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第7話:作戦開始です

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貴族学院に入学して、2週間が過ぎた。相変わらず私はボッチで過ごしている。時折、第二王子が私に絡んでくるが、そのたびに令嬢たちに物凄い形相で睨まれるのだ。

この前も

「スリーティス嬢、もしよかったら、僕と一緒に昼食を食べないかい?」

そう声を掛けて来たのだ。その瞬間、令嬢たちがすかさず

「スリーティス嬢はお1人がお好きなのですよ。さあ、殿下、あちらで皆で食べましょう」

そう言って令嬢たちが第二王子を連れて行った。きっと誰にでも優しいと言われている第二王子は、ボッチの私に気を使っているのだろう。でも、そのせいで令嬢たちの悪口が酷い。

“あの変り者令嬢、本当に図々しいわよね。殿下の優しさにつけこんで、隙あらば殿下に近づこうとするのよ”

“本当に図々しいわ。とにかく、あの女が殿下に近づかない様に、全力でお守りしないと!”

そう話しているのを聞いた。私、第二王子に自ら近づいた事などないのだが…でも彼女たちにとっては、私が第二王子に近づいていると思っているのだろう。とにかく、これ以上令嬢たちに嫌われたくはない。

それに、このままずっとボッチは嫌だわ。何とかしないと…

部屋でおせんべいを食べながら、考える。一体どうすれば、令嬢たちと仲良くなれるのだろうか…

「お嬢様、また寝っ転がっておせんべいを食べて!だらしがないですよ!」

そう言って怒るファリサ。

「そんなに怒らないでよ。ほら、あなたも食べて、おせんべい」

ファリサにもおせんべいを進める。怒りながらもおせんべいを手に取り、一口食べたファリサ。

「このおせんべい、やっぱり美味しいですわね」

そう言ってほほ笑んでいる。

「そうでしょう?この国のお菓子は、ケーキやクッキーなど、甘いお菓子ばかりでしょう?この甘辛さがまた癖になるのよね」

醤油の辛さと砂糖の甘さが絶妙に混ざり合い、本当に美味しい。この醤油を開発するのも相当苦労したのよね。

完成した時は、嬉しくて料理人たちと抱き合って喜んだものよ。

「確かにお嬢様の言う通り、このおせんべいと言うお菓子、本当に美味しゅうございますわ。この点に関しては、お嬢様は天才ですわね」

珍しくファリサが褒めてくれた。

ん?待てよ。この美味しいおせんべいを学院に持って行って、クラスの皆に食べてもらえれば、もしかしたら皆と仲良くなれるかも…

そうよ、きっと仲良くなれるわ。だってこんなにも美味しいのですもの。

こうしちゃいられない、早速おせんべいを焼かないと。

急いで厨房へと向かい、お父様が私の為に雇ってくれた料理人と一緒に、おせんべいを作る事にした。

既におせんべいの元となる物は料理人たちが作ってくれているから、私はお醤油を付けながら焼いていくだけだ。

でも、この作業が中々大変なのだ。焦がさない様にこまめにひっくり返しながら丁寧に焼く。それにおせんべいを焼くのって、とても熱い。汗だくになるのだ。

こんなに大変な思いをして私が焼いたのですもの。きっとクラスの皆も喜んでくれるはず。


翌日
早速昨日作ったおせんべいを、バスケットにいれた。1つ1つ丁寧に梱包もしてある。
きっとこのおせんべいを食べれば、皆と仲良くなれるはず。

あぁ、早く皆に渡したいわ。そんな思いから、ついいつもより早く馬車に乗り込んだ。

「ジュリア、今日は随分と早いね。何か楽しみな事があるのかい?」

「はい、ちょっと色々ありまして…」

「ジュリアが嬉しそうな顔をしているの、久しぶりに見たわ。あなた、最近元気がなかったから、心配していたのよ」

「確かに、お前クラスでも浮いているみたいだったからな…」

「ちょっとジャン、その事はジュリアには言わない約束でしょう!ジュリア、気にしなくていいのよ」

しまったと言う顔のお兄様に対し、お姉様が慌ててフォローしていた。どうやら2人も、私がクラスで浮いている事に気が付いていた様だ。2人に安心してもらうためにも、今日は何が何でも皆と仲良くならないと。

早速教室に着くと、いつも通り自分の席に付いた。さあ、どのタイミングでおせんべいを皆に配ろうかしら?どうせなら皆に食べてもらいたいから、休み時間がいいわね。よし!

そして待ちに待った休み時間になった。相変わらず私の周りには、誰もいない。でも、それもきっと今日が最後。

私はおせんべいが入ったバスケットを取り出した。

「あの、皆様。今日は私、“おせんべい”と言うお菓子を作って参りましたの。よかったら召し上がってください」

早速皆に声を掛けたのだが、皆が固まっている。こうなる事は想定内だ。でも、食べてもらえれば絶対美味しいと言ってもらえる自信がある。

「遠慮なさらず、どうぞ!」

強引に皆に配っていく。その時だった。

「いらない!こんな見た目も変なお菓子、食べられないわ。こんなもの押し付けられて、迷惑よ!」

1人の令嬢がそう叫んで、私におせんべいを返してきた。さらに

「私もいらないわ」

「俺も」

次々とおせんべいを突き返される。気が付くと、今配った人全員からおせんべいが帰って来ていたのだ。
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