25 / 27
第25話:納得できない人がここにいます
しおりを挟む
「待って下さい…どうして、どうして僕とアンリの仲を引き裂こうとするのですか?僕とアンリは愛し合っているのに。そうだろう?アンリ」
信じられないといった表情でこちらにやって来たのは、エディソン様だ。
「申し訳ございません。前にも申し上げた通り、私はグレイズを愛しております。確かにエディソン様を好きになり、追い掛け回すという迷惑極まりない行動をした事もありました。その点に関しては、本当に申し訳ございませんでした」
改めてエディソン様に向かって、頭を下げた。
「嘘だ…だって僕は、アンリをこんなにも愛しているのだよ。それに君だって、僕の事を愛していたではないか…確かに僕は君に酷い態度をとってしまった事もあった。でも…また一緒に過ごせばきっと、君の気持ちも戻るよ。そうだろう?」
「エディソン様、この際なのではっきり申し上げます。私は相手の気持ちも考えず、無理やり婚約破棄させたり、好きな女性が母親から暴言を吐かれていても放置したり、挙句の果てに好きな女性を無下にし続ける人とは、人生を共に過ごすことはできません。私はエディソン様の事を好きではありません。むしろ今は、嫌悪感すら抱いているくらいです。ですから、どうかあなた様のお母様が望む、身分の高い令嬢と結婚して幸せになってください。ご無礼な事を申し上げてしまった事を、どうかお許しください」
エディソン様に自分の気持ちをはっきりと告げた。今まで心のどこかに溜め込んでいた気持ちを、一気に吐き出したお陰か、なんだかすっきりした。
「そんな…確かに君の好意を無視して、君に冷たくした事もあった。さっきの母上の発言だって、君があまりにもグレイズと仲睦まじい姿を見せてきたから、君に少し反省して欲しくて、あえて母上の言動を許しただけだよ。これからはちゃんと、母上から君を守る。だから…」
「エディソン様、これからというものはもう存在しませんわ。それに、アンリ様がここまではっきりと、あなた様を愛していないとおっしゃったのに、いくら何でも未練がましいのではありませんか」
「カレッソル公爵令嬢、あなたには関係のない話しです。人の話しに割り込むのはいかがなものかと。とにかく僕は、アンリと何が何でも結婚するから。アンリはずっと僕のものだ!」
そう叫んだエディソン様。さすがに周りにいた貴族も顔が引きつっている。
「さあ、アンリ、もうこんなところから帰ろう。大丈夫だよ、今ならまだ許してあげるから」
そう言って私の腕を掴んだのだ。
「放してください、私はもうあなた様と婚約を結ぶことはないのです!王太子殿下のお話を聞いていなかったのですか?」
必死にエディソン様に訴える。
「いい加減にしなさい!未練がましいにも程がありますよ。マッキーノ侯爵、これ以上令息の恥をさらすおつもりですか?」
そう叫んだのは、近くで私たちを見守っていた王太子妃様だ。王太子妃様の言葉にハッとなったマッキーノ侯爵と夫人が、慌ててこちらにやって来た。
「王太子妃様、それに皆さま、お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ございませんでした。アンリ嬢、グレイズ殿、君たちにも迷惑を掛けてすまなかった。息子は連れて帰る。ほら、エディソン、帰るぞ」
そう言ってエディソンの腕を掴んで、ホールの外に連れて行こうとする。
「父上、母上、放してください。僕は絶対にアンリと結婚するんだ!アンリ、頼む。もう一度僕にチャンスをくれ。僕はずっと、君だけを愛していたんだ。アンリ!!!」
美しい青色の瞳からポロポロ涙を流しながら、必死にこちらに向かって叫んでいた。その姿を、直視する事は出来ない。
一度は好きになった相手…
だからこそ、エディソン様には別の方法で幸せになって欲しいと思っている。
エディソン様、どうか私の事は綺麗さっぱり忘れて、別の令嬢と幸せになってください。そう心の中でそっと願った。
「あの様に退場させられるだなんて、見苦しい事この上ないですわね…それにエディソン様の目、かなり病んでいらした感じがしましたわ…彼には少し療養が必要ね…」
隣で王太子妃様が呟いた。確かにエディソン様の瞳は、尋常ではなかった。もしかしたら、それほどまでに私を愛してくれていたのかもしれない。
そう思ったら、なんだか胸がチクリと痛んだ。
「アンリ様、あなたのせいではないわ。だから、そんな顔をしないで」
私の肩に手を乗せ、慰めてくれるマリーゴールド様。
「ありがとうございます。マリーゴールド様」
彼女は周りをよく見てくれている。マリーゴールド様がいてくれて、本当によかったわ。
「さあ、無事に解決したし、思う存分夜会を楽しんでいってちょうだい。それからスリーフェイル伯爵令嬢、万が一今回の件でマッキーノ侯爵夫人から嫌味を言われたり、嫌がらせをされたらすぐに私に報告して。私がマッキーノ侯爵夫人に注意をするから。と言っても、多分私たちとスリーフェイル伯爵令嬢との繋がりを知った事だから、何か言ってくることはないでしょうけれど」
「ありがとうございます、王太子妃様」
私がお礼を言うと、嬉しそうに微笑んだ王太子妃様。彼女が今後王妃様として国を支えて行ってくれると思うと、この国も安泰だろう。ついそんな事を考えてしまう。
その後はマリーゴールド様と一緒に、仲の良いクラスメートたちと合流した。皆今回の件で、マリーゴールド様のファンになった様で、令嬢たちはもちろん、令息たちからも熱い視線を受けたマリーゴールド様は、恥ずかしそうにしつつも、嬉しそうに笑っていた。
今回の件で、増々クラスの絆が強くなった気がする。それもこれも、マリーゴールド様のお陰ね。
信じられないといった表情でこちらにやって来たのは、エディソン様だ。
「申し訳ございません。前にも申し上げた通り、私はグレイズを愛しております。確かにエディソン様を好きになり、追い掛け回すという迷惑極まりない行動をした事もありました。その点に関しては、本当に申し訳ございませんでした」
改めてエディソン様に向かって、頭を下げた。
「嘘だ…だって僕は、アンリをこんなにも愛しているのだよ。それに君だって、僕の事を愛していたではないか…確かに僕は君に酷い態度をとってしまった事もあった。でも…また一緒に過ごせばきっと、君の気持ちも戻るよ。そうだろう?」
「エディソン様、この際なのではっきり申し上げます。私は相手の気持ちも考えず、無理やり婚約破棄させたり、好きな女性が母親から暴言を吐かれていても放置したり、挙句の果てに好きな女性を無下にし続ける人とは、人生を共に過ごすことはできません。私はエディソン様の事を好きではありません。むしろ今は、嫌悪感すら抱いているくらいです。ですから、どうかあなた様のお母様が望む、身分の高い令嬢と結婚して幸せになってください。ご無礼な事を申し上げてしまった事を、どうかお許しください」
エディソン様に自分の気持ちをはっきりと告げた。今まで心のどこかに溜め込んでいた気持ちを、一気に吐き出したお陰か、なんだかすっきりした。
「そんな…確かに君の好意を無視して、君に冷たくした事もあった。さっきの母上の発言だって、君があまりにもグレイズと仲睦まじい姿を見せてきたから、君に少し反省して欲しくて、あえて母上の言動を許しただけだよ。これからはちゃんと、母上から君を守る。だから…」
「エディソン様、これからというものはもう存在しませんわ。それに、アンリ様がここまではっきりと、あなた様を愛していないとおっしゃったのに、いくら何でも未練がましいのではありませんか」
「カレッソル公爵令嬢、あなたには関係のない話しです。人の話しに割り込むのはいかがなものかと。とにかく僕は、アンリと何が何でも結婚するから。アンリはずっと僕のものだ!」
そう叫んだエディソン様。さすがに周りにいた貴族も顔が引きつっている。
「さあ、アンリ、もうこんなところから帰ろう。大丈夫だよ、今ならまだ許してあげるから」
そう言って私の腕を掴んだのだ。
「放してください、私はもうあなた様と婚約を結ぶことはないのです!王太子殿下のお話を聞いていなかったのですか?」
必死にエディソン様に訴える。
「いい加減にしなさい!未練がましいにも程がありますよ。マッキーノ侯爵、これ以上令息の恥をさらすおつもりですか?」
そう叫んだのは、近くで私たちを見守っていた王太子妃様だ。王太子妃様の言葉にハッとなったマッキーノ侯爵と夫人が、慌ててこちらにやって来た。
「王太子妃様、それに皆さま、お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ございませんでした。アンリ嬢、グレイズ殿、君たちにも迷惑を掛けてすまなかった。息子は連れて帰る。ほら、エディソン、帰るぞ」
そう言ってエディソンの腕を掴んで、ホールの外に連れて行こうとする。
「父上、母上、放してください。僕は絶対にアンリと結婚するんだ!アンリ、頼む。もう一度僕にチャンスをくれ。僕はずっと、君だけを愛していたんだ。アンリ!!!」
美しい青色の瞳からポロポロ涙を流しながら、必死にこちらに向かって叫んでいた。その姿を、直視する事は出来ない。
一度は好きになった相手…
だからこそ、エディソン様には別の方法で幸せになって欲しいと思っている。
エディソン様、どうか私の事は綺麗さっぱり忘れて、別の令嬢と幸せになってください。そう心の中でそっと願った。
「あの様に退場させられるだなんて、見苦しい事この上ないですわね…それにエディソン様の目、かなり病んでいらした感じがしましたわ…彼には少し療養が必要ね…」
隣で王太子妃様が呟いた。確かにエディソン様の瞳は、尋常ではなかった。もしかしたら、それほどまでに私を愛してくれていたのかもしれない。
そう思ったら、なんだか胸がチクリと痛んだ。
「アンリ様、あなたのせいではないわ。だから、そんな顔をしないで」
私の肩に手を乗せ、慰めてくれるマリーゴールド様。
「ありがとうございます。マリーゴールド様」
彼女は周りをよく見てくれている。マリーゴールド様がいてくれて、本当によかったわ。
「さあ、無事に解決したし、思う存分夜会を楽しんでいってちょうだい。それからスリーフェイル伯爵令嬢、万が一今回の件でマッキーノ侯爵夫人から嫌味を言われたり、嫌がらせをされたらすぐに私に報告して。私がマッキーノ侯爵夫人に注意をするから。と言っても、多分私たちとスリーフェイル伯爵令嬢との繋がりを知った事だから、何か言ってくることはないでしょうけれど」
「ありがとうございます、王太子妃様」
私がお礼を言うと、嬉しそうに微笑んだ王太子妃様。彼女が今後王妃様として国を支えて行ってくれると思うと、この国も安泰だろう。ついそんな事を考えてしまう。
その後はマリーゴールド様と一緒に、仲の良いクラスメートたちと合流した。皆今回の件で、マリーゴールド様のファンになった様で、令嬢たちはもちろん、令息たちからも熱い視線を受けたマリーゴールド様は、恥ずかしそうにしつつも、嬉しそうに笑っていた。
今回の件で、増々クラスの絆が強くなった気がする。それもこれも、マリーゴールド様のお陰ね。
551
お気に入りに追加
4,893
あなたにおすすめの小説

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──


手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる