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第2話:王都に戻らされる様です

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このままうまく丸め込めたと思っていたのだが…

「…ヴィクトリア、君が普段、ワンピース姿で元気に木登りをしている事を、私は知っている。その上乗馬や剣の腕も一流だそうじゃないか…医者の話では、すっかり体も丈夫になり、今や戦場にも出向けるほど強くなったと聞いているぞ…」

お父様がポツリと呟いた。

「お父様、何をおっしゃっているのですか?私はそんな…」

「そうよ、あなた。こんなか弱いヴィクトリアが、そんな事をする訳がないわ。いい加減な事を言わないで」

「は~、分かったよ。それじゃあ、この映像を見なさい」

お父様が何かの映像を流し出したのだ。そこには私が元気に木登りをし、剣を振るい、乗馬に乗っている映像も。さらに

“適当にあしらって、さっさと追い返しましょう”

と、笑顔でクロハに伝えている映像まで残っていた。

「ヴィクトリア、あなたって子は!」

すかさずお母様に怒られた。

クロハ、あなた私を裏切ったのね!クロハをジト目で睨むが、スッと目をそらされた。

「これで分かっただろう?ヴィクトリアは私達が思っている以上に、丈夫で元気な子なんだ。それにお妃候補は、ほぼ強制なのだよ!こんなに元気なヴィクトリアだ、王宮でもきっと、上手くやっていけるはずだ」

「いいえ、お父様。私はうまくやっていけませんわ。そもそも、侯爵令嬢とは名ばかりで、中身はこんなのなのですよ。シーディス侯爵家の顔に泥を塗られたくなければ、やはりお妃候補を辞退した方が侯爵家の為ですわ」

既に両親に知られてしまったのなら仕方がない。どうしようもない娘という設定で、お妃候補を回避しよう。そう思ったのだが…

「いいや、お前が非常に優秀な事は、領地にいる家庭教師によって証明されている。現にお妃候補の筆記試験では、オール満点で、ダントツの首位だった。マナーやしぐさの試験も、難なくクリアしているしな」

「お父様、何をおっしゃっているのですか?そんな試験、受けた記憶はございませんわ。もしかして、お父様、ボケてしまわれたのでは…」

「私はボケていない!本人たちの本来の姿が見たいからと、本人たちには伝えず内緒で試験を受けさせたのだ!本当にお前は…」

ん?そういえば2ヶ月ほど前、筆記試験の様な問題を解かされたわ。もしかしてあれが…

「お父様、だまし討ちとは卑怯ですわよ!とにかく私は、そんな面倒な争いごとに巻き込まれるのは御免です!」

プイっとあちらの方を向いた。

「そんな事を言わないでくれ、ヴィクトリア。たった半年我慢すればいいだけだ。それに、間違ってもヴィクトリアが王太子殿下の婚約者になる事はない。既に婚約者は、フィドーズ公爵家のマーリン嬢に決まっているかなら」

「そうよ、ヴィクトリア。要は出来レースというものよ。そうそう、王宮では自由に過ごしてもいいとの事よ。そういえば宮殿の裏には大きな丘があるわ。そこで乗馬だって出来るのよ。ご飯も美味しいし。もしどうしても嫌だったら、途中辞退も出来るし」

「そうだぞ。母さんの言う通り、丘は広いから馬を思いっきり走らせられるぞ。立派な木もあるし。王妃教育だって、私たちを散々騙してきた要領のいいヴィクトリアだ。先生たちをうまく丸め込んで、適当にこなしておけばいい。とにかく、ヴィクトリアは王宮にいてくれるだけでいいんだ!」

必死にお父様とお母様が訴えてくる。でも、どうしても首を縦に振る事が出来ない。すると!

「分かった、それじゃあ、お妃候補になってくれたから、貴族学院への入学もしなくてもいい。ずっと領地で好きな様に暮らしていいから。とにかく半年間、王宮で生活をしてくれ。頼む、ヴィクトリア」

必死にお父様が頭を下げて来た。正直お妃候補だなんて面倒な事は御免だが、それでも2年間貴族の義務でもある貴族学院に通わなくてもいいうえ、ずっと領地で暮らせるのか…

これは美味しいわね。それに、お父様に恩を売っておけば、今後多少の我が儘は聞いてくれるかもしれないわ。その上、既にお妃さまが決まっているのなら、王宮で適当に生活すればいいし。よし!

「分かりましたわ。お父様がそこまでおっしゃるのなら、私、お妃候補になります!」

「それは本当か?よかった。王妃様にどうしてもと頼まれていたからな。首に縄を付けてでも王宮に連れて行かないといけなかったのだよ。乱暴な真似をしなくて済んで、本当によかった」

「本当ね。ヴィクトリア、あなたがお妃に選ばれることは、天と地がひっくり返ってもあり得ない事だから、気楽に行きなさい。早速明日の朝領地を出て、明後日には王宮に向かわないといけないから。クロハ、悪いけれど準備をお願いね」

「はい、かしこまりました」

えっ?明日の朝領地を出て、明後日には王宮?いくら何でも急すぎやしませんか?そう言いたいが、私を丸め込むことに成功した両親は、嬉しそうに部屋から出て行った。

「お嬢様も明日は早いのです。どうかもうお休みください」

さっさと出て行ってくださいと言わんばかりに、部屋から追い出された。なんだか若干丸め込まれた感じはあるが、まあいいか。
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