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第21話:彼女が欲しい【後編】~リュカ視点~
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そしてその後、母上の計らいで、ジュリア嬢と2人で中庭に行く事になった。花も好きなのか、嬉しそうに花を見つめている。もちろん、僕は花なんて興味がない。嬉しそうなジュリア嬢をずっと見つめている。
そんな僕に気づくことなく、どんどん奥に向かって歩いて行く。そんなに奥まで行くと、迷子になるよ。そう言おうとしたのだが、そのまま自由にさせておくことにした。そして、僕はそっと木の陰に隠れる。
すると、予想通り帰り道が分からなくなったのか、キョロキョロし始めたジュリア嬢。僕の名前を呼びながら、速足で歩き始めた。今すぐに出て行ってあげたい気もしたが、不安そうな顔で僕を呼ぶ姿を見ていたら、どうしても出ていく気になれなかった。
あぁ、なんて可愛いんだ…
泣きそうな顔をして、僕を必死に探している…
その姿に、言いようのない興奮を覚える。それと同時に、彼女を何が何でも僕のものにしたいと言う気持ちが沸き上がった。
その時だった。
ジュリア嬢が転んでしまったのだ。そして、子供の様にポロポロと泣き出した。もう我慢できない!急いでジュリア嬢の元に向かう。
すると…
「リュカ殿下…どこにいらしたのですか?ずっと探していたのですよ…」
そう言って、ポロポロと涙を流している。こんな可愛い顔を見たら、理性なんて保ってられない。それに、他の誰にも見せたくない。
そんな思いから、ジュリア嬢を抱きかかえた。逃げられない様に、強く抱きしめる。柔らかくて温かいジュリア嬢。絶対にももう離すものか!そんな思いが、僕を支配する。
結局手当てをした後、もう一度中庭に向かい、一緒にお茶を楽しんだ。移動時は怪我をしているジュリア嬢を気遣うふりをして、ずっと抱っこだ。もちろん、帰りの馬車に乗せるまで抱っこし続けた。
周りで使用人たちが、生暖かい目で見つめていた。きっと明日には、王宮中の噂になっているだろう。でも、僕にとっては好都合だ。
やっぱり僕は、ジュリア嬢が大好きだ。兄上の様に、権力を使って手に入れる事はしたくない、そう思っていた。でも、正直そんな事はもう言っていられない。どんな手を使っても、ジュリア嬢を僕の婚約者にしよう。
婚約してから、ゆっくり2人の仲を深めればいい。そう思ったのだ。
ジュリア嬢を見送った後、すぐに母上に呼び出された。そこには父上もいた。
「リュカ、単刀直入に聞くわ。あなた、ジュリアちゃんが好きなのでしょう?」
「はい、大好きです。彼女と婚約したいと思っています」
はっきりとそう伝えた。僕の返答を聞き、父上が明らかに驚いている。
「いつも自分の気持ちをあまり言わないリュカが、令嬢と婚約したいだなんて!早速スリーティス侯爵家に婚約の申し込みをしよう。今すぐスリーティス侯爵家に使いを出せ」
父上が近くにいた執事に指示を出している。
「ちょっとあなた、気持ちはわかるけれど、先走りすぎよ。リュカ、今まで何事にも全く関心を示さなかったあなたにも、やっと気になる人が出来たのね。お母様もお父様も、とても嬉しく思っているのよ。あなたは自分の気持ちを伝えるのが苦手でしょう。それに、令嬢たちに苦手意識があった様だし…だから心配していたの」
隣で父上も深くうなずいている。
「それでね。私たちは、リュカが望むことを出来るだけ叶えてあげたいと思っているの。幸いジュリアちゃんには、まだ婚約者がいない様だし。あなたさえよければ、スリーティス侯爵家に婚約の申し込みをしようと考えているのだけれど、どうしたい?ジュリアちゃんともう少し仲を深めてから、婚約を申し込むことも出来るけれど…」
「いいえ、僕はすぐにでも、ジュリア嬢と婚約したいと考えております。うかうかしていたら、彼女を誰かに取られてしまうかもしれません。兄上の様に、婚約してから仲を深めていけばいいと思っております!とにかく一刻も早く、ジュリア嬢を僕のものにしたいのです!」
「リュカがそこまで執着するとはな…確か変り者令嬢と言われていたような気もするが…でも、リュカが好きになった相手だ。リュカの好きなようにさせてやらないとな…」
ポツリと呟いた父上。
「あなた、ジュリアちゃんはとても魅力的な女性よ!本当に、誰が変り者令嬢なんて変な呼び名を付けたのかしら。でも、あんなにも美味しいお料理を自ら開発したのだから、ある意味変わっているかもしれないわね」
そう言ってクスクス笑っている。
「それじゃあ、明日にでも侯爵家に使いを出し、正式に婚約の申し込みをしよう。それにしても、ついにリュカにも婚約者が出来るのだな。おめでとう。リュカ」
「ありがとうございます」
きっと王族からの婚約の申し出を、断る事はないだろう。これで僕とジュリア嬢は、正式に婚約者同士になれる。
そうだ、正式に婚約したら、ジュリア嬢にも護衛を付けないと。もちろん僕もずっとそばに居るつもりだけれど、それでも彼女を傷つける者がいるかもしれないからな。
そういえば、ジュリア嬢をイジメた令嬢たちの謹慎が、来週には解けるらしい。厳しい罰を望んだが、結局退学には出来なかった。
でも…
僕と婚約する事が決まったんだ。もう絶対に彼女を傷つけないぞ!
そう心に誓ったのであった。
そんな僕に気づくことなく、どんどん奥に向かって歩いて行く。そんなに奥まで行くと、迷子になるよ。そう言おうとしたのだが、そのまま自由にさせておくことにした。そして、僕はそっと木の陰に隠れる。
すると、予想通り帰り道が分からなくなったのか、キョロキョロし始めたジュリア嬢。僕の名前を呼びながら、速足で歩き始めた。今すぐに出て行ってあげたい気もしたが、不安そうな顔で僕を呼ぶ姿を見ていたら、どうしても出ていく気になれなかった。
あぁ、なんて可愛いんだ…
泣きそうな顔をして、僕を必死に探している…
その姿に、言いようのない興奮を覚える。それと同時に、彼女を何が何でも僕のものにしたいと言う気持ちが沸き上がった。
その時だった。
ジュリア嬢が転んでしまったのだ。そして、子供の様にポロポロと泣き出した。もう我慢できない!急いでジュリア嬢の元に向かう。
すると…
「リュカ殿下…どこにいらしたのですか?ずっと探していたのですよ…」
そう言って、ポロポロと涙を流している。こんな可愛い顔を見たら、理性なんて保ってられない。それに、他の誰にも見せたくない。
そんな思いから、ジュリア嬢を抱きかかえた。逃げられない様に、強く抱きしめる。柔らかくて温かいジュリア嬢。絶対にももう離すものか!そんな思いが、僕を支配する。
結局手当てをした後、もう一度中庭に向かい、一緒にお茶を楽しんだ。移動時は怪我をしているジュリア嬢を気遣うふりをして、ずっと抱っこだ。もちろん、帰りの馬車に乗せるまで抱っこし続けた。
周りで使用人たちが、生暖かい目で見つめていた。きっと明日には、王宮中の噂になっているだろう。でも、僕にとっては好都合だ。
やっぱり僕は、ジュリア嬢が大好きだ。兄上の様に、権力を使って手に入れる事はしたくない、そう思っていた。でも、正直そんな事はもう言っていられない。どんな手を使っても、ジュリア嬢を僕の婚約者にしよう。
婚約してから、ゆっくり2人の仲を深めればいい。そう思ったのだ。
ジュリア嬢を見送った後、すぐに母上に呼び出された。そこには父上もいた。
「リュカ、単刀直入に聞くわ。あなた、ジュリアちゃんが好きなのでしょう?」
「はい、大好きです。彼女と婚約したいと思っています」
はっきりとそう伝えた。僕の返答を聞き、父上が明らかに驚いている。
「いつも自分の気持ちをあまり言わないリュカが、令嬢と婚約したいだなんて!早速スリーティス侯爵家に婚約の申し込みをしよう。今すぐスリーティス侯爵家に使いを出せ」
父上が近くにいた執事に指示を出している。
「ちょっとあなた、気持ちはわかるけれど、先走りすぎよ。リュカ、今まで何事にも全く関心を示さなかったあなたにも、やっと気になる人が出来たのね。お母様もお父様も、とても嬉しく思っているのよ。あなたは自分の気持ちを伝えるのが苦手でしょう。それに、令嬢たちに苦手意識があった様だし…だから心配していたの」
隣で父上も深くうなずいている。
「それでね。私たちは、リュカが望むことを出来るだけ叶えてあげたいと思っているの。幸いジュリアちゃんには、まだ婚約者がいない様だし。あなたさえよければ、スリーティス侯爵家に婚約の申し込みをしようと考えているのだけれど、どうしたい?ジュリアちゃんともう少し仲を深めてから、婚約を申し込むことも出来るけれど…」
「いいえ、僕はすぐにでも、ジュリア嬢と婚約したいと考えております。うかうかしていたら、彼女を誰かに取られてしまうかもしれません。兄上の様に、婚約してから仲を深めていけばいいと思っております!とにかく一刻も早く、ジュリア嬢を僕のものにしたいのです!」
「リュカがそこまで執着するとはな…確か変り者令嬢と言われていたような気もするが…でも、リュカが好きになった相手だ。リュカの好きなようにさせてやらないとな…」
ポツリと呟いた父上。
「あなた、ジュリアちゃんはとても魅力的な女性よ!本当に、誰が変り者令嬢なんて変な呼び名を付けたのかしら。でも、あんなにも美味しいお料理を自ら開発したのだから、ある意味変わっているかもしれないわね」
そう言ってクスクス笑っている。
「それじゃあ、明日にでも侯爵家に使いを出し、正式に婚約の申し込みをしよう。それにしても、ついにリュカにも婚約者が出来るのだな。おめでとう。リュカ」
「ありがとうございます」
きっと王族からの婚約の申し出を、断る事はないだろう。これで僕とジュリア嬢は、正式に婚約者同士になれる。
そうだ、正式に婚約したら、ジュリア嬢にも護衛を付けないと。もちろん僕もずっとそばに居るつもりだけれど、それでも彼女を傷つける者がいるかもしれないからな。
そういえば、ジュリア嬢をイジメた令嬢たちの謹慎が、来週には解けるらしい。厳しい罰を望んだが、結局退学には出来なかった。
でも…
僕と婚約する事が決まったんだ。もう絶対に彼女を傷つけないぞ!
そう心に誓ったのであった。
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