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第46話:レベッカ様の話はあまりにも衝撃的でした

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「お言葉ですが王太子妃様、さすがに2人きりにするのはちょっと…」

私が不安そうな顔をしている事に気づいたルシアナが、果敢にもレベッカ様に反論している。

「あら、女同士なのだから大丈夫よ!ほら、あなたもさっさと出て行って」

「でも…」

まだ何か言いかけているルシアナを追い出すと、内側から南京錠で鍵を掛けてしまった。ちょっと、これじゃあ逃げられないじゃない!膝の上に居るチャチャをギューッと抱きしめる。

この人、一体何を考えているのかしら?

「さあ、これでゆっくり話が出来るわ」

そう言うと、席に戻りにっこり微笑むレベッカ様。このほほ笑み、恐怖でしかない…

「そんなに怯えないで。でも、きっとその顔を見て、あの変態はあなたに惚れたのね」

変態?

「ミシェル様、単刀直入に聞くわ。あなた、もしかして1度目の生の記憶が残っているのではなくって?」

えっ?今なんて言った?1度目の生ですって…

「レベッカ様、まさかあなた様も…」

「やっぱりそうなのね。おかしいと思ったのよ、あんなに我が儘で傲慢だったミシェル様が、今回の生ではまるで別人なのですもの。それにしても、あの変態がまさかあなたに執着するとはね…」

「あの、レベッカ様。変態ってまさか…」

「第二王子のユーグラテスに決まっているわ」

やっぱり…
でもどうしてレベッカ様が、第二王子の事を変態だなんて呼ぶのかしら?

「レベッカ様も、もしかして第二王子様の事が苦手なのですか?」

「苦手なんて物じゃないわ!虫唾が走る程大っ嫌いよ!」

急に大きな声を出して立ち上がったレベッカ様。

「大きな声を出してごめんなさい。あなたは早々に殺されたから、あの後私たちがどうなったか知らないのよね。実はね、1度目の生の私は、今のあなたと同じように第二王子に執着されていたの」

えっ?どういう事?
レベッカ様は第二王子の兄でもある王太子様の妃だ。そのレベッカ様を、第二王子が?頭の中が?だらけの私の為に、1度目の生で何が起こったのか、詳しく話してくれた。

大人しく穏やかな性格だったレベッカ様は、まさに第二王子の理想の女性だったようで、事ある事に絡んできた第二王子。そんな第二王子の胡散臭い笑顔が苦手で、かなりの恐怖を感じていたレベッカ様。

グラデス王国に嫁いできてからは、出来るだけ第二王子に近づかない様過ごしていたらしい。そもそも、私という婚約者がいるのだから、大丈夫だろうと思っていたとの事。

でも、私達家族が第二王子の策略にまんまとはまり、皆殺しにされた後、本格的に第二王子がレベッカ様に牙を剥き出した。

まず、第二王子の兄でもありレベッカ様の夫、王太子様を事故に見せかけて殺害した。心から王太子様を愛していたレベッカ様は、夫の無念を晴らそうと、必死に証拠を探したが、見つけられなかったらしい。

王太子様が亡くなった後は、第二王子が王太子に就任するのが一般的だ。それに反発したのは、なぜか第二王子だ。頑なに王太子になる事を拒む第二王子を、何とか説得しようとする陛下や王妃様。

必死に懇願してくる陛下や王妃様に、第二王子はある提案をした。それはなんと、レベッカ様を妻として迎えるという事だったのだ。

さすがに最初は反対していた陛下や王妃様だったが、第二王子が「じゃあ、王太子にはならない」の一言で状況は一変。結局レベッカ様が、第二王子の妻になる事で落ち着いたようだ。

そこでふとある疑問を抱いた。

「レベッカ様は第二王子がお嫌いだったのでしょう。それなら、どうして国に帰ろうと思わなかったのですか?」

「私の国では、一度嫁いだのならたとえ夫が亡くなっても、二度と実家には戻れないと言う決まりがあるの。だから、私はこの国に留まるしかなかったの」

悲しそうにそう言ったレベッカ様。

「あの男、私になんて言ったと思う?“兄上が悪いんだ。兄上が君を僕から奪ったからね。だから死んで当然なんだよ”そう言ったのよ!王太子殿下でもあるユリー様は、あんなにも第二王子を信頼していたのに!まさか弟に殺されるだなんて、どんなに無念だったか…」

ついに泣き出してしまったレベッカ様。

「私、どうしてもあの男の妻になりたくなかったの。だから、結婚式の前日に監視の目を盗んで、自ら命を絶ったのよ。これでユリー様の元にいけるわ。そう思っていたのだけれど、気がついたら8歳に戻っていたの」

8歳ですって!私と同じだわ。

「自分が逆行した事に気づいた時、本当に嬉しかったわ。またユリー様と一緒に居られるのですもの。でも、その為には絶対第二王子に好かれてはいけないと思ったの。だから、第二王子が苦手なタイプになる様に心がけたわ。そのおかげか、今回の生では私に全く興味を抱かなかったわ。でも…」

物凄く言いにくそうにしているレベッカ様。言いたいことは何となくわかる。

「1度目の生の時、夫でもあるユリー様もあなた達に無実の罪を着せた手助けをした事、本当に申し訳なく思っているわ。なぜあの時、もっと真剣に止めなかったのか、物凄く後悔しているの。もしかしたら、罪もない人たちを殺した罰が当たったのではないかって思ったこともあったのよ。本当にごめんなさい」

なぜか私に頭を下げるレベッカ様。

「レベッカ様、頭を上げてください。そもそも、レベッカ様のせいではございませんわ。1度目の生の時は、自分でも驚くほど傲慢で我が儘だったので。それに、逆行してこうやって人生をやり直して、1度目の生では出来なかった沢山の経験も出来ましたし、友人にも恵まれました。それに、レオへの気持ちにも気づけたのです。正直、今では逆行出来て良かったと思っているくらいですから!」

「キャンキャン」

「ごめんね。チャチャとも出会えたしね」

自分の名前が出なかった事に不満を抱いたのか、鳴いて抗議したチャチャ。逆行しなければ、チャチャとも出会えなかったのだ。

「ありがとう、ミシェル様。それでここからが本題なのだけれどね。第二王子は、一度執着すると、どんな手を使ってでも手に入れようとするわ。1度目の生では実の兄にも、躊躇なく手に掛けたぐらいですもの。私の見た限り、あなたへの執着は既に相当な物よ。この前のあなたの婚約披露パーティーの時の第二王子を見て確信したわ」

レベッカ様の言葉を聞き、背筋が凍り付くような恐怖を感じた。彼女の目は真剣そのものだ。そもそも、彼女がわざわざ危険を冒してまで私に会いに来てくれたという事は、相当な覚悟があっての事だろう。

「レベッカ様、第二王子はどうやって王太子様を手に掛けたのですか?」

「ああ、それはね…」

その時だった。

ドンドン
「レベッカ、ここを開けなさい!レベッカ!」

「あら、もう見つかってしまったのね。まだ話の途中なのに…仕方ないわね。この続きはまた今度!」

「あの、レベッカ様!」
こんな大事な話、また今度だなんて悠長な事言われても困るわ。私の思いとは裏腹に

「はいはい、今開けるわよ」

そう言って、南京錠の鍵を開けたレベッカ様。

王太子様が物凄い勢いで部屋に入って来た。

「レベッカ!勝手に公爵家に行ってはいけないと、あれ程言っただろう!どうして君は、僕のいう事が聞けないんだ!」

鬼の形相でレベッカ様に詰め寄る王太子様。

「だって、どうしてもミシェル様に会いたかったのですもの。それにミシェル様も、私が会いに来た事を喜んでくれているわ。ねっ、ミシェル様」

そう言うと、私に向かってにっこり微笑んだ。

「はい、その通りです。だから、レベッカ様をどうか怒らないであげてください!お願いします」

とにかく、わざわざ私の為に来てくれたレベッカ様が怒られたら可哀そうだわ!そう思い、必死に頭を下げた。

「ミシェル嬢、頭を上げてくれ。悪いのはレベッカだ!とにかく帰るぞ!」

そう言うと、レベッカ様の腕を掴んで連れて帰ろうとする王太子様。

「あの、レベッカ様。後日王宮に伺っても良いでしょうか。話の続きがしたいので。その際、1人友人を連れて行きたいのですが」

友人とはもちろんシュミナだ。

「ええ、構わないわ。いいでしょう?ユリー様」

「ミシェル嬢が王宮に来てもらう分には構わないよ。ぜひ来てやって欲しい」

良かった、許可が下りたわ。

「では、明日も学院がお休みなので、明日伺ってもよろしいでしょうか?」

善は急げね。

「悪いが、レベッカは罰として1週間部屋から出さない予定なんだ。来週にしてもらえるだろうか?」

来週か!物凄く気になるのに!でも、王太子様にそう言われては仕方がないわ。

「わかりました。では、来週よろしくお願いします」

私の返答に満足そうな王太子様。隣では「1週間も…」とレベッカ様が不満の声を上げている。

「それじゃあ、お騒がせして悪かったね」

そう言うと、レベッカ様を連れて帰って行った。それにしても、レベッカ様もまさか2度目の生を生きていたなんて。それに、第二王子は私が思っている以上に厄介だ。とにかく、早くレベッカ様にもう一度会わないと!



~あとがき~
王太子妃レベッカも、2回目の生を生きていました。
それも、ある意味ミシェルより壮絶な過去を持っています!

それにしても、第二王子は相当ヤバそうですね。
ミシェルは無事、レオと結婚できるのでしょうか(;^_^A
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