ。クリーは逃げないから、ゆっくり食べるといい」
その後はお腹いっぱいスイートポテトを食べ、思う存分クリーと一緒に走った。
そして夜
「今日はあの大蛇を見て、相当怖い思いをしたのだろう?万が一悪夢にうなされると大変だ。僕がヴィクトリアを抱きしめて寝てあげるね」
そう言って図々しく、私の布団に入り込んできたのだ。
「ディーノ様、いい加減にしてください!さすがに一緒に寝るだなんて…」
「今日くらいはいいだろう?ほら、こっちにおいで。それにもしかしたらあの大蛇が、君に会いたがって王宮に来ているかもしれないし…今日も義姉上から抜け出して、ヴィクトリアの元に来ようとしていたものね」
ふと今日のあいつの姿が、脳裏に浮かんだ。その瞬間、無意識にディーノ様に抱き着いた。
「やっぱり僕が傍にいた方がいいよね。さあ、寝よう。お休み、ヴィクトリア」
私をギュッと抱きしめると、ディーノ様がさっさと目を閉じてしまった。もう、自分勝手なのだから!
私もさっさと寝よう、そう思い目を閉じるのだが、恐ろしいあいつの姿が脳裏に浮かぶ。ただ、ディーノ様の温もりを感じると、なんだか安心する。仕方ない、今日は一緒に寝てあげるか。
そんな思いで、再びゆっくり目を閉じたのだった。
ディーノ様のお陰かは分からないが、その日はあいつの夢を見る事はなかった。
ただ…
このまま大蛇に怯え続ける生活なんて嫌よ!そんな思いから、蛇を克服するべく、訓練を開始したのだった。その結果、1年後には、マロンを見ても動揺する事がないくらい、克服したのだった。
~あとがき~
番外編、一旦ここまでです。
また時間を見つけて、ディカルド殿下とヴァイオレット、ディーノのやり取りなどを書けたらいいな…と考えております。
お読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
そう思った時だった。ふわりと体が浮いたと思ったら、そのままギュッと抱きしめられた。この匂いやこの感覚は…
「ヴィクトリア、大丈夫かい?僕に黙って勝手に実家に帰るから、こういう目に合うのだよ。本当に君は!」
「ディーノ様!恐ろしかったですわ!」
ディーノ様の首にしがみつき、ボロボロと涙を流して泣いた。1度ならず2度までも、あんな恐ろしい大蛇に襲われそうになるだなんて。
「よしよし、怖かったね」
子供をなだめるように、私の頭を撫でるディーノ様。
「ヴィクトリアちゃん、本当にごめんなさいね。すぐにマロンちゃんを連れて行って。さあ、ゆっくり屋敷で休んで。殿下も、どうぞこちらへ」
「義姉上、今日はもう帰ります。急にヴィクトリアが押しかけてきて、申し訳ございませんでした。さあヴィクトリア、一緒に帰ろう」
ディーノ様に連れられ、そのまま馬車に乗せられた。それにしてもあの大蛇、まさか我が家にいただなんて。もう二度と、実家になんて帰らないのだから!
「ヴィクトリア、怖い思いをさせてごめんね。でも、これで分かっただろう?黙って実家に帰ると、どんな目に合うか。でも…僕も少し大人げなかったよ。ヴィクトリアには反省して欲しくて、わざと実家に帰るのを止めなかったのだから。本当にごめんね」
だから王宮を出た時、誰も止めに来なかったのか!悔しいわ!!その上、不覚にもディーノ様に抱き着いて泣いてしまった。
私は一体、何をしているのかしら?
「ヴィクトリア、そんな顔をしないでくれ。さあ、王宮に着いたよ。僕が部屋まで連れて行ってあげよう」
私を抱きかかえ、そのまま部屋まで向かうディーノ様。部屋に入ると…
「あら?これは」
机の上には、沢山のスイートポテトが。
「ディーノ様、このスイートポテトは…」
「さすがにちょっと、僕も大人げなかったから…その…これで許してくれるかい?」
少し恥ずかしそうに、ディーノ様が呟く。
「仕方ありませんね、このスイートポテトに免じて、許して差し上げますわ。それからその…私も入学式をサボったり、ディーノ様を陥れたり…その…ディカルド殿下と仲良くしたり…さすがに公爵令嬢としては、よくなかったですわ…申し訳ございません…でした…」
そもそも私は、謝罪するという行為が大嫌いなのだ。それなのに私ったら、一体何を言っているのかしら?
「今のはその…」
「ヴィクトリア、僕の方こそ本当にごめんね。さあ、仲直りのしるしに、一緒にスイートポテトを食べよう。そうだ、食べた後は、一緒にクリーに乗ろうね」
すっかり機嫌がなおったディーノ様。
正直まだ不満はあるが、なんだかんだ言って、私はディーノ様の笑顔、嫌いじゃないのよね。
ふと後ろに控えているクロハを見る。きっと
“また殿下がお嬢様を甘やかして。だからお嬢様が、つけあがるのですわ!”
そんな声が聞こえてくる。でも、それが私たちなのだ。
「ディーノ様、早くスイートポテトを食べてしまいましょう。きっとクリーも待っておりますわ」
「そうだね、でも、急いで食べると喉につかえてしまうよ。クリーは逃げないから、ゆっくり食べるといい」
その後はお腹いっぱいスイートポテトを食べ、思う存分クリーと一緒に走った。
そして夜
「今日はあの大蛇を見て、相当怖い思いをしたのだろう?万が一悪夢にうなされると大変だ。僕がヴィクトリアを抱きしめて寝てあげるね」
そう言って図々しく、私の布団に入り込んできたのだ。
「ディーノ様、いい加減にしてください!さすがに一緒に寝るだなんて…」
「今日くらいはいいだろう?ほら、こっちにおいで。それにもしかしたらあの大蛇が、君に会いたがって王宮に来ているかもしれないし…今日も義姉上から抜け出して、ヴィクトリアの元に来ようとしていたものね」
ふと今日のあいつの姿が、脳裏に浮かんだ。その瞬間、無意識にディーノ様に抱き着いた。
「やっぱり僕が傍にいた方がいいよね。さあ、寝よう。お休み、ヴィクトリア」
私をギュッと抱きしめると、ディーノ様がさっさと目を閉じてしまった。もう、自分勝手なのだから!
私もさっさと寝よう、そう思い目を閉じるのだが、恐ろしいあいつの姿が脳裏に浮かぶ。ただ、ディーノ様の温もりを感じると、なんだか安心する。仕方ない、今日は一緒に寝てあげるか。
そんな思いで、再びゆっくり目を閉じたのだった。
ディーノ様のお陰かは分からないが、その日はあいつの夢を見る事はなかった。
ただ…
このまま大蛇に怯え続ける生活なんて嫌よ!そんな思いから、蛇を克服するべく、訓練を開始したのだった。その結果、1年後には、マロンを見ても動揺する事がないくらい、克服したのだった。
~あとがき~
番外編、一旦ここまでです。
また時間を見つけて、ディカルド殿下とヴァイオレット、ディーノのやり取りなどを書けたらいいな…と考えております。
お読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
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