彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi

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第25話:納得できない人がここにいます

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「待って下さい…どうして、どうして僕とアンリの仲を引き裂こうとするのですか?僕とアンリは愛し合っているのに。そうだろう?アンリ」

信じられないといった表情でこちらにやって来たのは、エディソン様だ。

「申し訳ございません。前にも申し上げた通り、私はグレイズを愛しております。確かにエディソン様を好きになり、追い掛け回すという迷惑極まりない行動をした事もありました。その点に関しては、本当に申し訳ございませんでした」

改めてエディソン様に向かって、頭を下げた。

「嘘だ…だって僕は、アンリをこんなにも愛しているのだよ。それに君だって、僕の事を愛していたではないか…確かに僕は君に酷い態度をとってしまった事もあった。でも…また一緒に過ごせばきっと、君の気持ちも戻るよ。そうだろう?」

「エディソン様、この際なのではっきり申し上げます。私は相手の気持ちも考えず、無理やり婚約破棄させたり、好きな女性が母親から暴言を吐かれていても放置したり、挙句の果てに好きな女性を無下にし続ける人とは、人生を共に過ごすことはできません。私はエディソン様の事を好きではありません。むしろ今は、嫌悪感すら抱いているくらいです。ですから、どうかあなた様のお母様が望む、身分の高い令嬢と結婚して幸せになってください。ご無礼な事を申し上げてしまった事を、どうかお許しください」

エディソン様に自分の気持ちをはっきりと告げた。今まで心のどこかに溜め込んでいた気持ちを、一気に吐き出したお陰か、なんだかすっきりした。

「そんな…確かに君の好意を無視して、君に冷たくした事もあった。さっきの母上の発言だって、君があまりにもグレイズと仲睦まじい姿を見せてきたから、君に少し反省して欲しくて、あえて母上の言動を許しただけだよ。これからはちゃんと、母上から君を守る。だから…」

「エディソン様、これからというものはもう存在しませんわ。それに、アンリ様がここまではっきりと、あなた様を愛していないとおっしゃったのに、いくら何でも未練がましいのではありませんか」

「カレッソル公爵令嬢、あなたには関係のない話しです。人の話しに割り込むのはいかがなものかと。とにかく僕は、アンリと何が何でも結婚するから。アンリはずっと僕のものだ!」

そう叫んだエディソン様。さすがに周りにいた貴族も顔が引きつっている。

「さあ、アンリ、もうこんなところから帰ろう。大丈夫だよ、今ならまだ許してあげるから」

そう言って私の腕を掴んだのだ。

「放してください、私はもうあなた様と婚約を結ぶことはないのです!王太子殿下のお話を聞いていなかったのですか?」

必死にエディソン様に訴える。

「いい加減にしなさい!未練がましいにも程がありますよ。マッキーノ侯爵、これ以上令息の恥をさらすおつもりですか?」

そう叫んだのは、近くで私たちを見守っていた王太子妃様だ。王太子妃様の言葉にハッとなったマッキーノ侯爵と夫人が、慌ててこちらにやって来た。

「王太子妃様、それに皆さま、お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ございませんでした。アンリ嬢、グレイズ殿、君たちにも迷惑を掛けてすまなかった。息子は連れて帰る。ほら、エディソン、帰るぞ」

そう言ってエディソンの腕を掴んで、ホールの外に連れて行こうとする。

「父上、母上、放してください。僕は絶対にアンリと結婚するんだ!アンリ、頼む。もう一度僕にチャンスをくれ。僕はずっと、君だけを愛していたんだ。アンリ!!!」

美しい青色の瞳からポロポロ涙を流しながら、必死にこちらに向かって叫んでいた。その姿を、直視する事は出来ない。

一度は好きになった相手…
だからこそ、エディソン様には別の方法で幸せになって欲しいと思っている。
エディソン様、どうか私の事は綺麗さっぱり忘れて、別の令嬢と幸せになってください。そう心の中でそっと願った。

「あの様に退場させられるだなんて、見苦しい事この上ないですわね…それにエディソン様の目、かなり病んでいらした感じがしましたわ…彼には少し療養が必要ね…」

隣で王太子妃様が呟いた。確かにエディソン様の瞳は、尋常ではなかった。もしかしたら、それほどまでに私を愛してくれていたのかもしれない。

そう思ったら、なんだか胸がチクリと痛んだ。

「アンリ様、あなたのせいではないわ。だから、そんな顔をしないで」

私の肩に手を乗せ、慰めてくれるマリーゴールド様。

「ありがとうございます。マリーゴールド様」

彼女は周りをよく見てくれている。マリーゴールド様がいてくれて、本当によかったわ。

「さあ、無事に解決したし、思う存分夜会を楽しんでいってちょうだい。それからスリーフェイル伯爵令嬢、万が一今回の件でマッキーノ侯爵夫人から嫌味を言われたり、嫌がらせをされたらすぐに私に報告して。私がマッキーノ侯爵夫人に注意をするから。と言っても、多分私たちとスリーフェイル伯爵令嬢との繋がりを知った事だから、何か言ってくることはないでしょうけれど」

「ありがとうございます、王太子妃様」

私がお礼を言うと、嬉しそうに微笑んだ王太子妃様。彼女が今後王妃様として国を支えて行ってくれると思うと、この国も安泰だろう。ついそんな事を考えてしまう。

その後はマリーゴールド様と一緒に、仲の良いクラスメートたちと合流した。皆今回の件で、マリーゴールド様のファンになった様で、令嬢たちはもちろん、令息たちからも熱い視線を受けたマリーゴールド様は、恥ずかしそうにしつつも、嬉しそうに笑っていた。

今回の件で、増々クラスの絆が強くなった気がする。それもこれも、マリーゴールド様のお陰ね。
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