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第24話:マリーゴールド様には感謝してもしきれません
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「それは…その…」
言葉を濁すマッキーノ侯爵。すると今度は、陛下と王妃様がやって来た。
「マッキーノ侯爵夫人、あなたは私たちに言いましたよね。スリーフェイル伯爵令嬢たっての希望で、息子とスリーフェイル伯爵令嬢を婚約させることにした。ダニルーディン伯爵家も、別に婚約させたい令嬢がいたそうで、喜んで婚約破棄を承諾してくれたと。でも、今の話を聞いていると、随分と違う様ですが」
「王妃殿下、違うのです。なんと言いますか…その」
「言い訳は聞きたくありません。陛下の従兄妹でもあるあなたが、この様な権力を乱用する様では困りますわ。そうでしょう、あなた」
「ああ、そうだな」
王妃様の言葉に、陛下も頷く。
「それでは今回のスリーフェイル伯爵令嬢とダニルーディン伯爵令息の婚約破棄は、白紙という事でよろしいですね。マッキーノ侯爵、夫人、いくら息子が可愛いからと言って、権力の乱用は行けませんよ。皆様も、万が一この様に、身分の高い貴族から言いがかりを付けられたら、迷わず王宮に相談してください。僕たちは、どの貴族にもこの国で暮らせてよかったと思える国を作りたいと常々思っているのです。もちろん、平民たちにもです。どんな相手であっても、権力を振りかざすようなことはしないでいただきたい」
「はい、申し訳ございませんでした」
王太子妃様の肩を抱きながら、そう叫んだのは王太子殿下だ。マッキーノ侯爵が申し訳なさそうに頭を下げている。そして、どこからともなく温かい拍手が沸き上がった。仲良しのクラスメートの中には、涙を流している子もいる。
…今殿下、私たちの婚約破棄は白紙にとおっしゃったわよね。そいう事は…
「グレイズ、私達、これからも婚約者として一緒にいられるのよ。こんなに嬉しい事はないわ。本当に夢の様ね…」
嬉しくて近くにいたグレイズに抱き着いた。さらに瞳からは、大粒の涙が溢れ出す。これからもずっとずっとグレイズと一緒にいられる。それが嬉しくてたまらないのだ。
「そうだな…でも俺は、たとえこのままお前とマッキーノ侯爵令息が婚約したとしても、絶対に諦めるつもりはなかったけれどな」
そう言って苦笑いしているグレイズ。一体どういう意味かしら?て、今はそんな事を気にしている場合じゃないわ。
「王太子妃様、カレッソル公爵令息夫人様、それにマリーゴールド様、今回の件、本当にありがとうございました。お陰様でこれからもグレイズと共に歩むことが出来ます」
グレイズと共に頭を下げた。
「私たちは当然の事をしたまでよ。それよりも、我が国の貴族が苦しんでいるのに、気が付いてあげられなくてごめんなさいね。それにお礼なら、マリーゴールドに行ってあげて。あの子がわざわざ王宮にやって来て“アンリ様を助けてあげてほしい”と、私に泣きついて来たの。この子はあまり人に頼むことをしなくてね」
「確かにマリーゴールドちゃんは、あまり人に頼る事はしないタイプよね。それだけ、アンリ様とグレイズ様の事を、大切に思っているという事ね」
王太子妃様とカレッソル公爵令息夫人様が顔を見合わせて笑っている。
「もう、お姉様たちったら。アンリ様、勝手な事をしてごめんなさい。でも、あなたとグレイズ様が悲しそうな顔をしている姿を見たら、何とかしてあげたくて…」
「何をおっしゃられるのですか。マリーゴールド様、本当にありがとうございます。あなた様は私たちの恩人です。私もグレイズも伯爵という爵位ですが、これからはマリーゴールド様に付いて行きますわ!いいえ、付いて行かせてください」
マリーゴールド様の手を握り、高らかと宣言した。
「別についてきてくださらなくてもいいのよ。ただ…これからは私もお友達として、あなた達の輪に入れてもらえないかしら?ずっとあなた達が楽しそうに話しをしている姿が、羨ましかったの」
少し恥ずかしそうにそう言ったマリーゴールド様。まさか私たちが羨ましいだなんて!
「もちろんですわ。マリーゴールド様なら大歓迎です!ねえ、グレイズ」
「もちろんですよ。カレッソル公爵令嬢、本当に今回の件、ありがとうございました。アンリとこれからも一緒にこの国で暮らせるなんて、夢みたいです」
少し頬を赤らめ、嬉しそうに呟くグレイズ。
「よかったわね、マリーゴールド。この子は人見知りのところがあって。どうかマリーゴールドの事、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
王太子妃様に頭を下げた。本当にマリーゴールド様の家族は、素敵な人たちね。こんなにも素敵な人たちが、この国を引っ張って行ってくれる。そう思っただけで、私たちの未来は明るい。そう思わずにはいられなかった。
言葉を濁すマッキーノ侯爵。すると今度は、陛下と王妃様がやって来た。
「マッキーノ侯爵夫人、あなたは私たちに言いましたよね。スリーフェイル伯爵令嬢たっての希望で、息子とスリーフェイル伯爵令嬢を婚約させることにした。ダニルーディン伯爵家も、別に婚約させたい令嬢がいたそうで、喜んで婚約破棄を承諾してくれたと。でも、今の話を聞いていると、随分と違う様ですが」
「王妃殿下、違うのです。なんと言いますか…その」
「言い訳は聞きたくありません。陛下の従兄妹でもあるあなたが、この様な権力を乱用する様では困りますわ。そうでしょう、あなた」
「ああ、そうだな」
王妃様の言葉に、陛下も頷く。
「それでは今回のスリーフェイル伯爵令嬢とダニルーディン伯爵令息の婚約破棄は、白紙という事でよろしいですね。マッキーノ侯爵、夫人、いくら息子が可愛いからと言って、権力の乱用は行けませんよ。皆様も、万が一この様に、身分の高い貴族から言いがかりを付けられたら、迷わず王宮に相談してください。僕たちは、どの貴族にもこの国で暮らせてよかったと思える国を作りたいと常々思っているのです。もちろん、平民たちにもです。どんな相手であっても、権力を振りかざすようなことはしないでいただきたい」
「はい、申し訳ございませんでした」
王太子妃様の肩を抱きながら、そう叫んだのは王太子殿下だ。マッキーノ侯爵が申し訳なさそうに頭を下げている。そして、どこからともなく温かい拍手が沸き上がった。仲良しのクラスメートの中には、涙を流している子もいる。
…今殿下、私たちの婚約破棄は白紙にとおっしゃったわよね。そいう事は…
「グレイズ、私達、これからも婚約者として一緒にいられるのよ。こんなに嬉しい事はないわ。本当に夢の様ね…」
嬉しくて近くにいたグレイズに抱き着いた。さらに瞳からは、大粒の涙が溢れ出す。これからもずっとずっとグレイズと一緒にいられる。それが嬉しくてたまらないのだ。
「そうだな…でも俺は、たとえこのままお前とマッキーノ侯爵令息が婚約したとしても、絶対に諦めるつもりはなかったけれどな」
そう言って苦笑いしているグレイズ。一体どういう意味かしら?て、今はそんな事を気にしている場合じゃないわ。
「王太子妃様、カレッソル公爵令息夫人様、それにマリーゴールド様、今回の件、本当にありがとうございました。お陰様でこれからもグレイズと共に歩むことが出来ます」
グレイズと共に頭を下げた。
「私たちは当然の事をしたまでよ。それよりも、我が国の貴族が苦しんでいるのに、気が付いてあげられなくてごめんなさいね。それにお礼なら、マリーゴールドに行ってあげて。あの子がわざわざ王宮にやって来て“アンリ様を助けてあげてほしい”と、私に泣きついて来たの。この子はあまり人に頼むことをしなくてね」
「確かにマリーゴールドちゃんは、あまり人に頼る事はしないタイプよね。それだけ、アンリ様とグレイズ様の事を、大切に思っているという事ね」
王太子妃様とカレッソル公爵令息夫人様が顔を見合わせて笑っている。
「もう、お姉様たちったら。アンリ様、勝手な事をしてごめんなさい。でも、あなたとグレイズ様が悲しそうな顔をしている姿を見たら、何とかしてあげたくて…」
「何をおっしゃられるのですか。マリーゴールド様、本当にありがとうございます。あなた様は私たちの恩人です。私もグレイズも伯爵という爵位ですが、これからはマリーゴールド様に付いて行きますわ!いいえ、付いて行かせてください」
マリーゴールド様の手を握り、高らかと宣言した。
「別についてきてくださらなくてもいいのよ。ただ…これからは私もお友達として、あなた達の輪に入れてもらえないかしら?ずっとあなた達が楽しそうに話しをしている姿が、羨ましかったの」
少し恥ずかしそうにそう言ったマリーゴールド様。まさか私たちが羨ましいだなんて!
「もちろんですわ。マリーゴールド様なら大歓迎です!ねえ、グレイズ」
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少し頬を赤らめ、嬉しそうに呟くグレイズ。
「よかったわね、マリーゴールド。この子は人見知りのところがあって。どうかマリーゴールドの事、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
王太子妃様に頭を下げた。本当にマリーゴールド様の家族は、素敵な人たちね。こんなにも素敵な人たちが、この国を引っ張って行ってくれる。そう思っただけで、私たちの未来は明るい。そう思わずにはいられなかった。
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