上 下
5 / 15

第5話:彼女の事がもっと知りたい~隆太視点~

しおりを挟む
家に帰ってからも、彼女の事で頭がいっぱいで何も手に付かない。そう言えば、あの制服、西中のものだったな。俺ももし公立の中学に進学していれば、西中だった。


という事は、同じ学区内という事だな。そうだ!幼馴染の和也に彼女の事を聞こう。でも、名前しか知らないし…


そうだ!


俺は次の日、朝早くあの場所で彼女が来るのを待った。2回もこの場所で会ったんだ。きっとここを通って学校に行くはず。


俺の予想は見事的中し、彼女が現れた。その瞬間、スマホで写真を撮る。何枚も何枚も撮った。


早速その日の夕方、和也の家を訪ねる。


「隆太、お前が訪ねて来るなんて珍しいな。どうしたんだよ!」


「あのさ、お前この子知っているか?」


早速朝撮った写真を和也に見せた。


「おお、知っているぞ。同じクラスの足立さんだろう。お前これって隠し撮りじゃないのか?」


「そんな事はどうでもいいだろう!それより、同じクラスという事は、俺と同級生なのか?」


「イヤ、どうでもよくないだろう…まあ、そうだな。同級生だな」


よっしゃー!


という事は、高校は一緒のところに行けるな!


「それで、彼女はどこの高校を受験するんだ!彼女の好きな物は?家族構成は?彼氏はいるのか?」


和也に凄い勢いで詰め寄った。


「俺、あまり足立さんと仲良くないからわからないよ。て言うか、どうしたんだよ隆太。お前かなりキモイぞ!」


完全に引いてしまった和也。クソ、これ以上和也には協力を得られなさそうだな。仕方がない。


家は自慢じゃないが父親が大手企業の社長をやっていて、比較的金がある。こういう時は、やっぱりプロに頼むのが一番だな。


名前も分かったし、早速探偵に頼みに行くか。


翌日、スマホで調べた探偵事務所を訪ね、足立渚について調べてもらう事にした。最初は中学生という事で軽くあしらわれそうになったが、金をちらつかせると、すぐに契約することが出来た。


そして俺は毎日あの場所へ行き、彼女をこっそり見つめた。こっそりと後を付けて家の場所を特定したりした事もあった。


ただ、俺は尾行が下手な様で、何度かバレそうになり、渚も警戒し始めた為、尾行は諦めた。


そうしているうちに、探偵から連絡が入った。そこには彼女に関する情報が事細かに書かれていた。もちろん、希望校に関してもだ。


さらに、沢山のプライベート写真も撮ってくれていた。中には、学校の写真もある。


「よく学校の写真が撮れましたね。どうやって潜入したんですか?」


「実は彼女と家の息子が同じクラスでしてね。それで、息子に協力してもらったのですよ。息子は探偵希望だから、今回いい勉強になったと喜んでいましたよ」


そうだったのか。なるほど!


「引き続き、金はお支払いするので、息子さんから写真や情報等提供して頂きたいのですが」


「もちろんですよ。それでは今後は写真1毎日付き300円、情報料として1500円でどうでしょう。息子の場合まだ素人なので、勉強もかねて特別価格で提供しますよ」


意外とリーズナブルだな。


「わかりました、助かります。では、今後もよろしくお願いします」



家に帰り、早速資料を細かく見る。資料を読み進めていく途中、俺は凍り付いた。どうやら、渚には好きな男がいるようだ。さらに、その男も彼女の事が好きとの事。


このままじゃあ、渚を取られてしまうかもしれない…


そう思うと居てもたってもいられず、探偵事務所に駆け込んだ。


「一体どうしたのですか?何かトラブルでも?」


「あの、今回調べて頂いた女性に好きな人がいて、両想いだと記載されていたのですが…」


「そのようですね」


にっこり笑う探偵。何が“そのようですね”だ!ふざけるな!


「何とかして、この2人がくっ付かない様にしてもらえないでしょうか!もちろん、金はいくらでも払います」


俺の提案に、顎に手を当てて考えている。


「わかりました、出来る限りの事をしましょう。ただ、もし成功した場合、報酬は高くなりますがよろしいですか?」


電卓をたたき、その数字を見せて来る探偵。


「ああ、構わない!だから頼む」


「わかりました!何とかしてみましょう」


探偵に頼んだ後は、進路変更の連絡を学校にした。


「片岡、こんなギリギリに進路変更か?まあ、南高校ならお前の頭なら余裕だろうが、なぜ急に?」


先生が首を傾げている。さすがに好きな女が行くからなんて言えない。


「気が変わって、どうしてもこの高校に行きたいんです。もちろん、親にも説得済みですので」


「分かったよ、それじゃあ、願書を渡すから書いて提出するように」


よかった。これで渚と同じ高校を受けられる。そうだ、部屋には探偵から提供してもらった渚の写真を貼ろう。そうすれば、勉強がさらにはかどる。


家に帰ると早速写真をあちこちに貼った。う~ん、微妙だな。そうだ、お気に入りの写真は、引き伸ばそう。


どんどん渚で埋め尽くされていく部屋に最初は驚いていた両親も、次第に応援してくれるようになった。


そして、いよいよ入試当日。辺りを見渡すと、居た!渚だ!友人、確かマリとサラとか言ったな。あいつらと一緒に、話しながら会場へと入って行った。


俺も急いで会場に入る。残念ながら、会場となる教室は別だったが、まあ仕方がない。試験が終わると急いで外に出て、渚を見送る。


やっぱり可愛いな!早く同じ高校に入りたい。


もちろん、合格発表の時も朝早くから向かい、渚が来るのを待った。ちなみに俺は合格していた。しばらく待っていると、友達とやって来た渚。どうやら彼女も合格した様だ。


これで一緒の高校に行ける!


その後俺は無事中学を卒業した。卒業式翌日、久しぶりに探偵に呼び出された。


「片岡さん、実はですね。先日ご依頼の彼女が両想いの男に手紙で告白しようとしたんです」


「何だって!それで、どうしたんですか?」


俺は椅子から立ち上がり、前のめりになった。


「大丈夫ですよ。本人が読む前に息子が手紙を回収し、皆が見る掲示板に貼っておきましたから。そのおかげで、彼女は相手の男性を恨み、毛嫌いした様です。昨日無事卒業式も迎えましたし、相手の男がこれ以上彼女に接触してくることはないでしょう」


こいつの息子、随分とえげつない事をするな。でも、これでもう渚に近づく男はいなくなった訳だな。


俺はその後、報酬を支払い、事務所を後にした。後々分かったのだが、あそこの探偵事務所は、金さえ払えば程度危険な事でもやってくれるところだったらしい。まあ、ある意味ブラックなところだったって事だな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

処理中です...