2 / 50
第2話:王都に戻らされる様です
しおりを挟む
このままうまく丸め込めたと思っていたのだが…
「…ヴィクトリア、君が普段、ワンピース姿で元気に木登りをしている事を、私は知っている。その上乗馬や剣の腕も一流だそうじゃないか…医者の話では、すっかり体も丈夫になり、今や戦場にも出向けるほど強くなったと聞いているぞ…」
お父様がポツリと呟いた。
「お父様、何をおっしゃっているのですか?私はそんな…」
「そうよ、あなた。こんなか弱いヴィクトリアが、そんな事をする訳がないわ。いい加減な事を言わないで」
「は~、分かったよ。それじゃあ、この映像を見なさい」
お父様が何かの映像を流し出したのだ。そこには私が元気に木登りをし、剣を振るい、乗馬に乗っている映像も。さらに
“適当にあしらって、さっさと追い返しましょう”
と、笑顔でクロハに伝えている映像まで残っていた。
「ヴィクトリア、あなたって子は!」
すかさずお母様に怒られた。
クロハ、あなた私を裏切ったのね!クロハをジト目で睨むが、スッと目をそらされた。
「これで分かっただろう?ヴィクトリアは私達が思っている以上に、丈夫で元気な子なんだ。それにお妃候補は、ほぼ強制なのだよ!こんなに元気なヴィクトリアだ、王宮でもきっと、上手くやっていけるはずだ」
「いいえ、お父様。私はうまくやっていけませんわ。そもそも、侯爵令嬢とは名ばかりで、中身はこんなのなのですよ。シーディス侯爵家の顔に泥を塗られたくなければ、やはりお妃候補を辞退した方が侯爵家の為ですわ」
既に両親に知られてしまったのなら仕方がない。どうしようもない娘という設定で、お妃候補を回避しよう。そう思ったのだが…
「いいや、お前が非常に優秀な事は、領地にいる家庭教師によって証明されている。現にお妃候補の筆記試験では、オール満点で、ダントツの首位だった。マナーやしぐさの試験も、難なくクリアしているしな」
「お父様、何をおっしゃっているのですか?そんな試験、受けた記憶はございませんわ。もしかして、お父様、ボケてしまわれたのでは…」
「私はボケていない!本人たちの本来の姿が見たいからと、本人たちには伝えず内緒で試験を受けさせたのだ!本当にお前は…」
ん?そういえば2ヶ月ほど前、筆記試験の様な問題を解かされたわ。もしかしてあれが…
「お父様、だまし討ちとは卑怯ですわよ!とにかく私は、そんな面倒な争いごとに巻き込まれるのは御免です!」
プイっとあちらの方を向いた。
「そんな事を言わないでくれ、ヴィクトリア。たった半年我慢すればいいだけだ。それに、間違ってもヴィクトリアが王太子殿下の婚約者になる事はない。既に婚約者は、フィドーズ公爵家のマーリン嬢に決まっているかなら」
「そうよ、ヴィクトリア。要は出来レースというものよ。そうそう、王宮では自由に過ごしてもいいとの事よ。そういえば宮殿の裏には大きな丘があるわ。そこで乗馬だって出来るのよ。ご飯も美味しいし。もしどうしても嫌だったら、途中辞退も出来るし」
「そうだぞ。母さんの言う通り、丘は広いから馬を思いっきり走らせられるぞ。立派な木もあるし。王妃教育だって、私たちを散々騙してきた要領のいいヴィクトリアだ。先生たちをうまく丸め込んで、適当にこなしておけばいい。とにかく、ヴィクトリアは王宮にいてくれるだけでいいんだ!」
必死にお父様とお母様が訴えてくる。でも、どうしても首を縦に振る事が出来ない。すると!
「分かった、それじゃあ、お妃候補になってくれたから、貴族学院への入学もしなくてもいい。ずっと領地で好きな様に暮らしていいから。とにかく半年間、王宮で生活をしてくれ。頼む、ヴィクトリア」
必死にお父様が頭を下げて来た。正直お妃候補だなんて面倒な事は御免だが、それでも2年間貴族の義務でもある貴族学院に通わなくてもいいうえ、ずっと領地で暮らせるのか…
これは美味しいわね。それに、お父様に恩を売っておけば、今後多少の我が儘は聞いてくれるかもしれないわ。その上、既にお妃さまが決まっているのなら、王宮で適当に生活すればいいし。よし!
「分かりましたわ。お父様がそこまでおっしゃるのなら、私、お妃候補になります!」
「それは本当か?よかった。王妃様にどうしてもと頼まれていたからな。首に縄を付けてでも王宮に連れて行かないといけなかったのだよ。乱暴な真似をしなくて済んで、本当によかった」
「本当ね。ヴィクトリア、あなたがお妃に選ばれることは、天と地がひっくり返ってもあり得ない事だから、気楽に行きなさい。早速明日の朝領地を出て、明後日には王宮に向かわないといけないから。クロハ、悪いけれど準備をお願いね」
「はい、かしこまりました」
えっ?明日の朝領地を出て、明後日には王宮?いくら何でも急すぎやしませんか?そう言いたいが、私を丸め込むことに成功した両親は、嬉しそうに部屋から出て行った。
「お嬢様も明日は早いのです。どうかもうお休みください」
さっさと出て行ってくださいと言わんばかりに、部屋から追い出された。なんだか若干丸め込まれた感じはあるが、まあいいか。
「…ヴィクトリア、君が普段、ワンピース姿で元気に木登りをしている事を、私は知っている。その上乗馬や剣の腕も一流だそうじゃないか…医者の話では、すっかり体も丈夫になり、今や戦場にも出向けるほど強くなったと聞いているぞ…」
お父様がポツリと呟いた。
「お父様、何をおっしゃっているのですか?私はそんな…」
「そうよ、あなた。こんなか弱いヴィクトリアが、そんな事をする訳がないわ。いい加減な事を言わないで」
「は~、分かったよ。それじゃあ、この映像を見なさい」
お父様が何かの映像を流し出したのだ。そこには私が元気に木登りをし、剣を振るい、乗馬に乗っている映像も。さらに
“適当にあしらって、さっさと追い返しましょう”
と、笑顔でクロハに伝えている映像まで残っていた。
「ヴィクトリア、あなたって子は!」
すかさずお母様に怒られた。
クロハ、あなた私を裏切ったのね!クロハをジト目で睨むが、スッと目をそらされた。
「これで分かっただろう?ヴィクトリアは私達が思っている以上に、丈夫で元気な子なんだ。それにお妃候補は、ほぼ強制なのだよ!こんなに元気なヴィクトリアだ、王宮でもきっと、上手くやっていけるはずだ」
「いいえ、お父様。私はうまくやっていけませんわ。そもそも、侯爵令嬢とは名ばかりで、中身はこんなのなのですよ。シーディス侯爵家の顔に泥を塗られたくなければ、やはりお妃候補を辞退した方が侯爵家の為ですわ」
既に両親に知られてしまったのなら仕方がない。どうしようもない娘という設定で、お妃候補を回避しよう。そう思ったのだが…
「いいや、お前が非常に優秀な事は、領地にいる家庭教師によって証明されている。現にお妃候補の筆記試験では、オール満点で、ダントツの首位だった。マナーやしぐさの試験も、難なくクリアしているしな」
「お父様、何をおっしゃっているのですか?そんな試験、受けた記憶はございませんわ。もしかして、お父様、ボケてしまわれたのでは…」
「私はボケていない!本人たちの本来の姿が見たいからと、本人たちには伝えず内緒で試験を受けさせたのだ!本当にお前は…」
ん?そういえば2ヶ月ほど前、筆記試験の様な問題を解かされたわ。もしかしてあれが…
「お父様、だまし討ちとは卑怯ですわよ!とにかく私は、そんな面倒な争いごとに巻き込まれるのは御免です!」
プイっとあちらの方を向いた。
「そんな事を言わないでくれ、ヴィクトリア。たった半年我慢すればいいだけだ。それに、間違ってもヴィクトリアが王太子殿下の婚約者になる事はない。既に婚約者は、フィドーズ公爵家のマーリン嬢に決まっているかなら」
「そうよ、ヴィクトリア。要は出来レースというものよ。そうそう、王宮では自由に過ごしてもいいとの事よ。そういえば宮殿の裏には大きな丘があるわ。そこで乗馬だって出来るのよ。ご飯も美味しいし。もしどうしても嫌だったら、途中辞退も出来るし」
「そうだぞ。母さんの言う通り、丘は広いから馬を思いっきり走らせられるぞ。立派な木もあるし。王妃教育だって、私たちを散々騙してきた要領のいいヴィクトリアだ。先生たちをうまく丸め込んで、適当にこなしておけばいい。とにかく、ヴィクトリアは王宮にいてくれるだけでいいんだ!」
必死にお父様とお母様が訴えてくる。でも、どうしても首を縦に振る事が出来ない。すると!
「分かった、それじゃあ、お妃候補になってくれたから、貴族学院への入学もしなくてもいい。ずっと領地で好きな様に暮らしていいから。とにかく半年間、王宮で生活をしてくれ。頼む、ヴィクトリア」
必死にお父様が頭を下げて来た。正直お妃候補だなんて面倒な事は御免だが、それでも2年間貴族の義務でもある貴族学院に通わなくてもいいうえ、ずっと領地で暮らせるのか…
これは美味しいわね。それに、お父様に恩を売っておけば、今後多少の我が儘は聞いてくれるかもしれないわ。その上、既にお妃さまが決まっているのなら、王宮で適当に生活すればいいし。よし!
「分かりましたわ。お父様がそこまでおっしゃるのなら、私、お妃候補になります!」
「それは本当か?よかった。王妃様にどうしてもと頼まれていたからな。首に縄を付けてでも王宮に連れて行かないといけなかったのだよ。乱暴な真似をしなくて済んで、本当によかった」
「本当ね。ヴィクトリア、あなたがお妃に選ばれることは、天と地がひっくり返ってもあり得ない事だから、気楽に行きなさい。早速明日の朝領地を出て、明後日には王宮に向かわないといけないから。クロハ、悪いけれど準備をお願いね」
「はい、かしこまりました」
えっ?明日の朝領地を出て、明後日には王宮?いくら何でも急すぎやしませんか?そう言いたいが、私を丸め込むことに成功した両親は、嬉しそうに部屋から出て行った。
「お嬢様も明日は早いのです。どうかもうお休みください」
さっさと出て行ってくださいと言わんばかりに、部屋から追い出された。なんだか若干丸め込まれた感じはあるが、まあいいか。
321
お気に入りに追加
3,147
あなたにおすすめの小説
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる