上 下
33 / 81

第33話:ミシェルに会えないのは想像以上に辛い~レオ視点~

しおりを挟む
ミシェルが領地に旅立ってから、1ヶ月が経った。既に会いたくてたまらない。手紙を読む限りでは、ミシェルは領地を堪能している様で、乗馬の練習をしたり、犬まで飼い始めた様だ。

クソ、ミシェルの奴、結局は領地で楽しい思いをしているのか。俺はこんなにミシェルに会いたくてたまらないのに…

こうなったら騎士団の稽古を休んで、ミシェルに会いに行くか。そうだ、ミシェルに会いに行こう。早速休みの申請を出しに行かないと。

そう思って事務所に向かおうとした時だった。

「やあレオ、どうしたんだい?そんなに急いで」

ユーグラテスが声を掛けて来た。そもそも、こいつのせいでミシェルは領地に行く羽目になったんだ。そう思うと、どうしても怒りが込み上げてくる。

「別に、ちょっと事務所に用があって行こうと思っていたんだ」

「ふ~ん、まさか休暇の申請じゃないよね」

何なんだよこいつ、別に俺が休暇申請しようが関係ないだろ!

「ねえ、レオ。君だけミシェル嬢に会いに行くなんて、ずるいと思わないかい?僕だって、ミシェル嬢に会いに行きたいよ。でも、父上と兄上がダメだって言うからさ。でももし君が行くなら、僕も付いて行くよ。だって、君だけミシェル嬢に会うなんてフェアじゃないでしょ!」

にっこり笑うユーグラテス。
何なんだよこいつ!

「とにかく、レオが長期休みを取るようなら、僕も取るからそのつもりで」

にっこり笑って去っていくユーグラテス。

ふざけやがって!これじゃあ、ミシェルに会いに行けないじゃないか!そもそもミシェルのいる領地まで行くのに、丸2日かかる。往復だけで4日。滞在の事を考えても、最低でも1週間はいる。

ユーグラテスにバレずに行く事は不可能だ!仕方ない。とにかくユーグラテスが諦めるまで、ミシェルに会う事は出来ないな。

頼むから早く諦めてくれ、ユーグラテス。

俺の願いとは裏腹に、一向に諦める様子のないユーグラテス。俺はミシェルに会えない寂しさを紛らわすように、今まで以上に稽古に精を出した。

そんな時、アレックス兄さんからある提案をされた。

「レオ、ミシェルと結婚したいなら、少しはミューティング公爵家の領地について知っておいた方がいいぞ。ほら、資料を準備しておいてやったから目を通しておけ。後これ。領地経営に関する本だよ。一通り目を通しておくといい」

確かにミシェルとの婚約が決まった時、1から覚えるより今から覚えておいた方が効率がいい。

早速アレックス兄さんに渡された資料に目を通す。思った以上に資料が多く、読むのに大変だ。領地経営に関する本も読み始めたが、量が膨大なうえ難しくて理解するのに時間が掛かる。

俺は時間を見つけては、本を読んだ。騎士団の休憩中も本を読んでいると

「あれ、レオ。何の本を読んでいるんだい?」

またお前かよ、ユーグラテス!

「別に。お前には関係ないだろ!」

ユーグラテスに背を向け、再び本を読みだす。なんとなく何の本を読んでいるか周りに知られたくない。ただ本にカバーを掛けてあるから、何を読んでいるかはバレないはずだ。

「ふ~ん」

そう言って去って行った。

そんなある日、ジルが話しかけて来た。

「ようレオ。相変わらず殺気立っているな」

「何だよジル。幸せアピールなら向こうに行け」

こいつはガーディアン嬢と婚約して以来、ずっと彼女にべったりだ。茶会なども、必ず2人で参加している。俺はずっとミシェルに会えていないのに!

「落ち着けよレオ。この前シュミナがミシェル嬢に会いに行ったから、報告してやろうと思ったのに」

そう言えば、ガーディアン嬢がミシェルのところに行っていると言っていたな。

「それで、ミシェルの様子は?」

「随分楽しそうに過ごしている様だぞ。完璧に馬にも乗りこなしているし。そうそう、孤児院にも頻繁に足を運んでいる様で、随分子供たちは懐いている様だ」

そう言えば、孤児院にも通っていると手紙に書いてあったな。ミシェルの一声で、今ミューティング公爵が領地の改革を行っていると言っていた。

「ジル、孤児院にはミシェルくらいの歳の男共もいるのだろう?ミシェルは大丈夫なのか?」

ミシェルは美しい。そんな美しいミシェルを、男共が放っておく訳がないはずだ!

「落ち着けよ。ミシェル嬢に男の影は一切ない!それにしても、孤児院の男にまで嫉妬するなんて、お前って…」

「うるさいな。俺はずっとミシェルに会えていないんだ!心配して何が悪い!」

俺の発言に、完全に引いているジル。

相変わらずユーグラテスが諦める事はなく、ずっとミシェルに会えない日々が続いた。

そして月日は流れ、ついに来週ミシェルが帰ってくることになった。13歳になったミシェルは、きっと美しく成長している事だろう。早く会いたい。

俺は1人部屋で領地経営に関する本を読んでいた。

コンコン

「坊ちゃま、旦那様がお呼びです」

父上が?

「わかった、すぐに行く」

急いで父上の待つ居間へと向かった。そこにはミシェルの両親も来ていた。

「レオ、呼び出してすまないね。来週ミシェルが帰って来る事は知っているだろう。その話を嗅ぎつけ、既に王家が動き出しているんだ。ミシェルが王都に帰って来たタイミングで、家に結婚の申し込みをしてくるつもりの様だ」

そう言ってため息を付く公爵。

「それでだ、レオ。一足先にお前とミシェルを婚約させようと考えている。ただ、第二王子がお前を監視している為、騎士団の稽古を休ませるわけにはいかない。そこでだ!ミシェルが帰ってくる時に泊まるホテルで、お前たちの婚約を結ぼうと思っているんだ」

父上が俺に詳しく説明してくれた。という事は、俺とミシェルの婚約は決定って事か?

「おい、勝手なことを言うな。とにかく、ホテルでミシェルの意見を聞いてから、婚約を結ばせるからな!」

チッ!やっぱりそう言う話かよ。

「わかったよ、とにかくユーグラテスより早く俺がミシェルと婚約するって言う話でいいんだよな」

「…少し違うが、まあいい」

腑に落ちない顔の公爵。女性陣はクスクス笑っている。

とにかく、来週にはミシェルに会える。ミシェルを脅してでも、絶対に婚約しよう。ユーグラテスにだけは、絶対に渡さない!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

落ちぶれて捨てられた侯爵令嬢は辺境伯に求愛される~今からは俺の溺愛ターンだから覚悟して~

しましまにゃんこ
恋愛
年若い辺境伯であるアレクシスは、大嫌いな第三王子ダマスから、自分の代わりに婚約破棄したセシルと新たに婚約を結ぶように頼まれる。実はセシルはアレクシスが長年恋焦がれていた令嬢で。アレクシスは突然のことにとまどいつつも、この機会を逃してたまるかとセシルとの婚約を引き受けることに。 とんとん拍子に話はまとまり、二人はロイター辺境で甘く穏やかな日々を過ごす。少しずつ距離は縮まるものの、時折どこか悲し気な表情を見せるセシルの様子が気になるアレクシス。 「セシルは絶対に俺が幸せにしてみせる!」 だがそんなある日、ダマスからセシルに王都に戻るようにと伝令が来て。セシルは一人王都へ旅立ってしまうのだった。 追いかけるアレクシスと頑なな態度を崩さないセシル。二人の恋の行方は? すれ違いからの溺愛ハッピーエンドストーリーです。 小説家になろう、他サイトでも掲載しています。 麗しすぎるイラストは汐の音様からいただきました!

『完結』人見知りするけど 異世界で 何 しようかな?

カヨワイさつき
恋愛
51歳の 桜 こころ。人見知りが 激しい為 、独身。 ボランティアの清掃中、車にひかれそうな女の子を 助けようとして、事故死。 その女の子は、神様だったらしく、お詫びに異世界を選べるとの事だけど、どーしよう。 魔法の世界で、色々と不器用な方達のお話。

中将閣下は御下賜品となった令嬢を溺愛する

cyaru
恋愛
幼い頃から仲睦まじいと言われてきた侯爵令息クラウドと侯爵令嬢のセレティア。 18歳となりそろそろ婚約かと思われていたが、長引く隣国との戦争に少年兵士としてクラウドが徴兵されてしまった。 帰りを待ち続けるが、22歳になったある日クラウドの戦死が告げられた。 泣き崩れるセレティアだったが、ほどなくして戦争が終わる。敗戦したのである。 戦勝国の国王は好色王としても有名で王女を差し出せと通達があったが王女は逃げた所を衛兵に斬り殺されてしまう。仕方なく高位貴族の令嬢があてがわれる事になったが次々に純潔を婚約者や、急遽婚約者を立ててしまう他の貴族たち。選ばれてしまったセレティアは貢物として隣国へ送られた。 奴隷のような扱いを受けるのだろうと思っていたが、豪華な部屋に通され、好色王と言われた王には一途に愛する王妃がいた。 セレティアは武功を挙げた将兵に下賜されるために呼ばれたのだった。 そしてその将兵は‥‥。 ※作品の都合上、うわぁと思うような残酷なシーンがございます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※頑張って更新します。

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

父が転勤中に突如現れた継母子に婚約者も家も王家!?も乗っ取られそうになったので、屋敷ごとさよならすることにしました。どうぞご勝手に。

青の雀
恋愛
何でも欲しがり屋の自称病弱な義妹は、公爵家当主の座も王子様の婚約者も狙う。と似たような話になる予定。ちょっと、違うけど、発想は同じ。 公爵令嬢のジュリアスティは、幼い時から精霊の申し子で、聖女様ではないか?と噂があった令嬢。 父が長期出張中に、なぜか新しい後妻と連れ子の娘が転がり込んできたのだ。 そして、継母と義姉妹はやりたい放題をして、王子様からも婚約破棄されてしまいます。 3人がお出かけした隙に、屋根裏部屋に閉じ込められたジュリアスティは、精霊の手を借り、使用人と屋敷ごと家出を試みます。 長期出張中の父の赴任先に、無事着くと聖女覚醒して、他国の王子様と幸せになるという話ができれば、イイなぁと思って書き始めます。

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

命拾いした治癒魔法使いですが、腹黒王子に弄ばれてキュン死寸前です

河津田 眞紀
恋愛
「だいっきらい」から始まる物語は、優しい「好き」で終わりを告げる── フェレンティーナは、治癒魔法の力を持つ少女。 彼女が暮らすイストラーダ王国は今、戦争の真っ只中だ。 敵国の襲撃に傷つき絶望しているところを、敵側の軍人であるはずのルイスに助けられ、運命が動き出す。 ルイスの斡旋により働き始めた酒場で、彼女は出逢ってしまう。 天使のように愛らしく、悪魔のように妖艶で気まぐれな、まっクロい王子様に── 無自覚ドM娘×腹黒ドS王子が織りなす、じれじれで甘々な恋愛ファンタジー。

処理中です...