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第42話:一番変わったのは私だったのかもしれません
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「ヴィクトリア、また僕に黙って森に行こうとしたね。あの森には必ず僕と一緒に行く事といつも言っているだろう?」
「あら、婚約を結ぶときに、私の好きな様にしていいとおっしゃったではありませんか?森くらい1人で行けますわ」
「相変わらずヴィクトリアは…この前も僕に内緒で、森の奥まで行っていたそうじゃないか。母上まで味方に付けて。ヴィクトリアが居なくなったと、本当に心配したのだよ。本当に君って子は!」
隣でギャーギャー怒る殿下改めディーノ様。そんな彼と婚約を結んで早3ヶ月。日に日に口うるさくなっていく。今も王妃様に協力してもらい、こっそりと森に向かおうとしていたところを、ディーノ様に見つかってしまったところだ。
「ヴィクトリア、僕はいつも言っているよね。森に出掛ける時は…」
「ヴィクトリア様、お取込み中失礼いたします。アマリリス様とカルティア様がお見えになっております」
あら、あの子たち、絶妙なタイミングで来るのね。さすがだわ。
「ありがとう、すぐに行くわ。それではディーノ様、私はこれで」
にっこり微笑み、ディーノ様の元を急ぎ足で去る。
「ヴィクトリア、まだ話は終わっていないよ」
後ろで叫んでいるが、そっとしておこう。急いで2人の元に向かう。
「アマリリス様、カルティア様、またいらしたのですか?でも、今日は良いタイミングで来てくださいましたね」
なぜかお妃が私に決まってしまった後も、定期的に王宮に遊びに来る2人。いつの間にかすっかり丸くなったカルティア様は、今ではアマリリス様同様、私に懐いているのだ。どうやら2人とも、次期王妃になる予定の私と、仲良くなっておこうとの事らしい。さすがお妃候補に選ばれた2人だけある。ちゃっかりしている。
「それで殿下との生活はどうですか?まさかヴィクトリア様が、あのまま王宮に住むとは思いませんでしたわ」
「私だって実家に帰りたかったのよ。でもお父様が!」
私がお妃に選ばれた後、急いで侯爵家に帰ろうとしたのだが…
お父様め、私の数々の行いを知って怖気付いたのか
“ヴィクトリア、お前は私の想像をはるかに超えるほどの行動力がある。私ではとてもヴィクトリアを監視する力はない。だから今日から王宮でずっとお世話になりなさい”
と、ふざけた事を抜かしたのだ。きっとあの男に丸め込まれたのだろう。あの男は私を侯爵家に帰すつもりはなった様なのだ。公爵という地位と元フィドーズ公爵家が管理していた領地の半分をもらう代わりに、お父様は私を売ったのだ。
本当にお父様は!一生恨んでやるわ!
「あら、ヴィクトリア様はご実家よりも王宮の方が伸び伸びしていらっしゃるのではありませんか。まあ、あのマーリン様とやり合うくらいですものね」
「マーリン様と言えば、あの後の裁判にかけられ、公爵様と共にこの国で一番過酷な北の街の収容所に送られたそうですわ。もちろん、フィドーズ公爵家は取り潰されましたし。これでヴィクトリア様も安心して暮らせますね」
何と!フィドーズ公爵家が潰された事は知っていたけれど、まさか北の街の収容所に送られただなんて…さすがに気の毒だが、私がとやかく言える立場ではない。
「君たち、ヴィクトリアに要らない情報を入れるのは止めてくれるかい?ヴィクトリア、まだ話は終わっていないだろう?」
私達の元にやって来たのは、ディーノ様だ。
「ディーノ様、勝手に森に行って何が悪いのですか?そもそも、王妃様には許可を取っていますわ」
本当にしつこい男ね。
「あら、殿下。もしかしてヴィクトリア様が、1人で森に行くのが気に入らないのですか?それは殿下が悪いですわ。ヴィクトリア様が、殿下の言う事を聞く訳ないではありませんか」
「そうですわ、それにヴィクトリア様ならたとえクマや狼に遭遇しても、瞬殺で倒すでしょうし。なんて言ったって、マーリン様が連れて来た大柄の男たちを、瞬殺で倒してしまわれたのですから」
2人がクスクス笑いながら、そんな事を言っている。ディーノ様が、貴族皆の前で、私とマーリン様のやり取りの映像を見せたのだ。そのせいで私は、尋常ではないほど強く、行動力がある人間と思われているみたいだ。
「君たち、ヴィクトリアの味方をするなら、尚更帰ってくれ。本当にどいつもこいつも、ヴィクトリアの味方ばかりして。ヴィクトリア、君が母上と一緒に、僕が焦って君を探している姿を、笑いながら見ている事を知っているのだよ。本当に君は!」
「あら、バレていたのですね。いつも冷静なディーノ様が、焦って私を探す姿、本当に面白いのですもの」
実は王妃様と一緒に、ディーノ様が困っている姿や焦っている姿を見て、楽しんでいるのだ。私は結局ディーノ様に丸め込まれ、婚約者にさせられた。ちょっとくらいディーノ様をからかっても罰は当たらないだろう。
それに、何よりディーノ様が焦って私を探す姿をみると、なぜか安心するのだ。なんだかんだ言って、私もディーノ様の事を大切に思っている。
ただ、やっぱりこのままディーノ様の言いなりになるつもりはない。これからもうんと困らせてやるつもりだ。
それが私に出来る、彼への愛情表現だから。
「ヴィクトリア様は殿下と婚約しても本当に変わりませんね。いつも自由で、自分のしたい事をしっかりなさって。羨ましいですわ」
アマリリス様がそんな事を呟いたのだ。
「いいえ、私は間違いなく変わりましたわ」
そう、私は変わった。面倒な事が大嫌いだった私。ずっと領地で好き勝手生きたいと思っていた。でも今は、こうやって皆と過ごす時間が楽しくてたまらない。あれほど面倒だと思っていた貴族学院も、ディーノ様やアマリリス様、カルティア様と一緒に通える事を、密かに楽しみにしているのだ。
学院でも彼らをどう振り回してやろうかと、今から考えている。
「ヴィクトリア、また何か企んでいるね。本当に君は!でも僕は、そんな君が大好きだよ」
ディーノ様が嬉しそうに抱きしめてくる。私もあなたの事が大好きよ、そう言いたいが、そんな事を言ったらきっとディーノ様は調子に乗るだろう。だからまだ、私の気持ちは教えてあげない。
ただ…
私を変えたのは、きっとディーノ様だろう。ディーノ様、これからも沢山振り回してあげるから、覚悟してくださいね。
おしまい
~あとがき~
これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「あら、婚約を結ぶときに、私の好きな様にしていいとおっしゃったではありませんか?森くらい1人で行けますわ」
「相変わらずヴィクトリアは…この前も僕に内緒で、森の奥まで行っていたそうじゃないか。母上まで味方に付けて。ヴィクトリアが居なくなったと、本当に心配したのだよ。本当に君って子は!」
隣でギャーギャー怒る殿下改めディーノ様。そんな彼と婚約を結んで早3ヶ月。日に日に口うるさくなっていく。今も王妃様に協力してもらい、こっそりと森に向かおうとしていたところを、ディーノ様に見つかってしまったところだ。
「ヴィクトリア、僕はいつも言っているよね。森に出掛ける時は…」
「ヴィクトリア様、お取込み中失礼いたします。アマリリス様とカルティア様がお見えになっております」
あら、あの子たち、絶妙なタイミングで来るのね。さすがだわ。
「ありがとう、すぐに行くわ。それではディーノ様、私はこれで」
にっこり微笑み、ディーノ様の元を急ぎ足で去る。
「ヴィクトリア、まだ話は終わっていないよ」
後ろで叫んでいるが、そっとしておこう。急いで2人の元に向かう。
「アマリリス様、カルティア様、またいらしたのですか?でも、今日は良いタイミングで来てくださいましたね」
なぜかお妃が私に決まってしまった後も、定期的に王宮に遊びに来る2人。いつの間にかすっかり丸くなったカルティア様は、今ではアマリリス様同様、私に懐いているのだ。どうやら2人とも、次期王妃になる予定の私と、仲良くなっておこうとの事らしい。さすがお妃候補に選ばれた2人だけある。ちゃっかりしている。
「それで殿下との生活はどうですか?まさかヴィクトリア様が、あのまま王宮に住むとは思いませんでしたわ」
「私だって実家に帰りたかったのよ。でもお父様が!」
私がお妃に選ばれた後、急いで侯爵家に帰ろうとしたのだが…
お父様め、私の数々の行いを知って怖気付いたのか
“ヴィクトリア、お前は私の想像をはるかに超えるほどの行動力がある。私ではとてもヴィクトリアを監視する力はない。だから今日から王宮でずっとお世話になりなさい”
と、ふざけた事を抜かしたのだ。きっとあの男に丸め込まれたのだろう。あの男は私を侯爵家に帰すつもりはなった様なのだ。公爵という地位と元フィドーズ公爵家が管理していた領地の半分をもらう代わりに、お父様は私を売ったのだ。
本当にお父様は!一生恨んでやるわ!
「あら、ヴィクトリア様はご実家よりも王宮の方が伸び伸びしていらっしゃるのではありませんか。まあ、あのマーリン様とやり合うくらいですものね」
「マーリン様と言えば、あの後の裁判にかけられ、公爵様と共にこの国で一番過酷な北の街の収容所に送られたそうですわ。もちろん、フィドーズ公爵家は取り潰されましたし。これでヴィクトリア様も安心して暮らせますね」
何と!フィドーズ公爵家が潰された事は知っていたけれど、まさか北の街の収容所に送られただなんて…さすがに気の毒だが、私がとやかく言える立場ではない。
「君たち、ヴィクトリアに要らない情報を入れるのは止めてくれるかい?ヴィクトリア、まだ話は終わっていないだろう?」
私達の元にやって来たのは、ディーノ様だ。
「ディーノ様、勝手に森に行って何が悪いのですか?そもそも、王妃様には許可を取っていますわ」
本当にしつこい男ね。
「あら、殿下。もしかしてヴィクトリア様が、1人で森に行くのが気に入らないのですか?それは殿下が悪いですわ。ヴィクトリア様が、殿下の言う事を聞く訳ないではありませんか」
「そうですわ、それにヴィクトリア様ならたとえクマや狼に遭遇しても、瞬殺で倒すでしょうし。なんて言ったって、マーリン様が連れて来た大柄の男たちを、瞬殺で倒してしまわれたのですから」
2人がクスクス笑いながら、そんな事を言っている。ディーノ様が、貴族皆の前で、私とマーリン様のやり取りの映像を見せたのだ。そのせいで私は、尋常ではないほど強く、行動力がある人間と思われているみたいだ。
「君たち、ヴィクトリアの味方をするなら、尚更帰ってくれ。本当にどいつもこいつも、ヴィクトリアの味方ばかりして。ヴィクトリア、君が母上と一緒に、僕が焦って君を探している姿を、笑いながら見ている事を知っているのだよ。本当に君は!」
「あら、バレていたのですね。いつも冷静なディーノ様が、焦って私を探す姿、本当に面白いのですもの」
実は王妃様と一緒に、ディーノ様が困っている姿や焦っている姿を見て、楽しんでいるのだ。私は結局ディーノ様に丸め込まれ、婚約者にさせられた。ちょっとくらいディーノ様をからかっても罰は当たらないだろう。
それに、何よりディーノ様が焦って私を探す姿をみると、なぜか安心するのだ。なんだかんだ言って、私もディーノ様の事を大切に思っている。
ただ、やっぱりこのままディーノ様の言いなりになるつもりはない。これからもうんと困らせてやるつもりだ。
それが私に出来る、彼への愛情表現だから。
「ヴィクトリア様は殿下と婚約しても本当に変わりませんね。いつも自由で、自分のしたい事をしっかりなさって。羨ましいですわ」
アマリリス様がそんな事を呟いたのだ。
「いいえ、私は間違いなく変わりましたわ」
そう、私は変わった。面倒な事が大嫌いだった私。ずっと領地で好き勝手生きたいと思っていた。でも今は、こうやって皆と過ごす時間が楽しくてたまらない。あれほど面倒だと思っていた貴族学院も、ディーノ様やアマリリス様、カルティア様と一緒に通える事を、密かに楽しみにしているのだ。
学院でも彼らをどう振り回してやろうかと、今から考えている。
「ヴィクトリア、また何か企んでいるね。本当に君は!でも僕は、そんな君が大好きだよ」
ディーノ様が嬉しそうに抱きしめてくる。私もあなたの事が大好きよ、そう言いたいが、そんな事を言ったらきっとディーノ様は調子に乗るだろう。だからまだ、私の気持ちは教えてあげない。
ただ…
私を変えたのは、きっとディーノ様だろう。ディーノ様、これからも沢山振り回してあげるから、覚悟してくださいね。
おしまい
~あとがき~
これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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