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第60話:第二王子と2人きりになりました

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お弁当も食べ終わり、皆で雑談をしていると、1人の令息が凄い勢いで走って来た。見た事が無いので、多分別のクラスの子だろう。

「オオカミの大群が現れたんだ!レオ、ジル、悪いが一緒に来て退治するのを手伝ってほしい。他にも、騎士団の奴が居れば、一緒に来て!」

「わかった、すぐに行くよ。ミシェル、とにかく山を降りろ。シュミナ嬢、ミシェルを頼む」

そう言うと、レオはオオカミの群れの方に向かって走って行った。

「俺たちも行こう」

レオに続き、ジル様と一部の令息も後を追う。

よく見ると、確かにオオカミらしき動物が沢山いて、先生と騎士団に所属している生徒たち、さらに護衛騎士たちが対応している様だ。

「この森は比較的安全と聞いていたのだけれど…とにかく、私たちは山を降りましょう」

シュミナに手を引かれ、山を降りようとした時、オオカミが1匹こっちにやって来た。

お腹が空いているのか、唸りながらこっちに近づいて来る。怖くてシュミナと抱き合っていると

木の棒が飛んできて、オオカミに命中した。

「ミシェル嬢、今のうちだ」

どうやら木の棒を投げたのは第二王子の様だ。第二王子に手を取られ、とにかく必死で走った。正直オオカミへの恐怖が大きすぎて、頭の中がパニックで、第二王子に手を引かれている事すら気づかない程だ。

全速力で走ったせいで、お腹が痛い。

「ミシェル嬢、大丈夫かい?」

息を切らした私に話しかける第二王子。

「はい…何とか。助けていただき、ありがとうございます。アレ?ここは?」

ふと周りを見渡すと、見たことも無い場所だ。道も舗装されていない為、どうやら森の中に迷い込んでしまった様だ。もちろん、シュミナの姿もない。

「どうしよう…迷子になっちゃった…」

一気に不安になる。それもよく考えたら、ここには第二王子しかいない。恐怖と不安から、つい涙が溢れる。

「ああ、やっぱりミシェル嬢は怯えた顔や泣いた顔が一番素敵だね」

そう言うと、私の頬を伝う涙を指ですくい、ペロリと舐めた。その姿を見て、背筋が凍り付く。何なんだこの人、気持ち悪いにも程がある。

いけないわ!毅然とした態度を取らないと!気を取り直して、第二王子に向き合った。

「ユーグラテス様、どうしてそこまで私にこだわるのですか?私は既に、レオという婚約者が居るのに!」

レベッカ様からある程度話は聞いているが、どうしても理解できないのだ。どうして、1度目の生で私の事を毛嫌いしていた第二王子が、私にここまで執着するのかが。

「僕にもよくわからないよ。でも君を見ると、体の奥から感じた事のない感情が溢れ出すんだよ。もっと君に触れたい!そばに居たい!泣かせたい…傷つけたい…ってね…」

そう言うの、ニヤリと笑う第二王子。この人、完全にイカレテいる。それに泣かせたいとか、傷つけたいとか、どんな変態なのよ…

「たとえ、どんなにユーグラテス様が私を思って下さっても、私があなたのものになる事はありません。絶対に!だから、レオを傷つけるのはお止めください!」

レオに手を出したら許さない!そんな思いから、強い口調で第二王子にはっきりと告げた。

「ねえ、ミシェル嬢。僕がレオに何かしたみたいな言い草だね。でもそれは違うよ。レオが僕を傷つけているんだよ。だって、僕から大切なミシェル嬢を奪ったのだからね。そう、レオが悪いんだ!レオが…」

第二王子の言葉を聞いた時、レベッカ様の1度目の生の事を思い出した。この人、本当に狂っているわ。いつでもどんな時でも相手が悪いと思っているのね…

「ねえ、ミシェル嬢、今からでも遅くないよ!僕を婚約者に選んでよ。そうしたら、もうレオにも近づかない。約束する!ね、お願い」

そう言って、私の方に近づいて来る第二王子。

「私はレオを心から愛しておりますので、それは出来ません。ユーグラテス様、たとえ無理やり手に入れても、虚しいだけですよ。どうか、バカな事はお止めください!」

私の言葉に、一瞬目を大きく見開いた第二王子。でも、次の瞬間、ニヤリと笑った。

「僕はね、君の怯えた顔や泣いた顔、絶望した顔が好きなんだ。だから無理やり手に入れても、虚しとか負の感情は抱かないから安心して。さあ、こっちにおいで」

そう言って手を伸ばしてくる第二王子。

「嫌!!!」

そう叫んで、無我夢中で走った。後ろから、第二王子が私を呼ぶ声が聞こえたが、無視して走り続ける。

怖い!怖い!怖い!
目からは涙が溢れる。その時だった、木の根っこにつまづいて豪快に転んでしまった。どうやら足をひねってしまった様で歩けない。

「レオ、痛いよ。助けてレオ!!!」

「バカミシェル!どうしてお前は俺の言う事が聞けないんだよ!」

この声は…
そう思った瞬間、後ろからギューッと抱きしめられた。レオだ!助けに来てくれたんだわ!

「レオ!ごめんなさい。私…」

「めちゃくちゃ探したんだぞ!シュミナ嬢に、ユーグラテスがお前の手を取って走り出したって聞いて、本当に心配した。このバカ。でも、無事でよかったよ」

そう言って、さらに強く抱きしめてくれたレオ。

「それにしても、よく転ぶ奴だな。あぁ、これは捻挫したかもな。とにかく山を降りるぞ」

そう言って、私を抱きかかえ、歩き出すレオ。レオの温もりが、一気に恐怖から安心へと変わる。

山を降りると、皆が待っていてくれた。

「ミシェル、大丈夫だった。ユーグラテス様があなたの手を引いて走って行ったから、慌てて後を追ったのだけれど、見失っちゃって…本当にごめんね」

「なんでシュミナが謝るのよ。私の方こそ心配かけてごめんね!皆無事でよかったわ」

その後、他の令嬢たちも私の様子を見に来てくれた。私が怪我をしたという事で、とりあえず私とレオは先に学院に戻る事になった。

「そうだ、レオ。オオカミは大丈夫だっの?」

「ああ、すぐに追い払ったよ。どうやら食べ物が無くて、随分入口の方まで来ていた様だ。後日、森の生態調査が行われることになった。しばらくは、この森も立ち入り禁止になると思う」

そう。という事は、今回は第二王子が仕掛けた訳ではなさそうね。

「お前こそ、ユーグラテスと一緒だったんだろ。大丈夫だったのか?触れられたり嫌な事はされていないか?」

「大丈夫よ。ただ、第二王子の言動が怖くなって、逃げてきたところを豪快に転んじゃって…」

「相変わらずお前はどんくさいからな。でも、何もされなくて良かったよ!今回はお前から離れた俺の責任だ。ごめんな、怖い思いをさせて!」

「なんでレオが謝るの?こうやって助けてくれたじゃない!ありがとう、レオ」

そう言うと、レオの唇に自分の唇を重ねた。自分からするのは初めてなので、恥ずかしくてつい俯いてしまった。

そんな私の顎を掴んで、再び唇を塞ぐレオ。しばらくすると、やっと解放された。

「ミシェル、俺はお前が居れば何も要らない。だからどんな事があっても、俺から離れないで欲しい」

「もちろんよ、私も離れるつもりはないわ!これからも、ずっと一緒よ!」

今日第二王子と話して、第二王子がいかに危険な人間かという事を再認識した。絶対にあの男の思い通りにはさせない。改めてそう思ったミシェルであった。



~あとがき~
転んでしまったミシェルを助けに来たのは、やっぱりレオでした。
レオはいつでもどんな時も、ミシェルを守ってくれる心強い存在です(*'▽')

第二王子が気持ち悪いだって?
はい、知っています(;^_^A
そろそろクライマックスに向けて、動き出そうかなって考えています。
正直まだ話がまとまっていない部分もありますが…

引き続き、よろしくお願いいたしますm(__)m
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